春宵十話 随筆集/数学者が綴る人生1 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 697
レビュー : 73
  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334741464

作品紹介・あらすじ

数学は論理的な学問である、と私たちは感じている。然るに、著者は、大切なのは情緒であると言う。人の中心は情緒だから、それを健全に育てなければ数学もわからないのだ、と。さらに、情操を深めるために、人の成熟は遅ければ遅いほどよい、とも。幼児からの受験勉強、学級崩壊など昨今の教育問題にも本質的に応える普遍性。大数学者の人間論、待望の復刊。

感想・レビュー・書評

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  • 大学のとある授業で『国家の品格』を読まされた時、著者がこの本をとにかく勧めていて、他の内容は忘れてとにかく岡潔だけ気になったので購入したと記憶。で、実際読んでみたら、国家の品格は全くの劣化版で、こっちの方が格段に面白かったのでその時以来のお気に入りの一冊ですね。

    偏屈です。書き口は簡潔ですが、天才然とした難物感を筆者に対して読みながら感じるかと思います。でも、名著です。私は数学をやる人にはこの本を読むことを是非勧めたい。エッセイとしてよりは、数学書として、勧めたいと思います。また、私自身数学に触れたくなった時は思い出したようにやはりこの本を読みたくなります。

    ただし、この本は情緒で読まないと面白くありません。情緒で書かれたものですから、情緒で読むべきだと私は思います。計算や論理が必要なく読める数学書、とでも申しましょうか。何とも不思議な本なのであまりいい表現が出来ませんが。
    とりあえず、(20世紀の人とはいえ)日本の大数学者でありプロパーの科学者が書いたからといって、正確な科学知識による説明や論理的でクールな証明を『春宵十話』に求めて読んだらすぐに放り出したくなる悪書で終わるかと思います。教育に関する内容なんかは正鵠を得ているようでいてもやはり、時代遅れの感が否めないかと思います。説教臭いのが嫌いな人は本当に嫌いな本だと思います。でも、だからと言って遠ざける人は、勿体無い人ですね。この本の味を一ミリも感じていないのですから。

    ……などとくどくど前置きしてから勧めたくなる程度には「偏屈」という言葉がぴったり来る書物です。でも、本当はこういう前置きなんか要らないんです。
    「数学やってるの?じゃあ『春宵十話』は読むといいよ」
    で単純に勧めたい。良い本ですから。幾何だろうが計算機科学だろうが、数学やってるなら読んでください。レビューだからあえてこんなことを書いているだけです。

  • 数学者、岡潔氏のエッセイ。
    情緒の大切さ、教育の大切さが話の中心となっている。
    その気持ちの裏側には、「近ごろのこのくにのありさまがひどく心配になって、とうてい話しかけずにはいられなくなったから」という危機感があった。とくに戦後教育により加速度的に「動物性」が入り込み、人々の情緒が失われているという。

    『数学と芸術』において筆者は、「両者はふつう考えられている以上によく似ている」といい、それは、両者が求めているものは「調和」であり、数学においては「真の中における調和」であって、芸術においては「美の中における調和」であるからだ。
    「調和」を感じるためには情緒を働かせなければできない。ゆえに情緒が大切なのだという。

    また『一番心配なこと』での以下の言葉は興味深い。
    「人の基本的なアビリティーである、他人の感情がわかるということ、これは個人の持っているアビリティーであって、決して集団に与えられたアビリティーではない」
    一人でじっくりと考えることから情緒が生まれる。集団によるディスカッションでは深さに到達できないという筆者の言葉に、めまぐるしく情報が飛び交う中で、自分に立ち戻って考える時間を持つことの大切さを教えられた。

    春宵一刻値千金
    (春の夜は、なんともいわれぬ趣があり、一刻が千金に値するような心地がする)

  • この本の影響もあり、子供の名前を悠生にしました。

  • 大数学者 岡潔氏のエッセー。エッセイストとしても相当だったらしくこの文庫本も毎日新聞、角川文庫、光文社と出版社を変えて復刊されている。
    数学者という理系の大元締めの視点をお伺いしようと思っていたが、まったく逆。数学こそ情緒という。文化芸術に対する造詣の深さはそれを裏打ちする。そうやって両立というかたしなむというか、理想像を見た気がする。また教育についても大いに一家言があり、戦前戦後の教育の良し悪しをすぱっと切るが、実はいまこの社会にも全く持って通用する批評であった(つまりは当時から全く進歩していないことなのかもしれない)。ローマ時代に対する厳しいコメントが1つ2つあったがそのあたりを掘り下げて知る機会があればと思う。

  • もともとの発端は藤原正彦の本を読んだ時に紹介されてて、いつだったかに復刊されてて購入したもの。積んでいるうちに角川文庫からも出版されたのかな。やっと読んでみた。なるほど藤原正彦氏はこのこの人から大いに影響を受けてるなということがよくわかった。今の時代理系、文系と完全に分けるような教育をされ、数学イコール論理、理系の総本山みたいなイメージを持ってしまうけど、岡潔氏によればあながちそうでもないのかなと思ったり。正直自分の頭ではたぶん氏の言わんとしているところが理解できていないんだけど。

