神聖喜劇 (第5巻) (光文社文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334734060

作品紹介・あらすじ

"被疑者"冬木二等兵の「不条理上申」と東堂太郎の「意見具申」とは奏功、奇怪な"事件"は終熄する。醜怪極まりない「模擬死刑事件」による、東堂・冬木らの営倉入りを経て、事態は、教育期間の最後を飾る大珍事によって急転回する。その主人公こそ、大前田軍曹その人だった-。そして、一九四二年四月二十四日午前九時五十五分、東堂は屯営に訣別したのであった。

感想・レビュー・書評

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  • 夏こそずっしりと重い大作を読もうと考えて、分厚目の文庫本5巻に渡る超大作の本書をセレクト。それこそ、日本近代文学の金字塔にあたる作品として学生時代から認識はしていたものの、相当に難解な作品なのだろうと思い込んでいた。

    確かに平易な作品であるとは言い難いが、実際に読み進めてみるとそれを超える面白さに釘付けになってしまい、貪るように5巻を読了してしまった。

    本書は著者自らの従軍体験に基づき、日本陸軍の二等兵である主人公が送る数ヶ月間の陸軍訓練が舞台となる。主人公の東堂太郎は、超人的な記憶力を持ち、日本陸軍の不条理に孤独な戦いを挑んでいく。

    これは日本陸軍に限った話ではないが、軍隊という組織が国家権力によって運営されている以上、その全ての営みには何かしらの法的文書が存在している。その点で極めて官僚的な組織という一面を軍隊は持っており、実際の訓練における一挙一同に、ある種バカらしいほどの理屈付けがなされているという点でのナンセンスさに溢れている。その点で、主人公の超人的な記憶力は、このあらゆる法的文書をすらすらと暗誦し、ときには不条理なトラブルを解決するためにその記憶力で持って立ち向かっていく。

    そして、本書の面白さを際立てせているのは、人物造形の深みのレベルの高さである。そもそも新兵訓練のための招集ということで、集められた二等兵は日本社会の縮図といえるほどに、学歴や身分、職業などが千差万別になっている。突出しているのは、新兵に対して残忍なしごきを与える主人公の班の班長の造形である。ステレオタイプ的な残忍さだけを持つ人間として描くのではなく、中国大陸で残忍な虐殺に関与してきたという過去や、訓練生活の中でのユーモアなど、非常に多面的な人間として描かれることで、決して物語の先行きを安易には予測させないような展開が待っている。

    全く予想だにしなかった結末も含めて、ひたすら物語の巨大さに圧倒された全5巻であった。

  • 読了直後の余韻が大きすぎてちょっと書く事思いつかないけどすごかった
    いろんな事が次々に浮かぶけど、自分ではちょっと言葉にできないから、読むしかないと思う。けど、5巻もあるからもう一回読むのは大変。
    それにしても「知りません」禁止、「忘れました」強制問答とか面白かったなー。

    小説という形式でしか表現できないだろう思わせるごくぶとな小説でした。
    とにかく膨大な引用と延々と続く内省的な思弁の積み重ねは暑苦しいほどに重厚。
    けど、決して暗くもなくて喜劇とタイトルに付くだけあってどこか滑稽でもある。
    とにもかくにも体の芯から揺さぶられるような濃密な読書でありました。
    傑作中の傑作。

    ちなみに漢語、古語みたいな引用のほとんどはなんのことやら、ほとんどわかりませんでした。


    虚無主義者私が「別様の何か」に寄せる執着、という自家中毒的な矛盾は希望であるのかもしれない

  • 136頁「たとひわれは道理を以て云ふに、人はひがみて僻事を云ふを、理を攻めて云ひ勝つはあしきなり。亦...」
    「徳孤ならず、必ず隣有り」
    300頁、死刑について、東堂の考察。
    304頁、「止めて下さい。誰にも許されていません、そんなことをするのは。」


