半七捕物帳 6 新装版 (光文社文庫 お 6-21 光文社時代小説文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334732462

感想・レビュー・書評

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  • 読書会の課題本が「半七捕物帳 白蝶怪」のため、収録されているこちらの6巻と、一番はじめの1巻とをよみました。
    1巻はこちら。「犯科帳とはなにか」などこちらにメモしています。
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4334732291#comment


    『川越次郎兵衛』
    江戸城本丸表玄関前に突如として現れた男。「自分に東照宮のお告げが下った。本日中に自分に天下を渡せ」とのたまう。
    これは困った、こんな頭のおかしいやつが入ってきたと上にバレたら自分たちの責任問題になっちゃうではないか。
    そうだ「天狗が男をさらってお城の中に落っことした」ということにしよう!
    …これがまかり通るこの時代の緩さが割と好き(笑)。実際問題として「人智を超えたことが起こりました」とか、はっきりすると大問題になるから曖昧にしたほうが丸く収まることってありますよね。
    まあ結局半七の調べにより、戯れ者の戯れ事だったと分かるのですが、度が過ぎた悪ふざけをやったっていいじゃないか、という風潮になったということが江戸時代の末期現象だという当時の世相が感じられます。

    『廻り灯籠』
    通常は岡っ引きが泥坊を追っかけるでしょう。ところが反対になったことがありましてね。泥坊が岡っ引きを追いかけ、岡っ引きが逃げ回ったり捕まったりしたんですよ。まあ人の世は廻り灯籠。誰が誰を追っかけているのか、追っかけられているのか…。

    『夜叉神堂』
    祭りの最中に盗まれた小判を巡る人々のお話。真面目な人が悪い気持ちを起こしたり、ギリギリのところで踏みとどまったり。

    『地蔵は踊る』
    寂れたお寺のお地蔵様が踊るということで参拝客が増えてきた。しかし死体が見つかり…。
    ==軽い考えでとんでもない相手と関わってしまうと碌でもないことに。

    『薄雲の碁盤』
    ある屋敷に伝わる曰く付きの碁盤。
    その碁盤に女の首が乗せられて屋敷の門の前に据えられていた。
    ==命運が絡まり合って多くの死人を出す事件に発展してしまったお話。最初はその気がなかったのに、碁盤をみていたら「なんとしても女の首を据えなければ」という気持ちがムラムラ湧いた、というのも怖いような人の心の興味深いような。

    『二人(ににん)女房』
    小金井を訪れた半七は「おばけが出る」と言われる家のこと聞く。
    江戸に帰った半七に相談が持ち込まれる。祭りの夜に、二人の女房が消えたというのだ。
    どうやら小金井のばけものの家に関係があるらしく…。
    ==男女の…ううん、端から見るとバカなことを…としか思えないんだが、当事者はハマっちゃってるんだろうなあ…


    『白蝶怪』
    近頃護国寺付近では、妖かしの噂がある。夜の暗闇の中に舞う白い影。よく見ると白い大振りの蝶が浮いているのだ。蝶が入った屋敷の人死にが出る。その蝶を目撃した二人の娘、お勝とお北も熱を出して寝込む。さらに人死にが出るに及び、お北の弟の長三郎が調べに出る。
    ==
    蝶って昔話や怪談で人の魂の具現化のように扱われる事がありますよね。
    今回の事件の時代は文化9年で、半七よりも一世代前の話。岡っ引きとして事件調査に望むのは、半七の養父である吉五郎です。
    お話としては「人死にすぎ。。」と思いました…。人の気持ちもこんなにすぐに変わるのか?とも思ったり…。しかし跡継ぎがいなくなったら家取り潰しって、厳しい社会だな…。
    また、登場人物で火の番の藤助という父親とその娘のお冬がまるで仕事人のようなことをしているのですが、なんでこの二人こんなに手慣れてるの、出番これだけってもったいない…と興味を惹かれました。
    読書会では小説に書かれている場所巡りをしました。お寺とかは案外残っているものですね。

  • 34冊目『時代推理小説 半七捕物帳(六) 新装版』(岡本綺堂 著、2001年12月、光文社)
    1917年から1937年まで発表。岡本綺堂が45歳から65歳までの20年間を費やして書き上げた、捕物帳のマスターピース。本書はその最終巻である。「川越次郎兵衛」「廻り燈籠」など、全7話収録。本書の最後を飾る「白蝶怪」は、半七が全く登場しない番外編となっている。約100年前の作品であるが、今読んでもスリリングで面白く、文章も読みやすい。幕末期の江戸の風俗が詳しく描かれている点も興味深い。
    「口惜しい」

  • 楽しみながら、ゆっくりと味わって読んで来た半七も、これで最後。もっともっと読みたい。
    読み終わってしまうのが惜しいと思う稀有な小説だった。

  • コロナによる緊急事態宣言下で半七シリーズを読み終わった。読み始めれば最後まで読んでしまう感じはある。
    〈半七あるある〉
    ・半七の推理外れても後で嚇かしたりして結果オーライになりがち。
    ・大抵痴情のもつれが動機になりがち。
    ・最後の駆け足のネタ明かしのときには既に辻褄が合ってるんだかよくわからなくなりがち。

    コロリ、流行病の話などが出てきてみんな動揺したりする話もあって変わらないよなと思ったりした。
    以上です。

  • 半七捕物帳、最終巻。

    江戸情緒あふれる、粋な捕り物シリーズもこれで終わりかと思うと、寂しい限りです。
    この巻の最終話、「白蝶怪」は他の話と比べて読み応えがあり、半七の養父・吉五郎の時代が舞台というのも却って趣きがあるように思いました。
    巻末の作品年表も良かったです。

