屍者の凱旋 異形コレクション 57 (光文社文庫)

  • 光文社 (2024年6月11日発売)
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本棚登録 : 387
感想 : 15
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  • 本 ・本 (616ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334103415

作品紹介・あらすじ

平山夢明、澤村伊智、三津田信三、斜線堂有紀、芦花公園……ベテラン作家から期待の新鋭まで15名の日本を代表する短編巧者が、ホラーの王道「ゾンビ」テーマに大集結! いまだかつてないゾンビたちの凶宴に乞うご期待!

感想・レビュー・書評

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  • 今回も全編ハズレなし、大満足の一冊でした!

    上田早夕里「ゾンビはなぜ笑う」、久永実木彦「風に吹かれて」が好きだなぁ。グロと美しさが同居した情景が浮かんでくる。

    空木春宵「ESのフラグメンツ」ゾンビに意志はないものとする、という暗黙の社会通念に抗うように、ゴスロリゾンビちゃんの一人称がどんどん大きくなっていく視覚効果も含めて面白かった。

    芦花公園「ラザロ、起きないで」かつての憧れの美少女が自分より醜い腐乱死体のままでいることを望んでしまう心理に込められた色々な醜い部分が……なんていうか、イヤ!(ほめてます)

    澤村伊智「ゾンビと間違える」ゾンビがいるのが当たり前の社会になったら、まぁ当然こういうことは起こるよねぇ……っていう。現実の安楽死問題にも通じるイヤさ。ラストは凄惨だけどなんかスッとする爽快感があった!

  • 背筋「ふっかつのじゅもん」
    近畿地方の〜によく似た文体。短編で読みやすかった。妻が生き返った、という突拍子もない出だしと、話の具合から、また薄気味悪いラストなのかと思いきや、ちょっと涙出た。面白かった。

    織守きょうや「ハネムーン」
    変態の純愛。狂気の愛。そんなもん納屋に隠して見つかったらどうするんや(笑)最初から狂ってたんか。
    コロナ禍ならぬゾンビ禍。
    面白かった。

    上田早夕里「ゾンビはなぜ笑う」
    せ、切ないっ!殺伐とした始まりからは予想もつかない終わり方で、上の作品とはまた違う意味での純愛だった。彼女は湊を見て笑ったに一票を投じたい。

    篠たまき「粒の契り」
    めっちゃ気持ち悪かった!!!!!!!!!!
    (無理)(無理)(無理)(無理)(無理)
    (キモ)(キモ)(キモ)(キモ)(キモ)
    いまのところこれがキモ部門優勝。

    井上雅彦「アンティークたち」
    宵宮奇譚の作品を巡る奇怪な出来事。
    死体を使うアート?なのか?ホラーみは上の作品群より少ないものの、とてもミステリアスファンタジーで面白かった。

    久永実木彦「風に吹かれて」


  • 屍者、ゾンビのホラー短編集。610ページあるのと、豪華執筆陣の力作なので、かなり読みごたえあります。ただし、読んでも読んでも読んでも屍体の話なので、なんとなく胸糞悪い感あり。好みじゃない人は少しずつ読むのをオススメします。以下概要。星付きが好みだった短編です。
    背筋「ふっかつのじゅもん」
    妻が死に、希望をなくした男はふと手にした昔のゲームをひたすら丁寧にプレーすることのみで活動していた。そのゲームにでてきた呪文でおこったことは?
    ★織守きようや「ハネムーン」
    ウィルスによるゾンビ化。ワクチン接種で恐怖は去った。野良ゾンビが狩られれば平穏になるだろう。そんなときほぼゴーストタウンのこの町で俺は幼馴染みのミユを拾う。
    上田早タ里「ゾンビはなぜ笑う」
    噛まれるとゾンビになる病の世界で、俺はゾンビハンターの職務についている。ああ、でもあのゾンビは俺が大切にしていたあの人で。なんでゾンビなのにピアノをあの曲を弾いているのか。
    篠たまき「粒の契り」
    私は何になったんだっけ?朧気に記憶が語られていき、屍体となりながら、私と交わる男との記憶が綴られる。
    井上雅彦「アンティークたち」
    生人形といういきているものそっくりな等身大の人形細工。やがてそれは屍人形という文化に変遷してゆく。収集家の家へ鑑定のバイトに誘われて行った私にはもうひとつ目的があった。
    久永実木彦「風に吹かれて」
    屍体がフワフワ浮かぶ風船のようになった世界で過ごす墓守。恨みの屍体をワイヤーから切り離そうとする女から墓を守る毎日。ある時軍が屍体を利用しようとする。
    最東対地「コールカダブル」
    死体をゾンビのように動かせる技術ができる世界で娘をゾンビにした夫婦の話。
    ★黒木あるじ「猫に卵を抱かせるな」
    私は火車の子。妹に復活の能力がある。イタリアの裏社会の支配者が死んだ娘の復讐のため、数多くの能力者を探し、失敗した偽物達から切り取った手がこの大広間には沢山ある。
    空木春宵「ESのフラグメンツ」
    ウィルス感染でゾンビになることが珍しくなくなった世界でゴスロリが好きでモデルもやっていた私はゾンビになった。2段に別れたページ構成が挑戦的。
    ★斜線堂有紀「肉霊芝」
    「回樹」を思い出させるような巨大な肉霊芝のある世界。檪木はそれを守る一族のひとつ。死なない霊芝でこれまで人はさまざまな病気を直す方法を見つけ、時に臓器移植を行った。その霊芝のもととなった姫とは…。
    芦花公園「ラザロ、起きないで」
    引きこもりの俺はどろどろの屍体になっているツムギと4日過ごすことになる。俺たちの聖女だったツムギ。
    平山夢明「煉獄の淚滴」
    息子を最新技術でゾンビ化したものの、維持費を払えなくなり息子の屍体は最悪の処理になりそうな男。収入になりそうな契約があるが、どうなるか?アメリカっぽいジョーク混じりの会話で進み、最後は思わぬ純愛もあり。
    澤村伊智「ゾンビと間違える」
    ゾンビが発生する世界で、危険なゾンビは狩って良いことになっていたが、ゾンビのような腐臭がするおぞましい汚れた人も間違った振りで殺されている世界だった。そんな時、幼馴染みの美雪に引きこもりの兄を殺して欲しいと頼まれる。
    三津田信三「屍の誘い」
    又聞きの又聞きで昭和30年代にとある民俗学を採集していた男が出会った山深い場所での恐怖体験
    牧野 修「骸噺三題 死に至らない病の記録」
    深海で人魚を食べ巨大な生きる屍になっていたメガロドンがついに腐り海上で破裂しその飛沫が引き起こす色々なエピソード。
    屍体、殺人多く、小学校NG。

