半七捕物帳 3 新装版 (光文社文庫 お 6-18 光文社時代小説文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334732318

感想・レビュー・書評

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  • 本巻も14の短編が収められているが、いつもと変わらず読みやすいせいで、とんとん拍子に読了。中でも「松茸」は、丙午生まれを題材にとったものだ。自分も丙午と同学年の早生まれということもあり、前後の学年と比べて生徒数が少ない環境で育ったため、他人事ではなく腑に落ちた。ところで、干支が旧暦・立春を境にするならば、自分も丙午なのかな~?

  • 220110003
    江戸の空気を感じる作品群、やっぱり面白い。

  • 何話か、乱歩っぽさあった。
    むろん、時代的には逆なんだけど。

  • ・雪達磨
    大雪が降ったあとの江戸で、雪達磨が溶け死体が発見される。死体から南京玉が発見され、この南京玉が贋金づくりに使われているとわかる。

    ・熊の死骸
    大火事の際、逃げ惑う人々に混じって熊が現れる。この熊に襲われた娘を救ったのが縁で湯屋の男が娘に惚れる。この二人に熊の死体を盗み皮や肝を売ろうとする男たちが絡む。

    ・あま酒売
    あま酒売の老婆に出会うとその後、正体不明の病を発症するとして噂になっていた。そこに小間物屋の男と、彼に連れられた女がからむ。九州の蛇神の魔力で病にかかるという怪談風の話。

    ・張子の虎
    お尋ね者の逮捕に協力した遊女が、そのお尋ね者の妻が後に復讐され殺されてしまう。奉行所から褒美をもらい、お尋ね者に投げつけた草履を大事にしまっていた。犯行現場には張子の虎が置かれ、草履が片方捨てられていた。お尋ね者の男が寅年の生まれだったことから妻が置いたもので、逮捕のきっかけになった草履を持ちだしたものだった。

    ・海坊主
    品川の海での潮干狩りの最中、怪しげな男が現れ「潮が来る。はやてが来る」とわめく。その後、その通りの事態が起きる。これが噂となり、半七が真相を探る。男は八丈島へ島流しとなったが、泳いで帰ってきたもので、その後海賊の仲間になっていた。結局仲間割れをし、これが元で捕まった。

    ・旅絵師
    幕府の隠密が出会う事件を半七が語る。大名の代替わりの際、長男が死亡し、その後大名自身が死亡、そして次男が当主となる。経緯を探るため隠密が奥州へ向かう。旅の途中、隠密は旅絵師として身分を隠し、その際、欧州の金持ちの娘の命を助ける。これが縁でこの金持ちの家に逗留しながら藩の内情を調査していた。金持ちの男は御禁制の切支丹宗徒であり、旅絵師が隠密であることを見破り、見逃す条件として内密に模写することを頼んできた。模写は出来上がり、金持ちの男の協力も会って藩のない冗長さも終わった。しかし、命を助けた娘が横恋慕された若い男に殺されてしまう。隠密は娘の葬儀が終わるとすぐに江戸へ帰るが、途中、娘を殺した男が闇討ちに会ったと知る。その後、奥州で切支丹宗門の者が磔にあったとの噂を聞く。

    ・雷獣と蛇
    雷の直撃を受けて女が死に、男が近くで気絶していた。その後、雷が鳴るなかその男も死んでしまった。男は別の女と結婚を約束していたが、雷で死んだ女を妊娠させてしまった。二人で心中しようとした時に女が雷に打たれて死んでしまう。そこで、男が自分のもとに帰ってくると考えたが、そうはならなかったため男を殺してしまった。

    女の髪の毛を焼くと其の油の臭いを嗅ぎつけて蛇が寄ってくるという伝説がある。蛇捕りを商売にしている男が空屋敷のそばで試してみると、多くの蛇が寄ってきて玉のように髪にむらがった。不良少女の三人組の一人が蛇の玉のなかに手を入れたら姐御にすると約束させやってみせる。しかし、他の二人は約束を守らず言い争ううちに一人を殺してしまう。

    ・半七先生
    近所で仲の良い店の息子と娘が恋仲となる。お互いの妹に手紙を持たせてやり取りをしていたが、息子に別の女との縁談が持ち上がる。そこに息子の妹が手紙を手習いの先生に見られてしまう。恋仲の娘がそれを知り、妹をなじり首を絞めてしまう。死んだと思って妹を行方不明とし、親戚の男に死体を処分させようとする。半七が現場に駆けつけると妹は息を吹き返していた。親戚の男は妹を遊郭に売り、さらに死体処理の金をも取ろうと考えていたが、事件を内密にするため罪には問わなかった。

    ・冬の金魚
    俳諧の宗匠が冬でも湯の中で生きる金魚の取り引きの仲介をする。事件は金魚とは無関係に宗匠とその家の女中が死んでいるのが発見される。この二人と俳句の弟子の男との三角関係が明らかになる。女中が宗匠と別れ弟子と付きあおうとするが断られ宗匠を殺す。女中はその後事故死する。

