ひなた (光文社文庫 よ 15-1)

著者 :
  • 光文社
3.22
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本棚登録 : 1597
感想 : 204
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334744281

感想・レビュー・書評

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  • 淡々と日常生活が評価されてると思いきや
    それぞれが、長男そして妻、長く付き合ってる親友
    次男その彼女、彼女の実家も出てくるし
    描写に共感するところもあれば相容れないところも自分があった、
    そして母と父、
    しかし表面みんなで仲良く同居をしてる中で
    実はそれぞれの心の奥底に
    溜まっているものがある、実はー
    珠玉の言葉があちらこちら
    やはり好きだわー吉田修一!
    こんな作品もキラリと光る。「アクションでもなく、静かな」ほんと言えば何度でも読みたい本。

  • 一組の夫婦と一組のカップル(その夫婦とカップルの男は兄弟)の春夏秋冬。
    それぞれの関係、それぞれの家族との関係、それぞれの仕事仲間との関係、そして少しの秘密。

    日々生きていて、ものすごく大きな事件や出来事というのは、滅多に起こるものではない。どちらかというと淡々と過ぎることが多く、その中に嬉しかったり悲しかったりする出来事がある。
    でも、1年ってけっこう色んなことがあるんだよね、ということをしみじみ思う小説だった。
    それぞれの春夏秋冬を4人の視点で順番に描いていて、ある者は就職して新しい生活がスタートし、ある者は仕事を辞めることを決め、ある者は親友の借金の肩代わりをし、ある者は自分の出生に関わる人物に会いに行く。
    4人それぞれの比較的大きな出来事を羅列するとそういうことになるけれど、それ以外にも日々様々な出来事があって、その積み重ねでまた季節が一巡りする。

    1年って早いなって毎年思う。時々戦慄する。何もしていない、何も変わっていないような気がする。
    でも振り返ってみるとけっこう色んなことが起きている。
    引っ越したり、旅行に行ったり、家族が病気になったり、プラスからマイナスまで、人から見たらとるに足らないような出来事の連続だったりする。

    読んでいて、みんなすごく普通なんだけど、普通の人生なんてない、ということも思わされたりして、基本的に暖かくゆっくりした流れなのだけど、その時どきをきちんと生きるって大事だな、と思った。
    「ひなた」っていう題名、とても合ってる。

  • 大路家の兄弟、浩一と尚純。浩一の妻桂子と、尚純の彼女の新堂レイの、それぞれの日常がそれぞれの視点で描かれている。
    人との関わり。少しずつ動いていく家族関係。
    この人の書く人間模様は淡々としているけれど、どこか温かくて好きです。
    自分の居場所について、しあわせについて、ゆっくり考えたくなった。

  • 吉田さんの本は【横道世之介】に続いて2冊目。
    【横道世之介】がとっても面白くて(ちなみに☆5つつけてます)、他の本も読んでみたいと思っていました。
    4人の男女の四季を描いているのですが、この本、じんわりと良い感じです。
    迷ったり、傷ついたりしつつ、しあわせって手を伸ばせばそこにあるのよね…

  • すごく淡々と語られていくんだけど、
    いつの間にか話に引き込まれて行く
    みんな表面上は明るく楽しそうに見えるけど、誰しも闇の部分は持って生きているんだなぁー
    そんな話を全然暗く書いて無いから
    すごく読みやすい

  • 男女4人、それぞれの視点で四季を描いた作品。
    とくに大きな変化があるわけでもなく、物語が淡々と進んでいく。その淡々と進む感じがとても居心地よくて、安心して読んでられる。
    吉田修一の作品は、登場人物の描写が丁寧。彼らの考えていることが伝わってくるようで、物語の世界に浸かれる。

  • 吉田修一の原作でつくられた 映画をみた事があった。
    この本『ひなた』を読んでみると、
    あまりにも、どろっ としているので
    ちょっと、意外な感じをした。

    意識、感情、行動 というのが
    ふんわりと一体化している。

    尚純が ダラットして、なぜか 目的意識と言うか
    そういうものもなく、ふわふわして生きている。
    そんな尚純に なぜ レイが 好かれるのかが
    よくわからないけど、つきあっている。

    兄夫婦が 兄は銀行つとめ。
    妻は 雑誌の編集者で やり手なのだが
    なぜか 落ちぶれたオトコにも 未練がたちがたい。
    この女性は 仕事ができすぎるので、
    どこか、日常生活が 破綻するのかもしれない。

