世界のすべて

  • 光文社 (2024年9月26日発売)
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本 ・本 (292ページ) / ISBN・EAN: 9784334104283

作品紹介・あらすじ

――恋愛感情がない。性欲がない。それでも「普通」に暮らしている。

5年間勤めた会社を辞め、街の小さな喫茶店「ブルー」でアルバイトをする鳴海優輝。
心優しい啓介が営む「ブルー」には秘密を抱えた人々が集まってくる。
デザイナーの北村、高校2年生のヒナ……。
常連客の悩みに向き合う鳴海にも、周りに言えない想いがあった。

多様なセクシュアリティを持つ人々を、やわらかく鮮やかに照らす、畑野智美の新たな代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 自分のジェンダー(アセクシャル アロマンティック)に悩む鳴海優輝29歳と、優輝がアルバイトをするブルーという名の喫茶店の周りの人々のお話。
    周りの人々も様々なジェンダーです。
    女性が好きな女性や、男性アイドルしか好きになれない女性。結婚しているのに複数の恋人がいる女性。女装癖のある男性。強い信頼関係を築いた先でしか恋愛感情を抱けない男性。等々。


    ジェンダーについての作品は先日『マリアージュ・ブラン』でアロマンティックアセクシャルの女性と男性が偽装結婚する話を読んだばかりですが、あちらは一組のカップルのお話でしたが、この作品『世界のすべて』は色々なジェンダーが出てきてそんなに様々なジェンダーで悩んでいる人が集まってくるものなのかと思ってしまいました。

    でも、ジェンダーの勉強にはなりました。
    優輝は大学でジェンダーに関する講義を受けたことがあるということになっていましたが、私の大学時代にはまだそんなにジェンダーは問題にされていなくて、最近になって私はジェンダーについて知りました。
    朝井リョウさんの『正欲』とか最新作も読んでみたいです。

    私は友人とジェンダーの話はしたことがありませんが、優輝たちのようにジェンダーに関する話をもっと友人同士や学校などで気楽に話して聞いてもらえる社会になるといいですね。

    • まことさん
      ひろさん、おはようございます♪

      お祝いコメントありがとうございます!
      とても嬉しいです。
      でも、なんか夢のようで、取り消しにならな...
      ひろさん、おはようございます♪

      お祝いコメントありがとうございます!
      とても嬉しいです。
      でも、なんか夢のようで、取り消しにならないかと心配しています。
      2024/11/25
    • 5552さん
      まことさん、こんにちは!ひろさんもこんにちは!
      日経歌壇第四席おめでとうございます。
      まことさんの歌、中華料理屋に炒飯ってのがいいですね〜
      ...
      まことさん、こんにちは!ひろさんもこんにちは!
      日経歌壇第四席おめでとうございます。
      まことさんの歌、中華料理屋に炒飯ってのがいいですね〜
      これがシャネルのお店にバッグを買いに〜とか、叙々苑に焼肉を食べに〜とかだとまた違ってきてしまいますもんね。(字数無視してます)
      わたしも、ひとりで中華料理屋に行ったことがないので、気持ちがよく分かる短歌です。

      2024/11/27
    • まことさん
      5552さん、ひろさん、こんばんは♪

      5552さん、お祝いコメントをありがとうございます!
      とても、嬉しいです。
      でも、これは素直に喜べな...
      5552さん、ひろさん、こんばんは♪

      5552さん、お祝いコメントをありがとうございます!
      とても、嬉しいです。
      でも、これは素直に喜べないのです。
      張飛さんには、話したのですが、これは、元ネタがあるんですよ~!
      とある方のエッセイです。
      誰かに通報されたら、取り消しになるんじゃないかと、心配しています。まさか、載るとは思わなくて。再来年のほむほむの講座で、短歌のエッセンスを小説や、エッセイから借りてくるのは、反則なのか、聞いてみたいと思っています。
      2024/11/27
  •  ひとりの青年の葛藤と成長を通して、性的マイノリティとして生きることの苦悩を描くヒューマンドラマ。
              ◇
     脚付きのグラスに紫色のシロップを注ぎ、氷を多めに入れてからソーダ水を加えて軽くかき混ぜる。そして丸くすくったバニラアイスを載せさくらんぼを飾る。喫茶ブルーのクリームソーダの完成だ。

