人形はなぜ殺される 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (557ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334740504

感想・レビュー・書評

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  • 古き良き探偵小説の一冊。

    読んでいる間ずっと頭の中に、なぜ?がぐるぐるまわり続けた。
    盗まれた人形の首。
    なんてことはなさそうなこの奇妙な事件が複雑怪奇な事件のほんのプロローグだったとは…。
    なぜこんな回りくどいことを?

    当たり前だけど終わってみれば一つ一つの事件は全て無駄なく意味のあるものだったのだなと感嘆の思いが溢れる。

    一見、無駄とも思えるあの長い列車の時間さえも。詩人が残したメモでさえも。

    初めて文字で味わった神津恭介。こんな人なんだね〜。昭和初期の時代と怪奇、陰鬱な雰囲気を堪能した古き良き探偵小説。

  • 手品の会場から、タネの一つであった作り物の首が盗まれる。数日後に発見された女性の首なし屍体の傍らには、その作り物の首が落ちていた……。とまあ、雰囲気たっぷりのミステリです。しかもこれが序章に過ぎない。真骨頂は魔術倶楽部の会員が集まった別荘での惨劇。そして「いよっ、名探偵!」と声を掛けたくなる外連味たっぷりの解決篇に雪崩れ込む。
    ミステリの面白さの一つは演出にあります。その点、これは本当に素晴らしい。次々に繰り出されるシチュエーションに昂奮して読んでいると、解決の直前で、これまでの疑問点を列挙した「さあ犯人を当ててみなさい」と言わんばかりの挑戦状が挟まれるのです。ミステリは複雑化しました。しかしその楽しみの根本はこういうところにあるのだと教えてくれるような一冊です。

  • 読者への挑戦がついている古典的ミステリー。犯人自体は、その書きっぷりから割と早い段階で分かるが、どうやって殺したのかやその動機、そしてトリックになると分からない。

    70年近く前の作品なので古さは否めない。
    道具立ては派手で引き込まれるが、現代では人権への配慮上書き得ない作品で、もしかしたらそこに嫌悪感を持つ人もいるかもしれない。

    やはり横溝正史や大乱歩の方が少し上かな。

  • 本格推理小説。
    とにかく物語の構成といいトリックの意外性といい、読みごたえのある物語だった。
    「人形はなぜ殺される」というタイトルの意味が明らかになったとき、犯人の冷酷な非情さが浮彫りになり、事件の真相に驚かされる。
    冒頭で起きるマジックで使用される人形の首が突如消え去る出来事。
    そして、続いて起きる首なし殺人事件。
    おどろおどろしい雰囲気が漂うなか、徐々に明らかになっていく事件関係者たちの過去や人間関係。
    まさに探偵役である神津恭介と犯人との知恵比べが展開されていく。
    犯人に一歩先んじられ、殺人が再び繰り返された後の神津の苦悩や推理に引きこまれてしまった。
    結末を知ってから、最近見た映画の中にあったセリフを思い出してしまった。
    「第二の刃を持たざる者は暗殺者の資格なし」。
    この物語の犯人は、状況に応じて第二第三の犯行を準備していたのだろう。
    真相がわかってから読み直してみると、犯人の臨機応変さにあらためて驚愕する。
    本格推理小説が好きな人には絶対にお薦めしたい物語だ。
    まったくの余談だけれど、神津恭介と有栖川有栖さんの描く火村英生の共通点が面白かった。
    神津恭介は東京大学医学部法医学教室に助教授として勤めている。
    犯罪心理学にも造詣が深く、警察からの要請を受けて捜査協力をしている。
    バディともいえる松下研三は探偵作家である。

  • ある魔術会場の舞台裏で、人形の首が盗まれる。その後の殺害現場では首なし死体と盗まれた人形の首が発見される。

    この小説の醍醐味はなんといってもタイトルの「人形はなぜ殺される?」に尽きる。トリックが大胆で今読んでも充分楽しめた。

  • 高木彬光さん2作目。
    前作は、個人的にはイヤミスの部類だったけど、今回は存分に楽しめました☆長編1つと短編2つ、分厚かったけどじっくり読めました。
    読者への挑戦を受けて予想していた犯人はハズれたけど(^_^;)今の時代には成り立たないトリックだなーとも思ったので仕方ない。
    あとがきを読んで、まずはトリックから思いついたのか!と変なところに感心。
    マジックや手品とか呼ばずに、魔術と表現するところも良かった☆
    カミツ先生ではなく、カミヅ先生なのねー。やっぱり近藤正臣さんで脳内再生されました☆

