戻り川心中 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
4.07
  • (113)
  • (117)
  • (71)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 809
レビュー : 119
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334740009

作品紹介・あらすじ

大正歌壇の寵児・苑田岳葉。二度の心中未遂事件で、二人の女を死に迫いやり、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。岳葉が真に愛したのは?女たちを死なせてまで彼が求めたものとは?歌に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを描く表題作は、日本推理作家協会賞受賞の不朽の名作。耽美と詩情-ミステリ史上に輝く、花にまつわる傑作五編。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  花にまつわる短編を5編収録したミステリ短編集。

     最近でこそミステリが文学賞で評価を受けることは珍しくなくなりましたが、この作品以上に文学の美しさとミステリを両立させる作品はあるのだろうか、と読み終えて思いました。

     各短編独立した短編ですが、共通するテーマがあります。それは各短編が花にまつわる短編であるということだけではありません。そこにあるのは様々な男女関係を詩情で彩った少しレトロさの感じられる浪漫です。
    何となくですが、夏目漱石の恋愛小説をミステリで昇華したような印象を持ちました。

     印象的な短編は「桔梗の宿」「桐の柩」表題作の「戻り川心中」

    「桔梗の宿」は遊興町で起こった殺人事件を捜査する若手刑事の話。最後明らかになる真相と花に秘められた思いの美しさと切なさが忘れがたい余韻となって残ります。

     「桐の柩」はやくざの子分となった男が主人公。一筋縄でいかない男女関係の複雑さとそれぞれの姿が味があってかっこよくラストシーンも非常に美しいです。

     表題作の「戻り川心中」は天才歌人”苑田岳葉”の自殺に秘められた謎を描く話。
     苑田岳葉という歌人の人生の濃さとその非凡さを、短編一編で書き切ってしまうその凄さ、彼を愛した女性の悲哀もあますことなく描き切り、最後の謎が明らかになるとともに分かる、彼が抱えた孤独と虚無…
    もちろん文章や岳葉が書いたという歌もしっかりと書き込まれていて、小説の中で死んでいるはずの岳葉が、まるで本当の歴史上の人物かのように読み終えたあと思いました。どこを取っても一級品の短編でオールタイムベストに挙げられるのも納得の作品です。

     ミステリファンも、文学マニアもぜひぜひ読んでほしい、そして将来まで読み継がれてほしい作品でした。

    第34回日本推理作家協会賞短編部門「戻り川心中」

    • とし長さん
      kwosaさん

      連投ありがとうございます。

      本当にあのクオリティの高さは何なのでしょうね。この間本屋をうろついていると宝島社文庫...
      kwosaさん

      連投ありがとうございます。

      本当にあのクオリティの高さは何なのでしょうね。この間本屋をうろついていると宝島社文庫で、『『このミス』が選ぶ! オールタイム・ベスト短編ミステリー 赤』
      というアンソロジーが売られていて、その中に2015年版の「このミステリーがすごい! オールタイムベスト国内短編ミステリー」の順位も収録されていたのですが、
      「戻り川心中」が1位、「桔梗の宿」が7位でした。やっぱりすごい作品なのですね。

      連城さん作品も少しずつ読んでいければな、と思います。
      2015/05/14
    • kwosaさん
      とし長さん

      連城クオリティ! 何なのでしょうね。
      代表作は超弩級、その他の作品も平均点を遥かに上回る、偏差値の高い優等生です。

      ...
      とし長さん

      連城クオリティ! 何なのでしょうね。
      代表作は超弩級、その他の作品も平均点を遥かに上回る、偏差値の高い優等生です。

      『オールタイムベスト 赤』
      乱歩の内容は忘れちゃいましたが、高木の『妖婦の宿』と鮎川の『達也が嗤う』も、ミステリの魅力がギュッと詰まった傑作短編なので、お読みになってみては?
      2015/05/18
    • とし長さん
      kwosaさん

      『オールタイムベスト 赤』のもう一つは確か乱歩の「押絵と旅する男(?)」だった気がします。

      細かいところは覚えて...
      kwosaさん

      『オールタイムベスト 赤』のもう一つは確か乱歩の「押絵と旅する男(?)」だった気がします。

      細かいところは覚えてないのですが(汗)、とても幻想的で乱歩作品らしい作品だったのは記憶してます。この機会にまた読もうかな。

      鮎川哲也さんや高木彬光さんなど古典作品はまだまだ読んでない作品が多いので、こういうベスト形式で紹介されるのは、自分にとって非常にありがたいです。(特に短編はベスト10的なものってあまり見ない印象なので)

      積読本とも相談しつつ、徐々に読んでいきたいです。
      2015/05/18
  • 淫靡で情緒豊かな文体と技巧を凝らした緻密なトリック、一見相反する技術が絶妙なバランスで一編の中に織り込まれている、この圧倒的な感動は読んで感受した人にしか伝わりません。
    こんな密度の濃い傑作短編を読んでしまっては、次に読む本に悩みます。

