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Amazon.co.jp ・本 (204ページ) / ISBN・EAN: 9784334105143
作品紹介・あらすじ
コーヒーは苦くて甘い。人生も苦くて甘い。悩みにとらわれた人々の転機にコーヒーが立ち会う。それぞれが選択した未来は――。ある日、ルームメイトの実果が出ていった。入れ違いに現れた彼女の婚約者と、なぜか同居することになり――(「コーヒーの囚人」)。真面目が取り柄の地味な会社員が、上司との不倫におぼれた先で出した答えとは――(「隣のシーツは白い」)ほか、日常の先に潜む、どこか不思議な5つの物語
感想・レビュー・書評
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本の見返しと扉の色が、コーヒーを彷彿させてくれる本。五つの短編のなかの様々な場面で、コーヒーが登場していました。
『コーヒーの囚人』
自分を守るためのちょっとしたずるさが、三者三様の形で表現されていました。彼女と彼が、出ていくのと訪れるのが少しの違いだったことで繰り広げられた時間は、一見穏やかでした。しかし、その穏やかさの裏の心のなかは複雑でした。信用していた人の裏切りを、どう自分のなかで咀嚼していくのかが表現されていたように思いました。
グスタフ三世の、コーヒーの囚人の話は面白かったです。
『隣のシーツは白い』
箱入り娘の不倫。なにも失わないずるい男性に嫌悪感を感じました。最後の場面は、不器用な彼女のことをうまく表現している分、いたたまれなさを感じました。
『どこかの喫煙所で会いましょう』
読後感はすっきり。間違った自己肯定感の高さをスパッと切った最後がよかったです。他人のリスクに排他的では、いつか自分が同じような目にあうことに気づかせてくれました。
『招かれざる貴婦人』
ようやく手に入れたマイホームでの出来事。あり得ない状況をやり過ごすなかで起きたできごとで、主人公が変わっていきました。
こんなふうに日々の経験を重ねることで、女性は強くなっていくように思いました。
『風向きによっては』
はじめの『コーヒーの囚人』とつながっていました。似ているようで似てなかった男女の物語でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人生の転機となるような場面で、さりげなくコーヒーが出てくる短編集。
コーヒー好きとしてはとっても心惹かれてしまう本。装丁の色味も好みで、グレーのニュアンスカラーが内容にもしっかりマッチしていると思う。
登場人物に起こるハプニングは、自分の身にも起こりそうで、起こらないかな…という絶妙なバランス。
(実際に起こったらイヤなのは間違いない。)
何か思わぬことが起きた時に、落ち着いてゆっくりコーヒーを淹れてみるって、確かにちょっと冷静になって我に返るきっかけになりそうだと思った。
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全てのお話がにコーヒーが出てくるので飲みたくなる。
お話事態もほろ苦さがあって切ない。
コーヒーの囚人は同居している友達が不在の間その恋人と暮らすことになる奇妙なお話。だんだんと距離が縮まる二人だったが、お互いの秘密には踏み込めないもやもや感がありつつ、最後は意外な真実だった。
隣のシーツはもう虚しさしか残らなかった。上司が滅茶苦茶嫌な奴かと思ったが後半はどっこいどっこいかな。
どこかの喫煙所で会いましょうがスピード感もあって、はっきりしたストーリーだったので印象に残った。さんざん男性達を振り回してきたけど、最後に見切りを付けられたであろう最後にスッキリした。
招かれざる貴婦人がちょっとホラー味が・・・これはミイラ取りがミイラになる展開だったのかな?
