- Amazon.co.jp ・本 (481ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334737603
作品紹介・あらすじ
審理は終結した。後は3人の裁判官の合議で量刑が決まる。そのころ神谷裁判長宛てに一通の封筒が届いた。痴呆気味の父と娘の身辺に危険が…。致命的な急所を突いた水面下の罠に動揺し態度を豹変させる神谷。情状の余地とは、人が人を裁くとは、量刑の客観性はどこにあるのか。「正義」とは、「法」とはなにか。一裁判官の職責と人間性を通して描く衝撃作。
感想・レビュー・書評
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一気に読み終えるだけのエネルギーはあるものの、岬はどうなの?って気持ちが置いてきぼりになった下巻。
ネタバレ有り、以下注意。
ドラマが勝ってしまって、それぞれの人生というか生き方にまでページを割き切れなかった感がある。
愛人政治家は、結局何がしたかったんだ!というくらい、ある種大胆な犯行に及ぶ。
この人、決断力あるかもしれないけど、ほとんど策略が成功しないよね。
のちに本当に岬の話が通らないことへの憤懣を抱いたからやった、とか言うなら、彼女に対してしてやれることは他の形であっただろうよ、とただただ思う。
岬については、下巻ではあまり描かれないので、アホな男にうつつを抜かして、地獄に堕ちてしまった女からの払拭が……。
唯一、考えさせられたシーン。
「真理がどんな殺され方をしても、それでも……それでもあなたは、そんなに死刑が出したいんですか!」という、裁判官妻の一言から。
裁判官って、実名なんだよなーと。
採決によって恨みを買うこともあるだろう。
個人と仕事って、難しい。。。
何かを選択することで、誰かが変わってしまう。
誰だって、生きていればそうなのであって、そのことから無関係ではいられない。
社会って、ある意味で重い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
上村岬の裁判を審議する神谷裁判官の元に、差出人不明のメールが送られてくる。そこには娘の真理を誘拐したことと、判決で死刑ではなく有期懲役刑を言い渡すことが指示されていた。
裁判がどんどんすすんでいくのかと思いきや、物語は予想もしない方向に進み、上巻とは一転して誘拐&脅迫事件へ。娘を無事に助けるために、裁判官が判決を左右してしまうのかどうか。裁判官としての使命と娘の命、どちらを優先するのか、神谷裁判官の心情がかなり丁寧に描かれていて、分厚い本だったのに一気に読み終えた。知らなかったのは、こういう事態になった時のことが、「刑事訴訟法」に載っていること。この小説のようなことが想定されて定められたんだろうか。 -
裁判官の判決に至るまでのプロセスがよくみえた小説でした。
上巻を読み終わる頃は、物足りなさがありましたが、下巻に入るとラストまでは一気に読み終えた感じがします。
殺人事件の裁判官が娘を誘拐された後、減刑を要求されて、「裁判官」と「親」、ふたつの立場で苦悩する描写は、秀逸でした。
裁判員制度も始まり、人が人を裁くということを改めて考えさせられました。
ただ裁判官同士の「合議」の際の専門用語、やっぱちと難しい。 -
2006/06/08 tue
<br>下巻も読み終わりました。合議ってこんな風に進められていくのね〜と初めて知ったんですが、それでもリアリティが感じられ、さらに奇想天外な展開も加味されていて面白かったです。真実を見極める難しさ、人が人を裁くこと、そして平成21年5月までに導入される裁判員制度について考えさせられました。裁判官も人の子なんだよなぁ…