臨場 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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レビュー : 444
  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334743031

作品紹介・あらすじ

臨場-警察組織では、事件現場に臨み、初動捜査に当たることをいう。捜査一課調査官・倉石義男は死者からのメッセージを的確に掴み取る。誰もが自殺や病死と疑わない案件を殺人と見破り、また、殺人の見立てを「事件性なし」と覆してきた。人呼んで『終身検死官』-。組織に与せず、己の道を貫く男の生き様を、ストイックに描いた傑作警察小説集。全八編。

感想・レビュー・書評

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  • 2020(R2)8.13-8.20

    『64』以来の横山秀夫。骨太で重厚な物語を求めて読み始めたのだが、短編集だったことに驚きと少しの安堵。

    と思ったら、なんのなんの!
    “終身検視官”の異名を持つ倉石という検視官を、短編集を貫く主人公に据え、それぞれの短編ごとの主人公との関わりを通して、物語のスケールを深くしている。

    「これってドラマにすると面白いんじゃないかなぁ。」と思って、今調べてみたら、テレビ朝日ですでになってました。
    そんなことも知らない、世間知らずな僕…。

    『64』と『クライマーズ・ハイ』しか知らない僕が横山秀夫を語るのは憚られるが、『臨場』は、横山秀夫を知らない、あるいは少し遠ざけている方には、「入門編」としてふさわしい作品の気がします。

  • 捜査一課調査官の倉石は、初動捜査において死者からのメッセージを的確に掴み取る。
    事件の真相を看破し、鑑識ネタでホシを挙げ、検視の現場では目から鱗の見立てをする。

    このハードボイルドちっくな、己の道を貫く倉石が関わる物語が短編で綴られている。

    短編嫌いな私には、1つの話が短すぎて悲しいところだが、短い中にも倉石の魅力を凝縮して描かれている。

    ハードボイルドちっくではあるのだが、がっつりハードボイルドとも違い、女性目線でも読みやすいのではないかと思う。サクサクと読み進められる。

    なかなかに面白い作品なので、長編で読んでみたくもある。

  • 本作は読むより前に、以前、テレビドラマで見た。もともと刑事が犯人を追い詰め、ときには銃撃戦となる派手な刑事ドラマが大好きなのだが、その後、警察ドラマは科学的なテーマにシフトしていった。その一角を担っていた(と思っているが)「臨場」は、事件現場のありとあらゆるモノを手掛かりに、事件の真相を暴いて見せた。そのやり方がとても斬新で、決して刑事が拳銃片手に派手なアクションをしなくても、面白いドラマができるのだと感じた作品だった。
    ドラマでは、検視官・倉石のキャラクターが立っていたが、それは小説でも同様だった。小説では、ドラマ以上に現場の状況や遺留品だけでなく、そこから事件に関わっている人々の心情や過去まで明らかにしてみせる。倉石はそこから立ち昇る真の動機や真相を、現場に落ちている「証拠」と重ね合わせ、真相を暴くのである。一見はぐれ者に見えて、実はクールな検視官というキャラクターは、オリジナルの小説でも健在だ。ミステリアスな私生活についても同様である。ドラマの脚本家は、倉石の人物造形は、オリジナルに忠実だったらしい。
    短篇集だけに、そうした倉石の活躍が何度も楽しめる。短い物語の中にも、巧みなプロットと無駄のない記述だけに、濃度は高い。多くの物語の間で、主人公たる倉石のキャラクターもブレることはない。決して長い物語ではないけれども、懐石料理を味わったかのごとき充実感が得られるのではないかと思う。
    組織(特に警察のような、ヒエラルキーがはっきりとした組織)の中で、その論理を少しばかり外れてしまい、しかしそれを卑下することなく孤高を貫く人物を描かせたら、横山秀夫の右に出る人はいないのではないか。

  • 倉石検視官の特殊能力とも思える仕事と、時折見える人間臭さに完全にやられました。
    作者に感謝です。

  • 倉石義男の心理描写は一切無く淡々としており主人公という感じがしない。検視官なので犯人を追いかけたり逮捕することは無いが、そこに辿り着く見立てが凄いのだ。TVシリーズで先に知っていて細かい違いもあったがそれもよし。ただしTVのようにキュウリを齧りながら臨場はしなかった。