     ストローを添えてトレイに載せ、女子高生2人が向かい合って座る壁際の席に運ぶ。歓声を上げさっそくスマホでクリームソーダを撮り始める彼女たちに「ごゆっくりどうぞ」と声をかけ、カウンターに戻った。

     ランチタイムが終わっても店内には結構たくさんの客がいてめいめい寛いでいる。
     ブルーは40年以上前から営業していて昭和の雰囲気が残る喫茶店だ。レトロカフェ人気が高まったこともあって、最近は常連さんだけでなく10代から20代の若い女性客の姿も見られるようになった。

     僕はこの店でアルバイトを始めてまだ1年だけれど、会社勤めをしていたときに客としてブルーに来たことがある。その頃の僕は就職して5年が過ぎ、心身ともにとても疲れていた。 ( 第1章 ) ※全9章。

          * * * * *

     多様性やジェンダーについて、深く考えさせられる作品でした。

     子どもの頃から友だちとの性的なズレを感じていた主人公の鳴海優輝は、大学でジェンダーについて学び、自身がアロマンティックアセクシャルであることを確信します。ただこの時点では、だからどういった生き方をすべきかということにまで、彼は思い至りませんでした。

     就職後のことです。
     ある日、会社の草野球に臨時で駆り出された鳴海は、ベンチで野球部員たちが繰り広げる下品極まりない猥談に気分が悪くなってしまいます。
     それまでも同僚の男たちが猥談を始めるとそれとなく距離を取って加わらないようにしていましたが、狭いベンチ内では逃げ場がありません。
     おまけに悪乗りした体育会系男たちの話はそこにいない女性社員への言葉による凌辱じみたものに及んだことで、鳴海の精神は限界に達したのでした。

     その帰り道、偶然ブルーの前を通りかかった鳴海は、ガラス越しに見た店内の落ち着いた雰囲気に惹かれ、思わずドアを押していました。
     物静かなマスターから漂う包容力の賜物なのか居心地のよさを感じた鳴海は、会社に辞表を出してブルーでフルタイムのアルバイトをする決心をします。

     物語は、鳴海がブルーで出会う客たちやマスターの啓介一家とのかかわりを通して、自分らしく生きていくためのスタンスを模索する姿が描かれていきます。
     ブルーで過ごす時間が鳴海にとって大きかったのは、孤独感から解放されたことです。どこにも居場所のなかった鳴海をきちんと受け止めてくれる人がいたことは、これからの生き方へとつながっていきます。


     性的マイノリティと言っても実に多様であること、分類上は同じカテゴリーであっても個人個人で微妙にタイプが異なることなど、本作を読んで初めて知りました。

     性的マイノリティの人たちは、人口の1割近くを占めるそうです。けれど、カミングアウトすることなく、苦痛を感じつつもマジョリティの中に紛れている人は決して少なくないとも言われています。
     彼らにとって、生きにくい社会であることは残念ながらそうそう変わらないでしょう。それは、マジョリティ側のスタイルが正しいとする人が圧倒的に多いからです。

     そんな社会の中では、マイノリティが身の置き所を見いだすのは難しい。
     だからこそ、そんな人たちの「居場所」となるようなカフェを作ろうとする鳴海の姿に心打たれたし、未来に対する仄かな希望の光が見えたような気がしました。

  •  なんとも、いい雰囲気を醸し出す喫茶店の表紙に引き付けられますよね!この作品は、セクシャリティの多様性がテーマとしています。

     この作品の登場人物たちは、恋愛感情も性欲もない、恋愛対象がアイドル、同性に惹かれる、女装が好き…などの多様なセクシャリティがあります。そんな人たちが集うのが「喫茶ブルー」です。バイトの鳴海優輝は、自身も悩みを抱え、いずれは自分の店を、誰でもくつろげる場を作りたいと思っていた…。

