旅情夢譚 (光文社文庫)

  • 光文社 (2025年2月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (344ページ) / ISBN・EAN: 9784334105709

作品紹介・あらすじ

木曽山中の旅籠に泊まり合わせた男女学生達の間で起きた毒殺、房総の海に浮かぶボート上での不可解な刺殺、シンガポールの椰子林で発見された売れっ子芸妓と猿の変死体の謎……地方や海外等の旅先で出来した妖しく凄惨な13の殺人事件。時代を超えて読み継がれる名著「半七捕物帳」をはじめ多くの怪談や人情物などを著したエンタメ小説の源流、岡本綺堂の珠玉集!

感想・レビュー・書評

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  • 岡本綺堂『旅情夢譚』光文社文庫。

    岡本綺堂の小説は大昔に『半七捕物帳』を読んだくらいしかない。

    本作は13編収録の短編集である。さもない事件から、怖さを感じる事件まで、宿地を舞台にした様々な事件が描かれる。昭和よりも前の大正時代の作品。


    『山椒の魚』。実際に起きる事件というのは偶然も重なり、実に呆気ない真相であったりもする。まだ中央線が開通していない時分の木曽路の旅籠で起きた二人の女学生の毒殺事件。タイトルの『山椒の魚』は事件とは一切関わりが無い。

    『剣魚』。事実は小説よりも奇なり。女心はさらに奇なり。房総の海水浴旅館に泊まった男性が芸妓と二人で海にボートで漕ぎ出し、芸妓だけがボートの中で遺体となって発見される。

    『医師の家』。田舎で起きる事件というのは様々な人間模様、或いは人間の業が浮き彫りになることが多い。それは報道などで伝えられる硬質な事実ではなく、噂話という生々しい情報によるものだからではないだろうか。福島のとある静かな田舎町で巡査が語る奇妙な事件。

    『ぬけ毛』。死ぬ理由にも色々あるが、二十歳そこそこで死ぬ必要など無い。上州の温泉宿で身体を休めようとする主人公。主人公が逗留していた部屋を代わって欲しいと申し出る二十歳そこそこの二人組の女性。

    『椰子の実』。真実は藪の中にあり、全ては推測に過ぎない。シンガポールの日本料理屋で起きた奇妙な事件。若く美しい芸妓が椰子林で頭に椰子の実が落ち、亡くなる。その後、その椰子林で男性と猿の射殺死体が発見される。

    『狸の皮』。人を化かすという狸。人は見掛けによらない。信越地方の宿屋で知り合った若い女性が180円で買ったという狸の皮のひざ掛けを紛失したと騒ぎ出す。

    『娘義太夫』。ミステリー色の強い短編。娘義太夫に毒を飲ませたのは誰か。

    『狸尼』。犬嫌いの若い尼僧が地蔵の近くで亡くなっているのが発見される。

    『蛔蟲』。何とも気持ちの悪い結末だ。宿に泊まった芸妓と男。男は翌朝、遺体となって発見される。

    『河鹿』。怪談のような短編。河鹿の声が聞こえる宿で起きた怪異。

    『父の怪談』。父から聞いた怪談話。大小の蛙が家の中に現れたり、家の中で石が落ちてきたり、狐に化かされた話など、よく耳にした怪談話が紹介される。

    『山の秘密』。まさかの山窩話に驚いた。

    『五色蟹』。宿屋の風呂で二人の女学生が怪死するという事件が描かれるが、真相は明かされない。

    本体価格800円
    ★★★

  • 岡本 綺堂 【劇作家/小説家】 | 勝央美術文学館
    http://museum.town.shoo.lg.jp/artist/11

    作家別作品リスト:岡本 綺堂 | 青空文庫
    https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person82.html

    フリーワード “岡本綺堂”の検索結果 | 光文社
    https://x.gd/H2Mau

    旅情夢譚 岡本綺堂(著/文) - 光文社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784334105709

  •  収録作は、「山椒の魚」「剣魚」「医師の家」「ぬけ毛」「椰子の実」「狸の皮」「娘義太夫」「狸尼」「蛔蟲」「河鹿」「父の怪談」「山の秘密」「五色蟹」の13編。

     殺人事件や人の死、あるいは不思議な出来事などの怪異が語られ、大体はその真相が明らかにされる。題名から分かるとおり、時代を感じさせる作品もあるが、いずれもスラスラ読めて、綺堂らしい語りの巧みさ、面白さが味わえる。

  • 収録作品は、山椒の魚/剣魚/医師の家/ぬけ毛/椰子の実/狸の皮/娘義太夫/狸尼/蛔虫/河鹿/父の怪談/山の秘密/五色蟹。探偵要素のある短編を集めたもので、探偵夜話から8編を採っている。

  • 帯表
    摩訶不思議な殺人は
    夢か現か幻なのか?
    日常を離れた旅先で出来した妖しく凄惨な13の殺人事件
    光文社文庫未収録短編集

    はしがき
    山椒の魚
    剣魚
    医師の家
    ぬけ毛
    椰子の実
    狸の皮
    娘義太夫
    狸尼
    蛔蟲
    河鹿
    父の怪談
    山の秘密
    五色蟹

  •  もうちょっと本書の成り立ちを解説かなにかではっきりさせてほしかった。オビに書かれた文句や、巻末の「定本一覧」をみる限り、たぶん一九二〇年刊の『慈悲心鳥』に収録された短編と、そののちに発表された短編とを再編集して、この書名で光文社時代小説文庫から改めて出しました、ということなんだと思う。内容は、刊行当時か、ちょっと昔(幕末から明治にかけて)に起こった殺人事件を、怪奇小説風に書いたものが多い。謎解きといっても、ほぼ物の怪の仕業であることがわかって物語は終わる。書かれた時代が時代なのでしょうがないけれど、様々な種類の差別の詰め合わせのような短編集でもあり、これが好き! という感想を書くのはちょっと躊躇ってしまう。情念を髪の毛に象徴させている「ぬけ毛」と、当時のシンガポールが舞台の「椰子の実」が、あれこれ気になる表現はあるけれども、独特の余韻を残す。

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著者プロフィール

(おかもと・きどう)1872~1939
東京生まれ。幼少時から父に漢詩を、叔父に英語を学ぶ。中学卒業後、新聞、雑誌の記者として働きながら戯曲の執筆を始め、1902年、岡鬼太郎と合作した『金鯱噂高浪(こがねのしゃちほこうわさのたかなみ)』が初の上演作品となる。1911年、二代目市川左團次のために書いた『修禅寺物語』が出世作となり、以降、『鳥辺山心中』、『番町皿屋敷』など左團次のために七十数篇の戯曲を執筆する。1917年、捕物帳の嚆矢となる「半七捕物帳」を発表、1937年まで68作を書き継ぐ人気シリーズとなる。怪談にも造詣が深く、連作集『三浦老人昔話』、『青蛙堂鬼談』などは、類型を脱した新時代の怪談として評価も高い。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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