極め道: 爆裂エッセイ (光文社文庫 み 24-1)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334742607

感想・レビュー・書評

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  • 『「今日は一日炬燵でせんべい食べた。うまかった」みたいな内容になった』という意表を突いた『まえがき』から始まるこの作品!
    『現在までの約一年半で、アルバイト先が二回変わりました』って、えええー!三浦さんがアルバイトってかぁ?ビックリたまげたなぁ、というこの作品!
    みなさん、ちょー、ちょー、ちょー、菜の花にとまるんじゃなくて、超、なにを書きたかったか、忘れちゃいましたが、まあ、そんな私のボケなんてどうでもいいんです。これは、第9回本屋大賞受賞者にして、第135回直木三十五賞受賞の三浦しをんさんが2000年に出された初めてのエッセイなのでありますでござんす。めでたいよおー。はじめてだよー。パンパカパーンとお祝いしようぜ、みんなぁ!この人、カバじゃないのって、いやカバは結構頭いいんだ、バカだって思われそうだから、もうまえがきはここまでにして、ぐるぐる、悶絶して、爆裂しちゃいましょう!というか、こんなお話なのだよぉ。

    『庭にエサ箱を設置して、うっかりカビさせてしまったミカンやパンくずを鳥にあげている』という三浦さん。それを『優雅に納豆ごはんを食しながら見るのが最近の朝の楽しみ』なのにカラスがやってきて追い払うのに必死な三浦さん。『何度か窓辺で、「ウキョー」とか奇声を発する』と、『カラスよりも先に、小さな鳥たちが怖がって寄り付かなくなってしまった』という結果に orz orz orz とそんな三浦さんの平和な日常を描いたエッセイの他にも『「大草原の小さな家」って言うけど、充分大きい家だよ、屋根裏もあるし』とか、『カバのカバカバ・コアラのコアコア・ライオンのライニーちゃん』とか、さらには『禁忌を破るのは情熱でなければならぬと願う私は真面目なロマンティスト』とか何だかよくわからない変チョコリンな副題のエッセイが次々登場するこの作品。副題のよくわからないかっ飛び度はいつも以上かも?よ?とお話は続きます。

    どんどんいきます。『どうして小学校では必ず、「名前の由来をおうちの人に聞いてきましょう」とかいう授業があるの?』と疑問に思う三浦さん。確かにそうだ。私もそんな宿題あったよぉ、覚えてるよぉ、もちろん。でもこれが三浦さんは嫌だったみたい。『なるべく名前はなかったことにしたいのに。ふだんから自分の名前を忘れる努力をしている』。ふむ、これは理由が気になるな…と思った瞬間、次の一文がぁ!『ちなみに私の名前の由来は、「紫苑の花が咲く頃(秋)に生まれたから。紫苑みたいにまっすぐ素直に育つように」』なのだとか。おおおおっ!こんなところにこんなものがぁ!三浦しをんさんの名前の由来を知ってしまったよー!おー!これはファンとしてはたまらないよー!これだけで、この本を買った意味があったよー!元を取ったよー!しつこいよー。でも、すんごい貴重だ!あっ、これ読んでる、あなた、無料でこんな貴重な情報を入手できたなんて、幸せな奴だなぁ。ずるいよぉ。って、脱線したので戻ろう。そうそう、どうして名前をなかったことにしたいか、の理由だ。あっ、書いてある。『だって素直な子供じゃなかったもん。こんなウガッた名前つけられたから、ヒネくれちゃったんだけどさ』って、もう、なんだかいじらしくて、もっとファンになるよー、三浦さん好きだよーって思ってたら、いきなり『名前をつけるさいの注意点』なんていうのが出てきましたぁ。三浦さんのお考えってやつですね。
    『一、平凡な顔、特技なし、の人間が大半です。あなたの子供も確率的にいって、たぶん平凡です。あまり凝った名前はやめましょう。生きるのがつらいです 二、当て字は避けましょう…』う〜ん、生きるのがつらい、なんて言われるのかぁ。う〜ん。子供の名前をつけるのも大変だぁ。ご両親もまさか直木賞作家様に名前の不満を著書でツラツラ書かれる未来が来るなんてまさか思わなかったよね。たぶん。子供が偉大になるってのも考えものだっていうことなんだよ、そこの、あなた。そう、あなたのことだよぉ。わかってるぅっ?