    ・松茸
    将軍に献上する松茸をダメにしてしまった男が逃げ出す。一方、丙午生まれの女は男を食い殺すという伝説から、生まれ年を偽って結婚した女がいた。この二人が知り合いであり、秘密を知った男が女を脅す。女の女中が男にレイプされ女中は主人の女のためもあり男を殺そうとする。事件前にこの女中に出会った半七は犯罪を未然に防ぎ逃げ出した男を追う。男は逃走中池に入り死んでしまう。女の秘密を守るため男は脅しの罪は問われず松茸に関する罪でのみ明らかにされた。

    ・人形使い
    浄瑠璃の人形使い二人の確執が殺人事件に発展する。夜中に人形が物語の通り動き出しているのを見た一人が自分の使う人形を助け、もう一方の人形を叩いた。それを見たもう一人の人形使いとのあいだが険悪になる。一人がもう一方を殺して自殺する。犯人の叔母が旗本の跡取りを産んだことから事件の真相を隠そうとしたことから真相の発見が遅れる。

    ・少年少女の死
    明治に入り自転車の事故が起きだしたというところから、半七が子供が巻き込まれた事件を語る。不倫の末生まれた子供を養子として手放した母親がいた。この母親が踊りの発表会で同じ年頃の子供を殺してしまう。また、先妻の子供を殺そうとした後妻が玩具の水出しに毒を仕込んだ。しかし、直前で思い直し女中に捨てるよう言った。しかし、女中は毒入りの水出しを知り合いに渡したため、その子供、さらに隣の家の子供まで死んでしまう。

    ・異人の首
    江戸時代末期に攘夷を騙って質屋に押借り入るという犯罪が多発していた。そこに外国人の生首を形代に金を出せという新たな押借りが発生する。現場に落ちていた髪の毛が本物の外国人の毛髪だったことから、外国人の多くいる横浜へ捜査に赴く。そこに身分不相応の金遣いをする外国人がいるということで彼を見張ることにした。仲間の日本人が外国人の持っていた蝋人形の頭を加工して生首のようにして犯罪を犯していたのを発見する。

    ・一つ目小僧
    高価な鶉を買い求め、前金を払って自宅に届けさせる。部屋に通されて待っていると、そこに一つ目小僧が現れる。商人は驚きのあまり失神してしまい気が付くと一つ目小僧はいなくなっている。鶉を売らずに引き取って帰ると安物と入れ替わっていることに気付く。半七は現場を捜査し、按摩の笛を発見する。そこで、片目の按摩を探しだし問い詰めて白状させる。その後、共犯者も逮捕した。

  • これまでの刊の書評にも書いてますが、やはり自然や町、人々の描写が美しいです。映像抜きで江戸の空気感がここまで出せるのは素晴らしい。

    推理小説としては、この刊に収められている短編は「読者が解決するのは難しい」ものが多い印象があります。特に、ちょっと怪談じみたというか、常識を超えた能力を持っているかのような人物が登場する「あま酒売」「海坊主」あたりは、解けというのが無理だろうという感じです。

    一方で、これまでの刊には出てこなかった舞台として、外国人が歩き回るようになった時期の横浜が取り上げられていたりして、他とはまた違った面白さのある短編も収められています。これまでの刊と同様、何度も手に取って読み返したくなる作品群かと思います。

  • 「雪達磨」から「一つ目小僧」まで14編収録。怪談色強し。身投げした女は助けるが男は助けない理由が凄い。いや、皆がそうだとは限らないと思うよ•••。

  • 1巻、2巻は比較的のんびりした江戸の風俗が書かれていた気がするんだけど、3巻になって幕末の不穏な空気が感じ取れるようになってきました。
    どんどん面白くなってきたので続きが楽しみです。

  • どんどん次を、と読んでしまう。宮部みゆき氏の愛読書、らしい。

  • 3冊目になっても飽きない。
    江戸の風俗や半七という人物が分かってきたような気がしておもしろくなってきた。

  • 光文社時代小説文庫

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著者プロフィール

(おかもと・きどう)1872~1939
東京生まれ。幼少時から父に漢詩を、叔父に英語を学ぶ。中学卒業後、新聞、雑誌の記者として働きながら戯曲の執筆を始め、1902年、岡鬼太郎と合作した『金鯱噂高浪(こがねのしゃちほこうわさのたかなみ)』が初の上演作品となる。1911年、二代目市川左團次のために書いた『修禅寺物語』が出世作となり、以降、『鳥辺山心中』、『番町皿屋敷』など左團次のために七十数篇の戯曲を執筆する。1917年、捕物帳の嚆矢となる「半七捕物帳」を発表、1937年まで68作を書き継ぐ人気シリーズとなる。怪談にも造詣が深く、連作集『三浦老人昔話』、『青蛙堂鬼談』などは、類型を脱した新時代の怪談として評価も高い。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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