風向きによってははちょっと自分には難しい内容だった。言葉では表せないなんとも言えぬ最後。 -
コーヒーが大好きなのでタイトルを見て思わず借りてしまいました。
表題作の『コーヒーの囚人』を含む5篇の短編集ですが、どのお話にもコーヒーが登場します。ですが、コーヒーは主役ではなく脇役的な存在です。
どのお話にも自己中心的な人物が出て来てちょっとモヤモヤしながら読みましたが、『どこかの喫煙所で会いましょう』の結末はスッキリしました。
ラストの『風向きによっては』が最初の『コーヒーの囚人』と繋がったお話だったのも面白かったし、全くテイストの違うお話なのにピンポイントでコーヒーが登場してくるので、コーヒー好きとしては楽しく読めました。
私は読書のお供にコーヒーは欠かせなし、食後にも飲まずにはいられないのでコーヒーに囚われている1人かも。
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5編の各短編にはいずれもコーヒーが登場するが、期待していた癒し効果はほとんどない。むしろ、心の奥底に潜む負の感情を煽るようなアイテムに思えた。表題作の第一話から順に各話を簡単に振り返ってみたい。
<コーヒーの囚人>
同居人の実果が去った後、真波の住まいに彼女の恋人だという男性が訪れる。こうして彼との奇妙な同居が始まる。タイトルの意味は終盤に描かれるが、コーヒーとの関連がしっくりこない。漫画家としての成功を目指し、生活のためスーパーのバイトをこなす中での人間不信の方が印象に残った。
<隣のシーツは白い>
小夜子の不倫相手木戸に終始いらついた。人間的魅力皆無の彼を切らない小夜子にも。彼女がコーヒーを淹れる場面があり、美味しいらしいが、幸せな気分になれなくて残念。
<どこかの喫煙所で出会いましょう>
達樹は有沙にプロポーズしたが、彼女は指輪のブランドが気に入らないと言って返事を保留する。彼女は達樹との経緯をセフレの寿に愚痴る。達樹の生い立ちや結婚願望、寿の有沙に対する感情分析や社会への疑問など、考えさせられることが多い。有沙に対して憤りを感じたが、彼女のような打算が決して特別ではないと思うとやりきれない。
<招かれざる貴婦人>
希恵は夫と幼稚園児の息子との3人家族。夢の一戸建てで暮らし始めるが、ほどなくその中古住宅の前の住人が頻繁に訪ねてくるようになる。彼女「貴婦人」こと路子さんはある日、リンゴをのどに詰まらせた息子を適切な方法で助ける…。希恵のルンルン気分が壊されていく展開にぞっとした。仕事を辞めてよかったという結末が何か中途半端に思えた。
<風向きによっては>
ああ、そうだったのね、という結末。女性の方は男性の方を「自分のことしか考えていない」と言うが、それは彼女も同じ。
正直読後感はよくない。でもどんどん読み進んでしまうのは、自分の心の中を見透かされている気分になったから。見たくないのに見てしまう、そんな本能を感じる作品だった。 -
魅惑的な香り、美味しさ、濃く、苦味、コーヒーと恋愛を重ねながら、読んでいた。恋愛には、酸いも甘いもあるけれど、この作品集は、酸いが多めで、恋愛する中で、知らないうちに通り過ぎる違和感や噛み合わなさみたいなものが思い起こされる感じがした。
最後に、実果の人となりに触れる機会があって、嬉しかった。 -
私自身、そして近しい友だちも(おそらく)経験したことがない恋愛の短編集でした。恋愛で切なくなる一歩手前、泥沼化しない恋愛、男女関係を生きている人もたくさんいるのでしょうね。好きなコーヒーを飲むことと同じように、男女関係が当たり前にあって、人生に花(?)を添えているっていいなぁと思いました。『隣のシーツは白い』のラストシーンで、梶井基次郎の『檸檬』を思い出し、現実はそんなカッコ良く終わらないよね〜と、共感、クスッとしました。
人それぞれの人生を生きた気持ちになれるから、小説を読むのは、やめられない!です。
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5つの短編は、どれも微妙に歪んでいて、心の中のちょっとダークなザラッとした部分を晒されるような気持ちになる。どのストーリーにもコーヒーがさりげなく登場するが、帯文句にもあるように「立ち会う」というくらいのポジションなんだけど、コーヒー本来の苦さがものすごく際立っている。
無機質な雰囲気のカバーはグレーベースでとことんシンプルだが、見返しは深い茶色、本扉の隅にコーヒーのしみ。章扉のイラストがそれぞれのストーリーの内容をうまく表現している。計算されたブックデザインがこの作品にすごく合っていていいなと思った。
展開的に「え!?」と戸惑いながらも、成り行きで距離を縮めていく男女の関係を描いた表題作がお気に入り。ビターな中にも、わずかに感じる甘さが印象的だった。 -
