神聖喜劇: 長編小説 (第4巻) (光文社文庫 お 9-8)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334733896

作品紹介・あらすじ

堀江中尉に喚問された東堂太郎は、片桐伍長が企んだ"思想上の嫌疑"を論破する。上官上級者によって仕掛けられる無理難題に対する"合法闘争"はつづく。「知りません・忘れました」問題にも一応の決着が-。一方、奇怪な"事件"の犯人と目されて窮地に立つ冬木二等兵の、思いがけない過去を知り得た東堂は、冬木救済のために「精一杯抗うべく」決意を固める。

感想・レビュー・書評

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  • 夏こそずっしりと重い大作を読もうと考えて、分厚目の文庫本5巻に渡る超大作の本書をセレクト。それこそ、日本近代文学の金字塔にあたる作品として学生時代から認識はしていたものの、相当に難解な作品なのだろうと思い込んでいた。

    確かに平易な作品であるとは言い難いが、実際に読み進めてみるとそれを超える面白さに釘付けになってしまい、貪るように5巻を読了してしまった。

    本書は著者自らの従軍体験に基づき、日本陸軍の二等兵である主人公が送る数ヶ月間の陸軍訓練が舞台となる。主人公の東堂太郎は、超人的な記憶力を持ち、日本陸軍の不条理に孤独な戦いを挑んでいく。

    これは日本陸軍に限った話ではないが、軍隊という組織が国家権力によって運営されている以上、その全ての営みには何かしらの法的文書が存在している。その点で極めて官僚的な組織という一面を軍隊は持っており、実際の訓練における一挙一同に、ある種バカらしいほどの理屈付けがなされているという点でのナンセンスさに溢れている。その点で、主人公の超人的な記憶力は、このあらゆる法的文書をすらすらと暗誦し、ときには不条理なトラブルを解決するためにその記憶力で持って立ち向かっていく。

    そして、本書の面白さを際立てせているのは、人物造形の深みのレベルの高さである。そもそも新兵訓練のための招集ということで、集められた二等兵は日本社会の縮図といえるほどに、学歴や身分、職業などが千差万別になっている。突出しているのは、新兵に対して残忍なしごきを与える主人公の班の班長の造形である。ステレオタイプ的な残忍さだけを持つ人間として描くのではなく、中国大陸で残忍な虐殺に関与してきたという過去や、訓練生活の中でのユーモアなど、非常に多面的な人間として描かれることで、決して物語の先行きを安易には予測させないような展開が待っている。

    全く予想だにしなかった結末も含めて、ひたすら物語の巨大さに圧倒された全5巻であった。

  • 片桐伍長(惡質的轉向者)處心積慮想要拿垃圾桶撿起來的兩張練筆的廢紙(芥川龍之介&田能村竹田)意圖入罪東堂,東堂在隊長室接受堀江隊長和片桐的訊問,非常精彩且有邏輯地一一抗辯,抵禦住片桐的攻擊。

    曾根田提到隔牆有耳,因為他之前私下聊天裡講的蘇聯必勝被人密告因而被山中准尉訊問(被下箝口令),但想想身邊的東堂、生源寺等人口風都很緊,大家互相討論並向白水確認之後覺得可能是江藤躲在大便所偷聽到室町跟生源寺在小便所聊這件事?但密告者應該九成是吉原的可能性很高。

    劍(革室)すり替え事件,由於即將到裝備檢查,目前最大的嫌疑就落到冬木身上,只因為他是部落民又有前科。東堂拜託之前職場友人杉山調查,確認冬木確實是部落民,然而一直表現良好,冬木與一名叫做菊代的女性兩情相悅,一名叫做酒井的男子想搶菊代,就帶著他的瞜囉(角田、權藤。據說該權藤現在也在對馬入伍,但似乎不是之前鄙視冬木是部落民的權藤上等兵,年紀較大)找碴並且喧染冬木身分意圖騷擾,女生為了避免衝突提早下班和冬木一起離開然而還是被酒井堵到,亮刀恐嚇的酒井,在混戰中被冬木正當防衛的棒子打到跌倒撞到頭幾天之後死亡,後來冬木得知消息後自首,而冬木在訴訟中不願替自己抗辯(也只用國選辯護人),一審判傷害致死一年半緩刑三年冬木也沒上訴。而該事件其實是冬木的身份被酒井拿來歧視嘲笑攻擊而引發,但訴訟中竟然從頭到尾都沒出現任何關於冬木身分的討論及記載。之前大前田等人各種影射,其實是知道他身分的緣故。三個班長都認定他是嫌犯,吉原似乎也去對片桐伍長告密所以冬木立場越來越不利,冬木被傳喚訊問的時間越來越長,東堂等人都很擔心。杉山的信中認為冬木未積極替自己辯護或許是在拘留中讀的書籍,導致的心境所致(但不清楚是什麼書,杉山猜或許是道元?)。東堂雖然自己也有不想被得知的把柄(共產主義者、退學)隨時可能會被放大檢視,但決定還是要為冬木一戰。

