- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334741761
感想・レビュー・書評
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世界的数学者の思考に関する本。数学的観点で難しい数式などは使わず考えを説明されており、とても読みやすい。また、間に分かりやすい例えなどもあり、何点か納得する部分も多かった。数学者は、物事をシンプルで無駄のない形へ抽象化し考える力が凄く、かつ思考の格闘を多くやられている分、考え方の深さと強さを読んでいて感じる事が出来た。定期的に読み返したいと思う。
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可変思考が創造を生む
「可変性」が人間とロボットを分ける
引いてダメなら足してみよう
フリーであることが可変を補償
フリーダム+ウィズダム
可変思考が問題を解決する
“ウォント”こそが発明の母である
挫折を経験しない者は強くなれない
後悔しない→感受性を磨く
模倣+実行力=クリエイティブ
勘=決断力
可変思考で発想を転換する
自分独自のパラメーターをもつ
行き詰まったら、違う次元で考えてみる
割り切れないことの合理性
カタストロフィの理論
可変教育が能力を開発する
親は子供に対して可変座標をもつべきだ
「学力」とは「学びとる力」である
質問量は理解度に比例
捨て石こそ創造の条件
まぜっかえしのエネルギー -
フィールズ賞数学者、広中先生の本。いろいろと参考になった。
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・安心して忘れるためにメモをとる
・事実を事実としてうけとめる
・決断力とは、不安をおしのける勇気(勇気ある決断のないところに、運は向かない)
・新しい尺度(パラメータ)を見つける
・他の人のパラメータを見抜く
・迷路に入ったら分岐点まで戻る
・抽象は根本原理を見つけること、象徴的な最も特徴的な部分を取り上げること -
18/06/05再読
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広中さんの数学をパラメーターとして考察
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可変思考とは、特異性や不連続性をたくさんもつカタストロフィックな局面において、独立変数(可変)を増やすことによって解析・理解するとのこと。それをフィールズ賞を受賞した特異点解消の理論を例に、パラメータの増加によって問題解消に至る事象を紹介しており、特にダウ・ケミカル社の公害問題対応の例は印象的だった。
【印象的な部分】
・人間の勘やひらめきはフリーの状態のとき最も出やすい、日常の執着・緊張のなかにいてこそ、フリーの意味は大きい。
・正反対の意見、落差が生じて、可変エネルギーが大きくなる。
・創造の源泉はフリー×知恵
・知恵=広さ(知識)×深さ(思考力)×強さ(決断力)を総合した多面体。
・アメリカ人は結論が決まると柔軟性発揮、日本人は結論に至るまでに柔軟性を発揮。
・氷山のごとく、人間の思考と行動を支える知恵も、見えない形で蓄積されたもので、いかに浮力(蓄積量)を大きくもつかが人間の大きさになる。
・忘れることがフリーを生み出し、創造を生む
・二者択一の間の曖昧さが重要で、人間は意識的に取り出せない部分に埋れた記憶を蓄積していて、その余裕や無駄が、人間らしい幅のある判断を生む。
・ニーズ(過去の経験、知識、現状分析から見出した必要性)とウォント(現在の自分の中にある、爆発さはたくなるような情念や将来に対する夢や願望に向けての必要性)がなければ、本当のネセシティは生まれない。
・フランスの数学者ボアンカレ、発明とか発見はキノコのようにあらわれる。マツタケの繁殖を例に、力の蓄積+逆境により、蓄積を実積に転換するエネルギーを生む。
・挫折や失敗には、無駄な経験から応用力が生まれるという効用がある。
・反省や後悔に時間とエネルギーを費やすのは無駄。感受性を鋭敏にして未来を見つめろ。感受性鋭い人間なら失敗をすれば痛いほどそれを感じるわけで、二度と繰り返すことのないよう注意するはずだから。
・失敗を経験をしたとき強く感じることが重要で反省という方便を教えるのは間違っている。失敗は失敗としてこっぴどく指摘することにより感受性を高めることが重要で、反省の方便を教えるのは帳消し教育をし消極性を植え付てるだけ、日本古来の事なかれ主義の弊害。
・直接役に立たないことに意味がある。日本の学者やビジネスマンでも成功しつる人は、何か新しい事実が起きると面白がって観察する心の広さをもっている。情報ではなく事実を自分の目で見て、頭で考え、胸に感じておこうという態度がある。いちいち何か行動することの効果とか、目的とか、意味を見出してからでないと行動しない、という省エネ主義の人間は大成しない。無意味なことをブラスに変えて、何か楽しむことを見出す才能を持ち合わせる心の自由が大切。
・情報は事実をイメージで組み立てられたもの。社会のコミュニケーションは事実と虚構で成立していて、事実に空想や好奇心や感動などの感情が入り込むから面白い。情報はその点で重要だが、事実とイメージの識別、事実の取捨選択は一層重要になる。
・問題意識を強く持つことが強力な動機となり、様々な勉強や研究を積み重ねて飽和状態に至ることで、一つの創造のきっかけを掴める。
・目的ははっきりしてないが、その過程を楽しみ、過程自体に意味を見出して努力してれば半永久的に続く。
・模倣+実力化=クリエィティブ。模倣しているうちに、そこを突き抜けて応用がきくかたちで自分の実力の一部にすることができる。
・日本はシンクロ(一致)がうまくチームワークに長けるが、個性的な人間をつぶすことによって支障のないようにしてきた傾向が強い。これからは人間の創造力を活性化するためのケミストリー(化学反応の人間関係)が大事。一人一人の能力の足し算ではなく、個性と個性のぶつかり合いのかけ算が強みを発揮する時代に。
・決断力とは不安を押しのける勇気。決断の連続が勘であり、勘が働かないのは失敗を恐れて何もしないことにつながるから、何もしないものから何も生まれないというわけ。
・行き詰まったら仮説を立てつ進む、仮説を立て演繹する考え方も悪くない。コンピュータにはできないのだから。
・個性とは自分のパラメータをもつこと。創造とはまさに新しいパラメータの発見であり、それを求め生きることが創造的に生きる、個性的に生きること。人の気付いていないパラメータが必ずあるということをまず気づかないといけない。
・一つでもいいから、人と違う、自分にしかない尺度をもつことはすばらしい。また、他の人のパラメータを素早く見抜く能力をもった人は、対人関係をうまく運ぶ。人間関係や環境の変化にうまく対応できる人間は、それだけ手持ちのパラメータが多い。
・記憶を能率的に行うなら頭の中に座標を持ちまず原点を定め、原点との距離を理解、さらに要所要所に付属原点を定めていく。座標があれば共通部分、相違部分をあてはめていくことで理解促進。自分と他人の関係をみる際は、原点の違いを知り距離のずれを自覚すること、自分の座標は相手の原点からみたらどんな座標になるか知ること。
・アメリカは仮説演繹型(ビジョンを示し、いかに具現化するか考える)。日本は実験微調整型・実験帰納型(最初から大きな目標を打ち出さず成り行きを見てコンセンサスをとり上手く行かない点を微調整しながら柔軟に対応)
・人生はいかにせよ分岐点がある。狂いが生じたら分岐点まで戻れ。
・専攻選択には時差を意識しろ。
・自分の原点を見つけるには、①少々のリスクを恐れず自分を試してみること②自分にあった、生きたモデルを発見すること③自分とは異質と思われる人に接し、対照的に自分を発見すること。
・知識を本当に自分のものにするには、ナマの状態で詰め込むのではなく、一度抽象化すべき。人間の意識的な記憶の量には限界があって、その意識的なメモリーの部分を広くすることでフリーを作り、創造性を高めろ。
・何がわかっていないのか、がわかっている人は伸びる。思考のパターンを確かにもっている人間は、他の分野でも上達が早い。
・矛盾という言葉には変化とか進歩のダイナミズムが含まれている。矛盾は落差を生み、より優れたものを生み出そうとするもので大いに歓迎すべき。
・目標は理想と現実の中点主義がいい。学問を習得する場合は進歩がはっきり自覚できる形で直線的に伸びていくから張り合いもあるが、創造活動は長期間低迷しうちひしがれたときある日光明が見えて飛躍する。だから途中だやめては成果はゼロ。だから自分と比べ偉すぎる人は理想モデルであっつも実践的モデルにならない。 -
某氏に奨められて手に取ったが, 残念ながら, 通俗的なハウツー的エッセイという以上のものではなかった.
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思考に関する著書。数学者らしく数学を日常の問題の勘所にうまく応用させていて、非常に読みやすかった。著者の生い立ち、環境も含めて語られる部分では、自分のケースと比較することで、理解が深まった。
(心に残ったもの)
・可変=緊張の中のフリー
・necessity=need+want
・思考エネルギーは後悔ではなく、未来に向ける
・微分的思考と積分的思考の両輪を回す
自分が生まれる前に書かれた本だが、今なお色あせないエッセンスが詰まっている。