僕のなかの壊れていない部分 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334738396

作品紹介・あらすじ

出版社に勤務する29歳の「僕」は3人の女性と同時に関係を持ちながら、その誰とも深い繋がりを結ぼうとしない。一方で、自宅には鍵をかけず、行き場のない若者2人を自由に出入りさせていた。常に、生まれてこなければよかった、という絶望感を抱く「僕」は、驚異的な記憶力を持つ。その理由は、彼の特異な過去にあった。-生と死の分かちがたい関係を突き詰める傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 個人的にはすごく好きな雰囲気を醸し出している一冊。

    主人公の気持ちがなんとなく理解できる。過去のトラウマを強烈に抱き、生に喜びを見出せない。常に死を求めているが、死なずただ生き続ける毎日を送る。

    女性との関わりも多いのに、どこかで勝手に線をひいている。

    友人が首相を刺すシーンはちょっと過剰な演出で、現代の日本人がたとえ追い込まれ生きる希望を見いだせなくなっても誰も首相を刺すことなど選択しないだろうな。何も変わらないのはわかっているから。

    生きるというのは死と向き合うこと。私はもういつ死んでもいいと思っているし、こんな苦行のような世界でだらだらと長く生きたいとは思っていない。それでも生きているうちは、人間と関わらなければならない。主人公のように素直になれないのは同じだけど、少なくとも、妻や子供たちだけには、正直でありたいと思う。

    こんな感想でいいのかしら。。。

  • 白石さんの小説なんだけど、ちょっと村上春樹っぽく感じた。

    主人公の「僕」は、東大卒の出版社に勤務する29歳。3人の女性と関係を持ち、自宅には若者2人(♂♀)を自由に出入りさせている。
    常に、生まれてこなければよかった、と人生に絶望しながら日々は続いて…。

    「僕」の考え方がとにかく捻れてる。そして、驚異的な記憶力のせいで、時々過去を思いだし落ち込んだりもする。
    一言で言えば「嫌な奴」だが、枝里子が完全に別れようとしない理由も、なんとなく分かる。
    壊れかけた人しか持ってない感じ(魅力)を、近くで見ていたいのでは?

    何とも不思議な読後感を残す小説。
    こうやって毎日は続くんだなぁ。

  • うるせーわ自分の不幸を見せびらかして周りに不誠実を働いてんじゃないよ金があるからってろくな男じゃないよ別れろエリコ!!!

    と思いながら読み、
    (でもなんかそうせざるを得ない理由があるのかも…)
    と思ってるうちに読み終わった。だめじゃん。

  • 読む時期がぴたりと合えば。すごく好きになったかもしれない。
    今は共感ポイントが見当たらないのだけど、作者はすごく頭のいい人なのだな、とそれは伝わる。
    ストーリーで、魅せたり、キャラクターで魅せたり、とはまた違う。
    静かに答えのない問いを問いかけてくるような、そんな一冊。

  • 全然覚えてない。

  • 幼少期に置き去りにされたことがある大手出版社に勤める直人と 完全な容姿仕事両親を持っている恋人の枝里子
    事件を起こす雷太 心の拠り所の真知子さん どの人も
    切ないと思う 人を突き詰めていて あと2、3回読むと
    又違う気持ちになるかも。 トルストイの引用が的を得て かなり考えさせられた。

  • 本作の主人公に対し否定的なレビューが多いことに納得しつつ、でも自分はさほどか微塵も悪い印象を思わなかった。

    だが確かに彼の思考というものは、読めば思うだろう。10ページ読むだけでも、ダメな人は拒否反応が出るはずだと思う。独自の理屈で、客観的に見た正義とされる言い分で、徹底的に反論させる余地もなく、好き嫌いを抜きに、相手を言い負かす。もしくは言いくるめ納得させる。どんな人からしても主人公みたいな人物を親しい友人と置く人は、そういないんじゃないかな、と思わせるタイプ。その上で勉強が出来、莫大で鮮明な記憶力と物事を正確の捉え判断する能力が優れている。

    物語という観点から読むと、主人公の行動があってから、経験を交えての彼の哲学を聞くことになる。個人的にはそれがとても面白く感じた。
    しかし、話の流れとしてはテンポが悪く、考えの滂沱に、主人公はこう感じたのは分かった。そして過去にそういう経験をしたからであり、回想に転がったんはどんな会話からだっけ? あーこうだった。と読み返さないと忘れるくらい長々としてると感じる人の方が多いと思う。加えて紹介する時、「どんな内容なの?」と尋ねられると、シックリくる説明が思いつかないくらい、ぶつ切りで終わってしまう。自分がもし紹介するなら”生き方に悩んでる人に考えさせる機会を与えてくれる本(ただし人により個人差がございます)”とでも言うのだろう。

    だから、とにかく理屈や物事に意味を見出そうなんて考える、考えてしまう人にとっては面白いけど、ストーリーは穴空きチーズで、人って分からない! と悶々するかもしれない一冊だと思う。

  • なんなんだ、この小説は・・・。
    読むのにすごい苦労した。とにかく文章が分かりにくい。所々、他の小説や評論の引用も出てくるんだけど、何が言いたいのかサッパリ・・・。
    まぁ、自分の読解力の無さが原因なんだろうけど、それにしてもヒドすぎるだろ!それぞれの場面々々で、登場人物たちが何を感じ、何を思っているのかもよく伝わってこない。文章がダメダメだと思うけどな。
    主人公の「僕」にも感情移入出来なかった。

    その上、終盤になって起こされる一つの事件。
    唐突感しかない。この事件が起きる必然性は有るのか大いに疑問。

    扱ってるテーマは難しいものを扱ってるんだろうけど、もっと分かりやすく書いてもらわないと、自分のような読解力の無い人間には読みこなせない!
    難しいテーマを分かりやすく書くのも、小説の技量のうちだと思うけどね。

    余裕の☆1個

    背表紙から〜

    出版社に勤務する29歳の「僕」は3人の女性と同時に関係を持ちながら、その誰とも深い繋がりを結ぼうとしない。一方で、自宅には鍵をかけず、行き場のない若者2人を自由に出入りさせていた。常に、生まれてこなければよかった、という絶望感を抱く「僕」は、驚異的な記憶力を持つ。その理由は、彼の特異な過去にあった。
    生と死の分かちがたい関係を突き詰める傑作。

    どこを指して傑作と言うのか知らないけど、ほめ過ぎだと思う!

  • 【他人の死にたいの耐え難い既視感】

    死にたい者同士がうまく傷口を舐めあえないのは、やはり自分の血がだけが赤く艶かしく美しいからだ。隣人のどす黒い血なんて、舐めたくない。

    血を舐めたことのない人は、そのとびきりの甘さにめまいを起こし、真紅を際立たせるのは傷のない滑らかな白い肌だ。ないものを求める。求めるものを求める。求めて初めてないと知る。

  • こういう死生観・人生観を抱えながら、しかもそれと照らし合わせるようにして生きていくというのは、なかなかにしんどそうである。
    それを自らにも他人にも問うように、叩きつけるように、つきつけたりもする。
    誰に対しても、ある程度の距離でラインを引いて、そこから近づきも近づけもしない。

    読んでいるうちにだんだん引きこまれていった。
    女性陣がいい。

    ぜひもう一度読み直したい。
    ひょっとしたら、彼について全く違った印象を持つかもしれない気がしている。

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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