このドキュメンタリーはフィクションです

  • 光文社 (2024年9月26日発売)
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本 ・本 (244ページ) / ISBN・EAN: 9784334104337

作品紹介・あらすじ

作り手の作為を見抜くと、ドキュメンタリーは悪魔的に面白い。
『映画を早送りで観る人たち』の著者による、令和の新しいドキュメンタリー入門書!
あなたの部屋にカメラが設置してある状態での〝普段の生活″と、カメラがない状態での〝普段の生活″は、絶対に同じではないはずだ。
『さよならテレビ』『ザ・コーヴ』『主戦場』『映像の世紀』『水曜日のダウンタウン』……。
数々の作品を通し、ドキュメンタリーの加工性に迫る!

感想・レビュー・書評

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  •  広辞苑 第七版には、ドキュメンタリー「虚構を用いずに、実際の記録に基づいて作ったもの。記録文学・記録映画の類。実録。」とかかれているそうです。
     しかし、著者はこう言います。「ドキュメンタリーは虚実ないまぜ、意図と作為の産物である。」「ドキュメンタリーは虚実皮膜(だから面白い)、被写体も作り手も本心を隠しているかもしれない(から面白い)。」と。

     広辞苑の説明とはずいぶん異なりますw
     たとえ実際の記録に基づいて作ったものだとしても、切り方、つなぎ方は製作者の意図によるものであり、そこには製作者が視聴者に伝えたいことがデフォルメしてまとめられています。ワイドショーの記者がインタビューをして、都合のいい発言を部分部分繋げるのと大差ないのかもしれません(極論)。
     ドキュメンタリーの被写体にしても、写るということで、カッコつけたり、盛ったり、逆に控え目にしたりするかもしれません。ニュースでインタビューを受けたら、サービス精神が発揮されるのと似たところがあるかもしれません(偏見)。実際の記録だとしても、編集される限りドキュメンタリーは「作品」なのですね。

     著者は、ドキュメンタリーの作為性を「お笑い」や「プロレス」の構造と比較して、酷似性や手法を語ります。また、意図的なものと分かった上で、見る側の楽しみ方にも言及しています。
     この本を読んで、ドキュメンタリーに対して納得するか、ガッカリするかは、あなた次第です。この本を読むか読まないかも、あなた次第。
     そして、わたしのレビューを信用するかどうかも。。。

  • ドキュメンタリー [documentary]

    虚構を用いずに、実際の記録に基づいて作ったもの。記録文学・記録映画の類。実録。
    -広辞苑 第七版-

    作り手の作為を見抜くと、ドキュメンタリーは悪魔的に面白い。
    『映画を早送りで観る人たち』の著者による、令和の新しいドキュメンタリー入門書

    あなたの部屋にカメラが設置してある状態での〝普段の生活″と、カメラがない状態での〝普段の生活″は、絶対に同じではないはずだ。
    『さよならテレビ』『FAKE』『ザ・コーヴ』『主戦場』『さようなら全てのエヴァンゲリオン』『映像の世紀』『水曜日のダウンタウン』……。

    数々の身近な作品を通し、ドキュメンタリーの加工性に迫る!

  • 778

  • 図書館にて。
    とても面白かった。
    ドキュメンタリーってとても好きなジャンルで、今までマイケルムーア監督作品だったり、テレビのドキュメンタリー番組も好んで見ていた。この本の中に出てくる「映像の世紀」シリーズも大好きな番組だ。
    そういえばこの本の中で出てくる「さよならテレビ」という番組もリアルタイムで偶然見ていた。かなり以前の作品だが、この本を読んであれか、と思い出したほど印象的だった。
    良く言えばストーリー、悪く言えば筋書きや意図があってそれに沿って作ることでドキュメンタリーは面白くなるというのは納得だ。でも怖いことでもある。テレビは視聴者でいるとき完全に受け身の媒体だから、これってこうなんですよとまことしやかに言われたら簡単に信じかねない。
    人をフォーカスした番組についてのくだりも興味深かった。自分を取り上げた庵野監督の番組での発言のところも、あの番組も見たが今更そういうことだったのかと思った。普段映像を撮っている人が撮られる側になるとそういうセリフが出るのかと。
    ダウンタウンの番組のくだりは怖かった。もともとあの人たちの番組やネタは昔から大嫌いだったけど、正直どうしてか嫌いかあまりわかってなくて、そうだ、いじめみたいなことばっかりしていたから嫌いだったのかとこの本を読んで腑に落ちた。醜悪だが、結局あれを面白がる人の醜悪さをわかっているということか。
    嘘は言ってないけど、ドキュメンタリーで映していないこともたくさんある。いろんな角度から分析されていて、興味深く楽しく読んだ。

