ぶたぶたのいる場所 (光文社文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334740955

感想・レビュー・書評

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  • 白亜の高級リゾートホテル、『グランドホテル』
    お芝居がストーリーの重要な要素を占めるこの作品的に言うと、そこに時々“見切れる”ピンクのぶたのぬいぐるみ。
    もしかしたら、このホテルの隠れた名物なのかもしれない。
    短編の主人公たちと、グランドホテル、そしてぶたぶたさんとのかかわりが描かれる中、ちょっと問題を抱えていたとしても、みんなに幸せを与えてくれる素敵なお話でした。

    『人形の夜~春の物語』
    杉山織(すぎやまおり)は、脚本家を目指していたが、実家に帰って家業の花屋を手伝うことになった。
    花の納入先である「グランドホテル」で働いているという、幼馴染の飯塚から、芝居の手伝いをしないかという誘いがあって…

    『柔らかな奇跡~夏の物語』
    “流星群に願いをかけられるホテル”
    ひそかに社内恋愛している彼女の香奈恵の希望でグランドホテルを訪れた横田昭光(よこたあきみつ)は、ホテルマンがピンクのブタのぬいぐるみに叱られている姿を目撃する。

    『不機嫌なデズデモーナ~秋の物語』
    有働賢(うどうけん)は、離婚して実家の母と暮らしている。
    元妻・篠原寛子(しのはらひろこ)と娘のつぐみは近くに住んでいるが、近寄らないようにしていた。
    母に、つぐみは最近演劇に興味を持っている、と教えられ、有働はつぐみがオーディションを受けたという、ホテルで上演される芝居に興味を持つ。

    『ありすの迷宮ホテル~冬の物語』
    ホテルにカンヅメ中のホラー作家・熊野井(くまのい)締切は一週間後、予定枚数300枚…一枚も書けていない。
    彼が体験した、こわい、かわいい、やっぱりこわい体験とは…?

    『小さき者と大きな空~再び春の物語』
    地元の桜祭りの催し物の一環で、毎年、グランドホテルでは芝居が上演される。
    特別演出の、楽しい劇中劇が最高。
    この一冊の集大成ともいえる。
    登場人物たちがさまざまな思いを胸に観劇する。


    ――――――――――――――――
    「異形コレクション」というアンソロジーのシリーズ、「グランドホテル」収録の設定から膨らんだお話ということです。
    異形コレクションは、「京都闇」を読みました。
    「グランドホテル」も是非読みたい

  • 今回は海辺に建つ貴婦人のような白亜のグランドホテルを舞台にした、連作短編集。
    そこでぶたぶたさんはバトラーとして働いている。
    そのホテルで、一般市民を中心とした「オセロー」の舞台を公演することが決まったところから物語は始まり、春夏秋冬ぐるりと1年かけてひとめぐり。
    今回は舞台公演に重きを置いているからか、
    人の心に深く滲みこむようなエピソードは少なめ。

    そして劇中劇が幕を開けた。
    ぶたぶたさんが、まさかの…!(あとは読んでのお楽しみ)
    本物の舞台も観たことはないし、原作も読んだことがないけれど、
    むしろ、原作を読んでいないからこそ、
    ぶたぶたさんをはじめとする登場人物の描写と、彼らの運命の行き先が気になってしまい、
    私も観客の一人として客席に座り舞台を見つめているような気持ちになれたのかも。

    • まろんさん
      ぶたぶたさんがバトラーとして働いている、白亜のグランドホテル!
      素敵すぎますね♪ぜひ長期滞在してみたいものです。

      それにしても、ぶたぶたさ...
      ぶたぶたさんがバトラーとして働いている、白亜のグランドホテル!
      素敵すぎますね♪ぜひ長期滞在してみたいものです。

      それにしても、ぶたぶたさんが「オセロー」の何の役で出てくるのか
      気になって眠れなくなりそうです(>_<)
      2012/08/17
    • 永遠ニ馨ルさん
      バトラーという肩書きでありながら、
      社員教育係としても責任があり、
      また外見が若干特殊なために極力人目に触れないように振舞っているのだそうで...
      バトラーという肩書きでありながら、
      社員教育係としても責任があり、
      また外見が若干特殊なために極力人目に触れないように振舞っているのだそうです。
      とするとやはり、まろんさんのおっしゃるように、
      長期滞在してこの目で見なくてはいけませんよね♪

      ぶたぶたさんの演技力の高さには驚かされっぱなしでした!
      ぜひ一日も早く読んで、安眠を手にいれてくださいね♪
      2012/08/17
  • 短編集になっているようだったんですが、個人的にはちゃんと1つの方向に向かっている感じがして、すごく楽しかったです。所々でザッピングやスイッチングしているように色々と登場人物が変わるので、少し把握するのは大変かもしれません。
    ぶたぶたさんがあの役を!?と驚きました。有名なシェークスピアの作品だけど、なんでこの演目なの?と読んでいる時の主人公の一緒に思ってしまいました。あの演劇が、色んな人の未来が変わるとは、見ている彼らも演じている彼らも知る由もなかったっていう〆のセリフでも楽しそうと勝手に妄想してしまいました(笑)

