孤独なバッタが群れるとき 『バッタを倒しにアフリカへ』エピソード1 (光文社新書 1200)
- 光文社 (2022年5月18日発売)
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感想 : 38件
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Amazon.co.jp ・本 (412ページ) / ISBN・EAN: 9784334046095
感想・レビュー・書評
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「バッタを倒しにアフリカへ」で、モーリタニアでの研究生活を中心に面白おかしく紹介していた著者が、アフリカに渡る前の研究の様子を、グラフも多目で研究内容を中心に紹介した本。これも十分面白く読めた。
著者のバッタ愛がすごい。だからこそ、研究者にもなるという夢も実現したのだと思うが、昆虫好きの子どもに夢を与えられる本。(子どもにはちょっと難しいだろうが・・)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
孤独なバッタが群れるとき
『バッタを倒しにアフリカへ』エピソード1
著:前野ウルド浩太郎
光文社新書1200
感動しました
本書は、農学部の学生が、紆余曲折を経て、前野ウルド浩太郎として、生まれ変わるまでの秘話である
であると同時に、サイエンスのごとき科学雑誌のような雰囲気の書である
図表や、写真や絵が満載されています
学者とは、1000以上の卵や幼虫たちの大きさや色をはかったり、マニュキュアでバッタの目に塗ったり、夜通し触覚を触りつづけたり、頭脳以外にも、その体力を鍛える必要がある人種であると感じました。
気になったのは、以下です
・いつの頃からか人類はこの生き物をバッタ(Locust)と呼び始めた
その語源は、ラテン語の「焼け野原」からきている
古代ヘブライ人はサバクトビバッタの独特な翅の紋様は、ヘブライ語で「神の罰」と刻まれていると言い伝えた
・世界的にバッタとの闘いは戦争とみなされている
・髪が女性の命なら、論文は研究者の命
・先生の采配に恐れおののいたと同時に、先生についていけば昆虫学者になるのも夢でない。やったことが形となり、世の中に発信できた充実感、努力が論文という形で実を結ぶ達成感は他の何物にも代えがたいことを知った
・いやぁ、僕はねぇ、虫を買ってるんじゃないよ。虫に飼われているんだよ
師匠⇒弟子⇒孫弟子と世代を超えて伝わった相蓄積の謎への挑戦が始まった
・この先ずっと研究していくために色々とスキルを身につけた方がいいのではないかと考えていた
自分には特別な技術もないし、装置も薬品もまったく使えない
ただひたすらバッタを飼育するだけの私をあざける声も少なからず聞こえていた
・そうだ、自分は手法や技術を覚えるために研究したかったわけではない
虫の研究がしたかったのだ
突如、虫のことが知りたいという少年時代に思い描いた夢が蘇ってきた
・「繰り返し見続けることで、見えてくるものがある」この研究で得た教訓だった
・私は、王道から外れた邪道こそが発見を生み出す近道だと考えていた
「非常識なことをやるためには常識を知っておかねばならない。不真面目なことをやるためには、真面目をしておかねばならない」との教えを頂いた
・私たち研究者は論文に自分の名前がある限り、発表論文の全責任を負い、その当時得られている証拠に基づきもっとも理にかなった結論を導き出している
・論文発表すれば、賞賛されるばかりでなく、批判の矢面に立つ恐れもあるため、ひじょうに勇気のいる行為だと感じている
・絶対にそうだ、そうに決まっている という先入観はとても危険で、誤解を招くことがある
・たとえ、どんなに長い間言い伝えられてきたことであっても、どんなに偉い先生の言葉であったとしても、それを鵜呑みにすることがいかに危険なことか
・この頃の私のキャッチフレーズは、「誰にでもできることを、誰にもできないくらいやろう」だった
・研究者になるためには、通常、大学や研究所がポストのあきができると公募し、わけこそはという者は履歴書や抱負を郵送し審査される。たった一つのポストに100人も応募してくるのはざらである
・それぞれの能力は厳しい淘汰の過程の中で洗練され、もっとも優れた部分だけが残ったはずだ。洗練されたものは美しいだけではなく、無駄を省き、余力を生む
・この「ウルド(Ould)」はモーリタニアで最高敬意のミドルネームで、「~の子孫」という意味がある
・良く言った!オマエはモーリタニアンサムライだ!今日からオマエは、コータロー・ウルド・マエノ、を名乗るがよい
・君が今まさに自然の中にいることがもっとも重要なことなんだ。昆虫のことを知るためには昆虫の生息地にくるしかない。君は、その暑さ、その風、その寒さを体験しなくてはいけない。そう、バッタを同じように。
・害虫も数を減らせば、ただの虫
・私は、もう昔の前野浩太郎ではない。前野ウルド浩太郎として生まれ変わり、フィールドという新天地に闘いの舞台を移した。
目次
「一杯のラーメン」を「まえがき」にかえて
はじめに
第1章 運命との出逢い
第2章 黒き悪魔を生みだす血
第3章 代々伝わる悪魔の姿
第4章 悪魔を生みだす謎の泡
第5章 バッタde遺伝学
第6章 悪魔の卵
第7章 相変異の生態学
第8章 性モザイクバッタ
第9章 そしてフィールドへ…
おわりに
謝辞
新書版あとがき
参考文献
索引
ISBN:9784334046095
出版社:光文社
判型:新書
ページ数:412ページ
定価:1060円(本体)
発行年月日:2022年05月
2022年05月30日初版1刷発行
2022年06月15日2刷発行 -
「バッタを倒しにアフリカへ」を読み、続けて「バッタを倒すぜアフリカで」を読んだあとに読みました。読む順番的にどうだったかは難しいところですが、前に2冊読んだことが功を奏して、若干、斜め読みでしたが内容は理解できた思います。前2冊と明らかに違うところは、より学術書的であることだと思います。難しさもありますが、箸休めのようなコラムが入れているなど読みやすくなるように工夫していると思います。著者が子どもころ夢中になって読んだ「ファーブル昆虫記」のような昆虫(昆虫の面白さや不思議さ等)を深掘りしていくような楽しさは感じられました。昆虫が大好きな子ども達に読んでもらいたいですね。
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バチクソ面白い。
日本人の大半とは関係ないサバクトビバッタの生態について、筆者が発見した知見と研究者としての生活、そしてサバクトビバッタの生活圏であるモーリタニアでフィールド調査に乗り出すまでの経緯を熱く、かつユーモラスに語る。
グラフやデータを眺める必要は確かにあるし、分析や考察パートを読み解くのは確かに少し大変だが、それ以上に研究者としての熱量の高さがヒシヒシと伝わってくる。研究にあたって着目するポイントの見つけ方は、日常生活でもヒントになるのではないかなと思った。 -
最高に面白かった。「バッタを倒しにアフリカへ」の様に決して読みやすいわけではない。ほとんどがサバクトビバッタの実験内容と結果であり、間にコラムが挟んであるぐらいの本だ。
実際、実験によるグラフ等は老眼の目には優しくないのでスルーしてしまったが、内容は専門的でありながら素人にもとてもわかりやすかった。
バッタの生態の面白さに終始ワクワクしながら読むことができた。
できればウルドさんと友人になり、もっと話が聞きたいぐらい。
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あれ、この本、東海大出版で出ていた(らしい)やつだな、『バッタを倒しに〜』でモーリタニアのフィールド初日の様子はここにかいてある、と説明されていたな、と思い、手に取る。
※その時点では、表紙のキャラクター(!⁇!)には気づいてなかった。
読み始めてから、作者のまえがきに納得。
たしかに本書はこってり味。素人あてに広く浅く読みやすい作風だった『バッタを倒しに〜』とは対照的だった。
でも本人が、疑問、実験の手順を考える、師匠に相談、思いつき、実験、結果、考察、師匠に相談、工夫、実験、考察、と繰り返す様子が本当にたのしそう。
相変わらずユーモアあふれ、チャレンジ精神も旺盛、そして謙虚。
研究者とはタフだなあと思う。
師匠が、前野さんの論文へのライバルの反撃というか屁理屈に対して、「じゃあ次の論文で息の根止めて完全に沈黙させてやるよ」的なことを仰っていてカッコ良かった。
そのライバルとも別に共同研究もしなくもないし、人間関係は良好ぽい。
登場する先行論文がなかなか古くて(19世紀のものまで出る!)、このジャンルの歴史と、生物相手の学問の時間の流れをおもった。
パナマ旅行、面白かった。
バッタの餌やりは大変ですね。
