涙流れるままに 下 (光文社文庫 し 5-31 吉敷竹史シリーズ 15)
- 光文社 (2002年1月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (617ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334732615
感想・レビュー・書評
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吉敷は死刑囚の妻の訴えを聞いて40年前の殺人事件を調べなおし始めた。洗い直すうちに元妻の通子の忌わしい過去にぶち当たる。通子と吉敷の思いはどうして…不覚にも泣いてしまった。吉敷竹史シリーズの中で最高傑作ではなかろうか!
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上下巻読了。
本作を読む前に、少なくとも「北の夕鶴2/3の殺人」「羽衣伝説の記憶」「飛鳥のガラスの靴」「龍臥亭事件」を読んでおく必要があります。加納通子という女性の生き様を知っておかないと、この作品の真の価値が理解できないからです。
今まで不思議な行動や言動を繰り返していた加納通子。彼女の数奇なる生涯が上巻で語られます。
一方、吉敷竹史は40年前の冤罪事件に、自らの辞職を賭けて取り組んでいきます。通子の回想と吉敷の事件とが何時どのように交錯するのかが最大のポイントになるのですが、それまで救いのなかった二人に温かいラストが用意されているので、思わず心が震えてしまいます。著者の作品群の中で随一の力作です。 -
吉敷シリーズ。読むのが本当に辛い、苦しい、重い。ここまで主人公達を追い詰めなくてもいいんじゃないかと思う。ラストがあるから読後感はいいけど、今後読み返すとしても、下巻の後半のみ。それ以前は読み返したくならない。最後で、嫌なのを我慢して読んだ甲斐はあったと思えるけど、あんまり人には勧められない。せっかくの冤罪などのテーマが、性的描写の多いせいで読者に伝わらないのじゃないかと思ってしまいます。
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下巻では、通子は現在自分が置かれている状況を打開すべく、過去と見つめあい、行動を起こします。様々な悪しき過去を振り切って、行動する通子に強さを見出せるようになります。
そして吉敷も、冤罪事件を解明しようと行動します。上司にたてつく姿はわたしが今まで読んできた吉敷シリーズの吉敷と何ら変わりがありません。
一旦途切れかけた通子と吉敷の運命の糸が、また交差し、結びついていく様もとてもよく描けていると思います。
御手洗シリーズとはまた違った、社会派ミステリとしての本作は、冤罪事件について様々な知識を与えてくれ、現在の日本の裁判システムに疑問を投げかける秀作だと思いました。
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吉敷竹史シリーズ。
2007年3月29日初読