  • 最初は何となくだけど、気づけくと、いつも心優しくなって、ひきこまれてるるんですよね。
    そして、優しく笑えてしまいます。

  • 今回のぶたぶたさんは高級ホテルのバトラーでした。
    ほっこりと心が温かくなる安定の面白さです。

  • ぶたぶたさんって一体本職は何?ww。本作は高級リゾートホテルのバトラーでありながらイベント事で演劇に出演する事に。しかも「オセロー」の悪役イアーゴー。似合わな過ぎて逆に観たら一生記憶に残りそうw。『ホテルに泊まると幸せになれる伝説』でなくて『ぶたぶたさんを見る事の出来る人は幸せになる』というのが実際のところでしょう^^

  • 謎のピンクのぶたのぬいぐるみが活躍するシリーズの
    第何弾だろう・・・、ランダムに読んでるので自分にとっては3冊目。

    今作では浜辺のグランドホテルを舞台に、そこに集まる人たちや、
    そこで行われる季節のイベントを描いている。
    特に春に行われる、大々的な芝居がメインになる。
    普段は、東京から役者を招いての芝居なのだが、
    今回は春祭りニ十周年を記念して、役者を地域の人たちの中から、
    オーディションで決めるというところから話が展開していく。
    そこでどういう展開になっていくのか。

    山崎ぶたぶた、通称・ぶたぶたさんの行動は、
    どうも奇怪であり、癒しであり、人に寄り添う中年おじさんであり、
    それが、登場人物の悩みに寄り添い、読者にも感動を与えてくれる。
    そんなシリーズが2023年12月の時点で、徳間文庫と光文社文庫で、
    43作品も出ています。
    作者曰く1作目を読んでおけば、あとはどれからでもとおっしゃってますが、
    どれから読んでも問題ないと思います。
    自分はまだ4作品ですが、最初はぶたぶた日記を読んでます。
    ぶたぶた日記は、カルチャースクールのエッセイ講座に集まった悩みを抱えた
    人たちとぶたぶたさんの交流を描いた作品。

  • 山崎ぶたぶたさん、今回は海辺のリゾートホテルを舞台とした連作短編集。
    ホッコリとして、楽しく読めます。

  • 目次
    ・人形の夜~春の物語
    ・柔らかな奇跡~夏の物語
    ・不機嫌なデズデモーナ~秋の物語
    ・アリスの迷宮ホテル~冬の物語
    ・小さき者と大きな空~再び、春の物語

    今回のぶたぶたさんは、海辺の瀟洒なリゾートホテルで、基本的にはお客さんに姿を見せないバトラー兼社員の指導係。
    そのせいか、姿を目撃した者は幸せになれるという伝説があるとかないとか。

    通しのストーリーとしては、ホテルの周年イベントとして、街の人たちが演じるお芝居を、東京の有名な演出家の指導の下におこなう、というもの。
    演目はシェークスピアの『オセロ』
    4大悲劇の一つです。
    が、演出家は、この舞台の主役といってもいいくらいの重要な役イアーゴーの役をぜひぶたぶたさんに、とゴネる。
    え?マジすか?

    その他のキャストにもいろいろ事情があったりで面白いのだけど、なんといっても実際の舞台の様子が最後の「小さき者と大きな空」で描写されていて、演出家の意図がわかると納得しかない展開に。
    これからこの本を読む方は、ぶたぶたさんがこの芝居唯一の悪役をどう演じるか、を楽しみにお読みください。

    そして、単純に大笑いしたのが「アリスの迷宮ホテル」。
    ホテルに缶詰めになったホラー作家が、ぶたぶたさんと関わることでどんどん壊れていく…っていうか、最終的にはヒット作書けてよかったね、ホラーじゃないけど。
    作家の脳内がもう大爆笑で、おすすめ。

  • シリーズ7作目。5本の短編連作だけど、一つの話として繋がっている。一生懸命隠れようとしてるぶたぶたさんが面白い。「オセロー」か。遥か昔に岩波少年文庫で読んだことある気がするけど、今読み返すと受ける印象が違うんだろうなあ。まあ、当時どう感じたかは覚えてないけど

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著者プロフィール

一九六四年、埼玉県生まれ。八五年、矢崎麗夜名義で星新一ショートショートコンテスト優秀賞を受賞し、八九年『ありのままなら純情ボーイ』で作家デビュー。主な著書に「ぶたぶた」シリーズ、「食堂つばめ」シリーズ、「NNNからの使者」シリーズ、『あなたのための時空のはざま』など。

「2022年 『おいしい旅 想い出編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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