- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334045739
感想・レビュー・書評
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古代から教育の重要性は何度も指摘されてきている。国の競争力の観点、個人の知識力や創造性の観点など様々。
しかし、人間をかたち作るということはとても神聖なことであり、それに対して日本の現状は多くのひずみがあることがわかる。それは親と子の接し方もそう。子供のために読むつもりが、自分に跳ね返ってくる話が多く参考になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
受験生を持つ親と著者との対談コラム4ケースが一番興味深かった。
特に、case3塾に通わない受験について、我が家が進んでいる道と同じ。親の私が漠然と不安に思っていることを語り合っていて、とても参考になった。
「親がべったりつきっきりにならず、そのぶん偏差値が多少低くなったとしてもそれを良しとして本人の頑張りで入れる中高一貫校に入り、そこで豊かな思春期を過ごすのが、私のおすすめだ」(P135)
今後、偏差値や成績ばかりに目がいって、子供の頑張りに気づけなくなったら、この言葉を読み返し、なぜ中学受験をすることにしたのか?自分に問いていきたいと思う。 -
いずれ来る我が家の教育問題の一つとして、中学受験の是非を考えるために本書を手に取る。ハウツーに落ちない、親が持つべき考え方や基本姿勢を丁寧に綴る良著。学んだことは、メモに整理して血肉にしたいと思う。
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教育ジャーナリストとして有名なおおたとしまささん
2021年11月初版
以下は気になった話題
・超進学校が幾何と古典をやる理由
幾何を早い段階で徹底的にやることで数学的な素養が高まる。論理的な思考が鍛えられる
古典すなわち古文や漢文を学ぶことは、外国語を学ぶことに似ている。
日常的に無意識で使ている日本語を相対化することで、日本語の論理的構造が認識でき、日本語を論理的思考の道具として使えるようになる。
→思考のOS性能が高まる
・高校受験は世界的に見ても珍しい
14歳からは抽象的思考の次元が高まり、本格的に哲学や科学が出来るようになる年頃。反抗期もある。この大切な時期に入試対策で子どもを追い回すのは得策ではない。
・高校募集を始める私立校が増えている
高校入試を行う私立難関校は減っているが、同時にいわゆる私立中堅校が高校募集を再開する動きがある。オオテメディアは難関校の入試動向しか報じないが、一面的な報道には惑わされないで欲しい
・5歳差の先輩から学べること
中高一貫校では12歳の時点で5歳上の先輩の姿を間近に見られる。
中2や中3でたとえ反抗的な態度を取っていても、高3になる頃には落ち着いている。先生もその成長を知っているからこそ6年間を見通した対応をしてくれる。
中学と高校で分断されない利点の一つ。
「ハビトゥス」
・その学校らしさとは「学校の文化」であり「ハビトゥス」(特定の集団に共通してみられる思考やふるまいのパターンを生み出す諸要因の集合)
・教員が異動しないのも私学の魅力
学校の中で生じた小さな成功体験や失敗体験が建学の精神に結び付けられ、学校全体の共通体験として生徒や教員の中に積み重なり、学校全体にとっての当たり前の水準を押し上げる。こうしてつくられた学校ごとの当たり前がハビトゥスの正体だといえる。
・公立学校のハビトゥスは地域の文化を反映したもの
特に戦前からの公立名門校には、地域の文化や風土、期待や誇りが凝縮されている。
・創立者の伝記と学校の沿革は要チェック
・校長の佇まいと国語の課題文を見る
説明会で校長が何を語るのか以上に、どんな佇まいで語るのかを見てほしい。言語よりも非言語的な情報が重要。その雰囲気を見て、わが子にも似たような佇まいを身に付けてほしいと思えるかどうかがポイント
・子どもに損得勘定を刷り込むな
「将来何がやりたいんだ?そのためにいま何をすべきなのか?」と尋ね、結局勉強するしかないという結論に誘導する大人は多い。
しかし、思春期の時点で抱いていた価値意識が高齢期の幸福感を予測する」という研究によれば思春期の時点で「金銭や安定した地位を大切にしたい」のような外発的動機による価値意識が強いと、高齢期に幸福感が低くなる傾向があるということ
「興味や好奇心を大切にしたい」という内発的動機をはぐくむ教育環境を作っていくことで高齢期の幸福感、自己満足感が増す
・ベストな学校がどこかにあるはずだって幻想を抱いている保護者は多い。
