- Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334742621
作品紹介・あらすじ
犬山家の三姉妹、長女の麻子は結婚七年目。DVをめぐり複雑な夫婦関係にある。次女・治子は、仕事にも恋にも意志を貫く外資系企業のキャリア。余計な幻想を抱かない三女の育子は、友情と肉体が他者との接点。三人三様問題を抱えているものの、ともに育った家での時間と記憶は、彼女たちをのびやかにする-不穏な現実の底に湧きでるすこやかさの泉。
感想・レビュー・書評
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この作品は途中まで読んでずっと積んでありました。
私は江國さんの詩と童話とエッセイは大好きなのですが、大人の恋愛小説がどうも苦手です。
でも、先日谷崎潤一郎の『細雪』を読んで四人姉妹の話なので、この作品も三人姉妹の話だったことを思い出し、共通点があるのかとか、江國さんのような人気作家は谷崎の影響を受けるものなのかとか気になり、最初から読み直してみました。
犬山家の三姉妹は麻子36歳、治子34歳、育子29歳の三人です。
麻子は専業主婦で夫からDVを受けています。麻子と夫の邦一との関係は一種のお互いの愛情を確かめるための儀式のようなものの気がしました。とても哀しい儀式です。
治子は独身で性に奔放な男勝りの女性で、今は一人の男性熊木と一緒に仕事をバリバリこなしながら暮らしていますが、時々体だけは浮気をしています。
育子は自動車教習所の事務員で、高校生の時不特定多数のおじさん(50代)と友だちになる度に友情の証として関係を持ってしまう。そして望みは家庭をもつこと。とても心優しく天衣無縫な女の子というような女性です。
犬山家の家訓はこの作品のタイトルの「思いわずらうことなく愉しく生きよ」。仲のよい三姉妹ですが、両親は三人が成人してから離婚しています。
江國さんは特に谷崎を意識してこの作品を書いたわけではないと私は思いました。
仲はよくてもお互いの恋路に特に過干渉ではないです。三人それぞれの物語だと思いました。その三人がとても仲の良い、昔一緒に暮らした姉妹だった。そういう話だと思いました。
私はこの作品では、おじさんと友だちになる度に関係してしまう育子に、目が点になりそうでしたが、育子のその名の通り健やかな性格のためにそうなったのだと思うと育子のやることがまるで天使のようだと大変ほほえましく思えました。
治子は、意地を張らずに生きればよいのにと思いました。
麻子はこの先どうなるのかよくわかりませんが「思いわずらうことなく愉しく生きて」ほしいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この間江國香織さんの作品をたくさん買った。その中の一冊。麻子、治子、育子という三姉妹について描かれています。
三姉妹はそれぞれ悩みを抱えているけど、一番共感できたのは育子。男性から娼婦のように扱われていて、「順序」をすっとばしてしまう。でも、自分を本当に大切に扱ってくれる男性に出会って変わっていく。なんだか自分の経験と少し似ていて、頑張れって思いました。
小説のなかて四季が巡っていくのが美しくて、真似したいことや知りたい風景がたくさん増えました。
その1:沈丁花の花の香りを確かめる
…初めて聞く花だったので春になったら探してみようとおもいます。
その2:『夜と霧』を読む
…育子が「死」について日記に書く時にでてくる小説
日記に引用文を載せたようなのでどの部分がそれなのか想像して読みたい。
その3:犬山家特製トーストを食べる
…治子が朝食に自分で作っている。麻子、治子、育子にはなじみのトーストなのでしょう。
トーストにバターでいためた山盛りのほうれん草とおとし卵をのせる。基本は塩コショウ。治子はウスターソースをたらす。
もうすっかり江國香織さんに惚れてしまったので、いろいろ深く知りたい、体験したいと思ってしまいます(^^)
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2019/11/16
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雨が続く日とか、寒い冬の夜に読むのにぴったりな小説でした。
とても個性溢れる3姉妹に最初は少し圧倒させられたけど、どの姉妹にも少しずつ、共感できる部分、自分と重ねる部分があって読みながら興味深かったです。
そもそも本書のタイトルは、犬山家の「人はみないずれ死ぬのだから、そしてそれがいつなのかはわからないのだから、思いわずらうことなく愉しく(たのしく)生きよ」という家訓からきています。
「楽しく」ではなく、「愉しく」。