    東堂夜間當不寢番時發現之前的不見的下駄在吉原床邊,但由於軍方對於任何配給品不見的處罰都格外嚴厲,因此造成軍方內部只要東西失蹤上報會很慘,就只好用偷的處理掉,而且是要偷別的班。這邊寫一段二等兵東西不見去報告班長的對話實在令人拍案叫絕,班長暗示他靜悄悄地,記得去別的班(!)找,努力拼命找,就一定會找到。所以東堂沒有太放在心上,但吉原的樣子似乎有做什麼虧心事睡不好的樣子,也有看到東堂在幫他擺鞋子。

    野砲練習是東堂非常喜歡的項目,東堂很喜歡男性般的大砲。一組砲手有六個人,二番砲手是砲手的花形,負責照準(五、六負責填砲彈是最單純的作業),在訓練過程中大前田不斷對東堂(第七分隊二番砲手。第七分隊都是東堂這些"食卓末席組",長官們覺得礙眼的一群人)找碴,之後實戰這種找碴八成又會升級。東堂被找碴說照準不OK,但東堂指出被大前田一撞之後目標還是在動當然不準,但是大前田又會很爽快地承認錯誤,而大前田是非常出色的砲手讓東堂尊敬,但那種找碴卻又惡意滿滿,所以東堂對他的感情很複雜。

    橋本來找東堂商量,是因為他幾天前曾經看到常用被服庫附近看到可疑人影(後來回想可能是在修理劍(革室)),修不成所以偷偷抽換導致該事件發生,所以該人影是犯人的可能性很高。橋本回想猜測、推定該人似乎是吉原,因此私下告訴冬木這件事。冬木也問橋本有沒有讀過島崎藤村的破戒,橋本不知道這本書而旁邊有人來會話就不了了之。而後來冬木不斷被叫去,班長們強烈逼迫他自承犯罪寫字白,但冬木並未把橋本說的這件事拿出來自清。東堂猜測,在獄中對冬木影響很大的書籍說不定就是破戒。橋本問東堂是否應該由橋本這邊直接上報長官這件事,東堂認為橋本的證言雖然有很大的弱點(沒確切確認犯人是誰),但是還是應該挺身而出幫助冬木,東堂也要盡一份力。

    --
    本卷得知神主生源寺父親其實和東堂父親是老友。

  • 東堂と同年兵の交友が多く描かれている。51・浅学者の喜び(ミーハー的感性)、165・ナンセンス謎々、255ないし453・手紙(文章)を書いている自分の状況の説明→サリンジャー。大前田軍曹に対するアンビヴァレントな、説明不能な感情。

  • そしていよいよ剣鞘事件。

  • 2015/7/25

  • 「落書き」がなぜか「自由思想」と問題にされるが、「ウタチイ奴」吉原と手を組んで他人を陥れようとする「悪質な転向者」めいた片桐伍長の言いがかりを切り抜ける東堂。一方、「剣鞘取り換え事件」における冬木への嫌疑が、被差別部落出身者であること、「前科者」であることを理由とする理不尽なものであることを仲間たちと議論する東堂は、冬木のために(虚無主義者らしからず)積極的に行動することを決意する。
    感想は最終巻で。

  • 「『意志は強し、生命より強し。』」
    「私の『指揮官』は、私である」

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/433473376X
    ── 大西 巨人《神聖喜劇〈第4巻〉200210‥ 光文社文庫》
     

  • 冬木の経歴も明らかになり、本書は起承転結で言うところの「転」の巻だろうか。

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著者プロフィール

作家(1916年8月20日~2014年3月12日)。福岡県生まれ。九州帝国法文学部政治学科中退。新聞社勤務の後、1941年12月召集され、以後敗戦まで対馬で兵営生活を送る。敗戦後、福岡で発刊された『文化展望』の編集に携わる傍ら、文筆活動を開始する。46年新日本文学会に入会、以後『近代文学』や記録芸術の会など、さまざまな文学芸術運動に関わる。48年日本共産党に入党、61年以降は関わりがなくなるが、コミュニストとしての立場は生涯変わらなかった。公正・平等な社会の実現を希求し、論理性と律動性とを兼ね備えた文章によって個人の当為を形象化する試みを続けた。1955年から25年の歳月を費やして完成した『神聖喜劇』は、軍隊を日本社会の縮図ととらえ、主人公の青年東堂太郎の精神遍歴の検証を通じて絶望的な状況の中での現実変革の可能性を探った大作で、高い評価を受けている。ほかの小説に『精神の氷点』(1948年)、『天路の奈落』(1984年)、『三位一体の神話』(1992年)、『深淵』(2004年)、批評集に『大西巨人文藝論叢』(立風書房、全2巻)、『大西巨人文選』(みすず書房、全4巻)など。

「2017年 『歴史の総合者として』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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