4寄りの☆3。
表題作含む、お話のどこかにコーヒーについての描写がある短編集。
最近手にする短編集は、意図していないけれど連作物が多かったので、2編を除いて連作ではない短編集は、結構新鮮だった。
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【コーヒーの囚人】
「……僕も一緒に待っちゃダメですか?」
恋人・実果のルームシェア先に、婚約者の杷野哲彦(はの あきひこ)が押しかけてきた。
ルームシェアをしている桑高真波(←主人公)は、実果は何度もおなじことを繰り返しており、その都度、戻ってきていることを把野に伝えると、彼はこの部屋で実果の帰りを待ってもよいか?と言う。
こうして始まった、奇妙なルームシェア生活だったが…
→こういう展開だと、通常は把野が主人公になりそうなのに、そうではなく、ルームメイトの真波が主人公なところが、新鮮だった。
真波と把野の関係性は、ルームシェアとはいえ、一緒に住むことになったことで変化していくのだが、その着地点が、想像の斜め上だった。
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【隣のシーツは白い】
箱入り娘として育てられた小夜子は、過保護な母親の言動に遅い反抗期を迎え、27歳の秋、ようやく一人暮らしを始めた。
そしてその就職先の花見の夜、上司の木戸の強引な行動により、不倫関係となってしまう。
ある日、小夜子は出社ルートを変更し、木戸宅の前を通るようになる。
木戸の家に、真っ白なシーツが干してあるかどうかを、確認するだけのために…
→木戸は小夜子に対して愛があるわけでもなく、小夜子もそれを、わかっている。小夜子もまた、木戸のことが好きで好きで…というわけでもないのだが、ズルズルと2人の関係が続いていく。
木戸の家にシーツが干されるということは、その前の晩に、木戸夫妻の間に情事があったことを意味している。
それを、確認しに行く小夜子の姿には、木戸のいる世界を冷めたように感じている小夜子が「いる」のを、感じる。
ラストの展開は、衝撃。
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【どこかの喫煙所で会いましょう】
婚約指輪を準備し、恋人の有沙にプロポーズした達樹(たつき)。しかし有沙には、「指輪のブランドがあり得ない」と、ケチをつけられたあげく、「達樹と結婚するとは決めてない」と言い放たれてしまう。
一方、そんな有沙とある喫煙所で出会い、セフレとなった目黒は、会ったこともない達樹に対する有沙の愚痴を聞きながら、考えていた…
→話は、達樹と目黒、2人の目線からのモノローグで進んていく。有沙のモノローグは、1回もないので、彼女の心のうちは、2人からの情報しかないのだが、それを素直に受け取れば「なに、このオンナ」ということになるのだろう。
子どもは欲しくないけれど、障害児の親にはなりたくないという有沙の考えは、正直、わからなくはない。ただ、そういう有沙は、リスクを下げたいと言って相手を非難する一方で、自分の喫煙は止めないのだ。
達樹、目黒、有沙という3人の考え方や言動は、それぞれに共感できるところと、そうではないところがあった。
そして、「他人の持つリスクに排他的でいれば、それはいずれ己にも降りかかってくるのだ。」(137ページ)という目黒の言葉が、この物語全体を貫き、ラストの展開へと導いていた。
3人のこの展開を、あえて何かのせいにするとすれば、どんな子が生まれても楽に育てることができないこの社会が悪いし、まわりまわってそんな社会を作り上げて作り直そうとしない人間の、自業自得ということに、なるのだろうか…
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【招かれざる貴婦人】
息子が小学生になるまでに一軒家を…!という、希恵の願いは、思いがけず一目惚れした中古物件を購入できたことで、叶った。
しかしある時から、前の住人だった老婦人が、定期的に訪ねてくるようになり…
→老婦人が、なぜ中古物件を売りに出したのか?なんで老婦人が訪ねてきていたのか?最後まで読んでも自分にはわからなかった。希恵の内職であるテープ起こしの豆知識は、ちょっと「ほー」っとなった。
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【風向きによっては】(書き下ろし)
「この女を、撮りたい」
ひと月前に会った女性・実果を連れ、マクタン島を訪れた牧。1冊目のフォトブックが売れ、勤めていた不動産会社は辞めてしまった。2冊目のフォトブックの話も、出版社から期待されている。
