逃避行 (光文社文庫 し 20-2)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334742263

感想・レビュー・書評

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  • 犬関係の小説は好きです。どの小説でも犬は人間の大事な友達です。
    飼い犬が隣の家の子供を噛み殺す。当然殺処分という事になります。
    この当然というのは自分でもそう思うと思いますが、殺処分というのはよく考えたらどう意味なんでしょうか?死刑という意味合いになるのでしょうか?
    もし自分の子供が噛み殺されたら絶対に赦さないし、何なら自分で手を下すかもしれません。
    この本のクソガキはポポ(ゴールデンレトリーバー)に対して棒で殴るわ、爆竹で脅かすわ、おかしなものを食べさせるやらやりたい放題。親に申し入れても直らず、敷地に入って爆竹で脅そうとした時に怯えたポポが、思わず喉笛に噛みついてしまったというのが原因でした。
    小説の中では子供が悪いんだから仕方が有るまいと思いますが、実社会ではそんな理屈は通用しないです。やはり人を傷つけた動物には皆冷たいですし、そこは僕も同じです。
    しかし小説はニュースとかでは見えない裏の事情が見える所がポイント。皆ポポに声援を送ると思います。頑張れポポ。
    しかしこの妙子さんが不用意なんじゃないかなあとモヤモヤします。悪戯されると分かっているのに庭に放しているのが違和感なんですよね。まあそうじゃないと話が始まらないんですけど。
    点数低めに設定していますが、それは物語としての完成度がちょっと低めに感じるからであって、実際はハラハラしながら一気読みでした。引き込まれたと言っても過言ではありますまい

  • 専業主婦の妙子が子供を殺したゴールデンレトリバーのポポを救うためすべてを捨てて逃げるという小説です。

    妙子の行動、思いがメインではありますが、ポポに対する思いは半端ないものです。
    命を懸けて愛しても、犬と暮らすことは一人ではできないものなんですね。

  • 50歳の主婦・妙子が愛犬のゴールデンレトリバー・ポポを連れて逃げる話。
    ポポが不幸な事故で隣の家の子どもを死なせてしまう。ポポだけが悪いわけではないことを妙子は知っているけど、誰も耳を傾けてくれない。殺人犬となったポポを処分するように家族からも迫られポポと家を飛び出す。そこからの逃避行。
    たどり着いた山奥の生活で厳しいながらも心穏やかなひとときも訪れ。そして妙子にもポポにも忍び寄る老い。
    一気に読んでしまったけど、なんだか切ない話でした。一番切なかったのは、家族を最優先に生きてきた妙子が子供が成人してみて気づく、夫も子供もすっかり心が離れていって、妙子に対してなんの思いやりもなくなっていること。妙子の心に寄り添うのはポポだけ。どうしてもポポを守りたかった気持ちがわかる。
    家族の絆は薄れていくものなのか。妙子が家庭で過ごした人生に何だったのか。生きるとはなんなのか。考えさせられる。人は所詮ひとりなのかな。まだそう考えるのは寂しすぎる!と思うけど。

  • また切ない本を読んでしまった。不幸にも隣人の子供を愛犬が噛み殺してしまい、飼い主の主婦が愛犬と共に全てを捨てて逃げるという話。先日読んだ『七十歳死亡法案、可決』でもそうだが、夫には女としての見切りを付けられ、子供達には邪険にされ、家族の為に尽くしてきたのに気が付けば何もない空虚感。そんな閉塞感を感じた主婦が爆発してしまうテーマだけに何だか気が重い。それだけに決して裏切らない犬と残りの余生を生きて行く様に切なくなる。ラストは特に。この作品は誰が悪いのではない。皆悪いのだ。犬以外は。

  • 主人公である「妙子」の家庭で飼っていた愛犬の「ポポが」、隣家の子供を噛み殺してしまう。
    ポポの行動の理由は、子供の方に過失があったにもかかわらず、世間は一方的に飼い主の非を咎め、凶暴な犬を責め立てて処分を要求する雰囲気が拡がる。
    妙子は何とかポポの命を守ろうと思案するのだが、夫を筆頭に娘たちまでもがポポの処分が当然と考える。
    妙子は、自分の家庭環境に対する疑問を抱き続けていた事もあり、自分一人のチカラでポポを守ろうと、計画性もなく突如ポポと共に家を出る。
    総てを投げ打って家を出た妙子が、最後まで大事にしたものは何なのか⋯、家族とは何なのか⋯、他人の優しさにも触れながら人が信ずるものの重さを考えさせてくれる一冊となった。
    相変わらず篠田節は冴え渡り、登場する女性達は強く格好良いのだ。

  • 逃避行は家族の在り方、田舎暮らしの落とし穴、ペットとの心の交流など色々考えさせられた。

  • 間も無く妙子と同じ年代になるので、自分の身に起こることのように読みすすめた。家族の思いやりなさや旦那との距離、同情する部分は沢山あるがやはり現実には隣家の子供を死なせてしまった状況は厳しい。家族の犠牲になって主婦をやると子供が巣立った後は虚しすぎるから、早く自分の楽しみを見つけないと。

  • 隣家の子供をかみ殺してしまったレトリバーを連れて逃げる主婦。うそ~ん、と思いながら読んだけど、最後は涙。自分も老いる、犬はもっと早く老いる。ふだんよりイヌに優しくなったのは言うまでもありません。

  • ドキドキはらはら・・ちょっと心臓に悪いかも・・

  • 犬と逃げる主婦 結末微妙

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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