天国は遠すぎる [新装版] ―土屋隆夫コレクション (光文社文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334733759

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  • 「土屋隆夫」の長篇ミステリ作品『天国は遠すぎる [新装版] ―土屋隆夫コレクション』を読みました。
    「土屋隆夫」の作品は、今年の4月に読んだアンソロジー作品『ミステリー傑作選・特別編〈5〉自選ショート・ミステリー』に収録されていた『白樺タクシーの男』以来なので、半年振りですね。

    -----story-------------
    自殺した「砂上彩子(すながみさいこ)」の遺書には、死を誘う歌として世間を賑わした「天国は遠すぎる」の歌詞があった。
    翌日、汚職容疑でマークされていた県の土木課長「深見浩一」が失踪、その後絞殺死体で発見される。
    自殺に不審を抱いた「久野刑事」の粘り強い捜査から、二つの事件の接点が浮かび上がってきた――。
    文学精神と謎の面白さの合一。
    謎解きで紡ぎあげた傑作。
    -----------------------

    1959年(昭和34年)に刊行された「土屋隆夫」の第2長篇『天国は遠すぎる』に、短篇4作品やエッセイ等を加えて構成された一冊です。

     ■天国は遠すぎる
      ・第一章 ボタンで始まる物語
      ・第二章 死を誘う歌
      ・第三章 最初の疑問
      ・第四章 行動の心理
      ・第五章 マツチと数字
      ・第六章 消えた課長
      ・第七章 黒い三角形
      ・第八章 夜の目撃者
      ・第九章 汚職の構図
      ・第十章 見えない壁
      ・第十一章 崩れぬアリバイ
      ・第十二章 推理と現実の間
      ・第十三章 迷路を歩む
      ・第十四章 大安吉日
      ・第十五章 幸運な一撃
      ・第十六章 予期せざる終幕
      ・終章 天国は遠すぎる
     ■二枚の百円札
     ■孤独な殺人者
     ■奇妙な再会
     ■肌の告白
     ■エッセイ
      ・『天国は遠すぎる』初刊本「あとがき」
      ・偶感二つ
      ・暴力コマーシャル
      ・人間が生み出す謎
     ■解説 村上貴史

    本書のメインは長篇『天国は遠すぎる』です、、、

    自殺した若い娘「砂上彩子」の遺書には、死を誘う歌としてジャーナリズムを賑わせる「天国は遠すぎる」の歌詞が記されていた… 翌日、県庁の課長「深見浩一」が失踪、絞殺体で発見された。

    「深見」は土木疑獄の中心人物… 容疑はアルプス建設工業社長「尾台久四郎」に向けられたが、「尾台」には完壁なアリバイが、、、

    この3人を結ぶ線はあるのか……。

    60年以上前に描かれた作品ですが、現代でも十分愉しめるクオリティ… 面白かったです、、、

    どちらかというと地味な警察小説なのですが、地道で愚直な捜査が事件解決につながる過程が愉しめました… 昭和の雰囲気も大好きですしね。


    その後に収録されている短篇4作品はオマケ程度にしか考えていなかったのですが… どの作品もクオリティが高くて驚きました、、、

    大変失礼しました… という感じです。

    犯人の独白だけで描かれ、犯罪を犯した経緯や理由が徐々に明らかになる展開が愉しめる『二枚の百円札』、

    不倫の末に邪魔になった若い不倫相手を殺害した犯罪者に訪れる意外な結末が愉しめる『孤独な殺人者』、

    何気ない会話の中から犯人を特定する鮮やかな結末が印象的な『奇妙な再会』、

    ウルシが決め手になり自殺に見せかけた殺害が暴かれる『肌の告白』、

    どれも面白かったー 入手困難だと思いますが、機会があれば、他の作品も読んでみたいですね。

  • トリックと人間──作者が述べているように、本作品は、両者の全き合一を求めて書かれている。どちらかに偏ることもなく実にバランスが良い。容疑者に初対峙した瞬間から、一筋縄ではいかない予感を抱く刑事。逮捕するには、推理だけでなく確固とした証拠が必要だというジレンマ。この辺りの刑事の焦燥感と執着心が交互に描かれる様が特に際立っていた。トリックはシンプルで単純だが、決め手を掴むシーンは感慨深いものがある。それまでの捜査過程を刑事と一緒に経験してる分、この一撃の威力に降参するのだ。探偵ではなく、刑事が推理するストーリーだからこそ実現できた、本格ミステリの秀作。

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