始めこそ、実果との関係は、写真もカラダもうまくいっていたが、少しずつ微妙なズレが見え始める。
そしてほどなくして牧は実果ではなく、ホテルで働く少年・ガブばかりを取るようになってゆく…
→牧の連れてきた女性が「実果」と知り、話がつながった。「コーヒーの囚人」と合わせて読んでほしい。
実果といい、別の作品の有沙といい、タイプは違うのに、なぜかおなじグループで括りたくなった。
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「コーヒーの囚人」
「隣のシーツは白い」
「どこかの喫煙所で会いましょう」
「招かれざる貴婦人」
「風向きによっては」
5話収録の短編集。
現在、大注目している砂村かいりさん。
今まで刊行された長編五作品も良かったが、初の短編集となる本作も面白かった。
どの物語にもコーヒーがアクセントとして登場する。
ほんのりとした甘やかさを感じていると突如現れる酸味と苦味にやられる。
身近に存在していそうな登場人物に自分を投影し、共感したり悩んだりしながら読み進めた。
棘も毒もあるけれど、随所にドキッとする言葉が散りばめられた上質な短編集。 -
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砂村かいりさんの二冊目。
展開や構成が抜群!というわけではないんだけど、この人の選ぶ言葉で綴られるストーリーと、波長が合うような気がする。
奥田亜希子さんみたいに。
「コーヒーの囚人」は、同居人の元?恋人が急に押しかけてきて一緒に住むという話なのだけど。
真波が副業として働くスーパーでのエピソードに、なんだかグッと心を掴まれる。
今までは一つの業務に集中できたのに、なぜかチーム毎に調理から陳列までを競わされる。
それが明らかに効率を悪くしているのに、リーダーは自分のやり方が正しいと固執するのだ。
あー。なんか分かるなー。
そうやってイライラしても、何も変わらない。
どころか、自分の立場を悪くするだけだったりする。
こんな小さなエピソードが、楽しい。
「どこかの喫煙所で会いましょう」は、構成も上手い。
30歳を間近に迎えた一人の女性を巡る、二人の男性が交互に視点人物になって展開する。
女性の持つ二面性の、それぞれを好きになる二人の男性の対比も面白いのだけど。
誕生日を前にした彼女が二人に向けて「結婚」をちらつかせてからの、二人の思考もまた面白い。
これ、映像化してもいいんじゃないかなー。 -
コーヒーのような苦いお話の短編集。
人間関係がリアルで、そう都合のいいことばかり起きないもどかしさがよかった。表題作が1番好きかな。 -
読み物としては面白かったです。でも内容が好みでは無い。
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どの物語にも必ずコーヒーが登場するのだが、それはほっと癒してくれるものだったり、ほろ苦さを味わうものだったり様々で、何だか人生の難しさやもどかしさを表しているようだ。
特に印象深かったのは「どこかの喫煙所で会いましょう」。恋人の兄が障害を抱えていると知り、結婚を躊躇する有沙の気持ちが理解できなくもないし、それを知って気持ちが冷めていく彼氏の気持ちも分かる。しかし一番心に残ったのは有沙の浮気相手である寿のセリフ。
「人は誰しもリスクを背負って生きている」
「他人の持つリスクに排他的でいれば、それはいずれ己にも降りかかってくるものだ」
まさに、そのリスクに対応する努力をし続けることこそ人生なのだと思う。
順風満帆な人生などあり得ない。誰しも悩みを抱えており、正論だと分かっていても納得できなかったり受け入れられないことだってある。もやもやする思いを抱えながらも進んでいく人たちがよく描かれていた。 -
5つの作品が入った短編集。
どれもさくっと読める。
ちょっとした毒気が感じられる作品たち。
コーヒーの囚人が一番好きだった。
まぁ、シチュエーションはありえないけど。 -
ちょっと難アリの人物たちが出会い、不器用に関わりコーヒーを飲む。
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少しもやもやとした読後感。「コーヒー」の味と香りをもっと深く楽しみたかった。
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コーヒーにまつわる5つの物語。なんとなく今回の砂村作品は自分の中でハマらなかった。砂村さんの長編作品が好きという好みの問題な気がしてる。
砂村かいりの作品
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