屍蘭: 新宿鮫3 (光文社文庫 お 21-7)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334728571

作品紹介・あらすじ

犯罪者たちから「新宿鮫」と恐れられる、新宿署刑事・鮫島。新宿の高級娼婦の元締め・浜倉が殺された。事件に迫る鮫島の前に浮かび上がる産婦人科医「釜石クリニック」。背後に潜む呪われた犯罪とは?だが、鮫島に突然、汚職・殺人の容疑が!さらに敵の完璧な罠が「新宿鮫」を追いつめる!息詰まる興奮、圧倒的な感動!超人気傑作シリーズ第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • 新宿鮫第三弾。今回は鮫島の免職間近まで追い詰められたが、際どいところで事件が動く。看護師(おばちゃん)の殺人、綾香、光塚の殺人への関与などが交錯する。最後の詰将棋は、読み応え抜群で、シリーズ第三弾が今までで一番のド迫力。綾香がどことなく、東野圭吾の幻夜・美冬と被り、スーパーサイヤ人化していて、綾香のしたたかさ、姉への復讐方法は「やばさ」を感じた。フーズ・ハニーのヴォーカル・晶と鮫島の関係性も絶好調。晶の性格・男気は心地よい。次はいよいよ直木賞・第四弾。まだ買っていないので、少し先になりそうかな?

  • 面白いぃ!

    綾香はおばちゃんに生きる希望を貰ったのか…ふみ枝の方が綾香に生きる希望を貰ったのか。
    そもそも出会いから歪んでいたのだから、その歪みは最後まで歪んだまま…
    なんだか可哀想な二人だ。

    鮫島が罠にかけられたところから、ドキドキした。強いだけじゃない所が鮫島の魅力なんだなぁ。

  • 久し振りの新宿鮫。
    相変わらず面白くてさくさく進む。
    今回はハードボイルドな雰囲気は少なく、1人の女性を取り巻く人間達の翻弄と、警察官という鮫島の職務存続危機に関して描かれている。
    主人公はもとより、登場人物が魅力的なのが引き込まれる要素であることを実感。

  • 新宿鮫シリーズ第3作目です。
    「釜石クリニック」に関連する人物が、次々と生命を奪われていく。
    背後にある、島岡ふみ枝と藤崎綾香の関係は?
    そんな折に訪れる、鮫島への汚職容疑。
    危機感を抱きながら謎の真相に迫っていく鮫島と釜石クリニックのせめぎ合いは手に汗握ります。
    また、シリーズを通じて展開される鮫島の元同僚・宮本の遺書の秘密も気にかかります。
    鮫島と藤崎綾香がホテルのバーで初めて対面した時の、綾香の心情の描き方が秀逸で印象的でした。
    シリーズ物として、だんだん成熟度が上がっている様に感じた、第三作目でした。

  • 高級エステティック・サロンの若き女経営者として知られる藤崎綾香には、22年間昏睡状態を続ける従姉の須藤あかねがいました。綾香は幼い頃、自分をいじめていたあかねの命を救うため、腎臓を提供することを求められます。そんな自分の運命に絶望していた綾香を救ったのは、看護師の島岡ふみ枝でした。しかし、そのためにあかねを植物人間にしてしまうという罪を背負った綾香とふみ枝は、お互いに支え合うことで、その後も次々に罪を重ねていくことになります。

    ふみ枝が務めている釜石クリニックで、強制的に堕胎させられたカップルがいました。しかも、クリニックに苦情を申し立てにいった青年が行方不明になっており、鮫島はクリニックの周辺を捜査します。一方、ふみ枝に警察の疑いの目が向けられていることを知った綾香は、元新宿署の刑事だった光塚という男と協力し、鮫島を失職に追い込む工作を仕掛けてきます。以前から警察署の中で疎んじられていた鮫島は、数少ない理解者たちに支えられながら、事件の真相へと迫っていきます。

    結末は早い段階で見えるのですが、それでも鮫島がじわじわと追い込まれていく展開には思わず引き込まれてしまいます。

    「解説」を執筆している千街昌之は、前作『毒猿』と本作が、ちょうど京極夏彦の『鉄鼠の檻』と『絡新婦の理』と同様に、男性原理と女性原理を描く対をなす作品だと指摘していますが、この解釈にはうなづかされました。

