氷舞―新宿鮫6 長編刑事小説 (光文社文庫 お 21-11)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (554ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334733254

感想・レビュー・書評

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  •  数少ない鮫島の味方である、晶、桃井、藪は健在で、今回もたびたび登場する。
     およそ芸能には縁が無いと思っていた藪に誘われ、鮫島は二人で演劇を見に行く。
     鮫島は演劇を見終わると、不思議な感覚に見舞われた。一人舞台でのマホに魅了された。

     一方、晶は売れっ子のミュージシャンと成り、鮫島と会う機会も減っていった。二人の間には微妙な距離感が出てくる。

     今回は、渋谷の暴力団、街のチンピラ、カード密売組織、コカイン密売組織、公安警察、公安OBが経営す民間の外部諜報機関、神奈川県警、政治家等が絡んでくる。

     今回も鮫島の生命を危うくする危機は、何度も襲ってくる。
     物語が進むに連れ、民間諜報機関が重要な位置を占めてくる。

     鮫島の行動に目が離せなくなり、今回も一気に読んでしまった。
     面白かった。

  • シリーズ6作目。久しぶりの大ヒットで1作目に次いで好きかな。大沢さんが言われているように鮫島の恋がテーマとしてあって、それが本作をハードボイルドたるものとしている。エミリという魅力ある女性が鮫島の前に現れ惹かれていくが、この葛藤が非常に良くていつも正義を貫く彼の別の面が見られた気がした。本筋は公安が暗躍する陰謀論的なストーリーながらネタの出し方が巧みで荒唐無稽になりすぎないず、でもエンタメ性を失わない程度に遊び心を出してくる。こういった作風のお手本のような出来ばえだった。にしても一気読み出来る作家ですわ。
    後、脇役では初代で嫌味な奴だった香田が素晴らしい役で出て来る。カッコよい。

  • まさかの、前回取り逃がした犯人が再び登場!これには胸踊った。
    とはいえ、最終的には、単なる情報提供者としてであって、話の中では影も形もなくなっちゃうんだけどね(^-^;
    こりゃ、もう一回出てくるかな。
    でも、次で出てきたとしたら、ちょっともうお腹いっぱい感あるので、少し空けた巻がいいな。

    京山さんが、最後意外に理解力といい人っぽさを見せたのはちょっと意外でした。

    あと、この巻は、意外なことに、ちょっとだけ鮫島氏が浮気心に走るお話。

  • 新宿鮫6、今回は鮫島と晶の関係、鮫島の舞台俳優への恋、元公安部刑事の諜報活動、チーマーとヤクザの関係、CIAのエスの存在等盛りだくさん。鮫島を敵対視するキャリア官僚が鮫島を認めつつあるように思えることが嬉しい。舞台俳優・江美里の鮫島に対する一線を超えるあの行動は何だったのか?単なる情報収集だったのか?孤独感からくる鮫島へのヘルプだったのではないか?また、晶のフーズハニィが売れることでお互いが思う距離間隔が難しくなる。これは必然的なようで私には理解できず、単にお互い考えすぎじゃない?と素直に感じた。

  • 新宿鮫シリーズ6。

    今回鮫島が追うのは偽造クレジットカートの事件。
    ところがそこに元CIAのアメリカ人殺害やら 仙田やら、暴力団やらが絡み、外事、公安、怪しげな人物が次々と登場して非常に複雑な展開になっていきます。

    物語がどのように転がっていくのか不明で混乱のまま進みますが、それが一人の女に収束していくのが見事。
    ヤクザなんかのプロ男たちが繰り広げる、血腥い事件の中心にいるのが女一人という構図に痺れます。
    そしてその女に翻弄される鮫島。

    この女にどうしようもなく惹かれしまう鮫島に、晶がいるだろう!とは思うのですが、大人の淡いプラトニックな情愛はロマンティックです。
    二人の悲恋のような「静」の展開と、警察組織の闇に迫る「動」の展開のバランスが良く、切なくも熱い骨太な1冊でした。

    しかし、今作でもっとも輝いたのは香田ではないでしょうか。
    これまで香田を小物だと思っていましたが考えを改めました。「傲慢ではあるが愚かではない」香田の、鮫島とは違う警察官としての信念がかっこいい。二人のライバル関係も今後どうなっていくのか非常に楽しみです。

    これまでのシリーズで積み重ねてきた事――晶との関係、宿敵仙田、鮫島の警察内での立場、同期の香田など――がここにきてひとつの転換期を迎えたように思います。
    ハードボイルドの新宿鮫を存分に堪能できました。

  • このシリーズで泣きそうになったのは初めてだ!

