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Amazon.co.jp ・本 (276ページ) / ISBN・EAN: 9784334101398
作品紹介・あらすじ
大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。ある日、バイト中に話しかけてきた大阪弁の女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗ったがー―「違う羽の鳥」 失業中で家に籠もりがちな恭一。ある日小一の息子・隼が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた旧一万円札を持っていた。近隣の一軒家に住む老人にもらったというそれをたばこ代に使ってしまった恭一だがー―鮮烈なる”犯罪”小説全6話
みんなの感想まとめ
コロナ禍を背景にした短編作品集で、罪のテーマが巧みに描かれています。各篇は独立しており、さまざまな人間模様や心理が展開される中、特に「ロマンス☆」や「憐光」、「特別縁故者」といった物語が印象的です。登...
感想・レビュー・書評
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タイトル『ツミデミック』と表紙の赤を背景とした横向きに咲く菊に強いメッセージを感じたため、この作品世界に入ることを少し躊躇った。それでも、直木賞受賞作である一穂チミさんの作品を読みたいという思いが膨らみ、作品世界に入っていった。私にとって3冊目の一穂さんの作品。そして直木賞受賞作。本作品は、6編からなる短編集。作品の背景には、コロナ禍を連想させる感染症が広がっている状況が描かれている。各タイトルは『違う羽の鳥』『ロマンス』『憐光』『特別縁故者』『祝福の歌』『さざなみドライブ』それぞれの作品に独特の作品世界があり、登場人物について想像を膨らませながら入り込んでいく感覚があった。これも、一穂さんの丁寧で繊細な描写と個性的な登場人物によるものなのだろうな。
『違う羽の鳥』の中心人物は及川優斗。物語は、優斗が夜の街で飲食店のビラ配りをしているシーンから始まる。そのような中、いきなり女性から声をかけられる。その女性は、金髪に赤いトレンチコート、ハイヒールといった装い。ビラ配りの後に、飲み直そうと誘われる。いきなりの展開に驚く優斗。この先の展開は想像できないが、この女性の存在が優斗に何かの影響を与えるのだろうなと想像しながら読み進める。そして、女性の知っている店で飲み直す二人。そこで飲みながら、互いのことを訊き合う。及川優斗は20歳、大学を1年で中退し、掛け持ちでバイトをしながら暮らしていた。女性は「井上なぎさ」と名乗る。その名前を聞いた優斗は動揺した様子を見せる。優斗の過去に「井上なぎさ」という存在が、何か関係あるのだろうなと思いつつ、女性の姿に見覚えはないのに名前に引っかかっていることが気になった。二人の会話が展開していく中で、「井上なぎさ」の口から出る「踏切ババア」の話。何が話されているのか分からなくなってくる。そのような中、優斗が引っかかっていた「井上なぎさ」という同級生の話が明らかになる。井上なぎさは中学3年生の時に、線路に飛び込んで死んだという。衝撃的な展開と実在する「井上なぎさ」を名乗る人物の関係に戸惑いながら、この先の展開を気にしながら読み進めていく。
物語は、中学3年の回想シーンへと展開。優斗となぎさの二人は、生徒会役員を決める選挙管理委員会に所属し、選挙が終わった放課後にポスター剥がしをしていた。そこからさらに、二人の会話のシーンが続く。内容はツイッターや裏アカのこと。なぎさはツイッターでは、検索をしていた。その内容は、「家出少女」や「神待ち」。そのことに困惑する優斗。でも、なぎさが検索していた理由について、優斗は気にはなったが訊けなかった。二人のこの関係や状況では、訊けないだろうなと思う。優斗は、スマホで気になっていた「家出少女」を検索をする。そこには、そのハッシュタグに関連するアカウントとリプライが出てくる。中学生が、このような状況に入っていくことに怖さと不安を感じながら、読み進めていく。
さらに物語は進み、夏休みに。優斗は、思わぬ行動に出る。それは、家出少女を装うアカウントを作って、虚偽の訴えを書き込む。それに反応する人たち。そういった世界に怖さと虚しさを感じながらも読み進めていく。そして、夏休み後の9月「井上なぎさ」が亡くなったことが分かる。その内容は、自ら線路に侵入し、列車に轢かれたということ。だけれど、なぎさがとった行動の理由は明らかになっていない。そのことが、暗く悲しい雰囲気を感じさせる。
さらに話は進み、12月初め。井上なぎさが亡くなった場所に、深夜「踏切ババア」と称されるおばさんが現れるという噂が流れる。さらに、そのおばさんが、線路になぎさを引きずりこんだという噂まで。この先の展開で明らかになるのだろうと思いつつも、暗い気持ちで読み進めていく。
そのような中、優斗は、塾の帰りに、友人から噂の場所に行ってみようと誘われ、一緒に行く。そこで見かける女の人。井上なぎさが亡くなった場所に電車がスピードを上げて通過していく。読みながら暗い気持ちになる。そこから、新たな展開になる。先ほどの女性が、優斗たちに声をかけてくる。その内容は、娘がここで死んだこと、幽霊になって出てくるという話があること、そして、そうであるなら自分が話をしたいということ。その女性は井上なぎさの母だった。衝撃を受ける。しかし、この話も後の伏線となっていて、さらに驚くことになる。
話は現在に戻る。優斗の話を聞いていた「井上なぎさ」を名乗る人物が話をする。その内容は、今まで抱いていたなぎさの母親の姿を、意外な方向へと導いていく。それは、母親によるなぎさへの虐待。そして、その虐待への反抗から起こしたことが、あの日の電車に轢かれた出来事へと意外な形で繋がっていく。さらに、井上なぎさと「井上なぎさ」と名乗る人物とのことも語り始める。本当のことは何だろうかと判然としないまま関心は高まっていく。ラストは、優斗の視点で進む。その展開にも想像が広がり、不思議な感覚でこの物語を読了した。
『ロマンス』の中心人物は百合。その他の人物は、4歳の娘のさゆみと夫の雄大。百合は街で偶然見かけた宅配の男性に気持ちが高鳴る。まあ、それはありうるかもしれないが、子供と夫と生活している百合が、気持ちが高ぶるのには、相応の背景があった。夫との関係の希薄さや衝突である。よくあることかもしれないな。最も身近にいる人が、一番のストレスと感じるようになってしまったら、他のものに目が行くということだろう。しかし、それだけでは終わらないのが、一穂さんの構成力の凄さと思う。読みながら怖さを感じつつ、物語の世界に引き込まれていく。それは、百合が繰り返し、宅配を頼むようになってから起こる。そんな展開があるのかと思わず唸る。違う宅配の男性が、勘違いしてしまうという展開。つまり、百合が焦がれている宅配の男性を求めて、宅配を頼んでいるうちに、違う宅配の男性が百合の気持ちが向いていると思ってしまったのだ。その大きな勘違いが、とんでもないラストを迎える。衝撃が走るほどの。人の欲望の怖さを感じた。
