- 本 ・本 (584ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334102487
作品紹介・あらすじ
「この草子、目に見え心に思ふ事を」。栄華を誇った中宮定子を支えた女房・清少納言は、なぜ膨大な言葉を書き残さなければいけなかったのか……。痛快な批評が笑いや哀感と同居する、平安朝文学を代表する随筆。ユニークな視点と鋭く繊細なまなざしですくい取った世界観を、歯切れ良く瑞々しい新訳で。「ここにもあった、いとをかし」。解説、年譜のほかに、位階、装束、牛車、建物などの図版資料を含む、宮廷生活ガイド付き。
感想・レビュー・書評
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あんまり面白くはない。
好きなものに対しての羅列は文化史を覚えるような感覚。
身分至上主義ともいおうか身分低い人への眼差しは厳しい。
逆に定子を筆頭に中関白家の人々への賛辞、美化はかなりのもの。伊周。
スクールカースト最上位の世界のあれこれを聞かされているようで、どうもピンと来ない。まあスクールはおろか当時の日本最大のカーストの世界だったわけで。
それでも、現代の感覚と通ずる部分もないわけではないわけで。特に『26段 にくきもの』はほぼ現代人の感覚と一致。シャープな感性。そういう意味では『アンネの日記』の方が好きかも。
中宮定子サロンの懐古として翳りが見える部分は面白いといおうか、切なさがあり味わい深い。あの頃は良かったけど今は……の先の愚痴や蔑みや卑下が無いのは、彼女なりの気遣いなんだろうか。
膨大な漢籍や和歌の知識から捻り出される、ああ言えば、こう言うやり取りや和歌の応酬は憧れる。「わかる人にはわかる」やり取り。現代の作品で言えば『BLACK LAGOON』『蒼天航路』『PSYCHO-PASS』や『SUITS』といったところか。
『うた恋い。』のイメージが強すぎて諾子、行成、斉信、はそちらに引っ張られてしまう。道隆はイメージ通り。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
5月の終わり頃から読み始めて、7月初めで読了。読み終わるまでに時間がかなりかかった。仕事が忙しかったし、通勤が電車じゃなくなったからかな。その間に、大河ドラマでは、家族を失い、傷心の一条天皇の中宮定子のために、書きつがれたものとして「枕草子」の誕生の物語が描かれていた。
歴代の大河ドラマ屈指の名シーンとなったのではないだろうか。中宮定子を演じる高畑充希の朗読も良かった。できれば、「春はあけぼの」のだけでなく、「夏は夜」「秋は夕暮れ」「冬はつとめて」とやって欲しかった。
しかし、このシーンを見て、中学生の頃、国語の授業で、枕草子の冒頭の文章を覚えさせられたけど、初めて覚えていて良かったって思った。そして、古典や歴史を軸とした教養というものが、文化を育てていく、理解するうえでどれほど大事なものなのかを実感したし、言葉の力、文章の力を改めて再認識したシーンでもあった。
今回の大河ドラマ「光る君へ」で、少し学校教育の中で疎んじられていた古文や漢文、和歌や漢詩などの魅力に気づいた人は多いと思う。そして、こういうものの上に教養というものが存在するのである。
随分と前置きが長かったが、「枕草子」の全訳である。書架には昔、購入した橋本治の「桃尻語訳 枕草子」があるのだが、いいお年をしたおじさんにはちょっと読むのがしんどかったので、新たにこの本を購入。
桃尻語訳よりははるかに読めた。もう少し注釈が欲しいが、これ以上分厚くなると読みにくくなる。
「枕草子」は、長徳の変で、定子の兄弟である藤原伊周、隆家が流罪となり、中関白家が没落してから書きはじめられた。実は、冒頭の文章もはじめに書かれたものではないらしい。
それならば、定子がなくなった後に書かれたかもしれない。そうすると、ちょうど東山、鳥戸野に定子は埋葬されている。その方角を見ながら書かれたということはないのかなあと思ったりする。
「光る君へ」も早くも半分で折り返し。さあ、これからどんなストーリーが展開するのか楽しみだし、それにかかわる王朝文学も楽しみである。
