蜃気楼・13の殺人 (光文社文庫)

著者 : 山田正紀
  • 光文社 (2002年10月発売)
2.88
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  • 4レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334733926

蜃気楼・13の殺人 (光文社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「全長10kmの密室」や見立て殺人、死体の消失など、本格のガジェットがてんこ盛りです。
    「全長10kmの密室」の真相は拍子抜けで、動機もごくありふれたものでしたが、一連の事件が「栗谷一揆騒動諸控」の記述と重なっていくプロットはどこか掴みどころのない感じで惹き込まれました。
    その他のトリックも若干無理がある気がしましたが、ミスディレクションを誘う伏線の張り方や、幻想的な事件に社会問題を絡めて着地させるところは巧妙で感心しました。

  • ★3.5かな。
    面白くてドンドン読まさせられてしまうが、読み終えた時、なんかまとまりがないと感じてしまった。
    そう感じたのは
    *探偵役が健一と新造に分かれていて、結局マージしないまま終わる
    *前半の伏線らしきものが、(あまり伏線とならずに)最後になってバタバタと解説されている
    からかもしれない。

  • 〇 総合評価
     密室状態の山道から13人のマラソンランナーが消失するというのがメイントリックだが,スタッフが参加していて,スタッフに戻る形でマラソンの参加者からはいなくなるというトリック。トリックそのものはしょぼいのだが,山菜中毒で1人が死んだという事実を,13人が消失したという事実で隠そうという「木の葉を森に隠す」理論はなかなか面白い。
     とはいえ,「田舎の村おこし」という設定で,田舎の人が窮地で考えた苦肉の策という設定だが,やはり無理がある。
     その後,とにかく(町で買ってきた)山菜を食べて,食中毒になったという事実を隠すために,栗谷一揆騒動諸控という古文書の記載に見立てて木に死体を突き刺すという「岡村」という村役場の人間の行動はバカミスっぽくすら思える。
     真相は入り組んでいる。結局,戸塚という人物は,山菜を食べて食中毒になったのではなく,日向淑子という人物の頼みで医者の木島に毒殺されたっぽい終わり方をする。そうすると,岡村の行動はバカミスを通り越して哀れとまで思えてしまう。
     栗谷一揆騒動諸控が30年前に作成された偽物であるという真相や,リゾート開発に絡めた展開,栗谷村をリゾートに組み込んだ理由が環境汚染だというものまで含む,詰め込み過ぎの内容。
     トリックやプロットは,使い古されたものではあるものの,それなりに面白いものだが,見せ方がいまいち。さすが山田正紀というか,それなりに読ませるデキではあるが,もっと面白く仕上げられたと思える。★3程度のデキか。

    〇 サプライズ
     13人のランナーが消失したトリックはしょぼい。岡村の告白,日向淑子が光井の愛人だったという展開,栗谷一揆騒動諸控が偽物だったというオチなど,驚かそうという要素は多いが,だらだらと真相が描かれるので,そこまで驚けない。★3

    〇 熱中度
     やや冗長に感じる。そこまで熱中できない。★2

    〇 インパクト ★★★★☆
     13人が消失する謎,栗谷一揆騒動諸控に見立てて木に死体を刺したり,トラクターが飛んでくるというトンデモ推理があったり,栗谷一揆騒動諸控が偽物だったりと,大まかな流れだけ見るとインパクトはある。真相はショボいんだけど…。★4

    〇 キャラクター ★★★☆☆
     久保寺健一と貢新造親子,日向淑子,風水林太郎など,それなりにキャラクターの魅力はある。新造当たりに真相を語らせても面白かったと思うのだが…。★3

    〇 読後感 ★★☆☆☆
     久保寺一家が栗谷村を去り,栗谷村は一丸となってリゾート計画に反対するという終わり方。その後を想像すると,久保寺一家もバブル崩壊に伴って悲惨なことになりそうだし,リゾート計画への反対も栗谷一揆騒動諸控が偽物と暴かれて崩れそう。そう見ると読後感はあまりよくない。★2

    〇 希少価値 ★★☆☆☆
     新刊はなさそうだが古本は多い。人気作家だし,手に入らなくはなさそう。★2

    〇 メモ
    〇 久保寺又三郎
     鋭い感性を持つ少年
    〇 風水林太郎
     風景心理学を提唱している。
    〇 久保寺健一
     東京から栗谷村に移住してきた家族の父
    〇 久保寺恭子
     東京から栗谷村に移住してきた家族の母
    〇 貢新造
     久保寺恭子の父。久保寺夫妻と一緒に栗谷村に移住してきた。もと警察官
    〇 岡村良雄
     村役場の若者。久保寺健一の相談を受けていた。
    〇 日向淑子
     鷹巣寺の元住職の娘
    〇 小野田
     小学校の教師
    〇 佐木
     広告代理店勤務。村おこしの企画をする。
    〇 木島
     医者
    〇 松永
     助役
    〇 光井陽二郎
     ゼッケン13→18に書き換えられた名簿の人物の名前
    〇 山崎
     警察官
    〇 岸辺
     木に刺さった死体の事件を担当した刑事
    〇 戸塚道夫
     木に刺さった形で見つかった死体の身元
    〇 オープニング
     又三郎と風水林太郎の出会い。轍の後がないトラクターの存在
    〇 プロローグ
     新造が,日向淑子に,あなたの父親が犯人ではないかと聞くシーン
    〇 栗谷村に,久保寺一家がやってくる。岡村から,村おこしマラソン大会のことを聞く。久保寺健一は,マラソン大会に参加する。
    〇 久保寺健一は,ゼッケン13番の男が嘔吐しているのを見る。健一は医者の木島を連れてくるが,嘔吐していた男はいなくなる。
    〇 ゼッケン13番の男はマラソンに参加していなかったと言われ,久保寺健一は調査を始める。警察官の山崎の訪問を受け,マラソン大会では13人もの人物がいなくなったとの話を聞く。マラソン大会の山道は,いわば密室状態だったという。
    〇 久保寺健一は,調査の中で,鷹巣寺の日向淑子から,「栗谷一揆騒動諸控」という古文書の話を聞く。また,消えた13人の人物が鷹巣寺にいないことを確認する。
    〇 木に刺さった形で死体が発見される。これは,栗谷一揆騒動諸控の内容と一致していた。
    〇 久保寺健一は,小野田の持っている同人誌で,戸塚道夫の名前を発見する。
    〇 久保寺健一は,小野田が日向淑子に文句を言っている場面を見る。また,久保寺健一は,戸塚から小野田が30万円を受領したという内容の領収書を発見する。
    〇 久保寺健一は,山崎にこれまでのことを伝えに行くが,山崎は殴られていた。その場で小野田を発見する。戸塚の死体は消えていた。小野田は逃走する。
    〇 又三郎は,偶然,山崎に出会う。公民館の水車小屋で待つと久保寺健一に告げるように言う。
    〇 戸塚道夫は,土地ブローカーのチンピラだった。そのバックには三井陽二郎という名前があり,こちらは大物だった。
    〇 小野寺を探すための山狩りを行う。久保寺健一も参加する。
    〇 新造は,光井陽二郎と佐木が話しているシーンを見る。
    〇 水車小屋で火事が起こる。岡村と小野田の死体が発見される。
    〇 岸辺は,光井陽二郎と面会する。リゾート計画に栗谷村も取り込まれていることになっていることを確認する。戸塚は,切り崩しのために送り込まれた尖兵だった。
    〇 栗谷村で収集があり,リゾート計画について告げられる。村長と助役は,村人を奮い立たせ,佐木が光井陽二郎のスパイであることを伝える。
    〇 久保寺健一は,マラソン大会に参加したとき,眼鏡を取っていたことを思い出す。そして,そのことから,消えた12人がマラソン大会のスタッフ=村人だったことに気付く。
    〇 栗谷村は,山菜も取れなくなっており,町から山菜を買ってきて山菜ソバを作っていた。そして,佐木は賞味期限が切れた山菜を買ってきていた。戸塚は賞味期限が切れた山菜を食べ,食中毒になって死ぬ。岡村はその死体を隠そうとした。
    〇 栗谷村で,30年前にダム建設に反対する運動があった。そのときに光井陽二郎が反対運動に参加していた。
    〇 佐木がトラクターの下敷きになって死亡する(オープニングのシーン)。水車小屋で死んでいた死体は,戸塚と小野田の死体だった。
    〇 30年前,光井陽二郎と一緒に活動していた人間の名に,日向淑子の父の名があった。もう一人は医者の木島。
    〇 風水林太郎が登場。栗谷一揆騒動諸控という古文書はなかったということが分かったとつぶやく。
    〇 岡村と久保寺健一が会い,岡村が犯行の告白。佐木は岡村ば撲殺し,村長達が,トラクターを木馬という巨大なそりで運んだ。岡村は光井陽二郎を殺害しようとして捕まる。
    〇 エピローグ
     栗谷一揆騒動諸控を作ったのは日向淑子の父だった。小野田は栗谷一揆騒動諸控が偽物だったと岡村に告げたために殺害された。
     新造の推理。日向淑子は戸塚に脅されていた。淑子は木島に依頼し,戸塚を毒殺する。しかし,岡村が食中毒だと勘違いし,この騒動が起こった。
    〇 隣り村のゴルフ場造成のために,多量の除草剤が撒かれ,川に流れ込み,森を病ませていた。そのため,栗谷村をリゾート計画に組み込んでいた。
    〇 久保寺一家は,栗谷村を去る。

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