でもそんなのないよって。どこの学校も良いところと悪いところがあって、悪いところすら子どもは肥やしにしていくもの。
自分が適した環境に行けば、人間はおのずと目が生き生きしてくる。
学校へ行った時の子どもの様子を見ることが大事。目が輝いているか、体が躍動しているか、心が安らいでいるか
・スキル偏重教育は大人たちの不安の裏返し
「どう美しく生きるか」を伝える学校と「これからの時代はこういうスキルが必要だと」という学校の二つに分かれる。今、スキル系の方に人気が集まっているのは、今の世の中の大人たちの不安の裏返し
・受験エリートの落とし穴
「いい学校」に行けば、確かに就ける職業の種類が増えたり、就活の書類選考で有利になったりはするかもしれない。しかし、「いい学校」に入って増えた選択肢の差分からしか人生を選べなくなることがある。たとえば「せっかく□□中学に入ったのだから、出来れば東大・京大・最低でも早慶」のような
無限にあったはずの人生の選択肢をむしろ狭めてしまうのだ。
さらには自分の選択未満の選択肢を選んだ人たちのことを、無意識で自分未満だと見下す視点を持ってしまう危険すらある -
我が家は夫婦ともに公立育ち。かと言って公立がとても良かったと思っているわけでもない。
中学受験は気になるものの、お互い私立中高への知識はゼロ。
そんな状況で手に取った一冊。
著者は中学受験をメインフィールドに長年取材を続けている教育ジャーナリスト。本書はその著者の「中学受験観」を凝縮した一冊である。
本書では大きく4章にわけて受験の意義が語られる。
①中高一貫校に入る意義、②私学に入る意義、③受験を通して子が得るもの、④受験を通して親子が得るものの4点である。
結論を言ってしまえば、
①大学受験対策ができること以上に、豊かな思春期を恵まれた環境で謳歌できることの意味が大きい
②その学校でしか得られない生きる指針を授かり、卒業後も教育力が持続すること
③数々の試練を経験し乗り越え、ひととして成長するための大冒険であること
④親子で正しさを話し合い、新たな信頼関係が結ばれ、それが親子双方の人生を支える
となる。
各章に著者のこれまでの経験を活かし、様々なデータと生の声の両方を駆使した著述でなかなかに具体性に富む。
著者の受験観は一貫して、高偏差値信仰を排して「偏差値では表せない果実に目を向ける」べし、である。
①~④の結論にそれがにじみ出ている。
「親がべったりつきっきりにならず、そのぶん偏差値が多少低くなってしまってもそれを良しとして本人の頑張りで入れる中高一貫校に入り、そこで豊かな思春期をすごすのが、私のおすすめだ。」それが著者の中学受験観だという。
中学受験というと、名門校に子を入れるために(子以上に親が)血と汗と涙を流す狂騒曲、というイメージすらあるが、その受験観では親子ともに幸せにならない。
ということである。
本書を読んでぼんやりした受験へのイメージはまた一つ明確になってきたように感ずる。得るものは多かった。
さて、ではこうなると、次は「世の中にはどんな個性の学校があるのか?本当にわざわざ苦労して進むべき学校が世にあるのか」が気になってくるのである。 -
中学受験をさせることで、高校受験をさせなくていいというメリットがあることに改めて気づいた。そして、中高一貫校の私学に積もった文化の魅力もあるなあと思った。
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受験生でもないし受験生の親でもないし中学受験の経験すらないが、見識を広めるために読んでみた。ピンとこない部分も多かったが、こんな世界もあるんだ、もし将来当事者になったらこういう心構えが必要なんだ、と興味深く読むことができた。
勉強って、してもしても褒められないよね。 -
中学受験を「親子にとっての人間的な成長をもたらす機会」ととらえる気鋭の教育ジャーナリストが、豊富な知見を駆使して高い視点から中学受験の意義を語る
〈残念ながら、本書を読んでも偏差値を上げる方法やお得な進路がわかるわけではない。〉
では何が書かれているか
私立中高一貫校に通う意味
〈中高一貫校に通う意味は、失敗と葛藤に満ちた豊かな思春期を謳歌できること〉
中学受験勉強の最中に得られるもの
〈中学受験勉強の日々は親子にとって、ハプニング連続のスリリングな大冒険〉
これから中学受験を考えるときはもちろん、受験勉強が始まった4、5年生の親も、そして真っ只中にいて苦しんでいる6年生の親も、自分たちが何をめざしているのかを見つめ直す機会として読んでおきたい中学受験の決定版
各章末にはVERY NAVY連載「悩めるママのための、受験進路相談室」から4回分を「Column」として収録
第4章の不登校の子の母とのやりとりには著者の教育観の真髄があらわれている
著者プロフィール
おおたとしまさの作品