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清少納言の、優雅な宮廷生活を描いたものという認識だったが、解説を読んで、その裏の定子への思いを感じ、後世に残したい記録を全身全霊を込めて書いたんだな、清少納言は一途だな、と、ちょっとほろり。
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私の目に映るキラキラした世界を見て。
多分、清少納言が同僚にいたら、お付き合いはできるけど、ちょっと遠まきにする。子どもの頃に枕草子を読んだ時、面白いことを言っているけど苦手だと感じた。何か自慢話の連発のように感じたのだ。どう? 私すごいでしょう? と言わんばかりの文章を残すなんて、自分の感覚的には恥ずかしい、と。
しかし、中高で古文を勉強して枕草子が書かれた背景を知り、今は大河ドラマ「光る君へ」を見て、運命に翻弄される定子の姿を見ていた清少納言は、並々ならぬ決意で枕草子を書いたのではと思い始めた。私の大好きな美しい世界、宮様のいるキラキラした毎日を、残さなくては、と。それには筆の力だと。
あらためて読んでみて、やはり自慢と思うところもある。でも演出に見えてくる。美しくて優しい宮様とその素敵な家族。宮様にお仕えする気が利いて賑やかな女房たち。夢のような世界はここにあったと、清少納言が全力で叫んでいる。なりふり構わない感じは、やはり鼻に付く気もするが、枕草子を書くことで清少納言は後世に定子とその周囲のキラキラした世界を伝えた。美しく、華やかで、漢文や和歌の知識を用いてウィットの効いた会話を楽しむオシャレな世界。憧れの平安時代を見させてくれている。
清少納言のように、気の利いた会話で人気を得ている芸能人等は様々にいるけれど、あまりに数多く、どんどん移り変わっていく。1000年後とは言わなくても、やはり残るには「書く」「読まれる」ことなのだろう。 -
“春はあけぼの”で始まる『枕草子』は、清少納言が定子サロンで見て感じ考えた膨大な随筆集。政治的なしがらみもあり華々しい時は長くはなかったけれど、清少納言の「いとおかし」が詰まっていた。(百合要素は微笑ましい)。読みやすい訳だと思う。
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こんなに面白いと思わなかった。今の言葉で瑞々しい訳で。と書いてあって、古典初心者のわたしにぴったり、その通りサクサク現代のエッセイ本のように読めました。雪山が溶けるか溶けないか(八三)ワカメを口にぱんぱんにして黙っていたのだよ!(八〇)源氏物語で何度もでてきてただの儀式かと読み飛ばしていた法華八講がキャンパスライフのキラキラ(三三)清少納言が描く、片足を縁側の下にぶらんとして部屋に入いる殿方が、私も、をかしです。行成、斉信がドラマよりさらに格好いい。直接的ではないけどなんとなく清少納言の憂いも感じられて、中関白家に思いを馳せたりして、まだまだ古典熱冷めやらぬです。次は宇津保物語の読みやすい訳を見つけたいな。
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当初はこのテーマで大丈夫だろうかと思ってた大河ドラマ「光る君へ」が、思いの外面白い。前半の名場面の一つは、清少納言が「枕草子」を書き始めるシーンだと思う。というわけで、思い切って新訳で通して読んでみた。
思いのままに書き綴ったという通り、理解が難しい場面も多いけれど、あちこちに、なるほどそこを拾いますか!という鋭い描写が多々見られるのがさすが。宮廷に仕えるイチOL(?)があれこれ綴ったエッセイだと思うと親近感も湧いてくる。
上司の中宮定子が没落し始めた頃に書き始めたのですね。明るいトーンの中にも、どことなく寂しさを含んだ場面、表現が多いのはそのせいか(と、解説にありました)。長く手元に置いて気軽にパラパラと読む。その価値、やはりある。 -
昔、角川文庫で断念した枕草子。大河ドラマを機に手に取った。役がかなりフラットすぎるのではとも思うが、まあ読みやすい。
巻末の資料や解説は面白くてためになる。 -
【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/572941 -
【本学OPACへのリンク☟】
https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/713527
清少納言の作品





