春宵十話 随筆集/数学者が綴る人生1 (光文社文庫)

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著者 : 岡潔
  • 光文社 (2006年10月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334741464

作品紹介

数学は論理的な学問である、と私たちは感じている。然るに、著者は、大切なのは情緒であると言う。人の中心は情緒だから、それを健全に育てなければ数学もわからないのだ、と。さらに、情操を深めるために、人の成熟は遅ければ遅いほどよい、とも。幼児からの受験勉強、学級崩壊など昨今の教育問題にも本質的に応える普遍性。大数学者の人間論、待望の復刊。

春宵十話 随筆集/数学者が綴る人生1 (光文社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 大学のとある授業で『国家の品格』を読まされた時、著者がこの本をとにかく勧めていて、他の内容は忘れてとにかく岡潔だけ気になったので購入したと記憶。で、実際読んでみたら、国家の品格は全くの劣化版で、こっちの方が格段に面白かったのでその時以来のお気に入りの一冊ですね。

    偏屈です。書き口は簡潔ですが、天才然とした難物感を筆者に対して読みながら感じるかと思います。でも、名著です。私は数学をやる人にはこの本を読むことを是非勧めたい。エッセイとしてよりは、数学書として、勧めたいと思います。また、私自身数学に触れたくなった時は思い出したようにやはりこの本を読みたくなります。

    ただし、この本は情緒で読まないと面白くありません。情緒で書かれたものですから、情緒で読むべきだと私は思います。計算や論理が必要なく読める数学書、とでも申しましょうか。何とも不思議な本なのであまりいい表現が出来ませんが。
    とりあえず、(20世紀の人とはいえ)日本の大数学者でありプロパーの科学者が書いたからといって、正確な科学知識による説明や論理的でクールな証明を『春宵十話』に求めて読んだらすぐに放り出したくなる悪書で終わるかと思います。教育に関する内容なんかは正鵠を得ているようでいてもやはり、時代遅れの感が否めないかと思います。説教臭いのが嫌いな人は本当に嫌いな本だと思います。でも、だからと言って遠ざける人は、勿体無い人ですね。この本の味を一ミリも感じていないのですから。

    ……などとくどくど前置きしてから勧めたくなる程度には「偏屈」という言葉がぴったり来る書物です。でも、本当はこういう前置きなんか要らないんです。
    「数学やってるの?じゃあ『春宵十話』は読むといいよ」
    で単純に勧めたい。良い本ですから。幾何だろうが計算機科学だろうが、数学やってるなら読んでください。レビューだからあえてこんなことを書いているだけです。

  • 数学者、岡潔氏のエッセイ。
    情緒の大切さ、教育の大切さが話の中心となっている。
    その気持ちの裏側には、「近ごろのこのくにのありさまがひどく心配になって、とうてい話しかけずにはいられなくなったから」という危機感があった。とくに戦後教育により加速度的に「動物性」が入り込み、人々の情緒が失われているという。

    『数学と芸術』において筆者は、「両者はふつう考えられている以上によく似ている」といい、それは、両者が求めているものは「調和」であり、数学においては「真の中における調和」であって、芸術においては「美の中における調和」であるからだ。
    「調和」を感じるためには情緒を働かせなければできない。ゆえに情緒が大切なのだという。

    また『一番心配なこと』での以下の言葉は興味深い。
    「人の基本的なアビリティーである、他人の感情がわかるということ、これは個人の持っているアビリティーであって、決して集団に与えられたアビリティーではない」
    一人でじっくりと考えることから情緒が生まれる。集団によるディスカッションでは深さに到達できないという筆者の言葉に、めまぐるしく情報が飛び交う中で、自分に立ち戻って考える時間を持つことの大切さを教えられた。

    春宵一刻値千金
    (春の夜は、なんともいわれぬ趣があり、一刻が千金に値するような心地がする)