    そんで次は、『しょっぱなから宣伝で恐縮ですが、本が出たのでよかったら読んでみてください』って、なんて初々しい表現でしょうか!デビュー作「格闘する者に○」のことだな、これ。『売れに売れて品切れ!なわけは全然なく、むしろ逆のような気がするので、根気よく本屋さんを探してください』って、ああ、どこまでも謙虚な三浦さん。やがて本屋大賞まで取ってバカ売れする未来は流石に見えませんよね、この時代。また、『市谷に住むおばは、なんとか本が売れるようにと熱い販促活動を独自に繰り広げてくれている』という三浦さんは、ある日そんなおばさんと本屋に出かけます。『本屋の棚に二冊入っている背表紙を〇・五秒くらい目撃した』という一瞬の『あっ、あそこに入荷してる…うれ』までで言葉が止まってしまった三浦さん。その瞬間には、『その二冊をおばがガッと抜き取り、レジに持っていってしまっていた』という光景に『私は呆然とした』という三浦さん。『だれが買ってくれるのかしら、かわいい女の子かしら、ウフ』と期待して待とうとしたのにと不満な三浦さん。でも結局は『もう何も言うまい。歩く広告塔の役目は君に任せた!思う存分やってくれたまえ』とまとめます。このエッセイ、リアルタイムで読まれた方と、超売れっ子作家さんになられた今を知って読むのでは、同じ文章を読んでも全く見え方が違うんだろうなあと、とっても感慨深くなりましたよぉ。なんでもそうなんだろうけどねぇ。売れるってやっぱスゴイことなんだよぉ。世界が変わるだろうからね。変わってみたいよぉ。

    ということで、『暑さ寒さも厳しかったり緩かったりする日々ですが、みなさまどうぞご自愛ください』というあとがきで真面目に終わるこの作品。その後に悶絶したりぐるぐる回っていく三浦さんからすると、まだまだ弾け度合いも少なめ、というか、とにかく初々しさをとても感じた作品でした…、と真面目に戻ろうと思ったんだけどさ、実はね、なんだかなぁって。だってね、なんだか私、弾けきれなかったよぉ、三浦さんのエッセイで初めて☆三つをつけちゃったよぉ、でも正直にならなきゃいけないから鬼になったよぉ、もうちょっと期待したんだけどなぁ、悲しいよぉ、まだ悶絶のツボを掴まれていない三浦さんって感じがしたよぉ。まあこんな日もあるのかなぁ、人生甘くないって、生きることの厳しさを知った読書だったよぉ。週の初めからちょっとブルーだよぉ。寂しいから、終わるね。でも、最後にちょっとだけ気合い入れとこうか。

    次こそは!もっと弾けるぜい!とこの先、どんどん世界が出来上がっていく三浦さんのエッセイ。この作品では、初々しさが全面に感じられる一方で、今ひとついつもの突き抜け感が感じられませんでしたが、三浦さんの名前の由来を知れたり、売れる前の三浦さんの初々しい素顔を垣間見ることができました。すべてはここから始まった。20年前の三浦さんの素顔がここにあった、そして輝く未来へ。そんな三浦さんの初めてのエッセイでした。

    • moboyokohamaさん
      良いですよね、三浦さん。
      自分のことを腐女子と公言していますがはたしてどうなんでしょう。
      「仏果を得ず」からのエッセイ「あやつられ文楽鑑...
      良いですよね、三浦さん。
      自分のことを腐女子と公言していますがはたしてどうなんでしょう。
      「仏果を得ず」からのエッセイ「あやつられ文楽鑑賞」を読んだときこの方の集中力、興味を持ったものに対する探究心はすごいなあとおもいました。
      箱根駅伝の小説のための調査をしている様子をテレビで見たことがありましたが、ランナーのスピードで走る自動車の窓から顔を出して風を感じていたのが印象的でした。
      私の勝手な判断で三浦さんの作品中あまり人気がないと思う
      「星間商事株式会社社史編纂室」
      が妙に好きなんですが変かな?
      だって自分で好きだなと思いながら、いい作品だとも感動したとも思わないんですから。
      2020/06/15
    • さてさてさん
      三浦さんに対する感想、おっしゃる通りですね。小説の世界とエッセイで見せる表情の違いにいつも驚くことばかりです。どちらもとてもハマると感じるも...
      三浦さんに対する感想、おっしゃる通りですね。小説の世界とエッセイで見せる表情の違いにいつも驚くことばかりです。どちらもとてもハマると感じるものがあって、三浦さんだけはエッセイも全て読破するつもりです。

      「星間商事株式会社社史編纂室」はまだですが、これまた面白そうな世界を描かれているようにあらすじを見て思っています。間違いなくこの先読むことになる一冊でとても楽しみです。
      moboyokohamaかわぞえさんのお感じのところ、私がどのように感じるか、とても楽しみになりました。