  • 反語的な題名から、事実(ファクト)を伝える手法、ドキュメンタリーのあり方について解説する。流行語大賞「ふてほど」が不適切報道と揶揄されるように、ファクトを伝えるメソッドについて考えさせられる一冊。

    カメラマン監督等の作者の視点が入った時点で純粋なノンフィクション作品はあり得ない。ドキュメンタリー作品も然り。
    それをあくまで事実と勘違いする人の多いことか。

    本書はドキュメンタリー映画についてが中心だが、新聞、テレビの報道も同様に撮影した素材を取捨選択した作為が含まれている。果たしてどれだけの人たちがそのことに気づいているのだろうか。兵庫県知事のリコール再選からマスコミとSNSの公平性か論点となりつつある今、本書は実にタイムリー。

    マスコミ、SNSその他反乱するネット記事、情報を入手しやすい時代だからこそ正しく判断する能力を誰もが持つべきだと思う。

    「歴史とは何か」のE.H.カーにつながる重大なテーマを投げかけた一冊である。

  • 本書で取り扱われるドキュメンタリーの幅の広さにまず驚くし、各章抜かり無く読み応え抜群で面白かった。バラエティ番組、プロレス、そしてフェイクドキュメンタリーまで言い及ぶことによってくっきりと浮かび上がるドキュメンタリーの本質。

  • ドキュメンタリーが、より恣意的である、ということは百も承知。それを、分かりやすく実例を通じて解説してくれている。

    やはり鑑賞済の作品は良く分かる。
    『主戦場』などは、なるほど、と大きく首肯しながら読んだ。

    また、被写体との距離、関係性の濃淡で捉え方が異なってくるという指摘も面白かった。
    確かに、日本人が撮る日本の姿と、他国の人による切り取り方は明らかに異なるだろう。
    それが、何を意図し、結果、何が見る側に伝わるかは、送り手の予想を超えることも、ままあろうかと思うが。

    見る側は、そうした、制作サイドの意図や、被写体との関係性や、見せ方の技巧をよく吟味しつつ作品を理解する必要があるし、結局、作品は、送り手と受け手の共作とも言えるものである、という思いを新たにする。

    ドキュメンタリー、セルフドキュメンタリー、モキュメンタリーに加え、お笑いの現場にまで言及したのも意外性があった。「しこみ」はどこまでフィクションかという議論は面白い。
    確かに、笑いは、現場で起こる予想外のハプニングが一番、笑える。笑わせることを意図した制作サイドにとって、そのファクト(ハプニングという事実)は、どこまでフィクションか? なかなか、興味深い、問題提起だ。

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著者プロフィール

1974年、愛知県生まれ。ライター、コラムニスト、編集者。横浜国立大学経済学部卒業後、映画配給会社のギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ)に入社。その後、キネマ旬報社でDVD業界誌の編集長、書籍編集者を経て、2013年に独立。著書に『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』(イースト・プレス)、『オトメゴコロスタディーズ フィクションから学ぶ現代女子事情』(サイゾー)、『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)、『ポテトチップスと日本人 人生に寄り添う国民食の誕生』(朝日新書)がある。

「2023年 『こわされた夫婦 ルポ ぼくたちの離婚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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