  • 魔術師の妖しさがかもし出ていて江戸川乱歩の世界のようでした。もっと気味の悪い話かと思ったら全然そんな事なかった。表紙がすごいから(笑)
    人形はなぜ殺されたか?それを考えれば犯人はすぐにわかる…。と書かれていたけど、私にはなぜ殺されたかはわからなかった。なるほど。

    • koshoujiさん
      びっくり!!
      けいたんさんは高木彬光なども読んでいたのですか!!
      高木彬光と言えば、私が高校時代貪るように読んでいた
      「神津恭介」シリ...
      びっくり!!
      けいたんさんは高木彬光なども読んでいたのですか!!
      高木彬光と言えば、私が高校時代貪るように読んでいた
      「神津恭介」シリーズ「検事霧島三郎」シリーズの作家。
      今でも当時買いそろえた本は全て本棚にあります。
      特に「検事霧島三郎」シリーズは、捜査検事を志すほど私に影響を与えた作品。
      法学部に行けなかったので、なれませんでしたが(笑)。
      うわあ、懐かしい。
      こういった昭和の名作ミステリーを復刊してくれるのは
      とてもありがたいですね。
      2016/01/13
    • あいさん
      koshoujiさんへ

      コメントありがとうございます♪

      一時期本当にミステリにはまっていて、ミステリのお勧め本みたいなのを読んで...
      koshoujiさんへ

      コメントありがとうございます♪

      一時期本当にミステリにはまっていて、ミステリのお勧め本みたいなのを読んでいたのです。
      その本に載っていた作品は本当にどれも面白くて。
      この作品もそのひとつでしたが、内容はもう忘れてしまいました(笑)
      koshoujiさんがそんなに好きならば高木彬光作品きっと面白いのでしょうね。
      他の作品もチェックしてみます!
      昭和の名作はよい作品が多いですよね。
      高校時代から高木彬光を読んでいたのですね。
      私の高校時代は赤川次郎でしたね〜
      大人気でした。
      2016/01/14
  •  1955年刊行。そのため軌道に乗るまで読みにくかった。真相はわからなかったし真犯人も意外だったが、タイトルの意味「人形はなぜ殺される」のかが弱かったのが少し不満。理由はもっと全事件を通しての理由であって欲しかった。あと指紋の複製は可能なのか疑問。その方法だと逆向きの指紋にならない?時代的に警察捜査では見破れなかったのだろうか。
     久しぶりの本格作品で、令和では絶対に再現できないトリック、クセの強い登場人物と空気レベルの影の薄い容疑者との差など、とても楽しめた。ツッコミが後を絶たないのも良い本格作品の証拠。

  • トリックが大胆かつ綺麗な筋で、ここ最近のものかと思いきや50年以上も前の作品だったとは…。
    中盤程で犯人はなんとなく分かったものの、全く古さを感じさせない逸品でした。

  • 60年以上前の作品だけど読みづらいとかもなく、面白い。読者への挑戦状付きということで考えながら読んだけど半分は正解だったかな?

    まさにタイトルの通り、人形はなぜ殺されなければならなかったのかがカギ。
    安易な見立てではなく、全てにきちんと意味があって最後にスッキリ解ける、ある意味気持ちのいい事件だった(?)

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著者プロフィール

1920年9月25日、青森県生まれ。本名・誠一。京都帝国大学工学部冶金科卒業。48年、失業中に書いた「刺青殺人事件」が江戸川乱歩の推薦で出版され作家デビューし、「能面殺人事件」(49-50)で第3回探偵作家クラブ賞長編賞
を受賞する。79年に脳梗塞で倒れるが過酷なリハビリ生活を経て再起、「仮面よ、さらば」(88)や「神津恭介への挑戦」(91)などの長編を発表。作家生活の総決算として「最後の神津恭介」を構想していたが、執筆途中の1995年9月9日に入院先の病院で死去。

「2020年 『帽子蒐集狂事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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