『憐光』の中心人物は松本唯。だが、唯は15年前の高校生の時に亡くなっていて、幽霊といった存在で物語に登場する。他の人物からは見えていない存在として、物語が進んでいく。このような展開が初めてだった私は、興味深く読むことができた。いろいろなパターンで物語を作る一穂さんの魅力があるのだろうな。重要な人物として、唯と高校の同級生であり親友だった登島つばさ。そして、当時の高校の先生、杉田。杉田とつばさは、15年ぶりに再開する。それは、亡くなった唯の骨が見つかったため。唯は、大雨による災害で不明となり、死体が見つかっていなかったということだった。
読み進めていくうちに、つばさや杉田の過去が少しずつ明らかになり、この話でも恐怖を感じるようになる。自分中心の醜さが表に出ていく。普段は見えない部分が明らかになる時に、その人の屈折した思いから生み出される怖さも出てくるな。一穂さんの表現の凄みを感じる。高校当時、つばさは恵まれていない家庭環境の中にいて、大学に行くことを断念せざるを得なかった。そういう環境にいたら、自分の思い通りに進路を選んでいく同級生を疎ましくも思うかもな。それが親友だったら、尚更かもしれないな。さらに、唯は杉田と恋仲にあった。生徒と先生という関係を超えて。そして、唯は妊娠をした。これらの話を幽霊の唯が徐々に思い出していく展開に、唯と一緒に胸が苦しくなっていく感覚になった。そして、あの大雨の日のシーンが描かれていく。読みながら想定はしていたけれど、残酷だなと思う。唯にとって、信頼していたつばさにお金を奪われて挙句に突き飛ばされ、その後恋していた杉田にも助けてもらえずに。唯目線の悲痛と、つばさと杉田目線の自分本意が交錯する。なんともやりきれない気持ちになった。
『特別縁故者』の中心人物は、失職中の恭一。妻、朋子と息子の隼の3人で暮らしている。恭一は料理人で割烹の店で働いていた。そのよう中、新型コロナウィルス感染症が発生し、制限のある生活が始まる。現実と重なる。あの頃は、閉塞感と恐怖が渦巻いていたな。恭一が勤めていた割烹も利益が減り、恭一は退職を余儀なくされる。無念な心情が伝わる。本人はもちろんのこと、家族にとっても打撃は大きく、夫婦はギクシャクとした関係になる。朋子は2つの職場を掛け持ち、家族のために懸命に働いていた。隼も子供ながらに、そんな家族の状況を勘付いていて、切ない。
ある日、隼は一人で外で遊んでいると、ボールが家に入ってしまう。そこから、この物語が大きく展開していく。その家には一人暮らしの年寄りの男性、佐竹が暮らしていた。そこで、隼は話したり肩を揉んだりして触れ合い、小遣いをもらう。佐竹にしてみては、嬉しいことだったのかもしれないな。しかし、恭一は打算的な考えをもつ。それは、佐竹に気に入られるようにして、お金をもらいたいという欲だった。今の恭一なら考えるかもしれない、残念だけれど。そこで、かつて調理師として働いていた経験を活かして、調理した物を佐竹に届けることを思いつく。危ない考え方だなと思うが、手作りのものを届けることはいいなとも思う。実際、佐竹は喜んだ。そこで、恭一は今の苦しい状況を話す。このことが、後の展開につながっていく。
この後、恭一は佐竹の依頼に応えて、一品を届けたり、弁当の買い出しを手伝ったりした。恭一の隠れた思いを佐竹は気付かぬまま、関係はつながっていく。そこから、朋子の病気や借金が明らかになり、新たな局面を迎える。そして、ついに恭一は佐竹に借金を申し出る。しかし、佐竹は断る。当然だろうなとも思う。いわば他人なのだから。ましてや恭一は働く気持ちを失っていることを佐竹に伝えたのだから。この先の展開が読めないなと逆に興味を持ちながら読み進めた。最後は、胸にグッとくる温かい気持ちになる。人とのつながりの温もりを感じながら余韻に浸った。
『祝福の歌』の中心人物は、達郎。娘の菜花、高校2年生。妻、美津子。達朗の母。そして、母が住むマンションの隣人、近藤夫婦。この物語は、さまざまな人物の背景が絡み合って、一つの物語を作る。一穂さんの人物設定や構成に驚く。私にとって、胸を打つ心にのこる物語となった。それぞれの人物背景が徐々に明らかになっていき、ドキドキが高まっていく感覚になった。先の展開が知りたい、関心が高まる、そんな状態になった。これは、物語の世界に完全に引き込まれた状態なのだろうなと思う。そして、このタイトルの『祝福の歌』の意味が最後にわかり、胸が熱くなった。この物語に出会えてよかったなと思った。私にとって、自分がこの世に生まれてきたことを考えさせられる物語となった。
『さざなみドライブ』の人物はアカウント名で登場する。今までにない展開に不穏な空気が漂い、胸のざわつきを感じる。5人のアカウント名は「キュウリ大嫌い」「マリーゴールド」「あずき金時」「毛糸モス」「動物園の冬」。そして、やはり重い展開になっていく。5人はSNSでやりとりして、自殺を目的に集まっていた他人。感染症が蔓延して、閉塞感の中にいるという設定が現実と重なり、重苦しい感じが続く。「動物園の冬」が運転する車内で、それぞれの身の上や自殺の理由が明らかになる。当事者でなければわからないものばかりではあるが、死を決意するに至った理由は、それぞれ違う。そうこうしているうちに自殺の目的地に車が着く。そこには先着の車が一台。ここからは、怒涛の展開で驚きの連続となる。一穂さんの構成や描写に引き込まれていく。物語の世界に入り込んでいく。知らない者同士が集まることへの怖さも感じた。同時に、自殺を防ごうとする人たちの親身で献身的な姿にも触れた。ラストは、タイトルである『さざなみドライブ』を連想させるシーンで終わる。重苦しい展開の中で、未来への希望を感じさせる気持ちが膨らんだ。
読み応えのある作品だった。第171回直木賞受賞作品である6作品が掲載されている本作品を読了した。一穂さんの人物設定や構成、表現の工夫が随所にあり、重たい内容も読み応えがあり、私の中の想像世界が広がった。また、ぜひ一穂さんの作品を読んでみたい。 -
『あん時の感染者数、覚えてるか?一日千人もいなかった。たった千人にビビりまくって、監視し合って…そのうち、一日何万人って発表されても、社会回せ、経済回せって無視するようになるのにさ』
2020年に突如世界を襲ったコロナ禍。同年4月にはこの国では誰も経験したことのない”緊急事態宣言”が出されました。マスクが品薄となり、ネット上では高額で取りされ、さらにはトイレットペーパーが店頭から消えるというわけのわからない展開に誰もが右往左往した時代がありました。
