本の背骨が最後に残る (文芸書・小説)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334100513

作品紹介・あらすじ

その国では、物語を語る者が「本」と呼ばれる。一冊につき、一つの物語。ところが稀に同じ本に異同が生じた時に開かれるのが市井の人々の娯楽、「版重ね」だった。「誤植」を見つけるために正当性をぶつけ合う本と本。互いに目を血走らせるほど必死なのはなぜか。誤植と断じられた者は「焚書」、すなわち業火に焼べられ骨しか残らないからである。表題作他7編収録。要注目の新鋭作家が、凶暴な想像力を解放して紡いだ七つの異界。

感想・レビュー・書評

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  • 超ド級の発想力に酔っちゃう!美しくも醜く、幻想的でも超現実的な世界観が光る #本の背骨が最後に残る

    ■きっと読みたくなるレビュー
    センスいい!いつも思うのですが、斜線堂先生のこの発想力はホント素晴らしい。

    全7作の短編、どれも斜め上からの切り口で、その後の展開も独特。力強くも可憐な筆致で文芸としても上質だし、幻想的な世界観も素敵。それにも関わらず不愉快な描写も強烈で、読んでると脳髄が溶けてくる。

    先生の魅力がたっぷり詰まった短編集です、読むべし!

    〇本の背骨が最後に残る
    本が存在せず、人が代わりとなって物語を紡ぐ世界。話の内容に齟齬が生じると、物語同志が版重ねを行い、生死をかけて正当性を競い合うのだった。

    理解不能さと怖さと美しさのバランスが最高。登場人物の意思の強さがまたカッコ良くて痺れた。

    〇死して屍知る者無し【おすすめ】
    主人公の12歳の少女の物語、人間が年齢を重ねると動物に転化すると家族と話していた。自らは兎になると決めたが、仲の良い少年は驢馬に転化すると決めたらしく…

    女の子の気持ちが可愛くて守ってあげたくなっちゃうけど、実は一番恐ろしい作品でゾワゾワ感がエグかった。

    〇ドッペルイェーガー
    閉じ込められた館、女性は追われていた。狩人が武器を手に近づいてくる。彼女は隠れていたが見つかってしまい…

    大胆で繊細な絶妙なバランスをもってる先生だからこそ書ける作品ではないでしょうか。人間が持つ優しさと怖さの二面性が強烈に伝わってきました。

    〇痛妃婚姻譚
    豪華絢爛な衣装を身につけ舞い踊る美しい女性と、彼女を華やかにする絢爛師の男性の物語。その舞踏会は、何やら特殊は事情があるようで…

    現代の社会問題、自分を売る若い女性の姿と重なってしまって読んでて悲しい。二人を応援したくなるも、いつも端から見てるだけの自分が情けなくなった。

    〇『金魚姫の物語』
    体の周りに常に雨が降り続けるという運命を背負ってしまった女性の物語。

    いつも病や経済状況によって弱い立場の人たちを慮っているつもりでいますが、果たしてそれは本当の優しさなのかと考えさせられる作品。

    〇デウス・エクス・セラピー 【超おすすめ】
    躁病のため短期療養地に送られている女性。その途中、未来が見えるという男性から、療養地へ行くと虐殺されてしまうと忠告される。病気が良くなると信じていたのだが…

    超推し、おもろい!この展開と真相、そして胸糞悪さは一級品です。なんかもう人間の考えることの醜さに打ち震えました。最低ぶりが最高です。

    〇本は背骨が最初に形成る【おすすめ】
    第一作「本の背骨が最後に残る」の前日譚。

    もうやめて…、なんか未来すら辛い…。女が美に執着してしまったり、男が金に溺れてしまうような、人間の醜くなる瞬間を垣間見たような気がしました。

    ■ぜっさん推しポイント
    妄想力があまりに狂暴。正直イッちゃってる一冊です。

    かつて若かりし頃、漫画家である高橋留美子先生の『うる星やつら』を初めて読んだ時のような感覚。もちろん内容は全然違うけど、いつもとんでもない角度のキャラや物語を紡いできて、さらに可愛さと暴力が入り交ざってるんですよ。天才鬼才とはこういう人なんだと思った記憶があります。

