蒸発―ある愛の終わり (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (513ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334742195

感想・レビュー・書評

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  • べトナム戦争の取材から日本に帰ってきた新聞記者・冬木悟郎は、不倫相手の人妻・朝岡美那子が蒸発したことを知る。その原因を、自らの死亡記事の誤報によるものだと察した冬木は、かつて美那子に想いを寄せていたという丹野をたったひとつの手掛かりに、美那子の郷里・福岡に飛ぶ。だが、そこで丹野は無残な死体となって発見された。冬木は、否が応でも、美那子の関与を疑わざるを得ない。美那子への確かな愛と恐ろしき疑念。冬木は事件を追うごとに、この両面をともに深め苦しんでいくのであった。やがて、丹野の経営する会社の重役、丹野の妹、そして冬木に美那子という縦横の人間関係に、それぞれの愛憎の機微が入り混じり、事態は第二第三の殺人事件を呼ぶ。冬木の前に、夢うつつのごとく姿を見せては消える美那子は、はたしてどこに潜んでいるのか。事件との関与はあるのか。なぜ、消えたのか。ある愛の終わりという副題は、単に冬木と美那子の間柄だけを指すのではない。ある愛・・・本作を読み進むにつれて、その射程はさらに根源的なものへと貫かれる。

    ○感想
    ミステリや推理小説は数学の方程式のように、あるいはパズルのように、事件や人物が記号的に扱われ、文章は標識になる。だからなんとも口で言い表しにくいもの――美、機微、人間の不可解さ、恐怖などを描くことはない。対して、純文学は、答えというかたちを持たぬものを描く。推理小説は解決という答えを必要とする以上、この点で常に物足りなさを感じていたのだが、この夏樹静子の本は――無論推理小説であるからその枠内の限りだが、なかなか視点が広かった。主人公の焦りが突如怒りに変わることや、ふとした言葉が落とす影、不安定な感情、不完全な人間といったものの存在を十分理解しているようだ。また、それらを表現する文章も丁寧だった。もちろん、推理小説自体が苦手なので、そのトリックや、劇的すぎる偶然には閉口もするが、大して苦もなく通読してしまった。
    推理小説を目的ではなく、手段としている作品があれば読んでみたい。トリックにしてもある社会面の事件にしても、それがなにか人間の内奥の不思議から起こるものであれば興味深く読める。少なくとも、トリックの巧拙を競うようなものは読みたくない。

  • 細かな構成とトリックで きっちり読まないと置いていかれる 笑

    時刻表を使ったトリックは 今ではあまりないだろうなぁ

  • 夏樹静子さんへの追悼の意味も込めて読んでみた。なかなか緻密な構成だけど、主人公も不倫相手も自分勝手過ぎるかな。

  • つまらん

  • 満席の飛行機のなかで1人の女性が蒸発する…ってところから始まるミステリー。
    論理的にそれほどの破綻はないし、最後にしっかりまとめもあるから読みやすいお話です。
    ……が。

    そもそも自分にも家庭があるのに、近所の奥さんと愛人関係になって妊娠させちゃって、それがバレて奥さんは旦那さんに殺されて、その殺人を隠蔽するために大手銀行に勤めていた真面目な旦那さんが連続殺人犯って話だよ。
    それに対して、最後まで主人公っぽいマスコミのおじさんが反省していないのはどうかねぇ…。
    せめて最後に自分が犯罪の根源だったってことに主人公っぽいおじさんが苦悩する場面があれば良かったのになぁ…。

    しかも、その奥さんに惚れた理由が「家庭に入って子供を産んだ女っぽくない清廉さ」なんだけど、実はその奥さんは子供に愛情を持てない性格の人だったのでした。
    ありゃりゃ…。

  • 正統派ミステリーの傑作。綿密な構成などさすが日本を代表するミステリー作家です。福岡が舞台になっているのも◎。

    【九州大学】ペンネーム:☆★☆!!

  • 犬山などを舞台とした作品です。

  • ミステリーとしては十分に楽しめた。

    けれどそれ以上に、「母親の中に本来あるべき母性本能が希薄になり始めたという現象」
    について考え込んでしまった。

    幸いなことに、私のまわりのママさんたちはみな、自分の子に惜しみない愛情を注ぎ、それぞれ疑問・問題を抱えつつも、
    その問題に折り合いをつけながら生活している。

    なまじ不倫なんてするからこんな悲劇が起きたわけだし、
    やはり子どもより何より自分の人生を最優先にするような母親については理解に苦しむ。

  • **☆【 重量感を感じた一冊 】 **☆

    知り合いの方から本を頂き、初めて夏樹作品に触れたのがこの一冊。

    私は装丁がすきで。
    物語を読み始める前にその本の装丁から世界観を想像するのですが。
    サブタイトルや色彩、絵などから、これは推理小説…? それとも恋愛小説…?
    …と、少し戸惑いながら読み始めました。

    冒頭の不思議な出来事は魅力があり。
    いつ、その謎があかされるのかワクワクしながら読み進められましたが。
    登場人物、それぞれの愛情の深さには、少し戸惑いを感じてしまいました。
    私の想像力が乏しいせいでしょうか…。
    事件の謎に関しては興味があり、
    物語に入り込み、読み進められたのですが。
    事件を追う原動力となるこの作品のもうひとつのテーマであろう愛情に関しては、
    少し消化不慮気味で物語を読み終えてしまいました。

    一番印象的だったのが。
    事件が起きる発端となったのが主人公の存在だったということ。

    この作品も一日で読み終えたのですが。
    本を閉じた後、かなりの間なんともいえぬ疲労感が私を包みました。


    *-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

  • 読むのに1週間以上かかった気が・・・
    とりあえず結末を知らないまま挫折するのだけは避けたいという執念だけで読み終わった気がする。
    すべてにおいて、やっぱり古かった。
    登場人物に全然感情移入できなかったから面白くなかったのかな。設定が複雑なだけに感情二の次感は否めない。

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著者プロフィール

一九三八(昭和一三)年東京都生まれ。慶応大学在学中に長編『すれ違った死』が江戸川乱歩賞候補に選ばれる。七〇年『天使が消えていく』が再び同賞の候補になり、単行本化され作家デビューを果たす。七三年『蒸発』で日本推理作家協会賞、八九年に仏訳『第三の女』でフランス犯罪小説大賞、二〇〇七年日本ミステリー文学大賞を受賞。主な著書に『Wの悲劇』『』や「検事 霞夕子」シリーズなどがある。二〇一六年没。

「2018年 『77便に何が起きたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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