マスクの正しい着用を互いに監視し、垂れるほどのアルコールを手に除菌し、そして人と人が接すること自体をリスクと考えたあの日々。今思い返してみても一体あれは何だったのだろう?一体何の意味があったのだろう?そして、一体何が正解だったのだろう?そんな思いだけが残りました。
とは言え、コロナ禍なんてもうウンザリ、聞きたくもないというのが多くの方々の正直な気持ちだと思います。あんな時代はとっとと忘れて、ようやく戻ってきた平穏な日常を楽しみたい、それは私も全く同感です。しかし、過ぎ去ったからこそ冷静に見れる、そういった視点はあると思います。過ぎ去ったからこそ、未来に同じ過ちを繰り返さないためにも、コロナ禍の世を第三者的に振り返ってみる。この姿勢はあるべきなのではないかと思います。
さてここに、そんな『パンデミック』の世を描いた物語があります。世に出た時期の違いから結果として『パンデミック』の初期から後期のさまざまな時代を背景に描き出されたこの作品。そんな背景にさまざまな”犯罪”が止まることなく描かれていくこの作品。そしてそれは、『先が見えない生活』の中に、それぞれの日常を生きた人たちを見る物語です。
『お食事お決まりですかあ』、『居酒屋お探しですかあ』と、繁華街でビラを配るのは主人公の及川優斗。『新しい感染症が流行り始め、繁華街の客足は明らかに鈍っていた』という中に『先が見えない生活』を送る優斗。そんな時、『ふと、視線を感じた』優斗の元に『ひょっとして、関西の人?』と『金髪、真っ赤なトレンチコート…』という『攻撃力が高そうな女』が近づいてきました。『案内してくれる?』と話が進む中に『仕事、何時まで?』と女に訊かれた優斗が『十時』と答えると、『十時過ぎたらこの辺で待っとったらええ?』と返す女は『「ほな決まり」と優斗の腰の後ろに柔らかく指を沿わせ』ます。『正直、半信半疑だった』優斗でしたが、『バイトを終え、裏口から店を出ると女は本当に待ってい』ました。『わたしの知ってる店でええ?』と訊く女は、『お給料巻き上げたりせえへんから安心して』と誘います。『東京に出てきて、いや人生で初めての逆ナンだった』という中に『女に連れられるまま小さなバーに入った』優斗は『カウンターバーのいちばん奥に通され』ます。名前を訊かれ、『大学生?』、『ずるずる行かんくなって一年で中退した』と会話する二人。『自分も名前教えてや』、『平仮名でなぎさ』、『名字は?』、『井上』と女の名前を知った優斗でしたが、『井上なぎさ』と、『フルネームを口に出さず唱える』と『手が強張』ります。『その名前を知っている』と『まじまじと女の顔を見つめ』る優斗。『どしたん?』、『いや、何でもない』という会話の中に、『特に変わった名前でもない。単なる同姓同名や、と自分に言い聞かせる』優斗は、『だって、井上なぎさは』と動揺を隠せません。そんな優斗が『なぎさちゃんは何歳さなん』と訊くも『やや、そんなん訊かんとってよ』とはぐらかされます。今度は『ほんなら、何してる人?』と訊くと『愛人』と『直球すぎる回答』を返す なぎさ。『愛人歴はどんくらい?』、 『東京来てからとおんなじくらい』と会話する先に今度は『都市伝説みたいなやつやねんけど、知ってる?』と『唐突になぎさが尋ね』ます。『K駅におる「踏切ババア」』と続ける なぎさに『背中のうぶ毛がぞぞっと逆立』つ優斗は『まさか。何やこいつは。誰や』と思います。そして、『どういうつもりや』と返す優斗は『俺は、井上なぎさを知ってる』、『ふざけんな』と『カウンターにどんっと拳を押しつけ』ます。『井上なぎさは死んだんや、線路に飛び込んで。お前の言うてる「踏切ババア」って、井上のお母さんやないか。ネタにしてええことちゃうぞ』と思いをぶつける優斗は『最初から知ってて俺に声かけてきたんか?… あれは、俺と井上しか知らんはずや』と戸惑います。そんな中に『二階で、落ち着いて話そ?』と場所を変える なぎさ。『うちら、どこで知り合うたっけ?』と訊く なぎさに『中三の、選挙管理委員会』と答える優斗。『優斗くんとどんな話したっけ?』と続けて訊く なぎさに『裏アカ』、『ー からの、「#家出少女」』と答える優斗に『…ああ』と『ショットグラスを一気に空け』た なぎさ。そんな なぎさを見る中に中学時代を振り返る優斗の過去に隠された井上なぎさの秘密が読者の前に明らかにされていきます…という最初の短編〈違う羽の鳥〉。過去に隠されたまさかの出来事の先にミステリー?を見る好編でした。
“2023年11月22日に刊行された一穂ミチさんの最新作であるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、2023年9月に青山美智子さん「リカバリー・カバヒコ」、10月に原田ひ香さん「喫茶おじさん」、そして今月初にも小川糸さん「椿ノ恋文」…と、私に深い感動を与えてくださる作家さんの新作を発売日に一気読みするということを積極的に行ってきました。そんな中に、2022年の本屋大賞で第3位にランクインした代表作「スモールワールズ」で有名な一穂ミチさんの新作が出ることを知り、一年ぶりに一穂さんの作品に是非触れてみたいと思う中、発売日早々この作品を手にしました。
そんなこの作品は、内容紹介にこんな風にうたわれています。
“先の見えない禍にのまれた人生は、思いもよらない場所に辿り着く。稀代のストーリーテラーによる心揺さぶる全6話”
“思いもよらない場所”という記述がまさかの展開を予想させるこの作品は「小説宝石」に不定期に掲載された、それぞれに全く関係性を持たない6つの短編が収録された短編集となっています。
そんな作品は「小説宝石」への掲載時期の関係もあってかコロナ禍の描写が登場します。コロナ禍を扱った作品と言えば島本理生さん「2020年の恋人たち」、寺地はるなさん「川のほとりに立つ者は」、そして瀬尾まいこさん「私たちの世代は」などがあります。2020年に突如世界を襲ったコロナ禍。人と人との接触が悪いこととされた極めて特殊だったあの時代は、一方でその時代を写しとり小説に仕上げる作家さんにとってもそれをないものと扱う方が違和感があったのだろうと思います。そんなコロナ禍の日常が舞台となるこの作品では、コロナ禍で生活が困窮していく人たちの姿が描かれるのが印象的です。幾つか抜き出してみましょう。
『新しいバイト探さな、飲食以外で何か…。 先が見えない生活は今に始まったことでもないが、未知の病という、去年まで思ってもみなかった不確定要素が不安に拍車をかけていた』
コロナ禍は特に飲食業界に大きな傷跡を残しましたが、その末端でアルバイトをしている人たちには影響がダイレクトに出ていたことがよくわかります。それは、お子さんを保育園に預けていらっしゃる家庭にも大きな影響を与えました。
『再開したって、いつまた休園になるかわかんないじゃん。先生が感染した、園の子が感染したってきりないし、預かり保育の状況だって読めないよ』。
