エジプト女王の棺 (光文社文庫 や 1-3)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334701208

感想・レビュー・書評

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  • <女王の初期作品! すでに一度読んだら忘れられなくなる名作の条件を備えている>


     山村美紗初期の意欲作、1980年の『エジプト女王の棺(ひつぎ)』。人気作家となり量産体制に入る前のミサミサが著したこの作品は、もともと彼女には違った資質もあったことを示しています。後年の軽さやスピード感のかわりに、一つ一つ精緻に論理を積み上げていくじっくりテイストが心地いい、初心の表れた好作です★

     エジプトと京都の二拠点型(!?)という壮大な舞台設定で、美術品をめぐるストーリーに女子中学生が関わる社会事件も絡み、一筋縄ではいかない構成をとる長編☆
     京都美術館で行われていたエジプト展から、展示物を盗み出そうとした男が謎の死を遂げます。その2年後、修学旅行中の女子中学生が宿の屋上から転落死。彼女が遺した言葉「エジプト・ミイラ」の意味とは……!?
     娯楽作品の体裁をとりながらも社会問題への警鐘を鳴らす野心作。重々しくならない調子で問題提起を忍ばせる、美紗サスペンスのテクニックが、より大きな重大なテーマに使われたことに注目したい!!
     また、「日本のアガサ・クリスティー」という渾名に私はさほど思い入れがなく(笑)、「美紗は美紗でしょ、違う魅力があるよ★」と生意気にも思っているのですが……、本作は確かに、良い意味でクリスティーを彷彿とさせる味を楽しめます☆

     ところで聞きかじりですが、人の記憶に深く刻まれる名作の条件として、何かひとつでも、固有名詞が脳に刻み込まれるというものがあるのだとか。登場人物の名前か、もしくは作中で鍵を握るアイテム名など……★ なるほど、名前を覚えられないと、いくら面白い作品でも後世まで残ることは難しいですよね。
     その点、本作は「カ○○○容器」という名称が連呼されていて、記憶に焼きつく効果絶大★★★ もったいないので伏せておきますが、一度読んだら何度だって「『エジプト女王の棺』といえばカ○○ス容器!」と条件反射的に思い出す読者が少なくないでしょう★

  • アガサクリスティのエジプトものと並ぶとも劣らぬ物語だと思う。
    カノピス容器というものがあることを知りませんでした。
    エジプトに関する展覧会が会ったら,ぜひ見てみたいと思いました。

    文化に対する興味を引き出すところが、アガサクリスティと山村美紗の共通点かもしれない。

    ミステリの女王の面目躍如だと思った。

    残念では、カッパノベルスの著者の言葉で「エジプトの秘宝」と「売春という古代エジプト王朝から存在した最も古い職業」
    を紹介している。

    また、「推理小説の三要素は、魅力的な謎,論理的な展開,意外な結末の3つだと言われる」
    「社会的な問題提起というお釣りがくる」
    と書かれている。

    山村美紗の作品のよいところは三要素に加えて
    1 著者の分身としての主人公の人間性
    2 京都などの古い文化の紹介
    3 調子のよい会話
    の3つだと思う。社会的な問題提起は人間性の要素の1つかもしれない。

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著者プロフィール

山村美紗
京都府京都市生まれ。京都府立大学文学部国文科卒業。教師として教壇に立つかたわら、一九六七年ごろから執筆活動を始め、テレビドラマの脚本などを担当。七〇年「京城の死」(『愛の海峡殺人事件』と改題)で江戸川乱歩賞候補になる。七四年『マラッカの海に消えた』で本格デビュー。八三年『消えた相続人』で日本文芸大賞受賞。九二年に京都府文化賞功労賞、京都府あけぼの賞受賞。九六年九月没。

「2022年 『在原業平殺人事件 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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