蒲生邸事件 (カッパ・ノベルス)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334073244

作品紹介・あらすじ

平河町一番ホテルに宿泊していた受験生・尾崎孝史は、二月二十六日未明、ホテル火災に見舞われた。危うく焼死するところを、謎の男に助けられた孝史は、その男とともに昭和十一年二月二十六日にタイムスリップ-雪の降りしきる帝都では、今まさに二・二六事件が起きようとしていた。その日、蒲生邸では蒲生陸軍大将が自決。三宅坂一帯は叛乱軍に占領され…。この叛乱の結末、これからの昭和の戦争への悲惨な歴史を知る孝史たちにできることはないのか。"運命の四日間"に交錯する人々の命運!当代随一のストーリーテラーが時を超えて描く、ミステリー巨編。

感想・レビュー・書評

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  •  予備校受験の為上京した尾崎孝史は、滞在先のホテルで火災に遭遇。宿泊客の平田次郎に助け出されたが、避難先は過去の東京(蒲生邸)であった。その日は、まさに2・26事件前夜。歴史的大事件が目の前で起こる。現代に戻ることに失敗した孝史はタイムトラベラーであった平田と共に、蒲生邸の使用人として働くも、当主である蒲生憲之陸軍予備役大将は自決。事件性を感じた孝史は、その真相を探るべく動き始める。
     未来を知る孝史は、戦争に向かって歩もうとする日本の歴史的転換期に直面した。変えられるはずのない歴史に対し、何を思い、どう動くのか。

     10数年近く前からの積読。当時は、島田先生の龍臥亭事件と混同しておりました。ようやく読み続けましたが、ハマり方も早かった。
     カバーなどから最初は226事件を舞台としたものかと思いましたが、実はSFモノ。226は単なる舞台背景の一部。ちょっと226について勉強したけど、意味なかった。
     宮部先生の守備範囲の広さは、スゴイですね。ただ、自分の中では小説家ではないと思っています。わたしは、ストーリーテラーだと思っています。勿論、文章の書き方など小説家としても一流ですが。あらためて、ストーリーの面白さを感じました。
     中でも「歴史は変えられるのか!?」タイムトリップものでよくある設問に対し、「歴史の細部は変えられても、大きな流れは変わらない」と平田は力を込める。大事故となった史実を回避させるために行動するも、その事故は避けられたとて、別の同等の事故が発生してしまう。
     つまりは、細かい部分は変えることが出来ても、歴史的に見て大局は変わらないってことだ。人間は神ではなく平々凡々である。そう悟った平田は、導かれるように兵役に就き、硫黄島で戦死する。特殊能力者の苦労は、当人だけしかわからんのでしょうね。最後は普通の人間として終わりたっかたんだろうなぁ。
     ふきも、逃げることが出来たのかもしれないのに、あえて自分の定められた運命を変えようとせず戦乱を生きていく決断したシーンも、宮部先生からのメッセージなのでしょうね。
     最後のふきとの再会シーンは、わたしの小説人生の中でも屈指の名シーンであると思っています。


    <妄想キャスト>
    尾崎孝史:吉沢亮
    平田次郎:大沢たかお
    向田ふき:二階堂ふみ
    蒲生憲之:柳葉敏郎
    蒲生貴之:玉木宏
    蒲生珠子:小柴風花
    蒲生嘉隆:小澤征悦
    鞠江:中谷美紀
    葛城悟郎:吉田鋼太郎
    黒井路子:薬師丸ひろ子

  • 「だが僕はこの時代の人間だ。この時代をつくっている臆病者のひとりだ。そして、臆病者としてこの時代を生き抜く義務がある。これから先何が起ろうと、僕は必ず生き抜いてみせる」

    2022/3/2読了

  • 長かったぁ・・・けど。ほぼ一気読み。
    過去と現代の時間の経過の違いがイマイチだったような気がしないでもない。

  • 「蒲生邸事件」宮部みゆき著、カッパ・ノベルス、1999.01.30
    532p ¥1,000 C0293 (2018.07.30読了)(2018.07.24拝借)(1999.01.23購入)

    【目次】
    第一章 その夜まで
    第二章 蒲生家の人びと
    第三章 事件
    第四章 戒厳令
    第五章 兵に告ぐ
    終章  孝史
    あとがき