  • 半七捕物帳の最終巻。最後の『白蝶怪』は、ほかの短編がだいたい50ページぐらいで終わる中、150ページ以上の大作となっていますが、その長さをものともせず、中弛みもせず一気に読ませてしまうあたりは流石の一言。そして、この作品の主人公は半七ではなく、半七の養父である吉五郎。『半七捕物帳』の最後を飾る作品の主役が半七ではないというのは意外でしたが、それもまた一つの風情というところでしょう。

    もう一つ特筆すべきなのが、巻末に記された年表。『半七捕物帳』のすべての作品が、その事件が起きた時系列に並べられており、どの巻のどの作品が江戸時代のいつ頃に起きたものなのかが綺麗に整理されています。このシリーズはどの作品であっても、半七老人が昔語りを始める前に「いつの時代の事件だった」かをきちんと話すのですが、全ての作品の時代設定がしっかり定まっていたとは、この年表を見るまで気づきませんでした。

    著者の岡本綺堂はシャーロック・ホームズを読んで日本版の探偵小説を書きたいと思い、江戸時代を舞台にしたこのシリーズを書いたそうです。
    ホームズものは、舞台となっている100年前のイギリスの習俗を知らないと読み解けない謎や人々の習慣が結構ありますが、この『半七捕物帳』シリーズも同様。自分の国でありながら、ほんの150年前というだけで習俗や考え方、言い回しがずいぶん違っていて、読むのに苦労します。が、ゆっくり読むことで下手な歴史書を読むよりも遥かに楽しく、当時の暮らしぶりを知ることができるのではないか、とも思います。

    なお、ホームズの作者であるドイルも、自分が生み出した多くの作品について、その事件が発生した時期や年代を設定してはいます。が、実は矛盾や穴も多く、主役の一人であるワトソン博士の結婚や離婚といった重大なイベントについても描写に食い違いがあります。そのあたりは、今でもホームズファンの議論の的となっていたりするそうです。
    反面、すべての事件を精確に並べ、ある作品の中で別の作品の事件について半七に語らせたりする芸を見せているあたり、綺堂の方がかのイギリスの医師よりも推理小説作家として秀でていたのではないか、と、身内贔屓をしてみたくもなります。

    何の気なしに第一巻を手に取って読み始めてからずいぶん経ちますが、好い時期に好い作品群に巡り合えたことに感謝しつつ、まずは本棚へ。巻末の年表を頼りに、古い時代の作品から順に読んでみるのも一興ですね。

  • 全部終わってしまった。もちろん再読に耐える本ではあるんだけど、著者が物故してるともうこれ以上作品が増えない寂しさがある。

  • 半七捕り物帳、最終6巻。
     すっかり江戸の風物にはまってしまい、今日は時代劇チャンネルに予約をいれたりした。
     地上波からは、時代劇はすっかりなくなりましたね。まぁ、大河ドラマくらいかな?
      大河、より、市井の人々を描いた作品が好きです。NHKの土曜時代劇が好きでしたが、BSプレミアムに時代劇は移行。
     BS持たない年配の方とかはつまらないだろうな、と思う。水戸黄門も終わったんでしたっけ?
     ずいぶん前にあった(当時は金曜時代劇だった)NHKの高橋英樹さんの、宮部みゆき原作、茂七の事件簿、よかったなぁ…。

     本を読みながらの学習ですが…。半七が、ですね。難しいのです、結構。
    ??な言葉が多々あるな。読めない漢字もあるし。どうしたって、パソコンの辞書か漢和辞典か古語辞典いりますね。ケータイではムリでしょう。
     東京人だったらわかるだろう地理も不案内。自分がいったことがあるところくらい。江戸時代の地名となるとさっぱり! その辺を学習中。

  • 半七シリーズ最終巻。

    複雑怪奇な事件も、半七の勘と回転の速さですっきり解決されていく。現代の科学捜査による事件解決も面白いが、この時代ならではの捜査方法もまた新鮮で面白く、また明快である。
    本編の中で半七は、この時代にも事件を起こして逃げ切れる犯人はそういないというような発言をしていたが、これらの時代の本を読めば読むほど岡引たちの熱意とこの時代の捜査方法は鋭く、なるほどそうかもしれないと思わせるものがある。

    最終話はこれまでの話と比べると3倍ほど長い長編となっており、一見、怪談のようにみえる事件からさまざまな人間たちの事件が明らかになってき、解決に至るまでを描いている。
    主人公が半七ではない数編のひとつであり、半七の語りが入っていないが、最後まで一気に読ませる魅力的なものとなっている。この話の主人公が最後で明らかになったとき、少しニヤリとしてしまうのは私だけではないはずだ。

    作者はシャーロック・ホームズを読んでこのシリーズを書き始めたというが、日本の風俗をふんだんに書き込んだ日本最初のミステリというのにふさわしいシリーズであった。

  • 所有している旺文社文庫版がなかったので、光文社版を……。

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著者プロフィール

(おかもと・きどう)1872~1939
東京生まれ。幼少時から父に漢詩を、叔父に英語を学ぶ。中学卒業後、新聞、雑誌の記者として働きながら戯曲の執筆を始め、1902年、岡鬼太郎と合作した『金鯱噂高浪(こがねのしゃちほこうわさのたかなみ)』が初の上演作品となる。1911年、二代目市川左團次のために書いた『修禅寺物語』が出世作となり、以降、『鳥辺山心中』、『番町皿屋敷』など左團次のために七十数篇の戯曲を執筆する。1917年、捕物帳の嚆矢となる「半七捕物帳」を発表、1937年まで68作を書き継ぐ人気シリーズとなる。怪談にも造詣が深く、連作集『三浦老人昔話』、『青蛙堂鬼談』などは、類型を脱した新時代の怪談として評価も高い。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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