リアルな夫婦の会話がそこにあります。自らの感染、お子さんの感染だけじゃなく、保育園の先生や他のお子さんの感染が自身の生活に大きな影響を及ぼすという異常事態。本当に大変な時代だったと改めて思います。そんなこの作品にはコロナ禍の中での状況の変化も描かれます。
『確かに俺はルールを破ったよ…でも、あそこまで叩かれるようなことだったのか?中傷の手紙が届いて、殺害予告までされて…あん時の感染者数、覚えてるか?一日千人もいなかった。たった千人にビビりまくって、監視し合ってアホらしいにも程があんだろ。そのうち、一日何万人って発表されても、社会回せ、経済回せって無視するようになるのにさ』
2020年4月の緊急事態宣言に、この国はどうなるのかと誰もが恐れた時代がありました。一穂さんが書かれる通り、そこに訪れたまさしく監視社会の到来はそこから少しでも逸脱する者を厳しく貶めていったのは事実だと思います。そして、時が経ち、当時貶められた人たちのそれからには誰も興味を示さなくなった一方で、その人たちの人生は続いているという現実があります。そこに何があったのか、この作品では、同じようにコロナ禍を描いた他の作品には描かれていない部分が多々描かれています。当時のリアルな空気感を捉えていく物語は、過ぎ去った過去だからこそ第三者的に見ることができるとも言えます。振り返ればさまざまな過ちが浮かび上がる私たちのあの三年間。コロナ禍は過去になって良かったと思いますが、その総括は私たちそれぞれがきちんと成すべきことなのではないか、特に〈さざなみドライブ〉を読んでそのように強く感じました。
では、そんなこの作品について6つの短編から私が気に入った三編をご紹介しましょう。
・〈ロマンス☆〉: 『ママ、自転車くる』という さゆみの声に顔を上げたのは主人公の百合。その前を『颯爽』と『ものの数秒』で過ぎていく男を見て『夢を見ているのかと思うほど、現実離れした容貌』と思う百合は『Meets Deli』と書かれた『バックパック』を見ます。『ステイホーム』で普及した『フードデリバリー』の『Meets Deli』。場面は変わり、同じマンションの耕平ママと『Meets Deli』の『イケメンの配達員』のことを話題にする中に『初回千五百円オフクーポン』のことを教えてもらいます。そして『Meets Deli』を利用し始めた百合は『イケメンの配達員』がくることを『ガチャ』と考えていきます。
・〈憐光〉: 『あたしは、気づいたら松の木の下にいた』というのは主人公の松本唯。『高校の教職員用駐車場だと気づ』いた唯は『全員マスクしてる』という生徒たちの姿に『違和感』を感じます。そんな中に『ちりりんと軽やかなベルの音が』します。『うそ、間に合わない』という『次の瞬間、痛みでも衝撃でもなく、かたちのないものが身体の中をさあっと通り抜け』ていきました。『そうだ、あたし、死んでた』と『唐突に理解』する唯。『天国でも地獄でもなく、十五年ぶりの地元にやってきた』という唯は『とりあえず帰ろう』と自宅へと向かいます。そんな中に親友だった つばさと担任だった杉田に遭遇した唯…。
・〈さざなみドライブ〉: 『あ、ひょっとして、ツィッターの…?』、『初めまして。わたし、マリーゴールドです…』、『で、あとひとり…』と『ひと気』のない『郊外の駅』に集まった五人はミニバンに乗り込みます。そして、自己紹介をする中、『ああだこうだ話してんの、おかしいですよね』、『今から死ぬのに』という一人の言葉で『車内の空気が急に重たくな』りました。『一緒に自殺をするということ』を目的に『ツイッター上でつながり、集まった』『年齢も属性もばらばらな』面々。『寂れた駅から、さらに人が来ない山中の林道を目指して走る車のトランクには』『練炭と七輪が積んであ』ります。そして…。
三つの短編を取り上げましたが、他の短編含めこの作品はいずれも全く異なるシチュエーションの中に物語が展開していきます。そして、そんな物語には昨今ニュースで取り上げられるさまざまな”犯罪”が登場します。そして、物語の背景にあるのは上記もしたコロナ禍です。
『世界じゅうがパンデミックに陥って、この先どうなるんだろうと不安になればなるほど…』
そんな空気感の一方で”犯罪”は止むことなく続いてきた現実もあります。ニュースに恐怖を感じる私たち、それも一種の『パンデミック』とも言えると思います。そんな中に、この作品の書名を思い出します。「ツミデミック」という奇妙な書名は調べてみてもそういった言葉があるわけではないようです。一方で『ツミ』という言葉と『パンデミック』という言葉が繋がります。
“犯罪”+『パンデミック』= 「ツミデミック」
なるほど、そういうことか、書名の意味に納得する一方で、この作品は表紙から受けるインパクトもとても大きなものがあります。赤地の表紙に大きく描かれた黄色の菊の花。天皇家の御紋章でもある菊には基本的には悪い意味はないようですが、黄色い菊には”破れた心”という意味もあるようです。そう、この作品に蠢く不穏な空気感、そこに展開するさまざまな”犯罪”を匂わせる物語には読む手を止められなくなっていきます。
中学時代に死んだはずの同級生との再会?を描く〈違う羽の鳥〉、息子が臨家の老人から旧一万円札をもらった先にまさかの”犯罪”を見る〈特別縁故者〉、そして十五歳で妊娠した娘と対峙する父親の姿を描く先に自身のまさかの真実を知る〈祝福の歌〉などそれぞれの物語は全く異なる背景のもとに描かれていきます。そして、その先にえっ?という展開が描かれていく物語は、若干強引なストーリー展開を感じさせる部分があるものの一つの読み物としてはとても良くできていると思います。そして、基本的には読後感良い結末を迎えるこの作品。コロナ禍の日常にそれでもなくならない数多の”犯罪”、そしてその背景にある裏事情を描いたこの作品。代表作「スモールワールズ」含め短編にとても相性の良い一穂さん。この作品にはそんな一穂さんの読ませてくれる物語がありました。
『マスクを求める人々が薬局の前に列をなし、転売が横行…今となっては「馬鹿馬鹿しい」のひと言に尽きるが、あの頃は誰もが切実だったのだ』。
三年間にわたって続いたコロナ禍の世を背景に、それでも止まらない”犯罪”の数々を描き出したこの作品。そこには、『パンデミック』ならぬ、まさしく「ツミデミック」な物語が描かれていました。コロナ禍の始まりから終わりまでを一冊に描くこの作品。そんな中にメジャーどころな”犯罪”が重なってもいくこの作品。
“稀代のストーリーテラーによる心揺さぶる全6話”という紹介が伊達ではない、ぐいぐい読ませる物語が詰まった素晴らしい作品でした。-
さてさてさん
お久しぶりですヾ(^▽^)ノ
いつもいいねをありがとうございます!
――毎日TVで感染者数が、日本地図上に表になり表されていま...さてさてさん
お久しぶりですヾ(^▽^)ノ
いつもいいねをありがとうございます!
