明日の記憶 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 2578
レビュー : 329
  • Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334743314

作品紹介・あらすじ

広告代理店営業部長の佐伯は、齢五十にして若年性アルツハイマーと診断された。仕事では重要な案件を抱え、一人娘は結婚を間近に控えていた。銀婚式をすませた妻との穏やかな思い出さえも、病は残酷に奪い去っていく。けれども彼を取り巻くいくつもの深い愛は、失われゆく記憶を、はるか明日に甦らせるだろう!山本周五郎賞受賞の感動長編、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 山本周五郎賞 受賞作品。
    若年性アルツハイマーを患った50歳の会社員が主人公。先が読める本だけに、読み進めるのにかなりの勇気がいった。今や平均寿命が80才や90才と言われる中で、50歳でこの病気にかかるのは辛すぎる。「何故自分が、どうして!」その思いは十分に理解できる。主人公が、職場でミスをしないように必死の努力をしている姿も、日々進行する病に愕然とする姿も、我が事のようにつらく、この本の最後はどこまでを描くのか恐ろしくもあった。
    幸い(?)ラストは哀しいながらも、きれいな終わり方でホッとした。大切な家族を忘れてしまうのは辛いことだが、この病気はそこで留まってはくれない。
    だからこそ、このラストは救われる思いがする。
    記憶を失くし家族の顔を忘れてしまったとしても、彼の本質は変わってはいない。

  • 50歳で若年性アルツハイマーと診断されたサラリーマンのお話。
    本人、家族の動揺や葛藤が読んでいて辛くて、
    でも引き込まれました。

    だんだんと平仮名の多くなる備忘録は
    "アルジャーノンに花束を"を思い出して切なくなりました。
    書いている内容も重複したりして、
    進んでいく症状にドキッとさせられて。

    自分だったら、自分の家族だったら、
    というのも考えてしまう!
    主人公の奥さんの心境もすごく考えさせられて辛い。
    終わり方も切なくて、でもきれい。

  • キャリアもある広告代理店に勤める50歳の会社員、
    娘が結婚しもうすぐ孫ができる、そんな矢先
    若年性アルツハイマーを患ってしまう

    自分の病気を調べ、疲れていきながらも
    これ以上悪化せぬようメモ書きをたくさんして働くが
    その努力も空しく症状は悪化し部署をはずされる
    とてもつらく、逃れ慣れない病気の進行と家族たち
    忘れてしまう恐ろしさと残される家族への気遣い
    様々なものを抱えすぎたまま昔の陶芸の工房へと向かう

    なんとかつての工房主も認知症を患っており
    しかし二人はとても濃く満たされた時間を過ごす

    ラストはさわやかながらもかなしく、
    しかしまだここから新たな生活が進んでいくのだと感じた

    認知症の家族を持つ身としてこの本を読んでいてもたってもいられず
    祖母の入居する老人ホームへと足早に向かった

  • 若年性アルツハイマーを患った主人公が、病気と向き合い、受け入れ、失われていく記憶と闘う物語。

    読者を感情的にするような叙情表現は多くないが、いたずらに感動的に書かれていないところにリアリティがある。

    この病気について自分のことのように考えさせられた。

    特にラストの表現には、それまでためてきた感情が溢れ出すような、なんとも言えない感動がある。


    素晴らしい本だと思う。

  • 広告代理店営業部長の佐伯が若年性アルツハイマーにかかり、記憶が失われていく様子、周囲の人々を描いている作品。

    非常に重いお話で、最初、読み進めるのが本当に苦しかった。

    記憶が失われていく、自分が自分でなくなる恐怖。周囲の目・表情を窺う、常に気を張り続ける主人公。
    ミスをしないように、必死でメモをとり、まとめ、オリジナル名刺を作る。その必死さ、焦り、苦悩、恐怖…怖いほどによく描かれていて、苦しく切ない。
    枝実子の想いもまた同様。介護者には介護者の(正確にはまだ介護者ではないが)覚悟が必要であり、想いがあるのだ。それが枝実子の言動に如実に表現されており、切なかった。
    また、夫婦の愛情は確かで、温かく、でもだからこそ、切ない。娘の梨恵と孫の芽吹への愛情もまた確かなもの。娘夫婦への夫婦茶碗へ込められた、強く温かな愛。

    考えさせられる。
    自分がアルツハイマーになり、死と自分が自分でなくなる恐怖とどう向き合うべきなのか。―私にとって、彼でいう陶芸は何?
    パートナーがアルツハイマーになったとき、私は枝実子のように強くいられるだろうか。逆に、枝実子のように想ってくれるパートナーと一緒にいられるのか?
    アルツハイマーに理解のある人でありたい。安藤のことばや生野のことばがどれほど救いであったことか。―若年性アルツハイマーを私はどれだけ知っている?

