鉄の処女: 血も凍る現代思想の総批評 (カッパ・サイエンス)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334060176

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  • ニュー・アカデミズムなどの「現代思想」のスターたちを批評している本です。単なる解説ではなく、著者自身の立場からそれぞれの思想家たちに対する批判がおこなわれています。

    まずとりあげられているのは蓮實重彦です。蓮實の映画批評は攻撃的で積極的なものだと著者は評価します。蓮實は、映画のなかの良いシーンがどのように大衆をとらえたのかを解明するものであり、その意味でひとはいつどのようにしてあるメッセージを受け入れようとするのかを解明する、大衆社会論になっているというのが著者の見方です。ここでは、映画は文学とともに、近代というシステムを円滑に運行させるための「制度」となっていることが明らかになります。

    これに対して著者は、そうした蓮實の映画批評は、現実の人間や社会を解明するのに有効なのかと問いかけています。蓮實はみずからの批評自体が制度に捕らわれるものであることを自覚したうえで、あえて「表層」批評をおこなうと宣言します。しかし映画は、蓮實ほど制度に埋没していることに自覚的でない凡庸な大衆も鑑賞することができるジャンルである以上、批評家の遊戯としてしか成り立たないと著者は批判し、遊戯で構わないというのは裏返しの傲慢ではないのかと追求します。

    こうして著者の蓮實批判は、知識人論というかたちをとることになります。著者は、柄谷行人や浅田彰をはじめ、現代思想の担い手を次々に俎上に上げ、彼らがアポロ的秩序(Aゾーン)とディオニソス的混沌(Bゾーン)のどちらに足場を置いているのかという観点から分類をおこない、システムの外部であるBゾーンからAゾーンを揺るがすことに知識人の役割があるという主張を展開しています。

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