ペトロフ事件: 鬼貫警部事件簿 (光文社文庫 あ 2-32 鮎川哲也コレクション)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334731786

感想・レビュー・書評

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  • 日本における緻密な時刻表トリックの先駆的作品。
    舞台が満州なのにここまできな臭くないのは逆に新鮮。
    トリック、筋立てもさる事ながら、鮎川哲也は語彙が豊富でミステリと同時に文芸書を読んでいるような気分になる。いい。

  • ペトロフ事件
     プロローグ
     1 発端
     2 窓のない部屋
     3 アントン、不在証明を提示する
     4 アレクサンドル、不在証明を提示する
     5 ニコライ、不在証明を提示する
     6 ニコライの城砦
     7 新しい証言
     8 アントンの城砦
     9 アレクサンドルの城砦
     10 最初の凱歌
     11 第二の凱歌
     12 アレクサンドルの危機
     13 アレクサンドルの逮捕
     14 夜の客
     15 ナタリヤの北上
     16 最後の環
     17 ナタリヤの勝利
     18 終結
     19 解析
     エピローグ
    別冊宝石 1950年4月

    ペトロフ事件 鮎川哲也
    立風書房「鮎川哲也長編推理小説全集1 黒いトランク」 1975年7月

    著者あとがき 鮎川哲也
    青樹社「ペトロフ事件」 1987年6月

    エッセイ 二階堂黎人
    「特別賞」受賞について

    解説 山前譲
    鮎川哲也と満州

  • 舞台は戦前の満州。ロシア人富豪イワン・ペトロフを殺したのは三人の甥のうちの誰なのか。鬼貫警部によるアリバイ崩しものです。甥達の思惑はもちろん楽しめるのですが、戦前の満州での日本人中国人ロシア人という多民族のやりとりや情緒あふれる当時の情景が美しく描写されていて、まずはそこから楽しみました。アリバイ崩しは凝ってはいませんがひとつひとつ綺麗に潰していく安定したもので、時刻表や地図を眺めるのも(眺めるだけですが)楽しかったです。処女作で古い作品ですし本人は習作とおっしゃいますが文章は読みやすかったです。

  • 読むのもったいないから大事に取ってたのに読み終わってしまった。
    満州の地理というか距離感がつかめなくてそこがちょっと理解しにくかったけど、空気感とかは伝わってきておもしろかった。

  • 巨額の財産を狙った殺人か?旧満州、大連近郊でロシヤ人富豪イワン・ペトロフが射ち殺される事件が起きた!容疑者は三人の甥、アントン、ニコライ、アレクサンドルとその恋人たち。だが、彼らには一人残らず堅牢なアリバイがあった!鬼貫警部は得意のロシヤ語をあやつり、粘りづよく捜査する。…はたして満鉄の時刻表は何を語るのか?本格推理の巨匠初の長編にして、時刻表トリックの傑作。 (「BOOK」データベースより)

    色々な作家さんが尊敬してやまない本格推理界の重鎮、鮎川哲也氏。
    いつかその作品を読んでみようと思いながら、なかなか読めずにいたのですが、やっと読むことができました。

    鬼貫警部との出会いは、火曜サスペンス劇場のドラマが先。
    そのイメージを拭い去るのが難しいかなと思いましたが、満州の描写や個性的な登場人物によってあっという間に小説の中に入り込めました。
    地図や時刻表が添えられていましたが、特に時刻表に関してはほとんど見ないまま読み進みました。

    古い小説は読みにくかったりなかなか進まなかったりすることが多いのですが、ぐいぐい読めたのは鮎川氏の作品だからでしょうか。
    トリック自体は今はもう目新しさもないものでしたが、時刻表トリックのアリバイ崩しものの草分け的な作品と言うことで一読の価値はあると思います。
    私の大好きな有栖川有栖氏が敬愛する鮎川氏の作品をもっといろいろ読んでみたいと思っています。

  •  満州を舞台にしたアリバイ崩しもの。
     日本人や満州人、ロシア人が入り乱れ、よく解らない。土地名も解らないし、位置関係、距離感覚がない。なのでよく解らない。
     でも、そこそこ面白かった。

  • 鮎川哲也の初長編。想像してたのとは結構違った雰囲気だった。
    旧満州方面を舞台にしていることにまず驚かされるし、登場する大連とか夏家河子の光景の方がミステリの仕掛けより、むしろ印象に残る。
    また日本を舞台にしたほかの多くの作品でも、方言というのがよく登場するが、本作からしてロシア語や訛り混じりの北京語が登場し、通訳を通して、という場面も多い。
    言語の問題を意識的に描いているのが、自分には新鮮だった。

  • 容疑者3人の堅固なアリバイが崩れていく様はおもしろいです。
    時刻表トリックそのものは平凡かもしれませんが、解き明かす過程も楽しい。
    ラストにひとひねりありますが、ここまでアリバイ崩し、時刻表トリックに取り組んだのに、という気持ちも少し残りました。

    異国情緒溢れる満州の描写も素敵です。

  • 1950年発表

  • 鮎川氏の著書を読むのはこの本が初です。
    物語の舞台となる満州については教科書程度の知識しかないのですが、実際の満州は物語に描かれているような日本、中国、ロシアが入り混じったエキゾチックな地域だったのかしらと思い、今まで自分が思っていた満州のイメージとは違っていて新鮮に感じました。
    物語はシンプルで淡々さくさくと進んで行き、時刻表トリックもいたってシンプルでした。
    良い意味で素朴な感じがする物語でした。
    満足度は★★★☆☆。
    鮎川氏の原点があるような、そんな本でした。

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著者プロフィール

鮎川哲也(あゆかわ・てつや)
本名・中川透。1919(大8)年、東京生まれ。終戦後はGHQ勤務の傍ら、様々な筆名を用いて雑誌へ短編を投稿し、50年には『宝石』100万円懸賞の長篇部門へ投稿した「ペトロフ事件」(中川透名義)が第一席で入選した。56年、講談社が公募していた「書下ろし長篇探偵小説全集」の第13巻「十三番目の椅子」へ応募した「黒いトランク」が入選し、本格的に作家活動を開始する。60年、「憎悪の化石」と「黒い白鳥」で第13回日本探偵作家クラブ賞長編賞を受賞。受賞後も安定したペースで本格推理小説を書き続け人気作家となる。執筆活動と並行して、アンソロジー編纂や新人作家の育成、忘れられた探偵作家の追跡調査など、さまざまな仕事をこなした。クラシックや唱歌にも造詣が深く、音楽関連のエッセイ集も複数冊ある。2001年、旧作発掘や新人育成への多大な貢献を評価され、第1回本格ミステリ大賞特別賞を受賞。2002(平14)年9月24日、83歳で死去。没後、第6回日本ミステリー文学大賞を贈られた。

「2020年 『幻の探偵作家を求めて【完全版】 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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