太陽の汗 (光文社文庫)

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著者 : 神林長平
  • 光文社 (1985年9月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334702243

太陽の汗 (光文社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 世界各地に配備した情報収集機械が集めたデータを扱うシステム会社から派遣された米国籍と日本国籍の二人の男。舞台は自動翻訳機により異種言語ユーザー同士の意思疎通も可能になった世界だが、実際にストーリーの舞台になるのはそうした世界の中の、かつてインカ帝国が栄えた地であるペルーの奥地。デジタルなコミュニケーションが当たり前になった世界の“現実”が、アナログな世界の中でいつしか“幻”へと横滑りしていく――
    機械が収集し転送する“データ”、電子双眼鏡やビデオカメラが捉える“映像”、それらは現実の事象をデジタル化したものであり、現実の事象そのものではない。通信機器も兼ねる自動翻訳機が相手へ届ける言葉、音声入力可能なワードレコーダーに記録される文章、それらも現実に話者から発せられた言葉そのものではなく、機械が解析しアウトプットした“データ”だ。現実とデータの間に齟齬が生じた時、人はどちらを信じるのだろう? 存在を客観的に裏付ける“データ”を持たない存在は、現実にそこに在っても「ない」ものとなるのか? そんな問いを、比喩でなく実際に「存在が消える」物語として描けるのは、小説という世界ならではだ。
    事象は、それを見る主体者が存在を信じた瞬間に“現実”となる。データを信じるかどうかではなく、データの先に存在を感じるかどうか、結局は感覚が確信を生むということか。二人の男は、最後にそれぞれ違う“現実”を信じる。どちらが幸せでどちらが不幸ということはなく、それぞれ信じる感覚が違えばそうならざるを得ないということなのだろう。
    機械、そして言葉といったテーマは神林作品らしいものだが、ペルーという地域設定のせいか、特異な印象が残る一冊。

  • 全世界に設置された情報収集機械「ウィンカ」を用いた情報ネットワークをもつ世界通信社に所属する技師の主人公、日本語しか話せない彼だが自動翻訳機を携えて、アメリカ人の同僚と古代遺跡周辺で通信反応の途絶えたウィンカの調査のためにペルーへと足を踏み入れることに・・・
    機械にコミュニケーション手段を依存した環境におかれた主人公がデジタルとアナログの情報の祖語をきっかけにして、異質な世界に迷い込んでいく過程には引き込まれた。

  • 神林作品の中で、一番とっつきにくいと思って保留していた作品。最初に読んだ時から10年後くらいに、既刊の神林作品を読み重ねた後でようやく何となくつかめたような気がしてきた。

    次に分かりにくくてつらかったのが『戦闘妖精・雪風』だったが、これも7回くらい読み直したら分かってきた。人間ドラマの部分は分かるんだけど、世界がよく分からなかったのだ。固いな……。哀しい。

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