    手を変え品を変え、常に新しい感動をもたらしてくれる新宿鮫。
    今回のプロットは複雑で中盤までとっつきにくかった。しかも前作「炎蛹」の続きから始まるし。初めての読者がいきなりこの作品を読んでも、何のことだかわからないだろう。
    新宿鮫が警察小説であることを思い出させられた。

    鮫島が警察組織や自分の恋人との関係で悩み、徹底的に苦しむ。
    これまではバイオレンスやアクションやトリックで読ませてきたのに、
    今回は人間ドラマだ。鮫島の苦悩と葛藤の連続に読者も引きずられ、そして美しくも悲しい恋が終わりを迎え、読者も奈落に突き落とされる。
    暗く激しい物語だ。

    シリーズものの強みは巻数を重ねるうちに主要キャラクターが深みを増していくことだろう。私もすっかり虜になってしまった。
    なるはやで7巻を読まねば。

    そういえば、物語の序盤で出てきた前作の最重要キャラクターの仙田。
    どこ行った?

  • クレジットカード偽造集団を追っていたはずの鮫島が、元CIAのアメリカ人殺害事件を契機に、ヤクザと公安、ひいては政界との繋がりにまで切れ込む非常に複雑な作品。公安警察と警視庁の溝や、桜井商事という謎の諜報機関によって鮫島の行動はまさに孤立無援の様相を呈するが、第1作目で鮫島と激しく反目しあったキャリア組のエリート・香田と一時的に手を組むなどして、徐々に事件の真相に迫って行く。いやー、それにしても面白かった。「コレだよ、コレ!」って感じですね。非常に入り組んだ物語で、頭の中をイチイチ整理して
    いかなくちゃならない様な複雑さがたまらない。なんか、もう「どう見ても無理だろ」的な状況を力技で打破する鮫島がカッコいいですね。こういう鮫島のカッコイイ部分が見れた反面、晶を裏切って(?)クレジットカード偽造事件の被害者で知り合った杉田とイイ仲になってしまった鮫島を見てしまい、少し複雑な気分…。「おおお、お前はそんな漢じゃねぇーだろーッ!」みたいな。まぁ、何はともあれストーリー的には非常に満足の作品。

  • 同僚の藪に誘われて舞台の公演を見ることになった鮫島は、女優の杉田江見里(すぎた・えみり)の演技に心をうばわれます。その後、元CIAのアメリカ人ハーラン・ブライドが殺害される事件が起こります。ところが、香田が捜査の指揮を採ることになり、しかもその背後には香田でさえもうかがうことのできない巨大な闇が控えていることがしだいに明らかになっていきます。

    そして、自分が実質的に事件の真相から遠ざけられていることにプライドを傷つけられた香田は、たがいに反目しあってきた鮫島にみずから接近し、彼と協力することを決意します。

    また鮫島は、多くの人びとに知られて広い世界へと羽ばたきはじめる恋人の晶の姿を目にしながら、おたがいのことを愛しあっているにもかかわらず、すこしずつ彼女とのあいだに距離が生じてきていることに気づきます。その一方で、独自に捜査を進めていくなかで、鮫島は思いもかけないかたちで江見里と再会することになり、しだいに彼女に心を惹かれていくようになります。

    ストーリーそのものに引き込まれるのはもちろん、鮫島と晶との関係にも微妙な変化が生じて、かなりのヴォリュームのある本であるにもかかわらず、一気に読んでしまいました。

  • 複雑に見えていた物語(事件)の奥行のその絡まりの解かれていく巧い展開に感心。警察組織内部のキナ臭さい状況下(高圧的排除=暗澹たる力関係)抗して対象(事件)に迫る主人公鮫島の行動力・洞察力に今回もひきこまれた。冴えのある主人公人物像は健在で、力ある描写(筆致=大沢節)は読んでいて心地よい。本作では主人公警部となにかと衝突を繰りかえしてきた犬猿の仲の同期(ライバル?)の香田警視正とある種協力関係が結ばれる。鼻につく尊大ぶりで相対してきた香田の違った一面が垣間見られてその人物像に魅力が増した。

  • 新宿鮫シリーズ第6弾。
    西新宿のホテルでアメリカ人の男が殺される。
    その殺人を巡り、動く公安警察と「桜井商事」
    そして鮫島が心を奪われた舞台女優のマホ、そして恋人の晶との関係は…
    様々な背景と共に、バラバラだった話が繋がって行く物語が魅力的です。

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著者プロフィール

1956年愛知県名古屋市生まれ。慶応義塾大学中退。1979年に小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。1986年「深夜曲馬団」で日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門受賞。1994年には『無間人形 新宿鮫IV』直木賞を受賞した。2001年『心では重すぎる』で日本冒険小説協会大賞、2002年『闇先案内人』で日本冒険小説協会大賞を連続受賞。2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞受賞。2010年には日本ミステリー文学大賞受賞。2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞、2022年には紫綬褒章を受章した。


「2023年 『悪魔には悪魔を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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