――毎日TVで感染者数が、日本地図上に表になり表されていました。
我が家は毎年インフルエンザに注意し、マスクを使っていたので、コロナ時にはその残りがありましたが、やはり私が使うもの位はと、手作りにしました。あの頃はそうだったのです。
除菌スプレーは玄関に今でも置いています。
マスクも人ごみにはかかすこと無く、です。コロナ数は落ち着きましたがインフルエンザも流行っているとのこと。
さてさてさん、気を付けて下さいね!
(’-^*)2023/11/25 -
アールグレイさん、こちらこそお久しぶりです。お元気でいらっしゃいますでしょうか?
発売日早々に一気読みするシリーズ企画で一ヶ月に一度程度最...アールグレイさん、こちらこそお久しぶりです。お元気でいらっしゃいますでしょうか?
発売日早々に一気読みするシリーズ企画で一ヶ月に一度程度最新刊を読み続けていますが、書かれた時期の関係でコロナ禍日常のものが本当に多いなあと思います。色々なサイトのレビューを読んでいると、コロナ禍でもそれを出さないで描いて欲しいという声をよく見ます。みなさん、流石に辟易されたのだろうなと思います。やがて時が経つと歴史の授業に登場する未来があるのかもしれませんが、残念ながらまだまだ記憶が鮮明な分、生々しいですね。
なお、それ以上にこの作品では、昨今話題の犯罪が多々登場するのが印象的でした。世の中、コロナ禍であろうがなかろうが犯罪はなくならない、コロナ禍が終わろうが犯罪は人の世が続く限りなくならないのだろうなあと思いました。2023/11/25
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コロナ禍における罪をテーマにした短編作品集。一部好みの作品もあったが、全体的になんだか深みがないというか、いまいち気持ちが乗り切れず読み終える作品が多かった。ライト過ぎるというか。故に読後感は悪くない。
一穂さんの過去作品含め、相性があまり良くないのもあるのかもしれない。あくまでも一個人としての感想として本棚に残す。 ★3.0 -
「ロマンス☆」、「憐光」、「特別縁故者」が印象的だった。
「ロマンス☆」はイケメンのフードデリバリーに妄想し壊れていく主婦の話。自分と同じような人を呼び寄せる感のある、ちょっと怖い話だった
「憐光」は気がつくと校庭に立っていた女子高生の話。自宅周辺で起きた水害や彼氏、友達の真実が段々と分かっていく。真相が分かるに連れ辛くなる
「特別縁故者」は人生を投げかけている元料理人と一人暮らしの老人の話。こんなうまい話は無いだろうと思うのだが、好きな話でした -
一穂ミチさん「ツミデミック」
本作品は第171回直木賞受賞作品。
自分にとって初読みの作家さんでもあり読んでみる事に。
作品は6篇からなる独立短編集。調べてみたら「小説宝石」で各々単独で発表されていた作品と知った。「小説宝石」や「文藝春秋」等の小説本は読んだ事がないため全く知らなかったがこういった作品を発表と同時に読めるという点ではとても興味を惹かれている。今後はそういった小説本も目を通していきたい。
作品の背景はどれも数年間続いたコロナ禍が舞台となっている。
世界中でパンデミックに陥ったウイルス感染に人間の持つ罪の多さを併せて書き上げられたと思われる「ツミデミック」
タイトルは造語だが作者のメッセージがきっと込められているのだろう。このレビューを書いた後で作者の作品に対してのインタビュー等を読んでみたいと思っている。
米澤穂信さんの「満願」を読んだ時と同じような読後感があり、テレビで昔やっていた「世にも奇妙な物語」を観た後の様な読後感。どの篇も少し薄暗くグレーがかった作品に感じられる。全体的に向く方向が一辺倒にならず単独で色んな模様を描かれているのだが、同じ背景で描かれている為読んでいて統一の感情が常にありコロナ禍での一変した生活や窮屈さを思い出させられる。全編面白かった。
ただ文量が各篇50頁弱、全体でも300頁も無いのでもう少し読み応えを期待してしまった。長編とは言わないがもう少し各篇に読み応えが得られればもっと最高だった。
直木賞受賞作品との事だったので手を伸ばした作品、それならば傾向としてもっと長い作品だと勝手に解釈していた為に招いた読後感だと感じる。
作品とは関係ないが「直木賞」という選考自体も統一したものがあるのかないのかよく分からなくなってきている。
受賞前に読んでいれば変な先入観無しで読めただろう作品だったと思った。 -
連作短編集。
「違う羽の鳥」
痛ましい話だけどミステリアス。
死んだのはクラスメイトか、その親友なのか。
「ロマンス☆」
コロナ禍でイケメンの配達員に惹かれミーデリにはまった女性の悲劇。
「燐光」
あまりにも酷い人たちに囲まれていた高校生の少女、唯。死んで幽霊になって自分が死んだ理由を知ってしまう。
「特別
縁故者」
これはいい話でした。職を失った男が独居老人の家で料理をするようになり、そして老人のピンチを危機一髪の機転で助けます。
「祝福の歌」
これもいい話でした。高校の教師の妻、高校生で妊娠した娘を持つ50代の夫、達郎。娘の菜花は子どもを産みたがっていますが相手の男はダメ男。そして達郎の出生の秘密がわかります。明るい話でよかったです。
「さざなみドライブ」
パンデミックの世の中に集まった6人の老若男女はSNSで知り合った自殺志願者たちでした。中には俳優、中一の少女、小説家の僕もいて。これもちょっといい話。
一番よかったのは「祝福の歌」。最初の三篇は悲痛さを強く感じました。
一穂ミチさんは最初に読んだ『スモールワールズ』がやっぱり一番よかったと思います。
この短編集でも、色々と変化球を投げていらっしゃいましたが。-
まことさ〜ん、こんばんは(^-^)/
一穂さんってほんとに、引き出しの多い作家さんですよね〜!
こちらでもそれは感じましたが、私もまことさん...まことさ〜ん、こんばんは(^-^)/
一穂さんってほんとに、引き出しの多い作家さんですよね〜!