     性に関しては、こうでなくてはならないということはなく、いろんな形があっていいし、むしろある方が当然のこととは思ってます。ただ、ずっとセクシャリティの多様性についての内容だったことで、返って印象の薄い作品に感じてしまいました。そんな風に考えるのは私だけかとも思いますけどね(汗)。

    • 1Q84O1さん
      いろんな形があってもいいし、ある方が当然
      確かにその通りですね
      ただ、最近はいろんな形があり過ぎて正直よくわからないです…(^_^;)
      いろんな形があってもいいし、ある方が当然
      確かにその通りですね
      ただ、最近はいろんな形があり過ぎて正直よくわからないです…(^_^;)
      2024/10/25
    • かなさん
      つくねさん、おはようございます。
      確かにぃ…!!!
      激しく同意します(^^)
      恋愛感情も性欲もなんか昔のことって思っちゃうんですよねぇ...
      つくねさん、おはようございます。
      確かにぃ…!!!
      激しく同意します(^^)
      恋愛感情も性欲もなんか昔のことって思っちゃうんですよねぇ…
      なんか、心の潤いが欲しいお年頃です(^-^;
      この作品のお店よりも
      シャールさんのお店があったら…潤うのになぁ♡
      2024/10/25
    • かなさん
      1Q84O1さん、おはようございます。
      そうそう!!
      色んな形がありすぎて、よくわからない…
      アロマンチック、アセクシャル…
      う…ん...
      1Q84O1さん、おはようございます。
      そうそう!!
      色んな形がありすぎて、よくわからない…
      アロマンチック、アセクシャル…
      う…ん、この本読んでもね、わからない(^-^;
      でも当事者にとっては切実な悩みなんですよね…。
      2024/10/25
  • 価値観や考え方が違って当たり前の世界で
    偏見がなくなることはないと思う
    それでも他人の心を見せてもらったときは
    肯定も否定もせず 「あぁ そう」くらいな感じで
    今までと変わらず味方でいられればと思う

  • 前作もジェンダーがテーマだったか?私が読んでいる作家さん達の中では畑野先生がいち早くこの手のテーマに向かい合って創作されてます。多様性を避けて通れない時代になってきて今後は少しずつこうした作品は増えてくるのでしょう。
    今作は、人知れず悩んでいる人に対して負担にならなければ良いという距離を持って丁寧描かれてると思います。
    作中、「独身でいることや、恋人がいないことをバカにするような人は、減ってきていると思う。多様性を理解できなくても、そういうことを言ってはいけないという空気は確実に広がってきている。」や「壁のこちら側で楽しく暮らせば、充分なのだ。そうしているうちに。その壁は自然と崩れていく。」など、少しでも一日一日をやり過ごす為のヒントがそっと寄り添う様に描かれてます。

  • 最近、話題に上がることの多いセクシャリティの問題を優しく温かく包み込むような雰囲気で描いているのが、好みど真ん中でした。

    本作はカフェでアルバイトをする主人公がお客さんと関わり合う中で、それぞれの恋愛観に触れていくお話。

    本作は性自認をテーマにしたお話なのですが、最近ですとオリンピックの選手が活躍した時に話題になったため、比較的ホットなテーマなのかなと思いました。特に恋愛における価値観の多様性は、どちらの性が好きの範囲に留まらず、恋愛感情と性欲が発生するかどうかにまで議論が及ぶようになっているので、今後も多様化が進むのかなと思います。

    その中で本作は多くの人が多様な悩みを抱えており、その悩みについて主人公が大学で学んだ知識をもとに向き合っているので、まさに現代の多くのセクシャリティに触れることができる良い教科書的な立ち位置であるなぁと思いました。


