- Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334738907
感想・レビュー・書評
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どんなに夢のような世界であっても、そこが人間の住む場所である限り、醜さや悲しさと無縁できることなどはできない。誰かを殺したいと思ったり、そして殺してしまったり、人が集まって住むところにはいつか必ず悲劇が起きる。人と人とが摩擦を起こさずに穏やかに暮らせる桃源郷などはどこにもありはしないのだ。
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正太郎シリーズの浅間寺先生とサスケが主人公。
村の奉納の舞をぜひ見て欲しいと言われ、京都、北山をさらに分入った"地図にない村"へやってきた二人。
祭りの前日の稽古舞が終わった時、悲劇はおきた。舞手の一人が衆人環視の下、わずかな時間の隙に、刃物で胸を一突きにされて殺されたのだ。
村にのこる「消えた乙女の伝説」との関係は?
ゼフィルス(風の精、山のシジミ蝶のことを一般にこう呼ばれている)の棲む場所とは?
謎そのものはあまり……。舞の構成の部分が分かりにくくて私にはムダに長く思えたし、伏線がわかりやすぎるほど張られているので、みんな最後まで読まずに気付いてしまうんじゃないかと思う。でも、せいぜい昭和40年代くらいで時が止まっているムラの様子とか、最後のオチとかはけっこう好き。
それよりも、京都北山についてや、人と自然とのあり方、ムラについての記述がとても興味深かった。
例えば、命の樹木、ブナについて。その根にたっぷりと水を貯える性質を持つブナは、地質をよくするし、そのおかげて、様々な植物が生えてくる。それらの実や花は小動物の糧となり、それらの小動物を獲物とする狐やテンなども充分に暮らして行ける環境ができる。また、ブナの根がしっかり地面を掴んでいるので、大雨がふっても、表土はあまり流れ出ず、川はいつも澄み、川魚も生息できる環境ができる。しかし、日本の林業政策では、木材として商品価値のないブナの力を軽視してしまったこと。その結果、日本の豊かな森はどんどん失われ、自然のバランスを壊してしまったこと。増える水害や、農作物への影響。
最後の章にこうある。
太陽、月、風、土、空、動物、昆虫、植物。すべてのものに「神」を投影して畏れを抱いて生きること。それは結局、そうした自然と人とが共生していく知恵なのだ。畏怖の念を持つ相手に対しては、適当な距離と秩序が保たれる。その距離と秩序によって自然は人の手の破壊から逃れ、生き物も絶滅からまぬがれて自然界のバランスを保ち続けることができる。
こういう風に生きていけたらいいなぁと思う。 -
京都・北山の奥深く、“地図にない村”へやって来たミステリ作家・浅間寺竜之介と愛犬・サスケ。村祭りの奉納の舞を見てほしいという少女に誘われたのだ。通し稽古の会場で、幻色の蝶を模した優美な舞に、竜之介は圧倒される。その直後、衆人環視の密室の中、舞手の少女の一人が胸を刺され、息絶えていた。村の伝説と乙女たちの想い。美しく、せつない本格ミステリ。
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この方結構多作な作家さんだと思うのですが・・
何作か読んだことあるのだが
普通に読めるけどあんまし内容を覚えてない〜
まぁ可とも不可ともという感じの話でした
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ある小さな村を舞台に、たまたま居合わせた探偵役の文筆家の目の前で、殺人事件が起こって、いかにも怪しい容疑者がいて、という気持ちがよいほどいかにもなミステリー。関西弁の謎明かしというのはコナンの平次くんしか経験なかったもので、新鮮でした。いじょう。
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地図にない村の住人からの誘いで、そこまで行くわけですが
何だか妙な村だな〜と。
推理が展開されるまで、まったく犯人が分かりませんでした。
影が薄すぎです…。
ちょっと不思議な話、という分類でいいのでしょうか?
事件自体は単純で読みやすかったです。
犯人、まったく分かりませんでしたがw
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柴田さんにしては爽やかな作品。
けど、物語に盛り込まれた豊富で多岐に渡る知識と見聞は、さすが。
しかもそれがちっとも嫌味な薀蓄になってないとこが(笑)
彼女の小説は振り幅がものすごい。
スケールもものすごい。
この多重人格ぶりが読者としてはたまらない。
そして何より、そのすべてがちゃんと大地に根ざしてるところが
人間に優しい目を向けているところが
とても好き。 -
2005年6月21日読了
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伏線と人間関係を書くのが上手い。
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未読