  • ホラーアンソロジー。
    近代ホラーの三大モンスターの一つゾンビ。
    映画やドラマで多く取り上げられ、ルールも設定も多種多様になった分ホラーにまとめるのは難しいのではと感じる。
    凱旋がテーマだからか、すでにゾンビが一般化した世界の話が多くあるように思える。
    好きなのは、
    篠たまきの粒の祈り、ゾンビ側の目線の話ではあるけれど、肉体の復活と記憶の復活にラグがあることで生まれる物語。イザナギとイザナミもこんな感じだったのかしらと。
    井上雅彦のアンティーク達は人形の描写が好き。
    斜線道有紀の肉霊芝も好き。この作家の痛みの描写は美しさもあるからぐろくても読めてしまう。物語の意味や立場の入れ替わりはある者だけれど、この入れ替わりは後悔というより呪いの一部にさえ思える。

  • 背筋さん目当てに手に取った本。

    ホラー映画は無理だけど小説は平気な私の中で、いまいち怖さが分からないのが屍者=ゾンビだったりする。
    火葬の日本人だからなのか、幽霊以上に非現実的だと思っているからなのか、ゾンビ=ゲームのイメージが強いからなのか。

    淡々と語る「ゾンビはなぜ笑う/上田早夕里」と、ゾンビと共に空に浮かぶ「風に吹かれて/久永実木彦」が好きだった。
    「コール・カダブル/最東対地」のブラック・ユーモア的な終わり方も良かった。
    怖さだけでいうならやっぱり「屍の誘い/三津田信三」だけど、ゾンビ感は薄め。

  • かなり前に読了していた1冊。異形コレクションは、全編ハズレがなくて安心して手に取れる。
    この巻は、屍者、ゾンビがテーマだが、それぞれの作家さんの解釈がまずおもしろい。
    特に久永実木彦「風に吹かれて」の独自の世界観がとても美しくて良かった。なんだか怖い絵本を読んでいるような。
    また、空木春宵「ESのフラグメンツ」虚をつかれた読ませ方と仕掛け、それに負けない感情描写も好きな一編。
    この作者おふたりの作品は初見だったので、ほかの作品も読んでみたい。

  • 異形コレクション。「生ける屍者」「ゾンビ」をテーマにしたアンソロジー。
    テーマがテーマだけにグロテスクな表現も多いのですが、このアンソロは好みの短篇がたくさん納められているので好きです。

    以下印象的だった作品。
    久永実木彦「風に吹かれて」
    2030年代の未来、死んだ者は腐って朽ちていくのではなく、なぜかふわふわと風船のように浮かぶようになった。墓石に繋がれて色とりどりの衣装を纏った死者たちが空に浮かぶ墓地の墓守を務める男の物語。
    グロさも怖さもなく、優しさを感じる物語で一番好きだった。

    黒木あるじ「猫に卵を抱かせるな」
    死者を復活させる能力を持つ少女マオとその弟を名乗るビョウト。マオの力でイタリアマフィアのドンの死んだ娘を生き返らせるが…
    短い中に独特の世界観や意外な結末が盛り込まれていてお見事。長編で読みたいくらい。

    斜線堂有紀「肉霊芝」
    人間の臓器が実る巨大な肉の森、肉霊芝(にくれいし)人類はそこに実る臓器を使って伝染病やウイルスに打ち勝ってきた。肉霊芝とは一体何なのか、それははるか昔、シュカという一人の姫の時代にさかのぼる。
    静かに爆発の時を待っている未知のウイルスを思わせるオチが怖すぎる。

    どの作品も面白くて満足です。

  • アンソロジーなので、様々な作家さんの作品が楽しめます。
    テーマは、平たく言えば「ゾンビ」。
    ただただ襲って仲間を増やすゾンビの概念を捨てて読んで欲しいです。ホラー感は殆ど感じません。ゾンビに対する周りの人間の心情が、繊細に描かれている感じがします。
    私的に内容が刺さらず、途中で読むのを辞めました。

  • 様々なゾンビがいて良いね。斜線堂有紀が特に好み

  • ゾンビものは普段見たり読んだりしないので、新鮮な気持ちで読めました。
    前編通じてずっと腐敗臭がしているけれど、お昼ごはんのお供にしてました。

    一番好きなのは「風に吹かれて」
    久永実木彦さんの他の作品もとても気になります。

    毎回素敵な作家さんとの出会いがあるこのシリーズが大好きです。

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