江戸川乱歩全集 第2巻 パノラマ島綺譚 (光文社文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (763ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334737337

感想・レビュー・書評

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  • 乱歩が読みたくて借りてきたけれどあまりにも分厚すぎて、一度に読むと少々つらいものがあった。同シリーズの『孤島の鬼』と『陰獣』も借りてきたがとてもじゃないが今の精神状態では読めないので返却。乱歩は一気に読むものではないな…

  • 5作とも大正15年開始で初めての長篇小説含む、と。どれもめくるめく気持ち悪さで好きだけど、<パノラマ島綺譚>は「余りに独りよがりな夢に過ぎた」とある通り確かに濃くてしつこくてそれが良い。とても好き。<空気男>がこれからってとこで掲載誌廃刊と共に途中までなのが!<一寸法師>は素人探偵明智君もの。探偵役がいると読者は解決待ちつつ気楽に一喜一憂できて楽ね…と思うけど、でも<湖畔亭事件>の方が好み。 5篇とも悪趣味さ満載な本編(もちろん褒め言葉)からの自作解説の言い訳がましさも良い味だなぁと。

  • 闇に蠢く:前半と後半の別の話をなんとかひとつにくっつけた話に。これは乱歩自身の解説でも事情を書いている。後半はある事件を思い出したが、乱歩も似たような小説からインスピレーションが働いたとのこと。恐ろしい話。

    湖畔亭事件:全体の話が決まってないうちに書き始めてなんとか辻褄を合わせて書いたらしい。そういうことができるものなのね。少し無理がある話だとは思うけど、辻褄はなんとか合わせられ、なかなか面白かった。

    空気男:連載していた雑誌が廃刊になり、途中で終わっている。結末まであればどういう話になってたんだろう。前半のみなので、中途半端すぎる。

    パノラマ島綺譚:無理があるような話ではある。現代では通用しない。最初は面白いので引き込まれるけど、パノラマ景色は想像すると気持ち悪い感じにしか思い浮かばない。尻窄み感あり。

    一寸法師:典型的なミステリーなので、読みやすく引き込まれやすかった。どんでん返しの繰り返し。

  • 「一寸法師」
    小学生の頃読んだ様な気がしていたが、途中まで読んで、思い出した。それだけ、大乱歩の不気味な描写が頭から離れなかったということかと思う。
    「パノラマ島奇譚」
    これも、描きようによってはたいそう美しいはずの島の風景が、おどろおどろしくかいてあり、グロテスクな仕上がりに。その表現力に敬意を感じる。

  • 闇に蠢く トルコ風呂 籾山ホテル 人肉
    湖畔亭事件 覗き眼鏡 三造
    空気男 なりすまし
    パノラマ島綺譚
    一寸法師 人形の手

  • 一寸法師って……本当にすげえ皮肉……

  • 2巻
    『パノラマ島綺譚』ほか全5篇収録

    読んだのが結構前なのでうろ覚えですが、『闇に蠢く』の最初の段階からは想像できようがない最後のオチにびっくりしたことと、『パノラマ島綺譚』の島の綺麗さとラストのバーンが印象的だったのを覚えてます

  • 再読
    ●闇に蠢く
     乱歩も自ら回顧するように、何かにつけて「まとまった筋」というものを用意せずに物語を書く癖があった。故に、筋がてんでバラバラ、どうしようもなくなり怪奇趣味に走りだすとか、風呂敷を畳めずに執筆を辞めてしまうことがあった。無論、悪いことばかりでなく、そういう習慣(?)のお陰で傑作が生まれたり、読者を魅了するような怪奇趣味を提供してくれることだってある。
     「闇に蠢く」は、放蕩道楽男、野崎三郎がお蝶という女性に昵懇になってしまったことから始まる。第一に、この主人公野崎の性癖からして、真正の変態である。本当に乱歩はこういうのを描写するとき、大変生き生きと楽しそうに書くなあ、といつも思う。お蝶の死(か、どうかは不明だが、沼に片方の草履が浮かんでいた)、昔のお蝶の連合い進藤の登場、野崎の旧友植村による報告、そして洞窟に閉じ込められる野崎と植村。
     とんとんとん、と場面は展開していくのだが、行きつく先がカニバリズムだとは、誰が想像できるだろうか。
     