    仕事や人間関係で疲れた方は、ぜひ本作を読んで、あっちの世界にトリップしてください。

  • 「異形コレクション」からの短編集、7編
    akiさんとか本とコさんとか、1Qさんが読まれて絶賛されていた本作品集

    平山夢明さんの「独白するユニバーサル〜」も異形コレクションだったと思いますが、それらと共通する作者の創造した異質な世界

    痛覚を伴う幻想世界
    若手作家(もう中堅かな)と思えない程、妖艶な文章で虚像を描きあげています
    美しいけど 平山さんと同様の薫香の猟奇性

    「痛妃婚姻譚」痛みの伴侶の姫達
    痛みを受けながら美しく華麗に装飾されていく
    好きな男と結ばれたい僅かな希望に強靭に生き
    最期の痛みを男に残した悲哀

    よろしゅうございました

    • おびのりさん
      mihiroさん、コメントありがとうございますなんか久しぶりの世界観で、よろしゅうございました笑
      レビューお待ちしてます
      mihiroさん、コメントありがとうございますなんか久しぶりの世界観で、よろしゅうございました笑
      レビューお待ちしてます
      2024/08/17
    • おびのりさん
      ウルトラさん、甘美グロという新しい扉です
      一度お開き下さい
      ウルトラさん、甘美グロという新しい扉です
      一度お開き下さい
      2024/08/17
    • おびのりさん
      TOP of henntai のゆっきー降臨
      若い子は夏は忙しいからね
      実生活では、普通の人に擬態しておくのよ
      そして ゆっくり hennt...
      TOP of henntai のゆっきー降臨
      若い子は夏は忙しいからね
      実生活では、普通の人に擬態しておくのよ
      そして ゆっくり henntaiに変身してお楽しみください
      2024/08/17
  •  こんなタイプの小説初めてー! 幻想ミステリー? ホラー? SF? そんな枠組など軽々と超越する世界観です!
     「衝撃の度合い」だと、『ハンチバック』と同等くらいのインパクト! (※ミステリーの〝結末の衝撃〟という意ではありません。内容そのものです。)

     7話の短編集ですが、どれもが残酷な異界を扱いながら、狂気ではなく甘美な感覚をもたらし、刺激的な内容です。斜線堂有紀さんの想像力と表現力により、このグロテスクと美しさが同居・融合する世界に飲み込まれてしまいます。
     他の読み手の皆さんはどう思うのでしょう? 本作は、著者の読み手への挑発か! 読み手を惑わす悪夢か! それとも甘美な夢か! どれもが当てはまる気がし、そのおぞましさで混乱してしまいました。
     表紙の装画・装丁も、美しさと不気味さが繊細に描かれ、本作の世界観とよくマッチしています。

     全編を通じて、人間の本性、欲望、偽善、それらの境界線‥、いろいろと考えさせられたものの、自分の中では「残虐+甘美=賛辞」とはなり難かったです。ただ、新たな衝撃的な作品との出逢いという点で、大きな収穫を得たことも事実です。

     おそらく読後の感想は、相性、嗜好、得手不得手もあり、完全二分と思われますが、ブク友の皆さんのレビューに注目したいと思います。

  • うわあぁぁぁぁぁ…!

    なんだこの世界観は!?

    恐怖、痛み、残酷、悲しみ、そして美しさ…
    これらの感情が七篇の短編に描かれている


    その国では、物語を語る者が「本」と呼ばれる
    ところが稀に同じ本に異同が生じ、そこで開かれるのが「版重ね」だ
    どちらかの「誤植」を見つけるために各々の正当性をぶつけ合う本と本

    これが表題作の『本の背骨が最後に残る』なのだが、いきなり凄い世界観の作品から始まる


    『死して屍知る者無し』では、人間は必ず動物に転化するという世界へ
    兎、驢馬、山羊、豚…
    転化しようとしているそのときに知る真実は…


    二編を読み終えて読む手がとまりません!
    どんどん行ってみよー!


    『ドッペルイェーガー』では狩られる恐怖に、痛めつけられる恐怖に「やめて!やめて!助けて!助けてーっ!いやだぁあああああ!!!」と絶叫しそうになる


    『痛妃婚姻譚』は他人の痛みを肩代わりし美しく踊る女性の話
    美しく悲しいラストに涙する
    (これが一番好きです)


    ここまで読んでこの世界観から抜け出すことができなくなっています!
    次は!次は!と欲している自分がいます!


