迷宮 (光文社文庫 お 9-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334729455

感想・レビュー・書評

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  • 1994年ということだから平成になって書かれた文章のはずなのに、文章も、構成も、戦前の文学のように時代がかっていて大仰。
    調べてみたら作者は大正生まれの方。
    そうか。
    多分普段からこのような小説を書いている方なのであろう。

    教養小説のように難しい思想や歴史が次々に出てきて、圧倒される。
    嫌いじゃないけど、難しすぎて頭に入ってこないのが実際のところ。

    引用される作家や思想家、彼らの文章が本当にあるものか、それともそれすらも創作なのかもわからず、くどいくらいに繰り返し書かれる文章が、何を意味しているのかを考え考え読んだ。
    ようやっとジョージ・オーウェルが出てきて、実在の作家の、実際の文章を引用していたのかと分かった。

    推理小説としてはあまりひねりはないけれど、別の意味で頭をたくさん使った読書。
    教養のない自分に愕然としたけれど。

  • 大西巨人の文学観・死生観をこれでもかと投影した作品。
    一人の断筆した作家の死を追うミステリータッチの文学(著者曰く「文学とは探求することなので、自ずと広義の意味で推理小説になる」とのこと)。
    十人十色の答えがある問題に対してここまで深く踏み入ったその野心を讃えたい。
    現代文学にはない熱さ。
    賛否あろうが、こういうのが読みたいんだよ。
    多分ここで提示されている文学観っていうのは物書きならば誰でも抱いているだろうけど、大西巨人クラスの大物でないと言えないのも事実。
    死生観っていうのはもっと厄介。
    創造力の維持して生き続けることの難儀さ。
    個人的にはこの作品の主張に大いに賛同したい。
    葬式も戒名も墓も要らない。

    大西巨人といえば「神聖喜劇」なのだが、実は漫画でしか読んだことがない(その漫画もかなりの労力を要する大作だった・・・)。
    現状では存命ながらあまり読まれなくなっているマイナー作家の一人だと思う。
    この本も2000年に文庫化されながら今では絶版のようだ。
    だが文学自体に見切りをつけているわけではないようなので、まだまだ頑張って書いて欲しい。

  • 『神聖喜劇』の衝撃的なおかしさはない。変な話。
    お酒の量とか細かなデータが満載で、ふふふとなること間違いなし。
    いや、ならない人のほうが多いか。

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著者プロフィール

作家(1916年8月20日~2014年3月12日)。福岡県生まれ。九州帝国法文学部政治学科中退。新聞社勤務の後、1941年12月召集され、以後敗戦まで対馬で兵営生活を送る。敗戦後、福岡で発刊された『文化展望』の編集に携わる傍ら、文筆活動を開始する。46年新日本文学会に入会、以後『近代文学』や記録芸術の会など、さまざまな文学芸術運動に関わる。48年日本共産党に入党、61年以降は関わりがなくなるが、コミュニストとしての立場は生涯変わらなかった。公正・平等な社会の実現を希求し、論理性と律動性とを兼ね備えた文章によって個人の当為を形象化する試みを続けた。1955年から25年の歳月を費やして完成した『神聖喜劇』は、軍隊を日本社会の縮図ととらえ、主人公の青年東堂太郎の精神遍歴の検証を通じて絶望的な状況の中での現実変革の可能性を探った大作で、高い評価を受けている。ほかの小説に『精神の氷点』(1948年)、『天路の奈落』(1984年)、『三位一体の神話』(1992年)、『深淵』(2004年)、批評集に『大西巨人文藝論叢』(立風書房、全2巻)、『大西巨人文選』(みすず書房、全4巻)など。

「2017年 『歴史の総合者として』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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