  • この本の影響もあり、子供の名前を悠生にしました。

  • 大数学者 岡潔氏のエッセー。エッセイストとしても相当だったらしくこの文庫本も毎日新聞、角川文庫、光文社と出版社を変えて復刊されている。
    数学者という理系の大元締めの視点をお伺いしようと思っていたが、まったく逆。数学こそ情緒という。文化芸術に対する造詣の深さはそれを裏打ちする。そうやって両立というかたしなむというか、理想像を見た気がする。また教育についても大いに一家言があり、戦前戦後の教育の良し悪しをすぱっと切るが、実はいまこの社会にも全く持って通用する批評であった(つまりは当時から全く進歩していないことなのかもしれない)。ローマ時代に対する厳しいコメントが1つ2つあったがそのあたりを掘り下げて知る機会があればと思う。

  • 日本が誇る大数学者岡潔氏のベストセラー随筆集。論理が最重要な数学者が「最も重要なものは情緒」と語っているのは興味深い。岡氏の主張として教育の重要性を謳っているが「質がどんどん劣化している」というトーンはいつの時代もご老体が語る言葉であり、柔軟な発想を持った岡氏の発言としてはやや違和感を感じながら読んだ。

    本書内で特に好きな文は「よく人から数学をやって何になるのかと聞かれるが、私は春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいいと思っている。咲くことがどんなによいことであろうとなかろうと、それはスミレのあずかり知らないことだ。」。物事の是非を図るのは人間の驕りであり、良し悪しは自然の摂理が決めることである。

  • 読み終わるのに半年くらいかかった。
    ちょっと合わなかったのかな、私には。

  •  
    ── 岡 潔《春宵十話 20061020 光文社文庫》20061012 誤 20170104 購入
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4334741460
     
    <PRE>
     はしがき …………………… 5
     
    春宵十話 …………………… 11
     
     人の情緒と教育 ………… 11
     情緒が頭をつくる ……… 15
     教学の思い出 …………… 19
     教学への踏み切り ……… 24
     フランス留学と親友 …… 28
     発見の鋭い喜び ………… 33
     宗教と数学 ……………… 38
     学を楽しむ ……………… 42
     情操と智力の光 ………… 47
     自然に従う ……………… 51
     
    宗教について ……………… 56
    日本人と直観 ……………… 61
    日本的情緒 ………………… 69
    無差別智 …………………… 84
     
    私の受けた道義教育 ……… 87
    絵画教育について ………… 93
    一番心配なこと …………… 101
    顔と動物性 ………………… 106
    三河島惨事と教育 ………… 109
    義務教育私話 ……………… 113
     
    教学を志す人に …………… 153
    数学と芸術 ………………… 164
     
    音楽のこと ………………… 170
    好きな芸術家 ……………… 173
    女性を描いた文学者 ……… 180
     
    奈良の良さ ………………… 183
    相撲・野球 ………………… 186
    新春放談 …………………… 189
    ある想像 …………………… 194
    中谷 宇吉郎さんを思う … 198
    吉川 英治さんのこと …… 201
    わが師わが友 ……………… 208
     
     解説・有馬 朗人 ……… 221(Arima, Akito)
    </PRE>
     
    ── 岡 潔《春宵十話 196911‥ 角川文庫 20140524 角川ソフィア文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4044094640
     
    ── 岡 潔《春宵十話 19630210 毎日新聞社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B000JAJ4LC
     
    (20170105)
     

  • 以下全て、この本よりの抜粋。

    ●近頃は集団として考え、また行動するようしつけているらしい。だが、人の基本的なアビリティーである、「他人の感情がわかる」ということ、物を判断する、ということ。これは個人が持っているアビリティーであって、決して集団に与えられたアビリティーではない。

    ●集団について教え、集団的に行動する習慣をつけさせれば、数人寄ってディスカッションしないと、物を考えられなくなる。しかしそれでは少なくとも深いことは何一つわからないのだ。

    ●集団的に怒りの気持ちを持って行動するのは疑問だ。人というものが怒っているときに正常な判断を下せるかどうか、だれにでもわかるはずだ。

    ●集団をつくらせると、ボスができるばかりである。ボスができてからは、道義道徳を入れようがない。

    ●クラス活動、グループ活動。そんなひまがあれば放任して、遊びに没入させるに越したことはない。子供を小学校に入れる際にどうしたらいいか、と母親に質問されると、しばらく入学させないで待っていなさいと教えているのだが、違法だろうか。

