奇想、天を動かす (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 974
感想 : 100
  • Amazon.co.jp ・本 (451ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334716622

感想・レビュー・書評

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  • 名ミステリとして挙げられていたので。
    北海道を走る夜行列車の中、踊るピエロが自殺して、その死体が消えた。同時刻に飛び込み自殺があり、またその死体が消えた。そして起こる爆発と、列車を見下ろす白い巨人。50年後の浅草の12円の殺人との、繋がりは。
    ずっと読み進めていてもおどろおどろしく謎だらけで、繋がりがさっぱり分からなかったのが、過去をたどっていくと老人の刑務所の悲惨さや悲しい過去がわかっていく。
    最後に真相が見えたときは、なるほどなーと思った。

  • 奇想、天を動かす。
    現在、島田荘司氏を語る時、「冒頭における幻想的な謎と最後におけるそれらの論理的解決。それが本格だ」という持論を証明すべく書かれたのが本書であり、そのタイトルがその意欲を物語っていると評される。
    しかし、自分には今回最も苦慮したのがタイトルではないかと思えるのだ。
    今回はとても痛い。老人が余りに痛いのだ。救われないのだ。
    最後に故郷に妻がいるという衝撃は悠久の心痛を想起させる。
    テクニックと云えばそれまでだが、やはり最後は微笑みたい。

  • 関東シャカミス課題本。

    のっけから不可解で奇怪な連続、大風呂敷に身を委ねる。読み終えてここまで充実したのは初めてかもしれない。 話はこうだ。浮浪者風の老人が消費税12円に逆上し、店の女をナイフで刺殺した。黙秘の真実を知るため、捜査がはじまる。

    ピエロに巨人、大事故に奇想のオンパレードを地道な捜査(踏み入った場所の歴史的背景を説明するの大好き人間)で徐々に紐解いていく。
    過去の事実を問題提起し、社会派として物語包み込みながらも、メインのトリックは「あぁ…これ大好き」

    とっ散らかった妄想と着想が身を結ぶとタイトルの意味が浮かびあがり、途轍もない感動が待ち受けます。 文句のつけようがない傑作です。
    とうとうGODに触れてしまったようだ…

  • 島田荘司さんの作品は御手洗シリーズばかり読んでましたが、吉敷シリーズはこの作品が良いということで読んでみたところ、めちゃくちゃ引き込まれました。
    江戸川乱歩風の気味の悪い導入から始まり、そこからこの先どうなっていくのかと気になってしまい、どんどん読み進めてしまいました。

    読み応えありの非常に満足の一作でした!

  • ①ジェネレーションギャップ
    ②何度も演算したような、確かなミステリー

    感想はこの2つです。

    ①のジェネレーションギャップ
     とは、私は2021年にこの本を読みましたが、この本は1993年に発売していたようです。
    私が生まれるよりも昔にできた本は、時代背景が大きく異なっていることが、非常に面白い点です。
    この本の大きなテーマは、消費税が1989年から3%徴収という形で世間に浸透し始めた時期に、消費税を払いたくない老人が人を殺す という社会的で衝撃的な始まり方なのです。
    当時の世間での消費税へのネゴは凄まじいものだったと、本を読んだり、歴史を調べてみても思います。
    今でこそ当たり前となっている消費税 という認識を持ったまま、この本を読むと色々なギャップを楽しめると思います。


    ②の確かなミステリー
     とは、非常に細かく、何時何分、どの場所に誰がいて、アリバイは完璧だ というようにかなり具体的に時間と人物と場所が終始書かれています。
    私はミステリーが好きで良く読みますが、ここまで具体的に書かれているのは初めてだったように思います。
    (凄いとは思いましたが、具体的に記載内容の検証とかはしてないですが)
    好みの問題かとは思いますが、私はもう少し簡素にテンポ良く話が進む方が好きなので、くどく感じましたが、丁寧に練られたストーリーで、トリックであることは読んでてひしひしと感じていきました。