  • 先が読めない。初期設定もわからない。それがどんどんおもしろくなって、見事に終わる。

  • 大沢在昌による新宿鮫シリーズ第三弾。
    高級コールガールの元締めをしている人物が死に、その近辺にいた人物が元警官だったことから、不審を感じた鮫島がやがて大きな事件に巻き込まれていく。
    本作では臓器売買、特に胎児の売買というデリケートな話題を本筋に据え、東南アジアの状況を踏まえた上で日本の役割といったものを活写している。
    本作が執筆されてはや十数年という月日が流れているが、実際に臓器売買や人身売買といった事例がなくなったという話は一向になく、むしろそういう事例が果たしてどのくらいの頻度で起きているのかすらわからない現代において、こういう行為が行われていてもおかしくないという意味で恐ろしくなる。
    また、本作で提示されている猛毒はもはや足のつきようがないほどの毒物だが、鮫島たちがこれにどう対処するのかも一つの見どころになる。
    はじめのうち、登場人物の人間関係がよくわからないが、関係がわかってくると俄然展開が面白くなり、その行先がどこに行き着くのかが気になって読む手が止まらなくなる。特にふさ枝というキャラクターが醸す雰囲気が絶妙。

  • 慎ましやかな生活をしている ふみ枝。
    ふみ枝は、看護婦であり、ある絆を大切にした。
    人間に対する 価値観 があり、
    あわせて、その絆は 溺愛ともいえるものだった。
    綾香 という 幼い娘の 閉ざされた 未来に
    光を与え、障害を取り除くことで、綾香の成功を祈る。

    晶に対する目線が、ふみ枝の価値観を明らかにする。

    しかし、ふみ枝が なぜ そのような絆を
    大切にせざるをえないかが、ぼんやりしている。
    狂疾的愛情。盲目的愛情。
    それを描ききり、ひんやりした感触を持ち続けた。

    そして、それを利用しつづける 綾香は、
    ビューティーサロンの経営者として 成功する。
    又、ウラ稼業も続けていた。

    胎児を臓器ビジネスとする。
    あわせて、生物兵器のような 血液凝固剤。
    あらゆるところに 血栓を起こし 『死』に至らしめる薬を
    ふみ枝に 与えることにより 殺人鬼とかえる。
    ふみ枝が 綾香の 悪の手足として 活躍する。

    一方 新宿署の元刑事 光塚を 相棒の一人とし
    三森を 臓器ビジネスの片棒を担がせる。
    女王のように君臨する。
    障害はなく 成功があるだけと思っていたが、
    新宿鮫が ふとした 産婦人科の事件を知ることで
    暗闇を暴き、そして 自らの立ち場を 悪くして
    追いつめられる。
    警官を やめざるをえないワナに はまろうとするが、
    個人ではなく 警察機構を守ろうとするチカラと
    警察の良心につながる 仲間によって、解決をする。

    イヤー。
    おもしろい。

  • 大人気シリーズ新宿鮫。1・2を高校時代、リアルタイムで読んで以来、なんだが遠のいていたシリーズだが、たまたま古本屋で発見したので、購入してみた。

    新宿署刑事鮫島と、ロックシンガー晶の恋愛も絡めつつ基本は新宿を舞台としたハードボイルドアクション。ところが今作はアクションの部分はなりを潜めており、どちらかというと心理戦。
    鮫島の敵となる相手も、一代でのしあがった美人実業家と、彼女を子供のように可愛がる看護婦という、アクションとは程遠い人たちに設定されている。
    ただしその看護婦は、実業家の彼女のためなら殺人もいとわない。
    そんな彼女たちが、鮫島を失職の危機にまで追いやる。

    二人の女性が出会うきっかけとなった、もう一人の女性が眠る病室の、むせ返るばかりの蘭の花。蘭に対する実業家の思いをストーリーの中で知ると、その思いの重さ・怖さに慄然とする。

  • ふみ枝が理解できない。

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著者プロフィール

1956年愛知県名古屋市生まれ。慶応義塾大学中退。1979年に小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。1986年「深夜曲馬団」で日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門受賞。1994年には『無間人形 新宿鮫IV』直木賞を受賞した。2001年『心では重すぎる』で日本冒険小説協会大賞、2002年『闇先案内人』で日本冒険小説協会大賞を連続受賞。2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞受賞。2010年には日本ミステリー文学大賞受賞。2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞、2022年には紫綬褒章を受章した。


「2023年 『悪魔には悪魔を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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