- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334719449
作品紹介・あらすじ
13歳の八木沢順が、刑事である父の道雄と生活を始めたのは、ウォーターフロントとして注目を集めている、隅田川と荒川にはさまれた東京の下町だった。そのころ町内では、"ある家で人殺しがあった"という噂で持ち切りだった。はたして荒川でバラバラ死体の一部が発見されて…。現代社会の奇怪な深淵をさわやかな筆致で抉る、宮部作品の傑作、ついに文庫化。
感想・レビュー・書評
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作者初期の作品。平成2年にカッパ・ノベルスに書き下ろしとして出版されたものだそうです。
なお、初出時は「東京殺人暮色」というタイトルで出版されていますが、平成6年の文庫化の際に「東京下町殺人暮色」と改題され、さらに平成23年にティーンズ向けレーベルに収録されることになったのを機に「刑事の子」と再び改題されています。確かに「下町」はついたほうがよいと思いますが、「刑事の子」はないだろうと思います。まあ商品なので売りたいのは当然でしょうが、でもタイトルだけ変えるって…てか、そもそも今どきの中学生向けの内容ではないだろうと思いますけどね。
さて、作品自体ですが、安心安定の宮部作品、タイトルに入った「下町」の人情を感じつつ、ラストもハッピーエンドで気持ちよく読み終えることができます。古さを感じる部分…馴染み客の個人情報を安易に教える店とか、「家政婦」さんの存在とか、高級車「シーマ」とか、少年法の改正とか…はあるものの、あまり気になりませんでした。
ただ、ミステリとして偶然に頼りすぎている部分…股の間から「火炎」を見て気がついたこととか、「シネマ・パラダイス」のマッチとか…が多いのが、まだまだ書き慣れていない感じがします。(上から目線で恐縮ですが)大作家の新人時代の作品って感じがして新鮮です。でも、下駄が屋根に当たったぐらいでは、シーマはコントロールを失くさないと思うんだ…。
あと、蛇足ですが。
宮部みゆきの作品を再読(比較的古いものから)していて、気がついたことがあります。結構パターン化されているのです。
意外な探偵役(犬だったり、家政婦だったり。いつも「この探偵役をシリーズ化すれば5~6冊は出せるのに」って思います)、ラストに用意されている大立ち回り(「パーフェクトブルー」でも「夢にも思わない」でも、この作品も)。
そして、「何かに怒っていること。」。「理由」ではバブルの崩壊と家族の在り方の変貌に、この作品では、「想像力のない少年たち」に。
パターンがあっても何ら面白さを損ねるものではありませんが、何となくへー、って思ったので自分用の覚えとしてメモしておきます。
さらに蛇足ですが、刊行後20年以上経っても、幸い、作者が怒っている相手が多数派になってはいません。昔に比べて増えてきた気はしますが…。 -
読んでて昔読んだような気もしたけど、家の本棚にあった本をお風呂で読んだ。
凶悪な犯罪をするのは想像力がないから。
そうかもしれない。
自分じゃない相手の立場に立てる想像力って何事にも大事。 -
とても読みやすく、また舞台も私の住んでいる場所と近くておもしろく読めたんだけど・・・
なんでこんなにラストがおざなりなんだ・・・? 現代の子どもたちの無知や短絡思考による犯罪みたいなものを描きたかったのかもしれないし、現代の親の子どもへ対する複雑でエゴきわまる思いを描きたかったのかもしれないが、どっちにしてもラストまでは非常に引き込まれ、ラストで「えええええ」とがっくりきてしまった。終わりよければすべてよし、はかくて正しい。「今までドキドキした時間を返せー!!」と言いたくなる。それでも印象に残る場面場面や、愛すべきキャラクターは捨てきれないのでこの評価。うーん、多作の作家にはそれなりの覚悟をもって臨まねば・・・なのか・・・ -
現在は改題されて「刑事の子」のタイトルで出版されている。
最近では歴史小説・SF小説が多い著者の、初期の頃の長編ミステリー。捜査一課の父が追う事件とは別に、ある奇怪な噂の真相を探る中学生の息子、この2人の視点から物語が紡ぎ出されるという最近では一般的になった構成だが、当時はまだ珍しかったのかもしれない。
現代とは違い、まだモバイルが一般的ではない時代ゆえ、噂の広まり方などにある種の懐かしさすら感じるが、それはそれで急展開が少ないので事件を追いやすい。現代ミステリーの古典版といった感じかもしれない。 -
久々の宮部みゆきさん作品。
模倣犯や火車などの作品が好きなので今回もハマった。
2日で一気読み。
順のお父さんかっこいいなー -
面白かった
家政婦のハナさんが只者ではない
去年マリエンバートでを観たくなった -
少年探偵団風。殺人事件をめぐり、下町や画家、家政婦さんたちや友達とのやりとりが面白く、簡単なのでサクサク読めた。
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順、家政婦のハナさん、父の道雄、画家の東吾、才賀、不良の若者たち、順の友だち
下町であるけれど、時代とともにかわっていく人間模様。
残虐なバラバラ殺人事件の犯人は、、!とドキドキしながら読み進めているうちに、あっという間に読了。 -
あっという間に読めてしまう1冊でした。刑事とその息子と家政婦とが中心になっていてほっこりするけど、取り扱う内容については考えさせされた。戦時中の様子を描いた「火炎」、息子への間違った愛情、そして現代でも特に考えさせられる少年法。かなり前の作品とはいえ、今でもそれぞれが重要で考えていかなくてはならい課題が盛り込まれていて、最後の最後まで飽きなかった。強いて言うなら、ネタバラシのシーンが呆気なかったかな。それまでがすごく作り込まれていた感じがしたので。