死の科学: 生物の寿命は、どのように決まるのか (カッパ・サイエンス)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334060633

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  •  世の中において「死」の概念が必要となるのは、医療およびそれに適用される法の世界など。しかし社会的に有用な概念であろうとなかろうと誰にでも死は必ず訪れる。「必ず」と言い切れる物事はそれほど多くはないが、今のところ「誰にでも死は必ず訪れる」。それに対する心構え的なものは「老い」との関連でも多くの著書があるが、本書はそうした文系における死ではなく理系から「死」の概念を解りやすく説く。とはいえそこはやはりユニークさがウリの品川先生。御自身の思想を絡めての論述はおもしろい。

     そもそも人間の「死」を定義することは歴史や社会を含めて人間の行動というものを「解釈」することにほぼ等しい。それだけに「死」考えるには多くの分野における考察を必要とする。もちろん人間以外の生物における「生き方」を研究することによって「死」を定義することはできるかと思うが、それをすべて「ヒト」に適用はできないであろう。人間における「死」を考えるには、必然的に「誰がそれを決めるのか」あるいは「その定義に有用性はあるのか」といった思想を語らざるを得ない。

     途中間延びするような難しい話が続く。「べき」論はさておいた事実として「子孫を残すことが生物の本能」としてそれが終わったときに寿命は尽きる、といった身も蓋もない話も多いが、どれも後半に登場する考え方を理解するためには不可欠の内容なので慎重に読んでいきたい。そして話はやはり「死」を踏まえた生き方へと続く。それは決して「諦め」といった悲観的なものではなく、もちろん「死から目を背ける」といった楽観的なものでもない。いわば「限られた時間という資源の使い道」といったことであろうか。

     科学者は「宗教」や「神秘」を排除する傾向が強いが、品川先生やそのお弟子さんである松田先生はこれらに踏み込んだ考察をすることによって、科学あるいは実用的な医学の壁を越えようとしているように思える。専門家からすればこうした傾向を好ましくないように思う人もいるかもしれないが、一般向けの文章には幅広い視点が求められていることは間違いないだろう。最近流行りの「健康本」はそのような要望を受け入れてきた寛容な先生たちによって広められつつある。こうした趣向は我々一般人にとって非常に有益な啓蒙として役立っているのではないだろうか。

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