- 本 ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334046071
感想・レビュー・書評
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「武家の古都・鎌倉」が世界遺産として認められないのはなぜか。それは遺産と言えるものが殆ど残っていないからだという。また海に近いため、リゾート・レジャー開発されてしまっているのも理由になっている。この辺は富士山が自然遺産になれなかったのと同じ理由だろう。ただし人々は「古都」を求めて鎌倉にやってくる。それはなぜなのか。古代から現代までの歴史を辿り、その不思議な魅力を解き明かす試み。
いわば「土地の記憶」を描き出しているのだが、歴史というものは多かれ少なかれ「物語られる」。という意味では、どんな都市であろうと「幻想」的な要素があるのだが、特に鎌倉はそれが顕著であることがわかる。それは平安・室町・江戸・幕末と政治的舞台として重層的な京都に比べて、鎌倉は江戸時代には観光地化されてしまったため、そこでイメージがストップしてしまったことが大きいようである。とはいえ、土地開発は進んでいくので「幻想」だけが継承され膨らんでいく。ただし、「幻想」だからといって悪いということもないだろう。特に建造物的な史跡が残っていないからこそ、想像力が働くというメリットもあるし、その方が楽しめる場合もあり、それが街歩きや歴史散歩の醍醐味でもある。本書はその手助けになるだろう。
尚、P53に大倉御所の位置は鶴岡八幡宮の「西隣」とあるが、これは「東隣」の間違いに思われる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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都市鎌倉について古代から現代にいたる歴史を辿る内容。都市として奈良時代を原点に鎌倉時代に発展していく様相や、近世以降の観光地化を経て共同幻想とでも言えるような「古都」のイメージが形作られていく過程が興味深く面白い。
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鎌倉には鎌倉時代から残る建造物はない?江戸時代に政権が置かれなかったから、かえって聖地として残された?
鎌倉は雰囲気があって好きな街。鎌倉時代と人口はあまり変わってない? -
幻想の都というインパクトのあるワーディング。この都というのは鎌倉時代の都市・鎌倉ということ。江戸時代以降から名所旧跡の多い観光地としてのイメージが再生産されてきたというところがおもしろい。
縄文から現代まで、都市としての姿に焦点をあてて鎌倉の歴史を解説しているところが興味深い。 -
ふわっとした鎌倉追憶的なエッセイなのかと思わすタイトルですが、中身はガチの鎌倉都市形成史でした。奈良時代から都市の形成が始まり、鎌倉時代にも軸が東西から南北に変わったりと変化の大きい都市だったようです。個人的には、低取るに結びつく幻想への流れを江戸時代、明治時代の分量を増やして、もう少し手厚く解説してほしかった気もします。
いや久しぶりに鎌倉に行って、この本の記載を確かめてみたくなりましたね。 -
「鎌倉殿の13人」で脚光を浴び、にぎわっている鎌倉
「古都を名乗るわりには、古臭くない」鎌倉
「古都」らしくない古都鎌倉
不思議な「古都」鎌倉
都市としての鎌倉の歴史を古代から現代までたどりながら、その魅力の秘密を解き明かす
・鎌倉に人があらわれたのは、今から二万年前、旧石器時代のことである。p.16
・鎌倉にも実は古墳があった。p.21
・都市としての鎌倉の出発点は、奈良時代であった。p.33
・平安時代前・中期の鎌倉周辺は、平氏の支配する地域だったのである。p.36
・頼朝は鎌倉に本拠(幕府)を置くしかなかったのである。p.49
・大慈寺には都市鎌倉にさまざまな文化の香りをもたらす装置という側面もあった。p.71
《鎌倉は日本人の記憶と想像のなかでつくられた都市だった。》──帯のコピー
西御門、十二所、扇谷、材木座から手広、山崎、台、城廻まで、鎌倉市民には馴染みのある地名が登場し、親しみを感じるご当地本、2022年5月刊
なによりも湘南高校出身の著者の地元愛にあふれた一冊 -
東2法経図・6F開架:B1/10/1198/K
著者プロフィール
高橋慎一朗の作品