    田辺と兄のつきあいも よくわからない。
    ふわっとしているんだよね。
    田辺の 好き嫌いがはっきりした性格だと思うが
    うまく 世渡りできなそうな。

    そして、尚純の母親が いちばん 沢山のものを抱え
    はっきりした 意識を持っている。
    このお母さんは 強いよ。

  • 一人称視点が次々切り替わっていくスタイルの中、ひとつひとつの出来事が淡々と進んでいくテンポ感はあまり自分の好みではなかったかな。

  • 読後が心地よい。
    なんも起こってないんじゃないかってくらいの、ゆったりとした空気が流れてるのに、明かされる事実自体は結構刺激的で。
    それがまた友達の世間話を物語として垣間見てるようで好きです。
    こんなどこかにほんとにありそうな人の話を物語として書いて世に出す吉田修一さんがすごいです。
    作家さんって物語をかくときもっとぶっ飛んだストーリー性にしたり、どこかにわかりやすい個性を出してくる作品作りが多いんじゃないでしょうか。このシンプルさ、そんなところで自己表現しないぞ、表現とか言葉選びとかで差別化するぞ、という自信の表れなのかなと思いました。

  •  全員おとなになった「サザエさん」みたいな日常ユーモア小説――と思わせておいて、だんだんあらわになっていく闇と病みと野味( ´ ▽ ` )ノ
     ひなたぼっこでうつらうつら気持ち良い好日の昼下り( ´ ▽ ` )ノ――でも、いずれ必ず日は陰るのだ( ´ ▽ ` )ノ
     それとも逆に、「熱いトタン屋根の猫」よろしく身も心も火だるまになるのか( ´ ▽ ` )ノ
     物語はあえて「これから」というところで終わってる……主観四人のきもちそのまま、読みかけの本をその先を知るのが怖くて途中で閉じてしまうかのように( ´ ▽ ` )ノ

     シュウちゃん作品を何冊か読んでるから、最初から何かあるなと心してかかっていたし、こういう終わり方もありかなと予感していた( ´ ▽ ` )ノ
     安定した不安定さというか、予期したイレギュラーというか、事前に本書に望んでいたすべてが作中にあった気がした( ´ ▽ ` )ノ

     歪みに歪み秘密だらけの勝ち組一家と、本性一切合切さらけ出しの負け組一家(レイの実家)との対比( ´ ▽ ` )ノ
    「熱いトタン屋根の猫」「自負と偏見(有名な「高慢と偏見」でなくあえてこっちの邦題を選択)」といった演題に託した隠喩( ´ ▽ ` )ノ
     いかにもシュウちゃんらしい「仕掛け」がいっぱい( ´ ▽ ` )ノ
     たとえば、寅さん博物館における「いしだあゆみがマドンナの作品」という些細なセリフにすら油断ができない(「あじさいの恋」は性愛が割りと直截的に描かれたシリーズ中の異色作)( ´ ▽ ` )ノ
     ヒロインの名前がレイってのはただの偶然だろうけど、それこそエヴァみたいにいくらでも謎解き裏読み深読み誤読ができる快作( ´ ▽ ` )ノ




     これが我がブクログレビュー601本め……なんだよなあ(´ε`;)ウーン…

     400が「パレード」、500が「悪人」だったから、キリ番すべて吉田修一で統一しようと思ってたのに、計算ミスで1冊ズレちゃった(>_<)
     しかも、600番目にするはずだった「横道世之介」は未だ入手できぬままだし……(>_<)
     なんかもう、予定も思惑もメッチャクチャ(>_<)
    (まあ、後からレビュー順が確認できるわけでもなし、あくまで自己満足の問題だな)

    2019/10/18

    • トミーさん
      貴レビュー
      うますぎ!さすが描き慣れてらっしゃる。
      そして深い「読みが」
      吉田修一フェチには
      貴のレビューさえ嬉しすぎる。
      貴レビュー
      うますぎ!さすが描き慣れてらっしゃる。
      そして深い「読みが」
      吉田修一フェチには
      貴のレビューさえ嬉しすぎる。
      2020/01/14
    • zerotester21さん
      恐れ入りますm(_ _)m
      恐れ入りますm(_ _)m
      2020/01/15
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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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