    『金魚姫の物語』では、突然現れる雨に永遠に閉じ込められる
    雨に憑かれた人間は決して逃れることは出来ずやがて死が訪れる
    その人のところにしか降らない雨は涙に等しいことから「降涙」と呼ばれる


    『デウス・エクス・セラピー』は短期転置療養を行う女性の前に未来が見えるという男が現れて…、まぁ、この話は置いときますかw


    そして、最後に『本は背骨が最初に形成る』は『本の背骨が最後に残る』の前日譚
    最後の最後でまたこの世界観に戻してくれるとはサイコーです!


    読み終えて・・・、この世界観にどっぷりハマり込んでいます
    まだしばらく浸っておきたいです
    とにかく凄いはコレ!

    • 1Q84O1さん
      ユッキーさん、『恋に至る病』読んでましたよね^_^
      私、そっちは未読なのでわかりませんがこっちは良かったですよ(≧∇≦)b
      ユッキーさん、『恋に至る病』読んでましたよね^_^
      私、そっちは未読なのでわかりませんがこっちは良かったですよ(≧∇≦)b
      2024/01/12
    • かなさん
      1Q84O1さん、こんにちは!
      斜線堂有紀さんですね~
      「恋に至る病」を読むつもりでいるのですが、
      なかなか読めずにいました(^-^;...
      1Q84O1さん、こんにちは!
      斜線堂有紀さんですね~
      「恋に至る病」を読むつもりでいるのですが、
      なかなか読めずにいました(^-^;
      この作品、面白そうですね!!
      でも、残念なことに図書館には入ってない…!!
      いつか、でも読んでみたいです♪
      2024/01/15
    • 1Q84O1さん
      かなさん、それは残念です…
      この作品はちょっと読んでみてもらいたかったです!
      また機会がありましたらぜひ!\(^o^)/
      かなさん、それは残念です…
      この作品はちょっと読んでみてもらいたかったです!
      また機会がありましたらぜひ!\(^o^)/
      2024/01/16
  • 斜線堂さん初読み♪
    なんだか装丁が、皆川さんの「開かせていただき光栄です」みたいで素敵\♡︎/
    もちろんイラストは同じ佳嶋さん♡

    7つの物語からなる短編集。

    おぉ〜なんて独特な世界観
    よくこんな物語考えつくな〜!
    ファンタジーなんだけど、不思議で、痛くて、残酷で、、だけど耽美。
    個人的には面白かったけど、きっとはっきり好き嫌い分かれそうな感じ。

    特に印象に残ったのは、

    ◇『痛妃婚姻譚』
    他人の痛みを肩代わりする痛妃と呼ばれる美しい女性達。
    その頂点に立つ柘榴と、彼女を支え愛する孔雀。
    100回頂点に立ち続けると、その役目から解放される。
    自由を夢見た2人の結末は、、。

    ◇『金魚姫の物語』  
    ただひとりをめがけて降る局地的集中豪雨に見舞われた女性の話。
    「降涙」と呼ばれるその雨は、傘をさそうが、水の中にいようが、決して逃れることができない。
    水で腐乱して死に至るまで降り続けるのだ。

    7つどれも奇妙な話だったけど面白かった!

    • 1Q84O1さん
      mihiroさーん

      そうなんですよ
      クセになりそうなこの世界観、良かったです!
      好物です(≧∇≦)
      mihiroさーん

      そうなんですよ
      クセになりそうなこの世界観、良かったです!
      好物です(≧∇≦)
      2024/08/19
    • あいさん
      みひろちゃん、こんにちは(^-^)/