    個人的には酔ったコトリさんが1番印象的だったかなと思います。普通という価値観の押し付けが、どれだけ残酷なことであるかをマジマジとみた感じがありました。こうしたエピソードを通し、過度に受け入れるのでも拒絶するでもなく、ありのままで他の人と付き合ってほしいという願いが本作に込められていると感じました。

  • 色々なセクシュアル・マイノリティが登場。主人公は悩みながらも前に進んでいく。私の友人がトランスジェンダーで、タイで手術して、戸籍も名前も変えて、学生時代とは性格まで違うけど、ご両親ともお姉さんとも仲良しのまま。自分の子供はストレートのように見えるけど、もしそうでなくても静かに受け入れたいと思う。

  • 前作も主人公がマイノリティに悩んでたような…。

    多様性はとても重要なことだけど、あまりにも飽和状態で、重みが感じなくなってしまう。

    アロマンティックとかアセクシャルとか難しくて言いづらい。みんな違ってみんないいし、人はそれぞれ。ロボットじゃないんだから。

    恋愛、結婚したければすればいいし、あう相手がいなければしなくてもいい。それが当たり前の世の中はまだまだ遠いのかな。

    ブルーのような素敵な喫茶店が近くにあったらいいのにとは思った。

  • 表紙の綺麗な紫色はアセクシャルのフラッグカラーなのだそう。
    物語の中では、多種多様な性的マイノリティーが登場する。カミングアウトする方が増えているとはいえ、「カフェブルー」の周りにあまりにも集結していてちょっと現実離れしている気がした。
    でも、それぞれがすっとありのままの自分を受け入れていて、周りの人もそれを自然に受け止めて…というのはいいなと思った。
    何か特別な言葉がけをする訳でもなく、関係性を変えることもなく。
    改めてカミングアウトされた経験はないけれど、もしそんな機会があったらこんな風にできたらなと思った。

  • 水色でもピンクでもない、薄紫ベースのグラデーション表紙で色がまず綺麗だなと、惹かれて手に取りました。話の中で紫色について書かれているところがあったので、今作で大事なカラーなんだと思う。
    多様性について・ジェンダーについて、上澄みだけ掬ったに過ぎないが、改めて学ぶ機会がなかったので読んで良かった。読めてなかったら、「そういう性格の人」で片付けて、嫌な固定概念を押しつけてしまったかもしれない( ;∀;)。気をつけよう。

    『とにかく僕は「普通の子」に見られたいのだ。自分の性や恋愛について、誰にも言わないのは自分自身が偏見の強い人間である証拠だ。そのくせ、誰かに「普通の子」と言われるとは引っかかってしまう。』

    2025.6

    • コルベットさん
      きなこ餅さん、こんにちは。自分自身が偏見が強い証拠、すごく分かります。これを言ったらやったら嫌われるかも?って、自分の中にある“こうあるべき...
      きなこ餅さん、こんにちは。自分自身が偏見が強い証拠、すごく分かります。これを言ったらやったら嫌われるかも?って、自分の中にある“こうあるべき”とか“こう見られたい”っていう自分自身の偏見の声が自分を縛ってるだけなんですよね
      2025/06/21
    • きなこ餅さん
      コルベットさん、はじめまして。
      フォロー後、いつも素敵な本を紹介されててタイムラインからよく見てます(*ノェノ)キャー。
      そうなんですよね…...
      コルベットさん、はじめまして。
      フォロー後、いつも素敵な本を紹介されててタイムラインからよく見てます(*ノェノ)キャー。
      そうなんですよね…正解なんて分からないのに自分の偏見で、がんじがらめです。せめて凝り固まってしまわないように気をつけながら、柔軟でありたいです。コメントもありがとうございました!
      2025/06/21
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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。13年に『海の見える街』、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる。著書にドラマ化された『感情8号線』、『ふたつの星とタイムマシン』『タイムマシンでは、行けない明日』『消えない月』『神さまを待っている』『大人になったら、』『若葉荘の暮らし』などがある。

「2023年 『トワイライライト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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