    『数学と芸術』において筆者は、「両者はふつう考えられている以上によく似ている」といい、それは、両者が求めているものは「調和」であり、数学においては「真の中における調和」であって、芸術においては「美の中における調和」であるからだ。

    藤原正彦の本に、天才的な数学者は美しいものに囲まれていたからこそ大きな発見ができたというようなことが書いてあったと思う。たぶん岡氏の影響を受けているんだろうけど、同じような主張だと思う。自分にはよくわからないけど、世の中の数学者たちはみんな同感!っていう感じなのかな。聞けるものなら聞いてみたい。

    義務教育についてとか、成熟は遅い方が良いとか、天才教育が必要だとか、今読んでもいいヒントがある気がする。欧米に対するよくわからないコンプレックスはむしろ強くなっている気がする。

  • 1901年生まれの岡潔さん。
    1963年ごろから、新聞に書かれた小文。
    エッセイ?いろいろ。

    調べたら明治時代。
    私のじいさんが大正生まれ(既没)。
    その頃を生きていた人の文章ですが読みやすい。

    幾多の衛星が飛び交い、地上は電磁波やドローンや
    AIやWi-fiや、明治時代から見ればまさに
    ドラえもんのいる21世紀!
    な感じの現代と
    あんまり変わらないことをおっしゃってます。

    岡さんのご心配は、あまり改善されていません。
    同じ悩み。「人」の姿。
    どんな時代も、何ものにもとらわれずに生きることは
    いかにも難しいことなのでしょうか?

    人は人を見て生きているわけで。
    自分を見て生きることができる人は少ない。
    心を柔軟に、ニュートラルな思考で
    暮らすことが、なかなかできないものですね。

    なんかでも、読んでてのんびりした。

  • 100殺!ビブリオバトル No.73 夜の部 第10ゲーム「三位一体ビブリオバトルその2」

  • 春宵の知への誘い。日本に警鐘を鳴らす。人の中心は情緒である。発見の前に緊張と、それに続く一種のゆるみが必要ではないか。智力も、冷ましているときに働くものだ。春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいい思っている。人生において必要なセンスが至るところに散りばめられている。天才と呼ばれる人のセンスを感じることができる一冊。「人間の建設」にしろ著者写真にいつも惹きつけられるのは私だけだろうか。

  • ドラマを見た。どちらかといえば、岡の奥さんが主人公か。湯川秀樹壮行会でのスピーチはたまらない。涙が止まらない。彼女がいなければ、岡は今に残っていないかもしれない。しかし、日本国内に1人くらいは彼の論文を理解するものがいてもよさそうなのに、誰もいなかったのか。出会いがなかったというだけか。上司であるところの教授が本当に悪者に思えてしまう。それにしても貧しい。あれだけ貧しい生活を家族に強いていながら、本書には家族の話がほとんど出て来ない。まあまあ、いろいろと立派な考えが書かれている。しかしながら、生活力のなさ。まあそれを差し引いても、天才的であったのだ。十分におつりがくるくらいか。本書の中身については、教育についても一家言もっていらっしゃったようだが、あまり印象に残っていない。残っているのは芥川についてだけ。夏目漱石や寺田寅彦はある程度読んでいるが、残念ながら芥川龍之介は教科書以外で読んだことがない。いつかは読んでみたい。できれば芭蕉も。本書はずいぶん前に購入していたのに、どういうわけか読んでいなかったようだ。今回ドラマに感動して本書にも手を伸ばした。

  • 日本が誇る大数学者岡潔氏のベストセラー随筆集。論理が最重要な数学者が「最も重要なものは情緒」と語っているのは興味深い。岡氏の主張として教育の重要性を謳っているが「質がどんどん劣化している」というトーンはいつの時代もご老体が語る言葉であり、柔軟な発想を持った岡氏の発言としてはやや違和感を感じながら読んだ。

    本書内で特に好きな文は「よく人から数学をやって何になるのかと聞かれるが、私は春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいいと思っている。咲くことがどんなによいことであろうとなかろうと、それはスミレのあずかり知らないことだ。」。物事の是非を図るのは人間の驕りであり、良し悪しは自然の摂理が決めることである。

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著者プロフィール

1901年大阪生まれ。京都帝国大学卒業。フランス留学を経て、帰国後、広島文理科大学、北大、奈良女子大で教鞭をとる。後年、多変数解析函数論の分野における超難題「三大問題」を解決し、数学者としてその名を世界に轟かせた。1960年に文化勲章を、1963年に『春宵十話』で毎日出版文化賞を受賞。1978年没。多くの名随筆を残した。

「2016年 『一葉舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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