    ●何よりいけないことは、欠点を探して否定することをもって、批判と呼ぶこと。

    ●根性なんて心の垢に過ぎない。

    ●どの人がしゃべったかが大切なのであって、何をしゃべったかはそれほど大切ではない。

    #

    岡潔(おか きよし)さん。
    1901−1978の、数学者さんです。

    もう、40年ほど前に亡くなった方ですし、なにしろ数学者さん。
    ただ、随筆を多く書かれていて、「名随筆だ」という評価も高い。
    と、いう噂だけ知っていて、ふらっと衝動買い。

    いやあ。
    強烈な変人さん(笑)。奇人。個性的。
    なあなあの集団生活、追従、空気を読む、とか、できないんだろうなあ。

    ただ、上記抜粋したような内容は、僕は好きでした。素敵!

    #

    一方で、この本。批判的に言うなれば。

    ものすごい主観的で一方的な意見を、なんだか圧倒的な確信でおっしゃる(笑)。

    そして、ええええっ!っていうくらい驚愕の精神論。精神主義な意見も多々。

    そして、頻発するのが。
    「最近の若いものはだめだ。僕の頃はこうだった。僕はこうやって豊かな心を養った」

    という要約が可能な、

    「偉そうな爺さんのほろ酔いループ自慢話」…。

    #

    ただ、内容と論理にただよう、ただなるオリジナリティー…。

    「秀才」ではない。「天才」…。

    #

    そんなトデモナイ内容の、その一方で。

    はっとするくらい、「なるほどなあ」という言葉があったり。

    エッセイが素晴らしい、というより、警句、アフォリズムというか。

    文学芸術のことまで、この人はまあ、とにかく考えに考え抜いているなあ、という感心があったり。

    「高等数学っていうのは、つまり哲学だ」

    という言葉があるのは知っているのですが、この人はもはや数学者というより哲学者なのでは?という佇まい。

    というわけで、読んだ自分の中で毀誉褒貶、難しい評価の一冊ながら、興味深い発見であったことは確かでした。

    #

    ただ、この本の編集のボリュームで言うと、岡潔さんの初心者には分量が多かったかな、とは思います。
    所詮随筆を、後年寄せ集めて編集した本なので、もっと厳選して薄いほうが食べやすいのでは。

    #

    それから、この本の「今時の若いもの批判」というのは、時折吹き出してしまうくらい理不尽でヒドイなあ、と思ったのですが。
    でも考えてみると、ここで批判されている「若いもの」っていう人々は、2016年現在、「今の若いものはなっとらん」といちばん発言しているであろう、60代〜70代の人々なんだなあ、と思うと、なんだか微笑ましかった。

    #

    いくつもの随筆、社会批判、若者批判が、そのあまりにも無邪気なまでの横暴、暴論、依怙贔屓内容に、「これぁ、2016年に発表したら、即座にネットで炎上するんだろうなあ」とにやにやして読みました。

    #

    数学者としての岡潔さんがされてきた研究内容っていうのは、この本の随筆のいくつかでも触れられていますし、ネット検索しても縷々と説明されています。
    なんですけど、一言半句たりとも、僕には分かりませんでした…。

    ただ、欧米の研究者が、「あんなすごい質と量の研究を、個人が、それも日本人ごときが出来るわけがない」という感想から、「オカキヨシ」というのは、研究者のグループの名前だと思っていた、という逸話があるそうです。すごいですねえ。わかりませんが。

  • 2016/12/25伊丹市立図書館から借りた。
    2017/1/7返却。

  • 世界大戦後の日本を憂慮して教育に関して自身の経験を交えつつ書いたエッセイ.
    読み始めたときは数学者とは思えないほど表現力に富んだ柔らかな文章だなと思ったが,数学者だからこそ,特に筆者の言う"情緒"に富んだ方だからことこのように興味深い文章が書けるのだと納得した.
    歴史や昆虫採集など,幼いころから多方面への興味を筆者がもっていたことが興味深かった.一方で集団行動,詰め込み教育に重きをおく現状では筆者の言う真の智が生まれることは難しいのではないかと感じた.
    何度も再読したいし,友人にもおすすめしたい一冊.

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