トリップ (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 213
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334741921

感想・レビュー・書評

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  • 角田光代『トリップ』光文社文庫。

    平凡な日常と異状な日常との境界線を描いた連作集。異状な日常に、何故が余り描かれないので、面白さは無い。十分に異状な日常なのに深刻さは無く、フワッとした感じ。

    特に好きでもない相手と駆け落ちの約束を破られ、また平凡な日常に戻る女子高生。子育てしながらLSDを嗜む主婦、やさぐれた専業主夫、大学の同級生をつけ回すストーカー、歳上の不倫相手が離婚したために、結婚せざるを得なくなった若い男……

    本体価格495円(古本110円)
    ★★★

  • 普通の人々が穏やかに暮らす東京近郊の街と商店街。駆け落ちしそびれた女子高生、クスリにはまる主婦、自称ストーカーの男などが、素知らぬ顔をしてひっそりと暮らしている。
    何者でもないそれらの人々がみな、日常とはずれた奥底、秘密を抱えている。

    東京近郊の商店街が舞台の短編連作、という意味で、少し前に読んだ川上弘美さんの「どこから行っても遠い町」とかなり共通しているのだけど、この作品のほうがよりダークで、現実的に人間の心の中身を抉り出している。
    出来れば気づきたくない、目をそらしていたい人間の心理。を、角田光代さんはあぶり出すのが巧すぎる。
    巧すぎるから読んでて時々恐ろしくなるし、共感してしまうことに罪悪感さえ感じることがある。

    小さな街で、淡く関わる無数の人たち。例えばよく行くスーパーやコンビニの店員さんだとか、何軒か向こうのお家に住む誰かだとか。そんな、顔は見知っているけれどどんな人なのかは知らない沢山の人たちにも、それぞれ色んな人生があり、その中に平凡と呼べるものはきっとひとつもない。
    みんな物を考え、色んなことを感じ、生きているのだから。

    この小説は「そこに居るのに相応しくないのに居続ける人々」が主に描かれていて、このままでいいのだろうか、自分の人生とは一体、と時に虚無感に襲われそうになりながら、みな“普通”を生きている。
    そういうのってきっと誰もが感じたことがあって、自分の人生に大満足している人なんていうのはごくごく少数だからこそ、そういう感覚って解る、と思うし、登場人物に自分を投影させてしまうのだと思う。

    私は「ビジョン」と「カシミール工場」がとくに心に残った。
    自分と似ているとは思わないけれど、そういう風になってしまう心理はわかる、と理解できる感じ。

    1つめの短編の中に登場する誰かが2つめの短編に登場するかたちの連作で、しかしその登場の仕方にもけっこうなひねりがあるから、それを予想してみたり、分かったあとで「あっあの人か!」と戻ってみたりするのも面白かった。

  • ある郊外の町に住む人々の日常。
    普通にすれ違う人でも
    みんな色んな人生があって
    色んな事考えてるんだろうなぁ…

  • 短編集。時々登場人物同士で、「隣のマンションの主婦が〜」みたいな、第三者から見られた場合の別の話の主人公の様子が描かれているのが空中庭園と似ている。中島京子さんの解説で「くたびれた日常を見せられて〜」という一文がすごくしっくりきた。空中庭園もトリップも、まさしく、今に違和感や不満を感じつつも抜け出せず、くたびれた日常を送る人々の話だ。読者に向けてのエール的な文もない。でも、キラキラの日常じゃないから、逆に感情移入してしまう…笑 読了後は、「はあ、やれやれ」と腰をあげてまた私自身もくたびれた日常に戻れる。

  • ある商店街とその付近に住む人。連作。
    すごく角田光代らしいと思う1冊。
    そして、私が連作好きってことだ。

  • カフェとか、駅で人を待ってる時とかに、前を通り過ぎる人たちを見ながら、この人はどんな生活をしてて、今は何しにどこに向かってるんだろうと、ぼんやり想像してみたりするけど、その想像が小説になっている感じだった。
    同じ街を舞台にそこに住む人達の話がいくつか入っているけど、それぞれの登場人物が事情を抱えながら、それぞれに考えながら、一見普通に暮らしている。短い話だけどひとつひとつ読み終わった後に一息ついて、思いを馳せたくなる。
    ちらっと前に出てきた人が横切ったりして、それも他の話の続きを垣間見れたようで面白かった。
    1番好きな話は、「秋のひまわり」

  • 過去にブログで書いた感想文の転記です↓

    ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

    この短編集は、一話一話が野草のような印象をうけた。
    見せびらかすような大輪の花はいないけれど、
    一話一話、しっかり根を張った野の花。

    しかも短編とはいいつつも、この作品、一話前の短編と
    少しずつ繋がっている。
    (それがまた読みたい気持ちを後押ししてくるのだ)

    舞台は、ある商店街。そこに暮らす様々な人々。
    年齢や性別・立場など全く違う10人の主人公。

    みんな、自分の「日常」に絶望してみたり、幸せを探してみたりしている。
    自分がそこにいるのを、違和感に感じていたりする。

    何一つ選べずにここにきたのか、必死になってたどり着いたのはここなのか、
    疑問に思っても、ここにいる自分。
    ここにしかいられない自分。それが自分。

    主人公と私とはまったく違う立場のはずなのに、
    重なるところがありすぎて。

    今現在、そう思っている。
    これから、こう思う時がくるのかもしれない。


    ただ彼らは自分の「日常」に、そんな思いを抱いても、「日常」を続けていくし
    「日常」は続いていく。

    しかもそんなに悲観的でもなく。

    それがまた自分の日常に重なるので、かなり現実に近い小説なんだと思った。

    それにしても10人の様々な主人公を、書き分ける角田さんはすごいなぁ、
    と読んでいて本当に感動した。

    数珠のような、お話。
    みんなの日常。
    続いていく日常。

    本当に面白い本だった。

  • 角田光代はいつも、あぁ、こういうところ見られたくないなぁ、指摘して欲しくないなぁってことを書くのよ。やだな、って思うところを。

    みんな、誰もが主役なのよ、本人の人生では。
    でもって、そんな風に思わなくたっていいじゃないの、他人からすれば思うようなところでつまずいたり、前に進めなかったりしてるんだよね。

    やぁな感じで読み始めたけど、細くつながったそれぞれの短編は読み進めさせられてしまう。作家のうまさ。

    表紙がとても素敵。

    そうそう、出てくる料理が調理法が具体的で食べたくなった。

  • 角田さんほど、くたびれた日常を見せ付けてくる作家はいないと思う。
    本を読んでいるときくらい、優雅な気分になりたいなぁ~なんて思う。
    そう思うはずなのに、中毒性があるのはなぜだろう。
    読んで安心したくなるのかもしれない。
    -なんだ、自分だけじゃないんだ、と。

  • 再読
    駆け落ちしそびれた女子高生、クスリをやめられない主婦、パッとしない肉屋に嫁いだ女…連作小説。

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著者プロフィール

1967年生まれ。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。著書に『対岸の彼女』(直木賞)、『八日目の蝉』(中央公論文芸賞)など。『源氏物語』の現代語訳で読売文学賞受賞。

「2022年 『にごりえ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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