同じ読みだけれど少し意味が違って、前者は、心がうきうきする。後者は、心のしこりが取れて、わだかまりがない。という意味。
今の心境がちょうどこの本を読むのにぴったりで、読んでいてすごくしっくり。
江國さんはいつも、誰もが持っている何かしら欠けた部分、マイノリティな一面を色濃く描いてますが、不思議な程に共感できるんですよね。
DV夫と幸せに暮らす長女も、情緒豊かながら理性と共に生きる次女も、好奇心の赴くままに生きる三女も、みんな理解できる部分があって。
彼女たちを通して自分の中にあるものを発見できるのもおもしろいです。
家族の結びつきが強くて、家族の危機には駆けつける彼女たち。
みんなたぶん、きっと不器用で、恋愛に翻弄されて、でも地に足をつけて生きようとしていて。たぶんそんなところに強く共感するんでしょうね。
私の本質は長女に近いかもしれないけど、次女のような理性を持ちたいし、三女のようにまっすぐに幸せを追いたい。
犬山家の家訓もいいですよね。恋愛に疲れた人にもよいかもしれない。 -
江國さんの、虹を内包した雫のような言葉。落ちる一瞬一瞬に、しっとりとした煌めきを放つ。移ろいゆく季節と年月を感じながら、三姉妹それぞれの愛を模索する姿を読む。アルバムを見返すときのように、なんて心地よい読書だろうか。女の人生、恋せよ乙女のお次に、愉しく生きよ、であーる。
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江國さんの本を読んでる時はほんとに心が心地よいです。最高に私好み。
彼女たちは家族という人生1の財産に大変恵まれています。
こんな姉妹、親子に囲まれてたら心強いだろうなと羨ましくてたまらないです。
幸せって思ったようにコントロールできなくて。
自分一人の問題でなく恋人に大きく左右されてしまうもので。
旦那がDVするかもしれないし、
恋人とは突然破局するかもしれないし。
けれど家族は切っても切れない仲。
腐れ縁である家族こそ、最強だなと。
彼女たちの人生は平穏ではないけれど、
こんなにもたくましく感じるのは
いざとなったら支えてくれる姉妹がいるからでしょう。
いいな。
どんなに望んでも手に入れられないものだからこそ嫉妬は抱かなくて。ひたすら憧れです。
それがまた心地よい。
この本が書かれたのが20年ほど前と思えないくらいに廃れを感じないです。
内容は明るくはないはずなのに、どうしてこんなに幸せな気持ちで読めるのだろう。
それくらい江國さんの作る空気感が好きです、、。
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それぞれキャラの違う三姉妹で自分だったら誰に似ているか、どこか共感する部分を探しながら読み進めていて
結果、誰にも似ていないんだけど
それぞれにある部分は共感したり。
ストーリー展開も先が気になり夢中になって読み終えました。
女性の強さや逞しさが江國香織さんらしい巧みな表現で描かれている。面白かった。
「思うわずらうことなく、愉しく生きよ」
家訓にしよう -
楽しいことを積極的にみつけていくのでもなく、たとえここに何もなかろうがお構いなくただ愉しく生きていけばいいじゃないっていう江國さんの考えがしみわたってきて良かった 楽ちんな気持ち、自分のからだが細い糸になってはらはらほどけていく感じがした
ここが好き
「ここに帰ることができたら。
麻子は思い、同時にそれが滑稽な思いつきであることを理解する。ここなどどこにも存在しないのだ。いま目の前にいる人たちは、自分も含めてみんなすでに他の場所に属している」 -
三姉妹三様の生き方だが、共通するのは、自身の幸福に貪欲なこと、恋愛に対して恐ろしくまっすぐにまじめに向き合っていること。そういう意味で、タフであること。
なんだかものすごくわかるなあ、という箇所があるある。
家族とか恋愛とかって、百人いれば百通りの関係ややり方があるもので、だからこそどれ一つとして異常などではありえないのかもしれない。どれほどの幅に対応できるかの度合いが人によって異なるとしても。 -
ここ最近長編を読めていなかったので、ひさしぶりにがっつり読んだな〜というかんじ。なにか納得のいく(収まりのよい)大団円があるわけでなく、物語の終わりでも登場人物たちの日常は脈々と続いていくけれど、時とともに変化を遂げていることも確かにある。だからこそ、一貫して変わらない砦のようなものもみえてくる。思いわずらうことなく愉しく生きよ。いい家訓だなあ。
育ちゃんのいう「感情より意志に重きを置く」論、ちょっとわかる。
解説に三姉妹の誰に己を投影するか、という話があったが、最近のツイートを見返したところ怒りっぽいところだけ治ちゃん似かなと思った。
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