殺意の風景 (光文社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334740634

感想・レビュー・書評

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  • これ読んでると事故にみせかけて殺すのって簡単な気がしてくる。
    そういう話ばかりじゃないけど。
    あと終わり方が宮脇さんらしいというか、ぷっつり途切れる感じがくせになるような、でもやっぱり続きが読みたいような。

  • 人と会ふごとに、「暑いですな」と極りきつた挨拶。しかし実際暑いのであります。
    古老たちは、口を揃へて「かういふ暑さは昔はなかつた。日中はどんなに暑くても朝方は涼しいものであつた」と述懐します。
    呼応して「さうさう、だから宿題は朝の涼しいうちに済ませよ、と親にいはれたものだが、今では午前中から30度を越す暑さとくる。子供も可哀さうです」「子供といへば、うちの孫もテニスの部活でこの暑いのに出かけて行つたよ。何もこんな日にやらせなくても...」「高校野球も屋根のないところで良くやるよ。そのうち倒れる子が出るよ、きつと」...

    今年の暑さと『殺意の風景』の間には、まつたく関係はありませんが、怒りすら沸く猛暑にひとこと言つてをきたかつたのでした。

    さて本書は宮脇俊三氏が遺した唯一のフィクション作品であります。ミステリー仕立てでありますが、凡百のそれのやうに、死体が浮かんで敏腕刑事が解決に当たるとか、素人探偵が警察に煙たがられながら名推理で謎を解くといつたものではありません。

    第一話の青木ヶ原から最終話の須磨まで、ごく普通の人間が「殺意」を抱く舞台として、有名観光地(有名とはいへない地名もありますが)が取り上げられてゐます。恐らく宮脇氏が読者に「推薦」したい場所として選んだのではないでせうか。
    そこで繰り広げられる、何気ない人間模様のドラマ。派手な描写に慣れてしまつた人には、物足りないと感じるかもしれません。しかし読み進めていくうちに、登場人物と一緒になつて、「風景」の中で弄ばれてゐる自分を発見することでせう。

    宮脇氏には、かかる作物をもつと遺してもらひたかつたと、一掬の涙とともに思ふのであります。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-111.html

  • 日本どこの町でも殺意と言う陰の感情は絶対に存在している。互いに憎み合うゆえに殺し、殺される。けれど――人が死んだことなど意識しない美しい風景は「殺意」を受け流し、もしくは吸収し、無効化する。結局は人間だけが勝手に行っている独り遊びなんだ。

  • あとがきが ない 

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著者プロフィール

宮脇俊三
一九二六年埼玉県生まれ。四五年、東京帝国大学理学部地質学科に入学。五一年、東京大学文学部西洋史学科卒業、中央公論社入社。『中央公論』『婦人公論』編集長などを歴任。七八年、中央公論社を退職、『時刻表2万キロ』で作家デビュー。八五年、『殺意の風景』で第十三回泉鏡花文学賞受賞。九九年、第四十七回菊池寛賞受賞。二〇〇三年、死去。戒名は「鉄道院周遊俊妙居士」。

「2023年 『時刻表昭和史 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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