専門的な話が続くけど、論理は明快なので読むのには困らない。
素人の私からみれば、へーー、こういうことを疑問に思うんだ?それで実験しても毎回この結果が出た理由はこれ、それともこれ?とずっと深みに入っていくんだなあ、果てしない…と思った。
余談だけど、これを書くために、スマホの変換に、前野、といれただけで、ウルド浩太郎、とサジェスト欄に出てきてびっくり。すごいなあー。
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3部作の中でこれが1番好きかも
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「バッタを倒しにアフリカへ」の前著。サバクトビバッタが大群になる仕組みを追求した記録。「バッタを倒しにアフリカへ」が万人受けするあっさりラーメンだとしたら、本書は少しとっつきにくいかもしれないけど病みつきになるこってりラーメンとのこと。地道で丹念な研究結果には、敬服しかない。
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「バッタを倒しにアフリカへ」の前日譚?的なかんじ。より研究内容も詳しく書かれている。
おもしろく書いてあるけど、本当のとこは地味で投げ出したくなるような作業が大半なんだろうと思う。
それでも続けられるのは、やっぱり新しい何かを見つけられた時の感動や楽しさがあるからなんだろうな。 -
これ凄く面白くて前半部分をじっくりと読んでしまい、後半が駆け足になってしまって残念Σ(ノд<)図書館本だからしょうがないけれど、余裕のある時にまた借りるか、購入するか悩むところだわ~( ̄~ ̄;)
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アッサリ味の「バッタを倒しにアフリカへ」とは違って本書はコッテリ系だぞ、といきなり読者をビビらせる前書きに、恐る恐る読み始めたが、杞憂だった。
とんこつ味や二郎系は苦手な自分だが、充分楽しく読めた。濃厚だけどクドくないし、臭くない。
むしろ論理や論旨が明快で非常に分かりやすく、とても食べやすかった。いや、読みやすかった。
他の解釈や異論反論が出ないよう、確実に抜け穴を塞ぐ精緻なロジックで実験と考察を重ねていく姿が素敵だ。
まるで、良くできた推理小説を読むような爽快感と納得感がある。 -
なぜその研究が必要になったかの背景、限られた資源・労力で研究を進めるための手法、そしてその結果が分かりやすく書かれており、サバクトビバッタの知識を深めることができ、また研究者の仕事について理解が進んだ。
特にバッタのどの感覚器官が群生化に影響を調べる際には、バッタにマニキュアを塗る手法をとっており、こんな手法もあるのかと感心した。
グラフのサンプル数が非常に多く、調査には膨大な時間と労力がかけられていることが伝わってきて驚いた。(p.202のグラフでは5000個程度の卵長、孵化幼虫の種類、1卵塊あたりの卵数を調べている。)
筆者は次々に新たなことを解明していっており、賞や奨学金も獲得していることから、優れた研究者であることが窺える。一方で、自分は愚直なタイプとの自己評価、成果は周囲の支えによるものだとユーモアを交えて語り、面白く、好感が持てた。 -
大ボリューム。
バッタ博士の研究を、かなり詳細に知ることができる。
深く掘り下げられたデータだから、パッと理解はできないが、
それでも素人を想定して書いてくださっているので、気合を入れればなんとか分かる。
(自分が普段仕事で論文を読むからかもしれないが
個人的には、グラフが非常にわかりやすくて、参考になった。
自分が作成するグラフに取り入れたい要素たくさんあり。
散布図の点の数から、バッタ博士の情熱を感じた。
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「バッタを倒しにアフリカへ」のエピソード1。
バッタを倒しにが面白かったので読んでみました。
バッタ多めです。
特にバッタが好きな訳ではないので、バッタ部分はただ文字を辿って行くだけで全然内容は理解できませんでしたが、モーリタニアに渡るまでや渡った直ぐのエピソードが綴られていて面白かったです。 -
上橋菜穂子の小説『香君』の参考文献に載ってたのと、同じ著者の『バッタを倒しにアフリカへ』も好きだったのとで、読みたくなった本。
難しくて読み飛ばしてしまった部分もあるけど、期待通り面白かった!
何本も論文発表して博士までいってるのはもちろんすごいんだけど、その手段が、一般人の身の回りにもあるような物品を使って(修正液とかマニキュアとかタッパーとか笑)、コツコツ地道にデータを取り続けること(←この根気とバッタへの愛がさすがすぎる)だったりと、意外とアナログな手法があったりするのが、またすごいし面白い。
身近にいる昆虫のことでも、知らないことだらけなんだなぁ。 -
「バッタを倒しにアフリカへ」の前日譚とも言える本です。バッタ研究の始まりからアフリカへ渡るまでのお話しです。
「バッタを倒しにアフリカへ」では、あまり研究内容には触れられず、アフリカ生活のいろいろが書かれましたが、この本は打って変わってバッタ研究の内容が詳しく書かれます。個人的にはこういう感じの方が良いですね。バッタ研究の内容がかなり平易に、しかもかなり詳しく書かれているので、わかりやすくて面白いです。研究も波瀾万丈があって、楽しめます。バッタの卵洗うとか、笑いました。
そして第3巻、「バッタを倒すぜアフリカで」に続きます。もう買ってあります。後は読むだけ。この第3巻ではサバクトビバッタ対策が完成するのでしょうか??? -
文章はクールだけどたぶん熱い男の半生を描いた本。
熱い男といっても、昔から一途にバッタを愛してきたわけじゃなく、戸惑いながらもなんとなくバッタを選んだところ、研究者としてやれてきてしまった(失礼な言い方だけど、いい意味で)というものを感じてリアルでとてもよかった。
単身アフリカに行ったときと数年経ったときとでは、研究者として全然違う感じがして、知り合いでもないけど本当によく頑張ったと思ってうれしかった。
アフリカのバッタによる被害(蝗害)の描写には力がこもっていて、著者の問題意識の高さと訴えが伝わってきた。実際、アフリカの蝗害は凄まじいもので、想像しがたいほどのバッタの群れが襲うんだろうと考えるけれど、それすらも優に超える規模なんだろう。
どこかで講演でもやっていたら話を聞きたいな。 -
この本の研究は、植物の観察だけで植物の大きさ、植物に存在する飛蝗数、飛蝗の植物からの逃げ方の3つをまとめて研究を可能にしていた。
このようにフィールドワークならではの効率的でありながらも研究室ではできない自然を利用した研究のやり方を学べた。
飛蝗の集め方も子供たちに100ウギアでとってきてもらうが、デカイコがチビュ子のバッタをないとり、笑顔で盗品を横流しする。砂漠が修羅場と化したのような実験の失敗話も笑えた。
また、研究者の在り方として、論文を「出版せよ、さもなくば消えよ」の格言のようなプレッシャーがあることは理解していた。しかし、ネットまで活動の幅を広げなければならないなどの大変も存在していた。
アフリカの現実として、オアシスも衝撃だった。
オアシスはきれいなものだと思っていたが、不愉快な水たまりであると紹介されていた。 黒い水の回りに茶色の泥と水をのみに来た、動物の足あとと糞だらけで臭いとあり、自然に存在する水場がきれいなわけがないと考えが改められた。
ガヴァージュという女の子を太らせるため、無理やり食べさせる風習が生活の一部になっていると思った。食べるのを嫌がる女の子の指の間に1cmほどの太さの木のぼうをいれ、握るための棒や食べさせる塾も存在していた。そのような現状だからこそ、窒息死や胃の破裂による死亡例がある。
このようにこの本では、研究メインではなく、ポスドクの大変さやアフリカでの生活が中心の本であった。
著者プロフィール
前野ウルド浩太郎の作品
