風化水脈 新宿鮫VIII (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (674ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334740283

感想・レビュー・書評

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  • 新宿鮫シリーズ8。

    前作の舞台であった鹿児島から新宿に戻ってきました。
    自動車窃盗事件を追う中で40年以上も前の事件を掘り起こしてしまった鮫島は、やがて街と人の歴史を垣間見る事となります。

    シリーズの舞台である「新宿」という街を改めて見つめ直す1冊ですが、新宿の歴史と人々の人生を豊熟した雰囲気で描いており、これまでのアクション満載の展開とは一線を画します。
    派手で享楽的な街である新宿にも、積み重ねてきた悠久の歴史があるのだと思うと感慨深いものがありました。

    この街に根を降ろした人々の長きに渡る営みが見える過去の事件と、出稼ぎにきただけの刹那的にこの街で生きる中国人犯罪集団が絡む自動車窃盗事件という、対照的な人々が行き交う物語の展開も、雑多なこの街に相応しいものだったと思います。

    鮫島に因縁のある一人であった暴力団構成員の真壁が、ヤクザから足を洗って彼を支え続けた雪絵と人生を共にしようと奔走します。しかし、そう簡単に事が運ぶはずがなく、二人の幸せな未来が示唆されるほど危機感が募って緊張しっぱなしでした。
    雪絵の期待と不安に揺れる女心や、母との微妙な距離感の描写もとても良い。

    この作品はシリーズを重ねてきたからこそ出せる雰囲気ではないかと思います。
    雪絵の客である謎の男の、物語への絡み方もかっこよかったです。

  • 主人公の活動する「新宿」という戦後の混乱(混沌)をそのままにとどめているようにもうかがえる地域、そんな街の時の残滓を浚った物語。中盤あたりに屍蠟化した死体の発見されたところで、その事件背景(真相=犯人)というかその後の展開ついては初心者のミステリ読みでも易く凡の想像のつくものであったように思う。しかしそんななぞるような物語展開となってしまったものの力ある筆致にひきこまれ、精彩(魅力)が登場人物たちの錯綜する物語世界に最後まで浸ることができた。大沢アニキ・・さすがである。

  • やっぱすきだわ!新宿鮫!
    久しぶりにシリーズの続きを古本屋で見つけたので
    読んでみた。
    しかも読んで早速、真壁がでてくるとか…
    シリーズもう一回初めから読み返したくなりました。

  • この間読んだ「氷舞」が第6弾だったのに、8弾ですと?
    あちゃー。またやっちまったな。
    と思ったものの一応調べてみましたら、執筆順では第7弾。時系列順では第8弾ということだそうで、あながち間違いというわけでもない。
    だから鮫島と晶の仲はちっとも進展してなくて、それはそれでモヤモヤなんだけど・・・。

    1巻の最後で、瀕死の重症を負いながらも鮫島を名指しで自首した真壁が、出所。
    体はすっかり弱り、街も、組の体質もすっかり変わってしまったことに戸惑いを隠せない。

    鮫島は高級車ばかりを狙う窃盗団を追う。
    そこで知り合った駐車場の老管理人、大江に自分と同じ臭いを感じる鮫島。

    鮫島が追う事件が徐々に真壁に近づくと共に、大江の過去も少しずつ現れてきて・・・。
    どきどきしました。

    組で真壁の面倒を見ている矢崎は、かつて真壁がそのボスと声を失わせた中国人組織の頭領・王と組んでいる。
    真壁が死んだものと思っている王が真壁が生きていることを知ったら、絶対に復讐するに決まっている。
    だけど、登場したときから一本筋の通った男だった真壁は、今、愛する女性と自分の信念との間で、今後の人生を考え始めていて、要は、いい男なのよ。
    絶対王に見つかるな、と念じていたけど、見つからないわけがなくて。

    そして今回の影の主役は、新宿そのもの。
    江戸時代の内藤新宿から始まって、戦後の混乱気、高度成長期、バブル。
    ここにきて初めて鮫島も新宿という街の歴史を勉強する。
    大江との出会いがそのきっかけ。

    大江が隠す彼の過去が、意外な人物に繋がっていることがわかり、こちらもどきどき。
    生きていくことが今よりももっと難しかった時代、生きるためにした選択がずっと重荷になっているって辛い。

    今回もロベルト・村上がちょっと出演。
    「新宿書の鮫島刑事に相談しなさい」
    彼は国際的な犯罪者のはずだけど、鮫島の一番の理解者だよね。

    今回は読後感もとてもよい。
    原点回帰のような作品。

  • 恋が柱です、これもかっこいいけど甘い。

  • 鮫島の 警察官としてのポリシーが
    理解できてきた。
    人情ぽくなく 人間ぽい ところに
    信頼感が あるのだろう。
    上からの圧力や組織のトップからの評価が低くても
    自分のすべきことは何かという 自立的な姿勢が
    際立っている。

    高級車を窃盗する集団の洗い場を
    探す中で、ヤクザ 藤野組とのつながり
    そして、真壁という男の因縁。
    真壁を大切に思う 雪絵。その母親。
    命のやり取り というのが 一人の人間を支える。

    大江なる独特の生き方をしている。
    その中には、複雑な思いがあるはずだが、
    拳銃を奪われた警官という負い目が 一生を支える。

    鮫島の周りにいる人たちは
    一筋縄では いかないが それぞれ 意地を持っている。
    その意地が 自分を支えている。

    新宿に 井戸があり、その歴史が深く考察されていることに
    新宿が 生きている街だと痛感させる。

  • 過去と現在の二つの事件が交差する見事な作品。真壁と雪絵の愛が切ない。

  • 『地上から犯罪は消えてなくならない。人間の心の中に、人より楽をしたい、簡単に贅沢を手に入れたい、という願望がある限り、犯罪は根絶されないし、また人間がそういう願望をもたなくなる社会というのも、ある種歪だと、鮫島は思っている。

    人が人として欲をもつ限り、それは向上心にも犯罪にもつながりうる。

    ならば大切なのは、法をおかせば罰せられる、という平等を、徹していくことしかない。あっちはつかまるけど、こっちはつかまらない、という事態は、決してあってはならないのだ。

    それは「理想」である。「理想」を奪う、さまざまな障害が、警察組織内には存在する。結果、タブーに屈し、「理想」を失う、あるいは忘れたふりをする警察官がどれほど多いことか。』

    8作目。あらゆる矛盾と葛藤しながら、法をおかさず正義を貫くその定言命法に従う孤独な姿はカッコ良すぎる。本作も素晴らしい!

  • 現実にはありえない偶然の重なり。
    でもこれを言ったら殆どの小説にケチをつけることになるんだろうな。
    そういうのを抜きにして、楽しめた。ハッピーエンドはやっぱりいいね。これまでの作品がハッピーエンドじゃなかったから余計にそれが際立つ。

  • 140605読了。055

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プロフィール

1956年、名古屋市生まれ。79年『感傷の街角』で小説推理新人賞を受賞しデビュー。代表作に『新宿鮫』(吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞長編部門)、『無間人形 新宿鮫IV』(直木賞)、『パンドラ・アイランド』(柴田錬三郎賞)、『海と月の迷路』(吉川英治文学賞)、近著に『覆面作家』『俺はエージェント』『爆身』など。

「2018年 『ニッポン泥棒(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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