こちらでもそれは感じましたが、私もまことさんと同じで「スモールワールズ」が今のところ1番好きです〜( ´꒳`*)人(*´꒳` )2024/03/28 -
mihiroさん、おはようございます♪
やっぱり私も最初に読んだ『スモールワールズ』の衝撃が忘れられません。
この作品はちょっとホラ...mihiroさん、おはようございます♪
やっぱり私も最初に読んだ『スモールワールズ』の衝撃が忘れられません。
この作品はちょっとホラーでしたね。
読了した晩にホラーな夢をみてしまいました(笑)。2024/03/29
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ふわりとした世界観に人間の陰影が描かれる。言葉運びやセリフが美しいミステリー短編集 #ツミデミック
本作はコロナ禍を舞台に、人間の醜さや勝手さ、そして悲哀を描いたミステリー短編集。コロナ社会はあくまでエッセンス程度で、描いているのは人間です。
先生らしいシンプルかつ美しい文章、切り取った場面のセリフのセンスも光ってました。暖かな世界に誘ってくれるのですが、そこは闇側の世界なのが面白いですね。しかも扱ってるテーマとしてはありがちなんですが、物語の運びや切り方に独自性があって、すっかり作品に惹きつけられてしまいました。
私たちは日ごろ、犯罪を犯したり、社会からはみ出るようなことはしないだろうと思って暮らしています。実はそんなことはなく、少しのきっかけで接点が開けてしまうんでしょうね。自らを省みてしまう、恐ろしい物語でした。
■違う羽の鳥
飲食店へのアテンドバイトをする青年が、パパ活女子に出会う。彼女には見覚えがあって…
都会の暗闇と生きづらい世の中を切り取った作品。懐かしい思い出の中にも胸が張り裂けそうな事実がある。人間の内側に潜む不愉快さと、不条理で不公平な世界で生きる若い世代の無念さが伝わってくる作品。
■ロマンス☆
子育てにつかれた妻と理解のない夫、フードデリバリーサービスの配達員にイケメンがいると聞き…
希望の光に誘われてしまう気持ちがわかるし、気づかず間に深みにハマってしまうこともわかる。人間って、悉く弱く寂しい生き物ですよね。
■燐光
災害時に亡くなってしまった女子高校生、幽霊となって友人や教師たちの今と過去を巡る物語。
なかなかのお話ですが、最後まで淡く優しい世界観で包まれるのが魅力。ただただ主人公の幸せを願わずにはいられない。
■特別縁故者(おすすめ)
うだつの上がらない元料理人の物語、息子を通して気難しい老人と出会い…
短編なのに、登場人物の魅力が強く表現されていました、素晴らしい作品です。大好き。昭和のホームドラマを観ているようで、知らないうちに涙が流れていました。
■祝福の歌(おすすめ)
高校生の娘が妊娠してしまって… 夫婦と家族の在り方を描く物語。
テーマは母親、微妙な心情描写がいちいち深く、おそらくこの物語は男性には書けない。様々な要素が含まれている一作にもかかわらず、場面切り取りが上手。心温まる作品。
■さざなみドライブ
ネットで知り合った五人組がリアルで出会う。気恥ずかしさから距離感をとりながら会話をするが、この集まりは…
どうしてこんな世の中になったんでしょうか。少しでもいいから世の中のためになることをしたいし、全員で取り組むべき課題。いい社会にしましょう。 -
なんだか少し怖いけど、興味惹かれる短編集。
電車や休憩中に読むのにピッタリでした。
違う羽の鳥
死んだ人が突然目の前に現れたら。そんな事があれば全てが信用できなくなるなぁ。
ロマンス
デリバリーのイケメンを偶然見つけ、そこからデリバリーを頼む日々を送る。その為には、我が子に睡眠薬まで飲ませるというなんとも悍ましいお話。最後はえ〜そうなの〜⁈となった。
ここまで2話読んで、この本は世にも奇妙な物語かと錯覚する。
憐光
ある日、自分が死んでいることに気づいた少女。記憶もあやふやだが現世に幽霊として彷徨う。そして、母のこと、先生のこと、親友のことを思い出していくがどれも恐ろしい。でも最後の終わり方は幸せな気持ちになった。
特別縁故者
お金欲しさに近寄られる独居老人はかわいそうだ。そしてまた縁故者なのにお金が原因で地獄を見る人たちもいる。お金に振り回されない強くて優しい心を持ちたいな。
祝福の歌
人生を達観したおばあちゃんと孫が、清々しかった
さざなみドライブ
自殺願望のある人たちがSNSを通じて知り合い決行に移すお話。名前も知らない見ず知らずの人でもいいから、気持ちを吐き出すって大事だな。 -
Audibleにて。面白かった!
全て同じような話なのかと思いきや、違う方向にいく話もあり、オチが予想できない面白さも楽しめた。
短編の順番も良いし、イヤミス加減もちょうど良い。
全ての話に共通しているのはコロナ禍。
振り返ってみれば、あの時は全てが異常だったな…。
テレビを付ければコロナの感染者数や死亡者数ばかり流れ、マスクや消毒を求めて朝一から行列のドラッグストア…。
いつまで続くのか先が見えない恐怖や閉塞感。
読者である私たちもそれぞれに大変な経験をしているので、この本の中で苦しんでる人達のことも共感できるように思う。
「ロマンス☆」「特別縁故者」が特に良かった。
すぐにスッと物語に入り込めて、終わってもその後の主人公たちのことが気になってしばらく想像してしまう。
イヤミス過ぎず、グロさもなく、奇抜などんでん返し狙いじゃないのも私好み。
他にも一穂ミチさんの本を読んでみたくなった。
ブク友さんたちのレビューを見て選んだ本。
いつも本当に参考になるのでありがたいです。 -
コロナ禍の小説やドラマには拒否反応を示していた自分とそろそろさよならできるかなと思って手にした一穂ミチさんの小説。
『ほろよい読書 おかわり』は青山美智子さんめあてで読んでいたら、一穂さんの短編が印象に残り、それ以来気になっていた作家さん。
コロナの時は、「あごマスク」を自粛警察に通報されたっけなあ。「緊急事態宣言」ではピリピリしていた世界も、後半は感染者数が一万を超えても「経済を回せ」に変化した。そんな中、可能な限り仕事もがんばったが、コロナの落とした影は大きかった。
6つの短編はコロナ禍の閉塞感を独特なストーリーに変えて人の心の移ろいやすさ、裏表をあぶりだしている。
『違う羽の鳥』の救いのなさと『さざなみドライブ』
のネットで知り合った自殺志願者の話が残る。心の揺れはさざなみどころではない。
『特別縁故者』
リストラにあった元料理人の物語。これは少し希望がある。リアルでもこんなことあってほしいな。コロナも終焉に向かってきたのかもしれない。
一穂ミチさんによって一気に読まされてしまった一冊。 -
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2025/10/11
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2025/10/11
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2025/10/12
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第171回直木賞受賞作。
一穂ミチ作品は初挑戦だったが、思いの外読みやすくほぼ1日で読了。
タイトルからも想像できるとおり、コロナ禍での「パンデミック」と「罪」をテーマに描かれた6つの物語からなる短編集。今から振り返るとそんなことあったな〜と随分昔に感じる。と同時に本当に特殊で異様な時代だった思う。と言ってもまだ2年も経ってないのに…
どことなく『世にも奇妙な物語』を思わせるちょっと不思議な物語が多い中で、個人的には4話目の『特別縁故者』が好き。主人公である恭一が、しょうもないながらも憎めなく、「特別縁故者に、俺はなる」のセリフが「海賊王」みたいに言っていて笑えた。最後がほっこりするところも好きなところ。
どの物語も面白く、コロナ禍を遠い昔のこととして感じたい人にオススメ? -
2021〜2023年に「小説宝石」掲載。
コロナ禍に巻き込まれ、それまでの生活基盤が揺らいだ人達。犯し、犯された犯罪小説集。
短編6編、全て巧妙に 設定、登場人物を変えてくる。“稀代のストーリーテラー”という帯の称賛にも納得する。
コロナのパンデミックは、それまでの日常にキレツを入れて、キレツがあったものは、崩壊させたと思う。禍がなければ、そこまでの不和に至らなかったかもしれないし、その罪を犯さなかったかもしれない。非日常時の言動に人格が見える。
「ロマンス⭐︎」の主人公の罪への振り切り方が
好き。
「燐光」の 死んでる主人公の前向きさが好き。
と、考えると一穂さん、女子の方が根幹強めに書いているかもしれない。
みんみん大好き、一穂ミチ。
サイン本確保しておきました。
表紙裏黒地にシルバーでサインですよ。
いつの日か、お渡ししたいと思ってます。
( ̄^ ̄)ゞ-
2024/01/04
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おびのりさん。
……そんなのあるんだー!!
京極堂とマニキュアって、どんな取り合わせやねん。
「呪」とか「怨」とか「怪」とか、およそめ...おびのりさん。
……そんなのあるんだー!!
京極堂とマニキュアって、どんな取り合わせやねん。
「呪」とか「怨」とか「怪」とか、およそめでたくなさそうな文字がついてきそうだから遠慮しときまーす。
というか、そもそも塗る趣味ないし(笑)
1Qさん。サインください。色紙なんかじゃなく、白紙の小切手にサインだけしてもらって送ってくれたらそれでいいですよ。
よろしくー( ̄▽ ̄)2024/01/04 -
2024/01/04
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COVID 19パンデミックに翻弄されて、自暴自棄になったり、社会的地位が脅かされたり、経済的に破綻したり、自分の弱さが露呈して精神的に不安定になったり、とにかく私たちは先の見えない未曾有の状況下、かなり不自由な生活を強いられました。
有効な治療薬が見つからない中での感染拡大は、私たちを不安と焦りに追い込み.私たちの人間性をためす異常な日常を出現させました。
この小説は、そんな黒い影で覆われた世の中で行われてしまった罪を描いています。
疑心暗鬼にさいなまれ、他者への信頼を見失って罪に走る登場人物たちを私たちは責め切ることができるのでしょうか?
コロナ禍が収束した今から、ようやく私たちはあの頃に行われたことを評価できるようになるのでしょう。
そんな意味で、パンデミック下のことを詳細に記す本作品が著されたことは、とても有意義だと思うのです。
6つのお話が載っていますが、個人的には5番目の「祝福の歌」が一番好きでした。
詳細は伏せますが、この作品にはパンデミックのみならず、同時期に起こったある事も書かれており、それらが市井の人々の人生を大きく揺さぶる様が描かれています。1年後にはどうなっているかは分からないんだ、ということを私たちに突きつけてくるお話でした。
この本を例えば10年後に私たちが再読した時、どう評価するのだろうか、と思わずにはいられません。
その時、穏やかな日常を過ごせている世界であることを願うばかりです。
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コロナウイルス感染症のパンデミックがもたらした不幸に足掻く人たちを描く短編集。
第171回直木賞受賞作。
◇
大学進学のため大阪から東京に出てきた優斗。だが第一志望校でなかったこともあって意欲がわかずに1年で中退。東京でならバイトで生活していけると思い、大阪にも帰らずに居酒屋の客引きをして暮らしている。
ところが折悪しく、コロナ感染が広がるなか客足は鈍る一方で、歩合制の優斗にはかなりキツイ状態だ。別のバイトを探そうかと思いつつ客引きしていたある夜のことだった。
道に立つ自分をじっと見つめる若い女がいることに、優斗は気がついた。関わり合いにならないよう目を逸らした優斗だったが、女の方から話しかけてきた。
聞けば女も大阪出身で、優斗のイントネーションが懐かしくて声をかけたという。
優斗の案内で居酒屋に入った女は優斗の業務終了時刻を尋ね、後で2人で飲み直そうと誘ってきた。戸惑いつつも優斗は誘いに応じることにしたのだった。
10時過ぎに店の外で落ち合って入ったカウンターバー。そこで聞いた女の素性に優斗は驚きを隠せなかった。
女が口にした井上なぎさという名も身の上も優斗の中学3年時に自殺した同級生と同じものだったからだ。しかも女の顔は、なぎさとは別人なのにである。
( 第1話「違う羽の鳥」) ※全6話。
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第1話と第2話はホラー、第3話はオカルトサスペンス、第4話と第5話はヒューマンドラマ、第6話は群像サスペンスと、バラエティーに富んだ短編集でした。
また、すべてコロナ禍の社会を舞台としていながら、各話の登場人物たちの受けた影響やその大きさも様々で、とても楽しめます。
個人的に気に入ったのは第4話「特別縁故者」です。少し紹介しておきます。
主人公の恭一は調理師の資格を持っていてちょっとした割烹で修業した料理人でした。
働いていた店で親方の跡を継ぐのは自分だと思っていたのですが、途中で入ってきた親方の甥が跡継ぎに収まることになり、恭一はコロナ不況による人員整理で解雇されてしまいます。
後輩に取って代わられた理由が、料理人としての腕で及ばなかったからではなく、親方の縁故者でなかったからに過ぎないということが恭一を悔しがらせ、意欲を失わせる原因になりました。
失業後は妻の稼ぎだけでカツカツの生活なのですが、恭一はどうしても働く気になれずにいました。そんなある日のこと。
恭一は一人息子の隼から、近所の一軒家で独り暮らしのおじいさんと知り合いになったという話を聞きます。
詳しく尋ねると、遊んでいたスーパーボールが件の家に飛び込んだので取らせてもらったところ、ヤクルト1000をご馳走になりお礼に肩叩きをしてあげたということでした。
さらに隼が「おフダももらった」と言いつつ、常に持ち歩いている鳩サブレの空き缶から出した「おフダ」を見た恭一はことばを失います。それは「おフダ」などではなく、聖徳太子が描かれた旧1万円の「おサツ」だったからでした。
煙草代やパチンコ代にも事欠く恭一はうまく誤魔化して隼から「おサツ」を取り上げて使ってしまうのですが……。
☆料理あり、半グレ集団の叩きあり、借金苦あり、人情話あり。しかも着地点は好みにピッタリのお話でした。
もちろん好みは人それぞれ。他のサイコホラー仕立てやオカルトサスペンス仕立てもおもしろいので、おすすめです。
『光のとこにいてね』を読んだあとということでその軽さに少し物足りなさも感じますが、短編集のよさを存分に味わえる作品だったと思います。-
2024/02/29
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ゆーき本さん
お久しぶりです。コメントありがとうございます。
「祝福の歌」もよくできたお話でしたね。あまり毒の強くないほっこりした物...ゆーき本さん
お久しぶりです。コメントありがとうございます。
「祝福の歌」もよくできたお話でしたね。あまり毒の強くないほっこりした物語が好きなので、この第5話もお気に入りです。
ラストシーンの中で、たっちゃんが実母の歌の上手さでなく、養母の音痴を受け継いでいたということがわかるところが、微笑ましくてよかったです。
ところで、菜花の胎児ネームと近藤さんの代理母委託出産児の名前が同じ「さくら」だったのは、何か意味があったのでしょうか? てっきり伏線に違いないと思っていたので、ちょっとモヤモヤしています。2024/02/29 -
え!「さくら」繋がり気づきませんでした!!