    会社を去るシーン、ラストシーンはぼろぼろに泣いた。
    重いお話だから勧めにくいけれど、でも読んでほしい本。
    生と死、記憶がいかに大切か、家族への愛――。
    人生を生きていくのに大切なものが詰まっている一冊だ。

  • 「生きろ、と体が心に言っている・・・」

    死んだっていいと思っていても、
    いざ直面すると、やはり怖いと感じてしまうものなのだろうか?

    広告代理店営業部長の佐伯は、齢50にして若年性アルツハイマーと告知される。
    はじめは受け入れられず、自分はまだやれると信じ
    必死に記憶をつなぎ留めようと執拗にメモを取り続け、
    それでも失態を繰り返してしまう彼が
    あまりに哀れで読んでいて胸が苦しくなった。

    あることをキッカケに混濁から抗うことを諦めると
    急速に進行し、空想と現実、過去と現在の境が曖昧な世界の住人となる。
    でもそれは、決して悲観的なものではないのかも知れない。

    あるがままに生活をし
    周りの人は、自分らの常識をあまり押し付けないよう心がければ
    穏やかに過ごしていけるのではないかと強く感じた。

    認知症を患うと
    怒りっぽくなったり、突然暴力を振るったりするという話をよく聞くが
    それは、相手の言っていることが理解できなかったり
    自分がうまくルールに則ることができない憤りが
    そのような形で表へ現れてしまうだけなのではないだろうか?

    自分の脳が萎縮していくのを感じながら
    戸惑い、悩み、受け入れていく彼の過程を読んでいると
    常識とは何なのか、それに固執する意味はあるのだろうか?
    と、今自分が大事にしているものが、何だかとても滑稽に感じてしまう。

    何故自分がこんな病気に罹ってしまったんだろう
    と嘆くより、なんとか折り合いをつけて、気張らず生活することが
    何より大切なんだということを気付かされる一冊だった。

  • 若年性アルツハイマーを患った中年サラリーマンを描いた小説。

    いい評判はレビューなどで知っていたものの、テーマがテーマだけになかなか手を伸ばせず。しかし今回ようやく読了。結論としては「読んでよかった!」

    語りは主人公の一人称。アルツハイマーのため会議の日程を間違えたり、取引先の会社に行く道順が分からなくなったりと彼が焦る場面が頻出し、それに一人称の巧さもあって下手なホラーよりも怖くなってしまう場面もありました。それだけに名前と大まかな症状しか知らないこの病気の怖さとそれを患ってしまった主人公の焦りや悲嘆が迫ってきます。

    でも不思議なことに重い気分にはならない。では軽い小説なのか、と問われるとそれは違うと断言できる、荻原さんはユーモア作家でもあると自分は思うのですが、真のユーモア作家はシリアスな内容も読者に重たい気分にさせず、それでいて内容の深刻さをしっかりと伝えることができるんだなあ、と思いました。

    奥さんをはじめ主人公の周りの登場人物たちもそれぞれにいい味を出しています。主人公とそれぞれの登場人物の絡ませ方がどれもいいです。主人公に対し好意的に接してくれる人だけでなく、時には騙したり、出し抜いたりという人もいるのですが、それらの場面もあまりいやな気分にならず、切ない気分だけを味あわさせてくれました。

    ラスト場面の切なさと美しさは今まで読んできた小説の中でナンバー1、と言ってもいいくらいだったと思います。難病ものなので話の展開はどうしても読めてしまうのですが、それを上回る感動と全編を通してアルツハイマー患者のリアルな感情がありました。

    エンディングからも続く主人公とその家族の苦労は、この本のうちで語られた以上のものになると思うのですが、それでも不思議と暗い気分にならずどこかしらに希望が感じられるラストでした。

    第18回山本周五郎賞
    2005年本屋大賞2位

  • 信じていても、良い人だと思っていても、
    状況が変われば裏切られることになるのは切ないと思った。

  • 若年性アルツハイマーの目線で書かれたあまりにリアルで哀しい話。
    読んでる途中でハッピーエンドにならないと思いながらも読み進んでしまう。
    自分の人生を大切に生きたいと思える一冊でした。

  • 広告代理店営業部長の佐伯は、齢五十にして若年性アルツハイマーと診断された。仕事では重要な案件を抱え、一人娘は結婚を間近に控えていた。銀婚式をすませた妻との穏やかな思い出さえも、病は残酷に奪い去っていく。けれども彼を取り巻くいくつもの深い愛は、失われゆく記憶を、はるか明日に甦らせるだろう!

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著者プロフィール

1956年埼玉県生まれ。広告制作会社勤務を経て、コピーライターとして独立。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞、14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞、16年『海の見える理髪店』で直木賞を受賞。『砂の王国』『花のさくら通り』『ストロベリーライフ』『海馬の尻尾』『極小農園日記』など著作多数。

「2018年 『金魚姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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