    ●湖畔亭事件
     二転三転と物語を転がすのは、乱歩の十八番。特にこの作品は秀逸だと思うのだが、どうだろうか?
     この事件の主人公もまた、中々に変態のご趣味を有しておられる。
     様々な箇所で、犯人はこいつだ、ということを示唆しているにも関わらず、成る程、河野の言うことにも一理あると思わせられ、しかし……、そうは問屋が卸さなかった。多分、本作を読んでいて、「ん?この事実については言及されていないじゃないか」と思われることになるだろう。そう、その事実を犯人の話とすり合わせれば、より残忍な真相に近づけるであろうことは請け合いである。

    ●空気男
     尻切れとんぼ。然し、いくらなんでも健忘症が過ぎるだろ(もし、写真を除いた出来事を忘れているなら)。

    ●パノラマ島綺譚
     瓜二つの人物の片割れが死に、それに成り変らんとするもう一方。そのもう一方が、死んだ片割れの金力を恃みにして、長年の望みであった「パノラマ島」を形にしていく。
     恋した相手(菰田の妻千代子)をどうしようもできないのは、自業自得とはいえ、辛かろうことは容易に想像し得て、何だか変に人見に同情してしまう。
     散り際は狂気(花火として自らが打ち上げられる)だが、華を咲かせたかったという心情もわからなくもない。
     しかし、あのパノラマ島の情景の克明な描写から一転、急に北見小五郎とかいう人物を出して風呂敷を急に畳もうとしているところから見ると、名残惜しい(描写だけではもうどうにもできない)がどうにか終わらせないといけないので、筋としてはまずい(あんなに苦労して人見が準備をしていたのに、未発表作の『 RAの話』で身元がばれてしまうのは、ちょいと不自然か。でも、そういうちょっとしたことで嘘が崩れていくのは、或る意味リアル)
    が、ああいう持っていき方をしたのだろうと思う。

    ●一寸法師
     ふんだんにトリックを使っている。ただ、今からしたら、「ああそれね、知ってる」と言われかねないトリックだったりするので、期待を膨らませすぎるのは禁物。
     一寸法師が犯人かと思ったら違うし、あれれ実の父親だと思ったらそれでも違う。で、結局は入れ替えでした。……という、あの二転三転の展開が待っているので、やっぱり楽しめる(嫌いな人は嫌いだけど)のだ。

  • 闇に蠢く 湖畔亭事件 空気男 パノラマ島綺譚 一寸法師

  • 初めて読んだのは確か、小学生の頃。
    学校の図書館に並べてある、少年探偵団の面白さにハマり
    背伸び気分で、本屋に並べてあったコレを
    手にした様な記憶がある。

    怖いものを見た。という感覚は覚えていたものの
    あまり印象には、残ってなかった。
    というより、理解力が乏しかったのか
    書いてる意味すら、わかっていたのか謎。
    ただラストは、衝撃を受けた。

    時を経て、十代半ばで再読。
    そのときも、ただただ、キモイ。という印象だった気がする。
    この時も、ラストはわかってはいたものの
    やはり、印象をより深めた。

    二十代になり、再々読する機会があり、三度読み返す。
    印象はガラリと変わった。

    切なく、そして美しい世界。
    それは決して、万人が美しい。と思えるものでは
    無いのだろう。
    異様な光景。常軌を逸してる。いわば、異常。
    それでも美しいのだ。

    嫌悪を感じながらも、読む手を止められず、惹きつけられる。

    散り行くラストは、衝撃的であり、この部分だけは
    初めて手にした小学生の頃から、変わらず心に残りつづけている。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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