  • 流麗な美文で綴られた匂い立つような男女の情愛のドラマと、本格ミステリのトリックが、何の不自然さもなく融合しているばかりか、事件の真相が新たなるドラマを呼び起こす感動。表題作も良かったですが、個人的には「桐の柩」が好きです。

  • 非常に読み応えある作品でした!連作短編集です、時代背景は大正~昭和初期にかけてで、それぞれが花を謎解きの鍵に据えていてミステリの定石に則って納得の結末を迎えます。

    この著者は最初恋愛作家だと思ってたのですが(恋文という短編集を読んでました)昔からミステリも多く発表されていて『戻り川心中』も1980年の作品です。この一連の花をキーに据えた作品は花葬シリーズと銘打たれていて『夕荻心中』と対になって完結されているようです。

    それぞれの語り手は多種多様な人々になっていますが、口語文語を使い分けて綴られる日本語の美しさに感動しました。心象表現、写実表現に熟練の手腕が発揮されています。なんというか、普通のミステリーではないような言葉や文章にリズムが感じられるというか、今まで読んだことのない世界でした。

    表題作である『戻り川心中』は太宰治をモデルとした創作であるとのことです、これは解説を読んで知った事柄ですが、この事実はさらに大きな驚きでした。

    苑田岳葉という歌人の二度の心中行の謎に迫る内容ですが、作中に多数の歌が詠まれています。読みながらその歌意に心奪われ、この歌人についてもっと知りたい!と思ってたところ全て創作!つまり作中の歌も全て著者の創作だったという事実、こんなミステリ作家いたのか!?と、古典回帰というか、この作家さんの作品さらに読んでいこうと心に決めたのでした。

  • 花にまつわる五編からなる短編集。
    耽美と詩情、不朽の名作。渋い一冊に浸りました。
    大正の時代、色街の片隅やヤクザ者のねぐら、片田舎の寺などで起こった殺人事件。
    あからさまな表現ではなく、深読みしないと分からない部分もありますが、そこもまた醍醐味でしょうか。
    スピーディーで派手なエンタメ作品も好きだけど、しっとりとした風情が美しい作品もいいですねぇ

  • 美しい美しいと言われているミステリー。確かにとても美しい。殺人事件の話なのに何故。それは連城さんが編む日本語であったり、情景に現れるこまごまとした物に命が宿っているからだろうと思う。特に眼を引くのが「花」の活かし方。睡蓮だったり菖蒲だったり、何かしら花が印象的に使われている。花の儚さと人間関係、生命の儚さ、やるせなさがうまくシンクロしていて、悲しい話のなかに瞬間的な彩りが作られている。また殺人事件が起こるまでの人間の心の機微、これでもかというほど繊細に書かれている。玻璃のような小説。感銘受けて当然なのだ。

  • 文章が綺麗でミステリだというのにびっくりした。格調高くて古い時代を感じさせるのに全然読みにくくない。
    トリックを明かしていく過程で驚きよりもやるせなさ、切なさが心に残る。

    「桔梗の宿」「白蓮の寺」が特にいい。

  • 日本のミステリ史上最高の短編集の1つだろう、控えめに言っても。
    清張とは違う形の一人の芭蕉の仕事がここにはある。

  • 素晴らしいの一言。

    花が謎解きのキーとなる推理短篇集。各篇が不義と悲哀に溢れた物語なのだが、どれを読んでも抒情性に満ちている。
    なにより詩情をたっぷり含んだ文章が美しく、ほんのりと余韻を残す文体に謎解きよりも夢中になってしまった。特に「藤の香」。
    まるで和歌で綴られたミステリーのようで推理小説の枠に納まり切らない幽玄さがあった。
    傑作との誉れ高い理由が分かる。

  • 自分の中で、連城ブームがきている。
    その中でもこれは面白かった!特に表題作が。
    あえて詳細は書かないので、読むべし。
    完全版はハルキ文庫になるらしい。
    あまり知られていないような気がするから、広めていきたい一冊。

全119件中 1 - 10件を表示

プロフィール

1948年愛知県生まれ。1978年『変調二人羽織』で第3回〈幻影城〉新人賞に入選。1981年「戻り川心中」で第34回日本推理作家協会賞、1984年『宵待草夜情』で第5回吉川英治文学新人賞、同年『恋文』で第91回直木賞、1996年『隠れ菊』で第9回柴田錬三郎賞を受賞。2013年10月19日に逝去。著書多数。日本の多くのミステリー作家に多大な影響を与え、他界後も多くの作品が再刊されている。2014年日本ミステリー文学大賞特別賞を受賞。

「2017年 『女王(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

戻り川心中 (光文社文庫)のその他の作品

戻り川心中 単行本 戻り川心中 連城三紀彦
戻り川心中 (光文社文庫) Kindle版 戻り川心中 (光文社文庫) 連城三紀彦

連城三紀彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
麻耶 雄嵩
有効な右矢印 無効な右矢印

戻り川心中 (光文社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする