トリップ (光文社文庫)

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  • 光文社
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レビュー : 173
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334741921

感想・レビュー・書評

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  • 普通の人々が穏やかに暮らす東京近郊の街と商店街。駆け落ちしそびれた女子高生、クスリにはまる主婦、自称ストーカーの男などが、素知らぬ顔をしてひっそりと暮らしている。
    何者でもないそれらの人々がみな、日常とはずれた奥底、秘密を抱えている。

    東京近郊の商店街が舞台の短編連作、という意味で、少し前に読んだ川上弘美さんの「どこから行っても遠い町」とかなり共通しているのだけど、この作品のほうがよりダークで、現実的に人間の心の中身を抉り出している。
    出来れば気づきたくない、目をそらしていたい人間の心理。を、角田光代さんはあぶり出すのが巧すぎる。
    巧すぎるから読んでて時々恐ろしくなるし、共感してしまうことに罪悪感さえ感じることがある。

    小さな街で、淡く関わる無数の人たち。例えばよく行くスーパーやコンビニの店員さんだとか、何軒か向こうのお家に住む誰かだとか。そんな、顔は見知っているけれどどんな人なのかは知らない沢山の人たちにも、それぞれ色んな人生があり、その中に平凡と呼べるものはきっとひとつもない。
    みんな物を考え、色んなことを感じ、生きているのだから。

    この小説は「そこに居るのに相応しくないのに居続ける人々」が主に描かれていて、このままでいいのだろうか、自分の人生とは一体、と時に虚無感に襲われそうになりながら、みな“普通”を生きている。
    そういうのってきっと誰もが感じたことがあって、自分の人生に大満足している人なんていうのはごくごく少数だからこそ、そういう感覚って解る、と思うし、登場人物に自分を投影させてしまうのだと思う。

    私は「ビジョン」と「カシミール工場」がとくに心に残った。
    自分と似ているとは思わないけれど、そういう風になってしまう心理はわかる、と理解できる感じ。

    1つめの短編の中に登場する誰かが2つめの短編に登場するかたちの連作で、しかしその登場の仕方にもけっこうなひねりがあるから、それを予想してみたり、分かったあとで「あっあの人か!」と戻ってみたりするのも面白かった。

  • 平凡な人の平凡な日常。でも実際は誰でも悩みを抱えている。短編集だけど舞台となる街が共通していてまとまりがあったし、各章の主人公目線&思考回路の違いもおもしろかった。

  • 角田さんほど、くたびれた日常を見せ付けてくる作家はいないと思う。
    本を読んでいるときくらい、優雅な気分になりたいなぁ~なんて思う。
    そう思うはずなのに、中毒性があるのはなぜだろう。
    読んで安心したくなるのかもしれない。
    -なんだ、自分だけじゃないんだ、と。

  • 再読
    駆け落ちしそびれた女子高生、クスリをやめられない主婦、パッとしない肉屋に嫁いだ女…連作小説。

  • 東京から電車で2時間程の郊外のとある中途半端な地方都市に生活している人々の生活や人生を描いた連作。
    悲観と楽観と半々で、生活(人間)ってこんなもんだよなぁという妙な愛しさが湧いて来た。この街が好きだって人間は出てこないんだけど。一癖あるとか悪意に胸をすくとかじゃなく、心地よい「こんなもんだ」が溢れている作品だった。日常をうまく描く作家さんの中でも角田さんの作品はとりわけ親和性が高いです。

  • 短編集。

    おそらく、どの話に出てくる人物も同じ町に住んでいる。

    毎日の生活に満足していない、幸せと感じていない人々のお話。

    あんまり好きなお話ではなかったな〰。

  • 普通の街で普通に生きる人達の心の影の部分を描いた短編集。

    ここに登場する人達のように、一見何の変哲もない誰もが、どうしても逃れられない「こんなはずじゃなかったのに」を抱えているのかも知れない。

    角田さんの書く、ドロドロのリアルな人間ドラマがとても好きで、他の作品も色々と読んだが、この作品は共感よりも居心地の悪さが勝って、読後感がスッキリしなかった。

  • 短編集。連作?っていうの?

    おもしろかった。
    秋のひまわりとトリップがよかった。

  • 郊外の、変哲もない町に暮らす人たちを描いた連作小説。

    ここに出てくる人たちはみんな「似合わない場所で暮らしている」と感じている。
    居場所が「ない」んじゃない。
    そこが「自分には似合わない場所」だと思うだけ。だって、寝る場所は生活する場所はあるんだもの。
    あぁそうか、と。自分がいつも感じているのはこれだったんだ、とひとつ胸の痞えが取れた気がしました。
    この町に暮らして、駆け落ちに失敗した女子高生も、結婚生活に倦んだ主婦も、なにひとつとして自分と変わらない。
    みんな、今いる場所にどこかに疑問を感じながら生きてる。そしてそこから抜け出したいと思いながら、抜け出せない自分をちいさくちいさく許している。

    ここに出てくる人は、どこかしら実社会からはみだしてる印象を受ける、でも本質はわたしたちとかわらない。
    感情をもち、日常に倦み、その発散場所をみつけられず暮らすただの人間だ。

    その滑稽さに救われるような気がしました。
    おかしくて、かなしくて、絶望して、食べて、笑って、やっぱりどこか切ない。
    そんないろいろなすべてが、つまった本。

    個人的に、最初のお話の「空の底」というタイトルがすごく好きです。

  • 101228*読了

    とあるさびれた地方の町の住人たちのストーリー。10人の短編がそれぞれ別の人のストーリーと重なっていておもしろい。なにもない普通の人を書くことは、相当観察力がいることだと思う。角田さんは普通の人を書くのが非常にうまい。それぞれの生き方。

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著者プロフィール

角田 光代(かくた みつよ)。
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。受賞歴として、1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を皮切りに、2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞をそれぞれ受賞している。
現在、小説現代長編新人賞、すばる文学賞、山本周五郎賞、川端康成文学賞、松本清張賞の選考委員を務める。
代表作に『キッドナップ・ツアー』、『対岸の彼女』、『八日目の蝉』、『紙の月』がある。メディア化作も数多い。

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