まさか作者さんのウッカリミスとは思えないですね。でもみなさんのレビュー読み返してみても、それに気...え!「さくら」繋がり気づきませんでした!!
まさか作者さんのウッカリミスとは思えないですね。でもみなさんのレビュー読み返してみても、それに気づいたのってfunyaさんだけじゃないですか?! すごい!
2024/02/29
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よくこんな話を思いつくなあ、と感心させられたお話ばかりの短編集。
それぞれが独立した別々の話なのですが、全く違った謎やテーマで書かれているので、一冊で何度も違った読書体験ができるお得な感じがしました。
救われない話が多かったことが関係しているかもしれませんが「特別縁故者」が妙に印象に残りました。
コロナ後の世界(今の御時世)を描いた内容になっているので、まさに今、読むべき本だと、思いました。この共感をダイレクトに味わうなら、旬な今だけ?? -
一穂ミチさんの作品。この作品が最新作…この目を引く表紙に惹かれます。「うたかたモザイク」を最初に手にして、ちょっとよくわからない(汗)って思っちゃって…そのあとに「スモールワールズ」を読んで、やっぱりこの世界観、私、好きなんじゃない?と思い、こちちの「ツミデミック」を手にしたという経緯があります。
こちらの作品はコロナ禍を背景に描かれた、6編の短編集となっています。
「違う羽の鳥」:夜の繁華街で居酒屋の客引きのバイトをしている優斗、大阪弁に惹かれたと一人の女性から声をかけられ、その後一緒に過ごすことになる…。女性の名前を尋ね、過去に青年とつながりがあったことがわかるのだが…。
「ロマンス」:イケメンのデリバリー配達員をもう一度見たいと、注文を繰り返す主婦の百合…。リアルにおかれている状況から目を背け、今度こそ、今度こそ…の思いが高まって…。
「憐光」:主人公は15年前に死んでいたことを思い出す。偶然見かけた親友のつばさについていくと、そこには担任だった杉田先生もいて…ふたりは主人公の家を訪ねることになって…。
「特別縁故者」:コロナ禍が影響して、求職中の恭一…。妻の朋子は生計を立てるために働いており、子どもの隼の面倒を見るのは恭一…。ある日、隼が近所のおじいさんから旧1万円札をもらってくる…。恭一はおじいさんの家を訪ねるのだが…。
「祝福の歌」:主人公は50歳で妻の美津子と高校生の菜花と暮らしている達郎。ある日娘が妊娠していることがわかり、実母に突如浮上した認知症疑惑…!そこから急転直下、様々なことが起きる…。
「さざなみドライブ」:パンデミックに人生を壊され自殺を考えている5人が集まった…。それぞれコロナ禍ならではの事情を抱えていたが…意外な結末を迎えることに…。
私が好きなのは「ロマンス」かな…ガチャにハマる気持ちがわかる(笑)!私も一時期ハマってたから…あ、でもちゃんと目覚めて、今はなんてもったいないことをしたんだろうって思ってます。あの時に使ったお金、読みたい本に使うんだったぁ…と、家にかなりの積読あるのに思ってしまいます!!あ…この作品での問題はそこではないんだけれど(汗)。
6編ともコロナ禍が関わっていますよね…。コロナは感染の蔓延だけではなく、あらゆる日常が影響を受けたことから、私たちの感性もおかしくなってきたのかもしれない…と、そんな風に思ったりもしました。一穂ミチさんの作風、ここにきて好きになりました♪今、「うたかたモザイク」を読んだら高評価つけられるかもしれません!-
2024/01/17
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私も読みました。初めての一穂ミチさんだったのですが。とても共感できました。かなさんもロマンスの章共感したんですねーわかります。
私も一度ネ...私も読みました。初めての一穂ミチさんだったのですが。とても共感できました。かなさんもロマンスの章共感したんですねーわかります。
私も一度ネットゲームの課金にはまったことがあって・・汗
でも今思うと、なんで?って思うんですよね。
人間ってわからない生き物だなって思っています。
ロマンスでは最後「え?」って思う方向に行ってしまって、ドキドキしちゃいました。おもしろかったです!!2025/01/09 -
ぴこさん、この作品の読了お疲れ様でした♪
私も「ロマンス」ハマりましたよ!
イケメンとか、架空の世界に惹かれるのはもう仕方ないですよね^...ぴこさん、この作品の読了お疲れ様でした♪
私も「ロマンス」ハマりましたよ!
イケメンとか、架空の世界に惹かれるのはもう仕方ないですよね^^;
リア充ならハマらなかったかもしれないけど…
私も課金はもったいないなって今は思うんですけどね、
その時はもう夢中だったし!!
一穂ミチさんの作品、おもしろいですよねっ(*´∀`*)
私もまだ読めていない作品とか、読んでみたいなって思ってます。2025/01/10
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「罪」と「パンデミック」で『ツミデミック』!
一穂さんは長編もいいのだけど、私はやっぱり短編が好きだ〜〜
ほんと引き出しの多い作家さんで、今回も色んなテイストの話で楽しませてくれた
コロナ禍にのまれ、もがき、あがいた人達の6つの犯罪小説。
犯罪小説とはいえ、すべてがほんとの犯罪小説というわけではなかった。
そういうゾッとする話もあるけれど、中には心に芽生えた"罪"と対峙していく話で、優しい後味の話もあったり。
色んな罪の話。
個人的には、あ〜こういう事ってなんかありそう〜ってゾッとする「ロマンス☆」と、じんわりあたたかい後味の「特別縁故者」が特に好きでした-
それめっちゃ分かります〜Σ(。>艸<。)
私もいつも予約ぱんぱんで、気づいたら出遅れてます笑
そしてやっと借りれた時には、もう文庫化されてる...それめっちゃ分かります〜Σ(。>艸<。)
私もいつも予約ぱんぱんで、気づいたら出遅れてます笑
そしてやっと借りれた時には、もう文庫化されてるやつもあったり〜笑笑
気になる本多すぎて困りますよね〜┐(´д`)┌2024/01/28 -
2024/01/29
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笑笑
ほんとそれ!
そしてなぜか、あれもこれもいっぺんに回ってきて、急に図書館本ラッシュ!!笑笑笑笑
ほんとそれ!
そしてなぜか、あれもこれもいっぺんに回ってきて、急に図書館本ラッシュ!!笑笑2024/01/29
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コロナ禍に作られた短編集。
好みによるかなぁ。作品中で特に繋がりがあるわけでは無い。一つ一つのストーリーが独立してる。ホラーだったりファンタジーだったり。次は何?どんなストーリーだろうっていうワクワクは毎回。ただ、全体読了後の満足感がちょっと無かったので⭐︎3。でも、読みやすくてあっという間に読了でした。
著者プロフィール
一穂ミチの作品
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感想 :

オイラ的に今一番旬の作家さんかも!
オイラ的に今一番旬の作家さんかも!