    奇想、天を動かす。
    古いミステリーと思って読んでみたら、日本と韓国の関係や、消費税導入などの社会的議論を生む話題にも繋がっていて、面白かったです。

  • 舞台は平成元年春、ボケた浮浪者が導入したばかりの消費税3%を巡って店員ともみ合いになった末に刺殺した――と週刊誌をしばらくの間だけ騒がして終わりと思われた事件は、薄皮1枚1枚剥がした先に昭和三十二年に起きた北海道の列車内の怪事件と繋がっていく、と言うストーリー。はじめチョロチョロ中パッパ、中盤で提示される5つの事件はまさに奇想天外。

    犯人は冒頭で現行犯で捕まっており、これは最後まで覆ることはない。よって平成の刺殺事件の動機と昭和の事件のトリックがメインの謎として描かれる。ピエロの死体消失トリックは(これ金田一少年の某事件を彷彿させるなぁ…)と思ったらまさにその通りで占星術に続いてやってくれた喃キバヤシ…。

    前知識ほとんどゼロで読んだのだが消費税、冤罪、強制連行など令和元年の今現在もタイムリーな話題がいくつか含まれていて何やら奇妙な縁を感じた。昭和が終わり平成も過ぎてもまだ終わらない悲しみと怒りが根底に残っている。あと出番はほんの数ページだが昭和の腐った警察のヘドロの塊のような便山のインパクトは絶大だった( ゚д゚)、ペッ

  • 本格と社会派の融合、まさに奇想が天を動かす名作。およそ不可能に思える死体消失や白い巨人の謎。そして消費税導入に際した衝動的殺人と思われた事件の背後にある深く長い苦痛と執念の物語。あまりに奇怪な謎が、社会的テーマを取り込みながら一挙に解かれていく様が見事な作品だった。「本格」部分にあたる謎解きはそう難しいパズルではないが、そこに社会的テーマや時代、風土の「ドラマ」が織り込まれることで非常に重厚感のある物語になっている。作者の個人的想いが投影され過ぎたきらいがあるが、それが登場人物を立体的にしている。

  • 2度目の読了。

    私は最初に読んだ時は吉敷シリーズのみならず
    島田氏作品の中でベストだという思いだった。

    2度目だから、当時ほどの感動はなかったものの
    やはりいい作品だなという思い。

    社会派ミステリーと本格ミステリーの融合
    という捉え方になるかもだが、
    どちらかというと「弱き人」への思いが
    生んだミステリーという思いがした。

    市井に暮らす虐げられた人の悲哀を
    本格ミステリーとして昇華しきったところに
    この作品が生まれたのかなと。

    いろんな人に読んでほしい作品。

  • 社会派として、本格として、どちらもハイレベルなものではあるんだろうけど、やっぱり両者は相容れないものなのかなと思ってしまった一冊。
    要するに社会派チックな背景を持った頭の切れる犯人が、奇怪な発想で事件を起こした。という構図なわけで、必ずしもそこに“本格”は要らないのでは?と。
    社会派で本格を書く必然性を生み出すのは、早坂吝『誰も僕を裁けない』のように社会派をガジェットとしてネタ扱いするしかないのか…
    島田荘司の小説を書く上手さと、本格を書く巧さが個々で際立ったための世間での高評価なのだと思う。
    いろいろ言ったけど、めっちゃ面白いし引き込まれるからやっぱ島田荘司すげぇ!
    ただ一つ、高木彬光の傑作トリックを丸パクリというのは気に入らない。まさか島田荘司ほどの作家が読んでないわけ無かろうに……

  • 密室から消えるピエロの死体、脱線事故を引き起こす白い巨人、動くバラバラ死体…。不可能としか思えない難攻不落のピースを、理詰めで解決する様は圧巻です。
    そして、その事件の裏にある社会的背景へのやるせなさが強く読者に訴えかけます。本格ミステリーと社会派ミステリーが見事に融合した傑作で、数ある著者の作品群の中でも間違いなく5本の指に入るクオリティーだと思います。

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著者プロフィール

●著者紹介
1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2021年 『島田荘司選 日華ミステリーアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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