虚構大学 (光文社文庫 し 2-86)

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  • 光文社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334740030

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  • 京都産業大学をモデルにした、総合大学の新設に奮闘する男の物語です。

    祖国愛を教える理想的な大学をつくりたいという夢を抱く大学講師の深間良樹が、鳥取で私立高校を設立した実績のある千田孝志に協力を求めるところから物語ははじまります。深間の直情的な性格に戸惑いながらも大学設立に向けて準備を進める千田の前に、さまざまな問題が立ちはだかります。大学の建設用地の確保や資金調達は思うようにいかず、深間が学長として担ぎ出した物理学者の天野恒道は酒乱の老人で、千田たちは彼の言動に振り回されます。

    やがて深間は天野との仲たがいが原因で去ってしまい、他方で最初は乗り気ではなかったはずの千田は自分の力を試す新たな場を求めるように、大学設立の運動にのめり込んでいきます。

    そんななかで、千田は大学人の醜態を見せつけられたり、千田の尽力でようやく大学が設立できる目途が立つと今度は地位や名誉を求める人間が割り込んできたりといったトラブルに見舞われ、苦渋をあじわわされます。やがて軌道に乗りはじめるであろう大学の船出を前にして、千田はしだいに妻との落ち着いた生活がなによりも大切なものに思えてくるようになります。

    主人公をはじめ、魅力的な人物も多数登場しますが、彼らの心をえがくことよりも物語のテンポの良さに著者の努力が注がれているように感じました。官庁や財界人とのやりとりなど、あまりなじみのない話題が出てきても、テンポの良さに引っ張られてスラスラと気持ちよく読むことができました。

  • 社会派小説としても非常に面白く、なおかつ大学の設置認可経験者によっては、読んでいて身を熱くする話であろう。新任職員の読書推薦本として挙げても良いのかもしれない。

  • 大学の開学までの過程が興味深く、面白かった。

  • 京都産業大学設立をモデルにした小説

    常に理性的で、良識人であろうとすると、無遠慮で自己中心的な人間に努力の成果を奪われてしまうということか。

  • /?day=20060123

  • 新設大学の創設に関わる大学教授ら関係者の本音と建前が随所に見え隠れしていて面白く読めました。権威者の半分は案外出世欲の塊なのかも。

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著者プロフィール

1931年東京向島生まれ。週刊誌記者などを経て、66年に証券界の内幕を抉った『小説兜町』でデビュー。一躍ベストセラー作家となる。75年『動脈列島』で日本推理作家協会賞受賞。『虚業集団』、『敵対的買収』、『ITの踊り』など著書多数。2010年に永眠。

「2022年 『小説 兜町』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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