    耐えて耐えて読み続けて5巻を読むことができ、読み終えることができ、ほんとうに良かった。まる4ヶ月費やした読書にふさわしい、最終巻だった。

  • (ネタバレ/劇透注意)
    第五卷較少引用,時間線快速地前進。為了在劍鞘抽換事件救助冬木,東堂直接找冬木、橋本、村崎古兵釐清當時的事實。過程中得知之前的蘇聯必勝事件果然是吉原去告密的。聽取過程中,劍鞘事件犯人呼之欲出,冬木當時又肚子痛,而吉原很奇怪地熱心地建議他趕快去廁所並且會幫他掩蓋巡邏中擅自離開的事實(並且教冬木出去時對衛兵謊稱不存在的名字),事後並不斷警告冬木絕對不可以說出,事實上應該就是吉原有意讓冬木離開並趁著刻意熄掉燈光搞小動作。

    然而,冬木說出事實跟橋本的目擊當然不可能被(吉原、片桐灌輸)先入為主的觀念的隊長們所接受,事到如今對於吉原的犯行大家也沒有任何直接證據。東堂認為必須要拯救冬木,軍刑法裡面關於器物損傷其實不罰過失只罰故意犯,但這件事情被長官恣意誇大私刑,找藉口來欺壓小兵們,也因此才會發生吉原不小心損害劍鞘之後害怕被究責因此搞了這場把戲。但這次的行動應該聚焦在冬木不該被長官們私刑般地日日叫去逼自白,甚至舉辦犯人投票要大頭兵們寫下密告,這有具體的條文可以做為武器引用,至於抓犯人這件事由於沒有直接證據也不是他們需要承擔的,反而會被長官們拿來模糊焦點。因此在投票結束之前東堂、冬木兩人發動了具申/上申,隊長們就沒有再傳冬木去,之後大家雖然有時還會擔心,但從此以後這個事件就不了了之,也發給湯淺一個新的劍鞘。(冬木在整個過程中,從之間大根的菜軍事機密事件不敢舉手,到漸漸開始比較積極與戰友相處,從下述模擬死刑事件更可以看出他的變化。)

    三月份大家因為長官說可以寄民間衣服來退伍後著用,因此讓絕大多數人又開始有四月結訓後可以退伍回到民間的樂觀情緒,三月的部隊操練感覺也比較沒那麼緊繃還有自由活動拍照時間(最後神山上等兵不斷給別人自己的簽名照,連執意說自己沒有照片無法交換的東堂都還是領到一張,令人莞爾)。在一度失去緊張感的氣氛中,末永二等兵因為偷民宅的烏賊被班長仁多軍曹捉弄,假裝打電話(電話根本就沒牽線)給部隊長並向末永宣告判死刑並公然處刑,讓智能不足、無法察覺這是一場鬧劇的末永陷於崩潰。此時旁觀的冬木與東堂兩人都忍不住同時怒吼,不該把人命當兒戲這樣玩弄別人。(比較反常的是大前田軍曹在這齣霸凌大戲之前故意尿遁迴避,不知是何原因最後也沒有確切答案,似乎不單純是因為和仁多有過節)。仁多軍曹當然反擊,酸冬木的殺人前歷有何資格談珍重生命。冬木回答正因如此他更知道要珍惜生命,仁多軍曹嗆說那你早晚要上戰場要怎麼辦,冬木毅然回答說,「前とかうしろとか横とか向けてよりほか撃たれんじゃありまっせん。上向けて、天向けて、そりゃ、撃たれます」,這句話給了東堂很大的啟發,三個月來他一直在想這個問題,他知道自己終究跟那些上了戰場還是想打勝仗、全力奮鬥的人不同,這種寧靜革命的不抵抗是一個他們展現自己"志"的方式。

    模擬死刑現場中冬木決意自己願意代替末永,東堂也呼應他的行為,在村崎古兵呼籲之下,三個班許多人都站出來挺冬木和東堂,也願意一起代替末永(我覺得這一幕很感動)。然而向來乍似開明的村上少尉幾乎目擊了這一整個過程,他卻直觀認為冬木的想法是惡質的徹底的反戰反軍敵性思想,而村崎古兵的行為是教唆大家結黨抗命,因此村上少尉反而極力認為這種行為應該嚴懲。至於仁多軍曹假扮部隊長假傳聖旨私刑下屬當有趣的行為完全沒被追究,最終這幾個關係人都被判重營倉(村崎古兵8天、東堂冬木3天、末永橋本2天),村崎古兵也被調走。

    四月開始傳來似乎無法退伍的小道消息,大家的心境又開始坐雲霄飛車,最終結訓之後遺憾地無法退伍,被分發到其他部隊。分發前可以陳述自己的希望,作者志願下關但沒有特殊理由最後和吉原、室町等人一起配屬本部,室町因為是引判師因此部隊需要免費使用他的專長應而配屬,吉原後來才知道沒多久之後就因為之前在民間時涉及多起詐欺案被逮捕也即將鋃鐺入獄。至於東堂可能是因為思想的問題被列為要注意人物無法野放到部隊所以冰在本部?原因不詳。

    在結訓之前,東堂病中被長官叫出去特別可以跟安芸の彼女的同事特別會見,終於被想找他麻煩已久的大前田逮到把柄,違反內規,被大前田爆打耳光一頓。大家紛紛在四月中配屬到新單位,東堂則待在聯隊本隊(在四月下旬才被分發到新部隊)。吉原被捕,留下一封信給東堂,承認自己就是劍鞘事件的犯人。大前田文七軍曹在崗哨時趁機溜出去和元ミス竹敷幽會,正好被回頭去拿東西足立少尉逮到他的擅離職守,大前田憤然取走武器潛伏在島內數日依然在四月下旬被逮捕,東堂與被移送的辱職逃亡的大前田擦身而過目送大前田。村上少尉一直提出希望到南方前線也終於如願得以調走。4/24日,東堂離開雞知屯營搭船往新單位北對馬的棹崎砲台。從入伍時下定決心要在這場戰爭而死的虛無主義者,蛻變成決定要在戰爭中活到最後。

  • 日本の小説家・評論家である大西巨人(1916/08/20-2014/03/12)が兵隊経験を基に書いた代表作(大長編小説)。全5巻。漫画化もされている。

    大日本帝国の軍隊において、虚無的な主人公(陸軍二等兵東堂太郎)が、超人的記憶力を駆使して抵抗する。

    有名な「知りません」禁止・「忘れました」強制問題もこの作品が出典。

  • 2015/9/1

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4334734065
    ── 大西 巨人《神聖喜劇〈第5巻〉20021112 光文社文庫》
     

  • 「模擬死刑事件」の冬木、「面天奈狂想曲」の大前田。名サブキャラが最終巻で大爆発。敬礼!!

  • 戦慄、言葉が出ない。二度目の読了にしても読み切った、読み尽くしたとはとても言い切れない。読みながら色々なことを考えさせられ考えた。愚かな人間として重い業を背負わされてしまった。これからもっともっと考え考え抜いて生きていかねばならない。正直、読み手の力量が問われる小説だ。三度目は満を持した状態で読みたいという希望を残しながらも、今は再びこの大傑作を読了したことに感慨無量だ。大西巨人の思想と哲学、美学とユーモアに憧れる。だが何よりも魅せられたのは“任侠”であることを自覚している。

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著者プロフィール

作家(1916年8月20日~2014年3月12日)。福岡県生まれ。九州帝国法文学部政治学科中退。新聞社勤務の後、1941年12月召集され、以後敗戦まで対馬で兵営生活を送る。敗戦後、福岡で発刊された『文化展望』の編集に携わる傍ら、文筆活動を開始する。46年新日本文学会に入会、以後『近代文学』や記録芸術の会など、さまざまな文学芸術運動に関わる。48年日本共産党に入党、61年以降は関わりがなくなるが、コミュニストとしての立場は生涯変わらなかった。公正・平等な社会の実現を希求し、論理性と律動性とを兼ね備えた文章によって個人の当為を形象化する試みを続けた。1955年から25年の歳月を費やして完成した『神聖喜劇』は、軍隊を日本社会の縮図ととらえ、主人公の青年東堂太郎の精神遍歴の検証を通じて絶望的な状況の中での現実変革の可能性を探った大作で、高い評価を受けている。ほかの小説に『精神の氷点』(1948年)、『天路の奈落』(1984年)、『三位一体の神話』(1992年)、『深淵』(2004年)、批評集に『大西巨人文藝論叢』(立風書房、全2巻)、『大西巨人文選』(みすず書房、全4巻)など。

「2017年 『歴史の総合者として』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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