      また、よろしくお願いいたします。
      2020/06/15
  • 私は「舟を編む」が三浦しをんさんとの出会いだったのですが、

    三浦しをんさんの小説から受ける人々の真摯な生き方に感動し、勝手に天使のような「三浦しをん」像を作り上げてしまった読者が、
    作家デビュー前に書いたうら若き頃のエッセイがあると知り、どんなに素敵なお嬢様だったのだろうと心躍らせて読むと、
    「どひゃー」っとなって、×◆‼▼な「三浦しをん」像を作り直すハメになります。

    そして、「三浦しをん」さんのことが益々好きになります。

    「三浦しをん」さんの正体を良く知っている読者が読むと、若い頃から感性と文才が際立っていたことが改めて確認できます。

    これは1998年、しをんさんがまだ大学生の頃から書いていたエッセイなんですね。
    2000年のデビュー小説の「格闘する者に○」の話題も出てきました。

    「へこたれる」の語源を考えていて、「屁っこをたれる」に違いないと思い、「へこたれる」に至るまでの物語を妄想したり、
    下痢になったおかげで便秘が治ったことを「今週一番うれしかったこと」とサラッと言ってみたり、
    ともさかりえの尿療法の話に刺激されて「尿を飲んでみよう」と決意し挑戦して結局ダメだった顛末を明かしたり。
    まだ若いのに何時からの嗜好なの?と思ってしまう飲酒や喫煙の話など、ほとんど隠し事はなく他人の視線など気にしない大らかさがいいですね。

  • 三浦しをんさんが2000年9月に出した初エッセイ本。彼女自身、そして彼女の友人や家族の話が面白く、全てのエッセイを読み尽くしていたと思っていたが、本書がまだ残っていたことに気づき早速手に取った。三浦しをんさんが大学生〜大学卒業後あたりの頃の話だが、この頃から文章が既にとても上手で面白い。大手出版社から執筆依頼なんて来るわけないだろうと書いていたが、今のご活躍ぶりと言ったら!それから、この本に登場していた三浦さんの祖父母の住む村が、数ヶ月前に読んだ「神去なあなあシリーズ」の村の雰囲気とかぶり、もしかしてこの村をモデルにしているのかなぁと思った。

  • あれっ!これ、読んだ事があるかも…?(・_・?) と思ったのは「しをんのしおり」を読んでいたからか?それとも実際に読んだのか?(^^;)今から20年ほど前のエッセイだから、わからな~い┐(´д`)┌でも面白~い♪

  • やっぱり面白い。

  • 三浦しをんの極め道を読みました。

    「いかにしてだらだらしつつ本(漫画)を読み、身近な出来事に楽しみを見いだすか」というテーマで雑誌に連載されたエッセイ集でした。
    脱力系の話題、爆笑系の話題、おもしろく読みました。

    例えば表題の「極め道」は、レジに並んでいるところに横から入ってきた人に対してのツッコミの話題から、ヤの人たちが任侠で親切にしてくれることもあり驚かされる、という話題に展開していきます。
    ヤの人だから極め道か、なるほど。

  • しをんさんのエッセイが大好きで見つけたらすぐ買ってしまう。そうして今回も手に入れうきうき読み進めた……ら、発見!しをんさんが、少しとんがっている……。これは、あくまで個人的見解です。のらりくらり穏やかに(時には凄く興奮されていますが)日々を綴るしをんさんの印象が強かったので、お若い頃のしをんさんは少し斜に構えていらっしゃって驚き。でも、やっぱり面白いです。

  • たぶん三浦しをんの最初のエッセイ本ですが、読みもらしていた気がしたので今さら。1998年の連載だけど、いつ読んでも面白い。

    個人的に女性作家のエッセイに対して偏見があって(どうせ小洒落た生活してるんでしょというただのやっかみと、逆に日常のちょっとした発見を素敵に変えちゃうそんな視点にうっかり憧れちゃう自分とかいたらむしろ気持ち悪い・苦笑)、すごく好きな作家でも九割九分読まないんだけど、三浦しをんだけは基本オタクの共感度100%なので安心して読めます。

    1998年なので「最近はボーイズラブって言葉があるんだよ」「なにそれ恥ずかしい」的な(※ニュアンスで)会話がされているのが新鮮(笑)。そういや当時はそんな言葉なかったですよねえ。

  • しをんさんのエッセイ・・・なのに、気が合わないのかあまり読む気がなかった。(失礼だが。)

    色々調べてみると・・・しをんさんのエッセイ第一弾らしい!
    そう聞くと、納得。後々の方が面白いもの(●^o^●)


    しかしこの人は、面白い人生を進んでいるのだろうなあ・・・・。

  • これが最初に書き始めたエッセイなのかな?三浦しをんが大学卒業前後(12年前)に書かれているが、時代を感じさせない内容にブレがないなと思った(笑)特に名前の話など最近のDQNネーム問題にも通ずる!

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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