春宵十話 随筆集/数学者が綴る人生1 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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レビュー : 93
  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334741464

作品紹介・あらすじ

数学は論理的な学問である、と私たちは感じている。然るに、著者は、大切なのは情緒であると言う。人の中心は情緒だから、それを健全に育てなければ数学もわからないのだ、と。さらに、情操を深めるために、人の成熟は遅ければ遅いほどよい、とも。幼児からの受験勉強、学級崩壊など昨今の教育問題にも本質的に応える普遍性。大数学者の人間論、待望の復刊。

感想・レビュー・書評

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  • 久し振りの著者のエッセイ集。情緒、道義、真理、自明。自発的な学びの重要性と成熟を忍耐強く待つ姿勢。それまでまったく辿り着けるように感じていなかったものが、突然舞い降りてくる感覚。自然の流れの中に身を委ね、動物性を除去することで得られるものもあるだろうと...。借り物でない自身の考えを生み出すには必要な時間だと実感できた。

  • 数学者、岡潔氏のエッセイ。
    情緒の大切さ、教育の大切さが話の中心となっている。
    その気持ちの裏側には、「近ごろのこのくにのありさまがひどく心配になって、とうてい話しかけずにはいられなくなったから」という危機感があった。とくに戦後教育により加速度的に「動物性」が入り込み、人々の情緒が失われているという。

    『数学と芸術』において筆者は、「両者はふつう考えられている以上によく似ている」といい、それは、両者が求めているものは「調和」であり、数学においては「真の中における調和」であって、芸術においては「美の中における調和」であるからだ。
    「調和」を感じるためには情緒を働かせなければできない。ゆえに情緒が大切なのだという。

    また『一番心配なこと』での以下の言葉は興味深い。
    「人の基本的なアビリティーである、他人の感情がわかるということ、これは個人の持っているアビリティーであって、決して集団に与えられたアビリティーではない」
    一人でじっくりと考えることから情緒が生まれる。集団によるディスカッションでは深さに到達できないという筆者の言葉に、めまぐるしく情報が飛び交う中で、自分に立ち戻って考える時間を持つことの大切さを教えられた。

    春宵一刻値千金
    (春の夜は、なんともいわれぬ趣があり、一刻が千金に値するような心地がする)

  • 大学のとある授業で『国家の品格』を読まされた時、著者がこの本をとにかく勧めていて、他の内容は忘れてとにかく岡潔だけ気になったので購入したと記憶。で、実際読んでみたら、国家の品格は全くの劣化版で、こっちの方が格段に面白かったのでその時以来のお気に入りの一冊ですね。

    偏屈です。書き口は簡潔ですが、天才然とした難物感を筆者に対して読みながら感じるかと思います。でも、名著です。私は数学をやる人にはこの本を読むことを是非勧めたい。エッセイとしてよりは、数学書として、勧めたいと思います。また、私自身数学に触れたくなった時は思い出したようにやはりこの本を読みたくなります。

    ただし、この本は情緒で読まないと面白くありません。情緒で書かれたものですから、情緒で読むべきだと私は思います。計算や論理が必要なく読める数学書、とでも申しましょうか。何とも不思議な本なのであまりいい表現が出来ませんが。
    とりあえず、(20世紀の人とはいえ)日本の大数学者でありプロパーの科学者が書いたからといって、正確な科学知識による説明や論理的でクールな証明を『春宵十話』に求めて読んだらすぐに放り出したくなる悪書で終わるかと思います。教育に関する内容なんかは正鵠を得ているようでいてもやはり、時代遅れの感が否めないかと思います。説教臭いのが嫌いな人は本当に嫌いな本だと思います。でも、だからと言って遠ざける人は、勿体無い人ですね。この本の味を一ミリも感じていないのですから。

    ……などとくどくど前置きしてから勧めたくなる程度には「偏屈」という言葉がぴったり来る書物です。でも、本当はこういう前置きなんか要らないんです。
    「数学やってるの?じゃあ『春宵十話』は読むといいよ」
    で単純に勧めたい。良い本ですから。幾何だろうが計算機科学だろうが、数学やってるなら読んでください。レビューだからあえてこんなことを書いているだけです。

  • この本の影響もあり、子供の名前を悠生にしました。

  • 大数学者 岡潔氏のエッセー。エッセイストとしても相当だったらしくこの文庫本も毎日新聞、角川文庫、光文社と出版社を変えて復刊されている。
    数学者という理系の大元締めの視点をお伺いしようと思っていたが、まったく逆。数学こそ情緒という。文化芸術に対する造詣の深さはそれを裏打ちする。そうやって両立というかたしなむというか、理想像を見た気がする。また教育についても大いに一家言があり、戦前戦後の教育の良し悪しをすぱっと切るが、実はいまこの社会にも全く持って通用する批評であった(つまりは当時から全く進歩していないことなのかもしれない)。ローマ時代に対する厳しいコメントが1つ2つあったがそのあたりを掘り下げて知る機会があればと思う。

  • 2021/1/9

    現代の教育の在り方に警鐘を鳴らしている。なお暗黒のローマ時代にいる令和にも十分すぎるほど通じる。これから先の未来に真善美を基軸とするギリシャ文明が復興することを信じたいが、何百年先、いや何千年後になることやら。

    これを本当に実現したいと世が強く願うのならば、「一生思い続けて駄目だったら、二生目も、三生目も思い続けなさい」と岡は言うだろう。

  • 私には難しかった。

  • ここで語られる教育論や、情緒とそこに根差す情操と言ったものは今もって説得力があると感じる。
    数学と芸術の類似性についての語りは、あぁこの人天才なんだな、と感じる次第であるが、実際に物事を深く探求するといことは、そうした境地に近づくといことなんだろう。その意味で、文学を含めた芸術に批評的であるというのは、何かを極める上でも必要な資質なんだと理解した。

  • 数学者岡潔のエッセイ。
    子どもを育てるものとして参考になることがたくさん書いてあった。

    1901年生まれなのでかなり昔の方なのだけど、教育にとって大事なのは情緒的な感情や心の成長だと終始書かれていて、今まさに非認知能力が注目されているのを見ると間違っていないなと思う。

    そしてこの方、数学者でありながら芸術的なもの、文学や絵画、音楽なども楽しむ心を持っており、目的に通じるわかりやすい何か一つを突き詰めるだけでは物事への理解を深めるには限界があって、いろんなことを楽しむ心を育てることでそれが深まっていくということがよくわかった。

    わたしも兼ねてから、人生のいわゆる成功(学歴や職種)に直接関係のない芸術やら何やら好きなものを深めることで人生を豊かにする一助になると思っていて無駄はないはず!といろんなことをやっていたので、この方の人生や考え方を通してそれは間違っていなさそうだと確信できた。

    今子どもにできていることできていないことたくさんあるけど

    ・学校の成績のようなわかりやすいゴールだけを目的に勉強を詰め込ませない
    ・たくさん遊ばせる(特に自然に触れて綺麗なものをたくさん見せる)
    ・興味のあるものをどんどんやらせる
    ・否定しない
    ・裏切らない
    ・一つだけ教えてあとはそっとしとく

    これは守っていきたいな。

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著者プロフィール

1901年大阪生まれ。京都帝国大学卒業。フランス留学を経て、帰国後、広島文理科大学、北大、奈良女子大で教鞭をとる。後年、多変数解析函数論の分野における超難題「三大問題」を解決し、数学者としてその名を世界に轟かせた。1960年に文化勲章を、1963年に『春宵十話』で毎日出版文化賞を受賞。1978年没。多くの名随筆を残した。

「2016年 『一葉舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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