  • 「どこにでもあるクソ人生でも、こいつらにとっちゃ、たった一度の人生だったってことだ。手を抜くんじゃねえ。検視で拾えるものは根こそぎ拾ってやれ」

    不思議な刑事小説。
    「クライシス・倉石」「終身検視官」と呼ばれる倉石さんが主人公なんだけれど、彼の内面は一切語られず。
    ワトソン的な人物が代わりに語ることもない。
    刑事ものってグチグチと女房に逃げられてとか、綺麗事ばかりじゃやってらんねえとかそういうことが描かれることが多いけれど、倉石さんがそれを語ることはない。
    弟子のような部下、敵視する上司、事件を追う記者などが事件で倉石さんに出会い、眼力に魅せられ、懐の深さに胸を熱くする。
    ずっと行動をともにすることもあれば、通りすがりのような時もあり。
    どんな時も倉石さんは、ズバッと事件を解決して去っていく。
    人の死に関わる事件なので、決して明るくはないけれど、「餞」のようにふんわりと温かい気持ちになる話もある。
    それをドラマか、難しいなあ。
    ベツモノとして見てみたいかな。

  • 臨場-警察組織では、事件現場に臨み、
    初動捜査に当たることをいう。

    操作一課調査官・倉石義男は
    死者からのメッセージを的確に?み取る。

    誰もが自殺や病死と疑わない案件を殺人と見破り、
    また、殺人の見立てを「事件性なし」と覆してきた。

    人呼んで、「終身検査官」。
    組織に与せず、己の道を貫く男の生き様を、
    ストイックに描いた傑作警察小説集。
    全八編。

    **************************************

    よくそんな事に気づくなー、
    なんて感心しながら読んだ。

    一編目の「赤い名刺」、これが一番面白かった。
    調査官の倉石以外に、もう一人の調査官、被害者、犯人、この繋がりが絶妙。

    犯人が知らず知らずに犯したミスも
    読んでて見逃してたけど、言われたら、あー、ってなった。

    調査官の倉石は、厳しい顔ばかりじゃなく、
    少しでも一緒に働いてた部下に対して、
    自分の完璧な仕事よりも、その部下の為を想って行動する優しい一面もあって、すごい人やなと思った。

    何編かは、全く理解ができへん事もあったけど、
    最初の話がほんまに短編やのに、ぐっときた。

  • 横山氏は「半落ち」の作者でもあります。
    今回のこの作品は警察検視官が主人公の8編からなる短編ミステリー小説です。
    謎解きが本当に面白い。
    遺体や現場からの状況判断がすごい。
    一つ一つの事件に登場人物の生き様が描かれています。
    ちょっと?全然?違うかもしれませんが、魔夜峰央氏の「パタリロ」のよう・・。
    とにかく おもしろかったー というのが感想です。

  • 定期健診で引っかかって今日は会社を休んで大腸の内視鏡検査。1.8Lのマグコロールを2時間かかって飲干す間、退屈な病院の中の友が読みさしだったこの本で。
    事件現場に臨み初動捜査に当たる検視官・倉石。自殺と他殺を見間違うと、いずれにせよ大変な事態になる重要な仕事。
    ちょっと出来過ぎと思わない筋立ても無いではないけど、それを上回って余りある読みの深さ、着眼の鋭さ。
    検視の場面のリアルさも見事で、そこかしこに植物や鳥が重要な役割を果たすが、「植物は死体ほどに物を言う」、なんて新鮮な驚き。
    そして倉石の、組織に与せず自ら生き方に拘る様と、その怜悧さとは裏腹の、僅かひと月部下であった元婦警の生き様に自らの経歴に傷をつけてまで拘る情の深さ。
    全8編、切れに斬れた。

  • この本の評判を耳にしていたのに読んでいなかったことを後悔した。いや、この本を読めて本当に良かった。本の神様に感謝。

    検視官の倉石を主人公にした連作集である。『赤い名刺』、最初から唸るばかりの上手さに脱帽。『眼前の密室』、これも上手い。主人公の倉石はチラッとしか登場しないが、その果たした大きな役割りをを匂わすところが渋い。『鉢植えの女』、これも傑作。倉石の推理がすごい。『餞』、震えるくらいの傑作。この連作集の中ではピカイチ。まずは読むべし。『声』、これもまた展開が非常に良い。『真夜中の調書』、すごい。『黒星』、これは二番目に良い話だ。好きだな、こういうの。ラストは『十七年蝉』、うわっ、やられた。最後の最後に涙が…これも好きな作品です。

    どの作品も素晴らしい。

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著者プロフィール

国際商科大学商学部卒業。1979年上毛新聞社に入社。1991年、『ルパンの消息』が第9回サントリーミステリー大賞佳作を受賞。1998年、『陰の季節』で第5回松本清張賞を受賞、小説家デビュー。代表作に『半落ち』『クライマーズ・ハイ』『64』などがある。

「2015年 『漫画でよめる! 語り継がれる戦争の記憶 戦火の約束』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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