    ☆関連図書(既読)
    「昭和史発掘(7)」松本清張著、文芸春秋、1968.10.01
    「昭和史発掘(8)」松本清張著、文芸春秋、1969.03.10
    「昭和史発掘(9)」松本清張著、文芸春秋、1970.02.20
    「昭和史発掘(10)」松本清張著、文芸春秋、1970.08.01
    「昭和史発掘(11)」松本清張著、文芸春秋、1971.02.01
    「昭和史発掘(12)」松本清張著、文芸春秋、1971.12.05
    「昭和史発掘(13)」松本清張著、文芸春秋、1972.10.01
    「妻たちの二・二六事件」澤地久枝著、中公文庫、1975.02.10
    「雪はよごれていた」澤地久枝著、日本放送出版協会、1988.02.20
    「我らが隣人の犯罪」宮部みゆき著、文春文庫、1993.01.10
    「魔術はささやく」宮部みゆき著、新潮文庫、1993.01.25
    「レベル7」宮部みゆき著、新潮文庫、1993.09.25
    「龍は眠る」宮部みゆき著、新潮文庫、1995.02.01
    「本所深川ふしぎ草紙」宮部みゆき著、新潮文庫、1995.09.01
    「火車」宮部みゆき著、新潮文庫、1998.02.01
    「理由」宮部みゆき著、朝日新聞社、1998.06.01
    「地下街の雨」宮部みゆき著、集英社文庫、1998.10.25
    「R.P.G.」宮部みゆき著、集英社文庫、2001.08.25
    「人質カノン」宮部みゆき著、文春文庫、2001.09.10
    「誰か」宮部みゆき著、実業之日本社、2003.11.25
    「名もなき毒」宮部みゆき著、幻冬舎、2006.08.25
    「楽園 上」宮部みゆき著、文芸春秋、2007.08.10
    「楽園 下」宮部みゆき著、文芸春秋、2007.08.10
    「ソロモンの偽証 第Ⅰ部」宮部みゆき著、新潮社、2012.08.25
    「ソロモンの偽証 第Ⅱ部」宮部みゆき著、新潮社、2012.09.20
    「ソロモンの偽証 第Ⅲ部」宮部みゆき著、新潮社、2012.10.10
    「ソロモンの偽証(6)」宮部みゆき著、新潮文庫、2014.11.01
    (「BOOK」データベースより)amazon
    平河町一番ホテルに宿泊していた受験生・尾崎孝史は、二月二十六日未明、ホテル火災に見舞われた。危うく焼死するところを、謎の男に助けられた孝史は、その男とともに昭和十一年二月二十六日にタイムスリップ―雪の降りしきる帝都では、今まさに二・二六事件が起きようとしていた。その日、蒲生邸では蒲生陸軍大将が自決。三宅坂一帯は叛乱軍に占領され…。この叛乱の結末、これからの昭和の戦争への悲惨な歴史を知る孝史たちにできることはないのか。“運命の四日間”に交錯する人々の命運!当代随一のストーリーテラーが時を超えて描く、ミステリー巨編。

  • 2.26事件を元にしたお話。
    タイムトリップした孝史と蒲生邸の人びと
    その時代を背景に物語は進んでいきます。

    最初は戦争の話かと思っていましたが、それだけではない不思議な、でも現実味のあるお話でした。
    昭和の事件のことを書いた著書もあるようなのでそれもぜひ読みたいです。

  • 意識を集中することによって、狙った時代にタイムトリップできるということを受け入れようとするのだがどうにも引っかかり、ウンウンうなりながら最後まで読んだのだが、どうもわたくしには合わなかったようだ。

  • 3.5

  • 読み始めて、全く結末が分からなかった。タイムトリップからの事件が起こり、謎解きが始まる。ボリュームがあり、読みごたえがあった。映像化してほしい。

  • 受験生・孝史は宿泊中のホテルで火事にあい、あやうく命を落としそうになる。

    それを間一髪のところで助けてくれた男・平田が孝史を連れて行った先は・・・。


     昭和11年2月26日。今まさに、2・26事件が始まろうとしていた東京・蒲生邸だった。

    そこで孝史は、当主・蒲生憲之の不可解な「自決」に立ち会うことになり、思いがけず、真相を突き止めていくことになる。


    蒲生憲之の死は本当に「自決」なのか。

    時間旅行者・平田はなぜ敢えてこの時代を選んだのか。

    全く歴史の知識がない孝史が見た、昭和11年の東京とは。


    未来人として何もできない孝史や平田のジレンマは、タイムトラベルものにありがちな、未来を知っていることから生じる驕り、みたいなものは全くない。

    また、未来を知った上で、蒲生邸の人々が選択した生き方は、「今を一生懸命生きる」ことの大事さと、「その時代の人間」としての責任を感じさせる。

    自分は、「今」をひたすらに生きているかな?

    平成に生きる人間としての責任を果たせているかな?

    なんてコトを考えさせられる作品。

  • 2014年7月12日読了。

    主人公である孝史と同じかそれ以上に歴史が
    得意ではない私にとっては、いくつか出てくる
    事件の名前や歴史上の人物の名前が、聞いたことは
    あっても中身を知らないものばかりだったので、
    ちょっとだけ勉強になったりしました(笑)

    「日本の歴史」という大きな背景や時間旅行が
    軸にある為、蒲生邸での事件自体には大きな
    関心を抱けなかったものの、それでも充分に
    楽しめました。

    ただ、孝史の性格が、なんだか好きになれなかったです(*_*;

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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