      この作者さん1作読んだけど、本当独特だった(笑)
      もう読まないだろうなぁと思ったけど、みひろ...
      みひろちゃん、こんにちは(^-^)/

      この作者さん1作読んだけど、本当独特だった(笑)
      もう読まないだろうなぁと思ったけど、みひろちゃんのレビューを読むと心が揺れちゃうな(〃∀〃)ゞ
      2024/08/22
    • mihiroさん
      あいちゃーん、こちらでも♡♡
      やっぱり他の作品も独特なんだ〜!
      もう読まないと思ってだんだね〜ゞ(≧ε≦*) 爆笑
      それはそれで気になるな〜...
      あいちゃーん、こちらでも♡♡
      やっぱり他の作品も独特なんだ〜!
      もう読まないと思ってだんだね〜ゞ(≧ε≦*) 爆笑
      それはそれで気になるな〜(*≧∀≦*)
      独特すぎてたまに読むのがいい感じだと思うから、また忘れた頃に他のも読んでみる〜笑( ー̀֊ー́)و♡
      2024/08/22
  • 斜線堂作品、絶対的に好きだ!唯一無二の世界観。誰でも持っている、人間の残酷さを楽しむ性癖、そして女性を美の象徴として捉えたホラー&SFを楽しめた。『本の背骨が最後に残る』は主人公は「本」。版を重ねるに従い誤植や意にそぐわない本は燃やされる運命に。「本」VS「本」の物語の競い合い。燃やされて残るのは本の背骨になる。『金魚姫の物語』では、自分にだけ雨が降り続け、体が徐々にふやけて朽ちていく。主人公の女性をモデルに心的描写を描いていく残酷な作品。全作品で斜線堂有紀の想像力により莫大な破壊力を堪能できます。⑤↑

  • 表題作を含む7つの短編集。

    どれも強烈なほどにエグい。
    けれどもそれぞれの物語の完成度は高くて、悍ましく感じるのに読むのをやめられない。
    この世界観の表現はできない。
    嗜虐性の極みだけが伝わってくる。

    ○本の背骨が最後に残る
    ○死して屍知る者無し
    ○ドッペルイェーガー
    ○痛妃婚姻譚
    ○金魚姫の物語
    ○デウス・エクス・セラピー
    ○本は背骨が最初に形成る



  • 7篇の短編集
    どの話も不思議で絢爛甘美なのに、苦痛が、血が、悲鳴が付き纏う。凶暴で救いのない世界にあって、主人公達は不気味でありながらどこまでも美しい。

    特に良かったのは
    「本の背骨が最後に残る」は、版重ねの残忍さは恐ろしいが十の語りに引き込まれてしまう。

    「痛妃婚姻譚 」は、どこまでもやるせない仕組みの中にあって、気高く美しい石榴と尽くす孔雀に、どうか救いがあるように。と思ってしまう。

    「デウス・エクス・セラピー」は、ただ虚無感、無力感を感じてしまう。

    すごく好き嫌いが別れそうだけど、この世界観は抜け出せなくなる。

  • 斜線堂有紀|note
    https://note.com/syasendou/

    斜線堂有紀(@syasendou_you_ki) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/syasendou_you_ki/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D

    「佳嶋」KASHIMA illustration art works - 佳嶋 KASHIMA Illustration art works
    https://echode.jimdofree.com/

    本の背骨が最後に残る 斜線堂有紀 | フィクション、文芸 | 光文社
    https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334100513

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ◆残酷さの中にきらめき[評]石堂藍(ミステリー評論)
      <書評>『本の背骨が最後に残る』斜線堂有紀 著:東京新聞 TOKYO Web
      http...
      ◆残酷さの中にきらめき[評]石堂藍(ミステリー評論)
      <書評>『本の背骨が最後に残る』斜線堂有紀 著:東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tokyo-np.co.jp/article/292149?rct=shohyo
      2023/11/27
  • 背骨に鳥肌の一冊。

    七話からなる、超異色の異世界の物語は変な例えだけれど、肌を飛び越えて背骨に鳥肌でちゃったような世界観。

    ざわざわ見事に絡めとられてしまった。

    紙の代わりに選ばれた人間が本として物語を語り継ぎ、正しき者だけが残る世界を筆頭に死や痛みの世界が心と目を突き刺していく。

    いっそのこと残酷グロだけだったなら潔く本を閉じられるのに。
    そうは本が許さない。

    人が心の奥底に秘めているかもしれない願望、残酷や痛みさえも耽美に昇華させ、仄かなせつなささえも漂わせるなんて。

    思わず本の背を指でなぞらずにいられない読後感。

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著者プロフィール

2016年、『キネマ探偵カレイドミステリー』で第23回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞してデビュー。楽園とは探偵の不在なり』『恋に至る病』『コールミー・バイ・ノーネーム』ほか著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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